浩平犯科帳 第一部 第四話 投稿者: 偽善者Z
浩平犯科帳 第一部 第四話「旅は黄泉への道連れ」

「浩平ーっ!朝だよーっ!」
いつものようにお瑞が浩平を起こす。いや、いつもどおりではない。
「うっ・・・もう朝か・・・・」
浩平はあっさり起きた。
「やっぱり、枕が変わると寝れないな・・・」
ここはいつもの浩平の長屋ではなかった。浩平達は宿の一室にいる。
「そうだね、特に浩平は旅行なんかしないから、なおさらだよ」
浩平は枕が変わり、よく眠れなかったのだ。
「ほら、朝ご飯食べにいこうよ」
「ああ・・・」
浩平はまだおぼつかない足取りで、部屋を出る。浩平達の部屋は二階で、朝食は一階の広間でとらなけらばいけなかった。浩平は階段をふらふら歩く。
「足元見ないと、危ないよ」
「わかってる」
お瑞にうながされながらも、なんとか浩平は一階へ降り、朝食を食べに行った。
浩平達は川崎の宿場町にいる。浩平達は神奈川へと向かい、東海道を進んでいるのである。神奈川は川崎の次の宿駅で、浩平の足なら昨日の内に着いたはずなのだが、お瑞もいるので二日かかってここに至る。
何故、浩平達が神奈川に向かっているかと言うと、お瑞の父親の兄、つまりお瑞の伯父が開く宿が、人手不足で困っているとのことで、お瑞が手伝いに出されたのだ。だが、女一人の身で旅をさせるのは危険だと、ちょうど暇をもらった浩平が、お供として一緒に来ているのだ。しかし、まさか若い男女が同じ部屋に泊まるとは、浩平は思いもしなかった。どこも空き部屋がなく、仕方ないとは言え浩平は抵抗があった。そのことで、二人はこんな会話をしている。

「俺は野宿するわ」
最初の宿で、浩平は部屋に入るなりそう言った。
「なんで?」
「なんでって、まずいだろ。やっぱり」
「全然大丈夫だよ、わたしは」
お瑞は抵抗を感じていない。
「い、いや、でも・・・」
「浩平もしかして、意識してるの?」
大抵のことはお瑞なら抵抗を感じないのだが、二人っきりで同じ部屋に寝るとなると、浩平は意識せざるをえなかった。
「ば、ばか・・・そんなことあるはずないだろ」
浩平は狼狽しながらもそう言った。
「じゃあ、一緒の部屋だね」
こうして浩平は、お瑞と一つ屋根の下で過ごすことになったのだ。

浩平とお瑞は朝食をとると、部屋に戻り出発の準備をして早速宿を出た。
「うーっ・・・なんかだるい」
浩平が愚痴を漏らす。寝不足のため体がついていけてないのだ。
「もう、まだ言ってるよ」
浩平とお瑞は早朝の街道を、神奈川へ向け歩いた。その途中の街道脇の松の木で、お瑞が何かを見つけた。
「浩平、あそこにだれかしゃがんでるよ」
「あっ、ほんとだ」
浩平はお瑞に言われて気付いた。松の木の下には、小さい少女がしゃがみこんでいる。
「なんか埋めているみたいだな」
「わたし、行ってみるね」
お瑞はそう言うと、少女の所まで駆け寄った。お瑞はこういうのにはどうしても甘い。例えば、捨て猫などを見ると、どうしても拾ってきてしまうのだ。そのため、お瑞の家には現在八匹の猫が住んでいる。
「どうしたの?こんなところで」
お瑞は少女に話しかけた。
「・・・」
だが少女は何も言わない。少女の手には、見慣れない動物が抱かれている。
「その子を埋めていたのね・・・」
お瑞はその動物がぐったりして、動かないのを見て死んでいることが、すぐにわかった。
「そいつ、なんだ?」
その時浩平が追いついき、少女に聞いた。
「・・・みゅー・・・・・・友達・・・」
少女はその時、初めてを開いて言った。だが、その声は悲しみに包まれ今にも消え入りそうである。
「みゅーっていうのか」
浩平はその動物が見たことがなかった。一見、イタチのようにもねずみのようににも見えるが、イタチにしては小型であり、ねずみとも違った。
「あなたお名前は?」
お瑞が名前を聞いた。
「・・・椎名・・・繭」
「まゆ?蚕の繭でいいのかな?」
少女はコクコクと頷く。
「椎名、はやくみゅーを埋めてあげな」
浩平がそう言うと、繭は頷いて再びしゃがみこむ。浩平は繭を見守ることにした。
ザクッ、ザクッ、
繭は板切れで土を掘り返すが、力がないのか、なかなか穴は掘れない。
「よし、俺が手伝ってやるっ!」
じれたっくなった浩平は、繭から板を取ると穴を掘りにかかった。
ザクッ、ザクッ、ザクッ、ザクッ!
浩平は繭の倍以上の速さで穴を掘った。
「よーしこんなものだな。埋めるぞ?」
繭が頷いたので、浩平は動物を受け取ると、掘った穴に静かに置く。そして優しく土をかけ始めた。
「・・・うっ・・・・みゅーっ!みゅーっ!」
その様子を見ていた繭は、突然取り乱し、土を掘り返した。それをお瑞が押さえる。
「繭・・・もう楽にさせてあげよう・・・・・」
お瑞は諭すようにして語りかける。
「うっ、うっ・・・みゅーっ・・・・・」
繭はまだ未練があるようだが、少しは落ち着いた。
「終わったぞ・・・」
浩平は丁寧に土をかけ直すと、立ち上がった。
「そろそろ行くぞ、お瑞」
浩平は歩き出す。
「う、うん・・・繭、元気出してね・・・・・」
お瑞は浩平の後に続いた。繭はそんな二人を黙って見送る。繭は二人が見えなくなっても、松の木の下に居た・・・・・。

