吾が輩はハムスターである5 投稿者: 偽善者Z
ゴトゴト・・・
吾が輩は今、暗幕の張られた狭いかごのなかに居るのである。しかも移動しているのか揺れている。月日は主人と男が同棲し始めて、一年ほどたっただろうか?う〜む長いものである。吾が輩もあの主を眺め続けて、そんなにたつのか・・・。そんなことを考えていると、揺れがおさまり暗幕が取られた。
「あ!かわいい!」
「ほんと!」
『かわいいの』(吾が輩には読めていない)
「春よりも大きくなったわね〜」
「みゅ〜!」
「見えないよ〜」
周りから一斉に声がかかった。さわがしくてしょうがない。それにしても、ここはどこなのだろうか?周りを見渡すと、かなり広い部屋に人がたくさんいる。さらに装飾や照明もどこか豪華さを感じさせた。そんな状況を掴めない吾が輩にはお構いなしに、周りの者は会話をする。
「わたしもハムスターほしいな〜」
「瑞佳は無理よ。猫がいるから」
「そうだよね〜。ねえ、七瀬さん飼ってみたら?」
「わたしはだめよ。世話がめんどくさいから」
「みゅ〜」
吾が輩に少女が一人顔を近づけて来た。そして指でなでてきた。
「繭はこのはハムスターが気に入ったの?」
「みゅ〜!」
「ねえ澪ちゃん。そう言えばこいつ、茜が一人暮らしを始めた頃からいるのよね」
『そうなの』
むっ、この二人は見覚えがあるぞ。たしか吾が輩が主人に飼われ始めた頃、家に来て飲み会を開いた二人だ。
「う〜、みんないいなぁ。わたしは見えないから、どんな感じなのかわかんないよ 」
「みさきは料理でも食べてればいいのよ」
「雪ちゃんひどいよ〜。せっかくの浩平君の結婚式なんだから、食べるより祝ってあげるつもりなのに〜」
何!?結婚式!?吾が輩は結婚式に連れてこられたのか!?結婚式とはまさか主人とあの男がか!?
「折原もやるわよね。里村さんまだ大学二年よ」
「学生結婚かぁ〜、茜の奴なんてうらやましいんだろう。でも相手があいつじゃあ、幸せ半減ね」
「でも浩平にしてみればいいことだよ。相手も里村さんなら大丈夫だろうし」
「瑞佳ぁ〜、あんたほんとは嫉妬してんじゃないのぉ?」
「そんなことあるわけないもんっ」
吾が輩の周りでゴチャゴチャうるさい!よりによって何であの男が主人の相手なんだ!吾が輩が息巻いていると、突然会場が暗くなった。
「え〜みなさまぁ〜。大変長らくお待たせしました。ただいまより新郎新婦の入場です!拍手でお迎えください!」
そんな声とともにスポットライトが向こうの扉の方を照らす。何やら音楽がかかるとゆっくりと扉が開き始めた。足元からは白い煙が出ている。
パチパチパチ・・・・・・・・!
扉が開き始めると会場内には拍手が沸き起こった。扉からは白い衣装を着た二人組が歩いてくる。しかし、視力の悪い吾が輩にはまだ確認できない。
「茜きれいよ〜!」
見覚えのある女が主人の名を叫んだ。やはり主人の結婚式か・・・では相手は・・・・・・。
「浩平もかっこいいよ〜!」
や、やはりあの男か!う〜む・・・白いきらびやかなドレスを着た主人と腕を組んでいる。しかし我が主人もなぜあの男と結婚するのだろうか?やり切れなくなった吾が輩は、かごに敷き詰められている木くずに潜り込んだ。人間達の騒ぎに巻き込まれるのはごめんである。吾が輩は眠りにつくことにした。はて?・・・そう言えばなぜ吾が輩は、主人の結婚にこんなに反抗するのであろうか?まさか人間にほれたわけでもあるまいし・・・・・・・・。

つづく・・・・・・。

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学生結婚・・・・・。ちょっとやり過ぎかな?ほんとは教会でやりたかったんですけど・・・まあいいや。さてこのハムスターの話ですが、ついに次回が最終回!時間はかなり進みます!結婚までいったらお次は・・・。