浩平とお瑞は繭と分れた後、二時間程で神奈川に着いた。だが、神奈川に着いた途端にわか雨が降り、お瑞の伯父が経営する宿、半田屋に着いたころには二人はずぶ濡れだった。
「ひゃあー、濡れちまった」
浩平が悲鳴をあげながら暖簾をくぐる。
「ついてないね・・・」
お瑞も濡れた着物を気にしている。その時、二人の声を聞いた店の者がやって来た。
「いらっしゃいませ・・・あれ?お瑞ちゃんじゃないか!?」
「おじさん!お久しぶりです!」
やって来たのはお瑞の伯父だった。
「おーいっ!おまえーっ!お瑞ちゃんがきたぞーっ!」
伯父が呼びかけると、奥からお瑞の叔母にあたる女将が出てくる。
「あらっ!お瑞ちゃん!?綺麗になったねぇ!ほら、あがって頂戴っ!そんな格好じゃ風邪ひいちゃうよっ!」
女将は一気にまくしたてると、二人を中へと入れた。
「ところでお瑞ちゃん、こちらは?」
伯父は浩平をさして聞いた。
「幼なじみの浩平です。用心棒代わりにっ、て」
「折原浩平です」
浩平は軽く礼をした。
「おうおう、聞いてるぜっ!なんでも将来を誓い合う仲らしいじゃないかっ!」
それを聞いた二人は、慌てて否定をする。
「そ、そんなんじゃないですよっ!」
これは浩平だ。
「浩平の言う通りですよっ!私達はなんでもありませんっ!」
お瑞も否定するが、伯父は相手にしない。
「まあ、照れるなって!部屋も一緒にしといたからよ」
「えっ・・・」
浩平は絶句した。これから先、一週間はお瑞と同じ部屋である・・・・・・・。
浩平とお瑞は二階の奥の部屋を与えられた。二人で寝るには十分な広さである。浩平はとりあえず濡れた着物を着替えた。お瑞はその間、部屋にいるわけにもいかないので、別の所で着替えた。その後、お瑞は早速仕事に入った。
「ふう・・・疲れたな、少し横になるか」
浩平は一人ですることがないので、そのまま畳に伏す。しばらくすると寝息をたて始めた。そして昼過ぎ頃。「ぐーっ・・・」
そんな浩平の眠りは突然破られる。
「浩平ーっ!大変だよーっ!」
障子が開かれ、お瑞が飛び込んでくる。
「うるせー・・・なんだってんだよ・・・」
浩平は起こされて、機嫌が悪い。
「大変なんだよっ!繭がねっ!繭が町に来ているのっ!きっと、私達を追って来たんだよっ!」
「椎名が?どういうことだ?」
お瑞の話によると、宿の使用人が使いに出たところ、この雨の中で町中を、ずぶ濡れになりながら歩き回る少女がいたらしい。そしてその少女は何やら「みゅーっ」等と言っていたらしい。
「よし、行くぞっ!お瑞っ!」
それを聞いた浩平は宿を飛び出した。
「浩平っ!まってよっ!」
お瑞は蓑を持ち出しながらも、浩平を追う。
「浩平、どうするの?」
浩平に追いついたお瑞は蓑を渡しながら聞いた。
「表通りを探そう」
二人は雨の中、繭を探す。雨のおかげで人通りはほとんどなかった。そのため浩平はすぐに、繭を発見できた。
「いたっ!椎名ーっ!」
浩平は繭に呼びかけた。しかし、繭は浩平だとわからないのか、逃げ出した。
「あっ!?逃げるよ!」
「ちっ!追うぞ、お瑞」
浩平は全力で追いかけた。その差はみるみる内に縮まっていく。そして、ついに繭の手を掴んだ。
「椎名っ!俺だ、朝会っただろ?」
浩平はじたばたする繭に呼びかけた。すると、繭は何かを思い出したかのように、動きを止めた。
「繭、思い出した?」
後ろからお瑞が声をかけた。
「こんなところで何やってたんだ?ずぶ濡れじゃないか」
「・・・・・・・・・」
浩平は繭に聞くが繭は黙ったままである。
「ねえ浩平、とりあえず半田屋にもどろうよ。繭が風邪ひいちゃうよ」
繭は寒さのためか震えている。それに気がついたお瑞が言った。
「おっ、そうだな」
浩平は繭を連れて宿に戻ることにした。
宿に戻ると、お瑞は繭の着物を着替えさせる。しかし、ちょうどいい大きさの着物がなかったので、浴衣を着させた。
「みゅーっ!」
繭は浴衣を着ると、嬉しそうにはしゃいだ。
「やれやれ・・・そうだ椎名、俺達の名前言ってなかったな。おれは折原浩平だ。で、こっちが・・・」
「長森瑞佳だよ」
二人は簡単に自己紹介を済ませた。それから浩平は、自分達を追ってきた理由等次々と、繭に質問を浴びせた。しかし、繭は理解できないのかぼけ〜っとしたままだった。
「はあ・・・馬の耳に念仏ってやつだな」
浩平はため息をつく、そんな浩平に代わって、今度はお瑞が質問する。
「ねえ、繭。もしかして私達と遊びたかったの?」
お瑞の言葉に、繭はコクコクと頷いた。
「ほ、本気かよ・・・」
浩平はしり込みした。まさかそれだけのために、自分達を追ってきたとは思いもしなかった。
「うーん・・・でも、わたしは仕事があるから夕方ぐらいにね。それまでまっててね。いい?」
「みゅーっ」
また、繭は頷く。
「それまでどうするんだ?」
浩平は嫌な予感がした。
「浩平が相手をしていてよ。この雨じゃあ外に出せないよ。それじゃあ繭、まっててね」
お瑞はそう言い残し、部屋を出ていった。
「お、おい・・・」
浩平は取り残され呆然とする。
「みゅーっ!」
そんな浩平にはお構いなく繭はじゃれてくる。
「しょうがない・・・相手をしてやるか・・・・・・」
浩平は仕方なしに、繭の遊び相手をしてやることにした。

それから数時間間後。あたりは夕暮れを迎えていた。さて、半田屋の二階では・・・・・。
「よーしっ、椎名!次の勝負だっ!」
「みゅーっ!」
最初は乗り気ではなかったが、浩平は繭との遊びに熱中していた。
「いいか、次の勝負はかけっこだ。でも、ただのかけっこじゃない」
「?」
繭は浩平の言うことがよく理解できない。浩平は説明を続ける。
「この部屋から走り出して、奥の部屋まで行くんだ。ただし、中にいる人を先に捕まえた方が勝ちだ」
浩平は捕まえられる方にしては、迷惑な遊びを提案した。
「みゅーっ!」
だが、繭は賛成した。
「よーし、行くぞぉー・・・始めっ!」
浩平と繭は走り出す。しかし、繭の方が一歩先に飛び出した。
「くっ!」
浩平はうめいた。なぜなら廊下の幅は狭く、人を走って追い抜くのは難しいのだ。浩平は繭のすぐ後ろを走る。
そして、ゴールである奥の部屋が見えた。
ガラッ!
繭が障子を勢いよく開き、飛び込み中にいた客の首に抱きつく。しかし浩平も負けていない。
「させるかーっ!」
浩平は繭の後ろから滑り込み、客の足を掴んだ。
「キャッ!?な、何!?」
ズドーーーーーーーン!
客は突然のことにバランスを崩し、倒れ込んだ。二階に轟音が鳴り響いた。
「なかなかやるな椎名・・・よし、逃げるぞっ!」
「みゅーっ!」
浩平は倒れた客のことは構わずに、逃げ出そうとした。
「ちょっとっ!まちなさいよ!」
しかし、客が立ち上がり抗議をする。だが、その顔には聞き覚えがあった。
「ああっ!?お、お七!?なんで、こんなところにっ!」
なんと、客はお七だったのだ。
「そんなことはどうでもいいでしょ!それより、いったいなんなのよ、これは!?」
お七はかなり怒っている。
「いや、椎名の相手をしてやろうと・・・」
浩平は弁解するが、それで収まるお七ではない。
「それで人を押し倒す気!?だいたいあんたは、ってキャアアアアーーーー!イタイ、イタイ!」
お七は言葉を続けることができなかった。お七の結わずに、二本に分けて結んだ髪の片方を、繭がひっぱていた。
「みゅーっ!」
「ち、ちょっと!?いったいなんなのよ!?この子は!」
お七は繭を髪から離す。繭は離れると不服そうな顔をした。
「説明しなさいよ!」
お七にまくしたてられ、浩平はこれまでの経緯を説明する。
「あんた・・それでこんな遊びを思いついたの・・・・・」
お七は話を聞いて、第一声にそう言った。その時、向こうでお瑞の呼ぶ声が聞こえてきた。
「浩平ーっ!どこいたんだよー?」
「お瑞、こっちだ」
浩平は障子を開け、お瑞を手招きする。
「なんで、そんなところにいるんだよ」
「お七が来てるぞ」
「えっ?お七さんが?」
お瑞はお七の部屋に入った。
「こんにちは、お七さん」
「あっ、お瑞」
「偶然だね。お七さんは旅行?」
「まあ、そんなところね」
お瑞の問いかけに、お七はあいまいに答えた。
「浩平、休憩時間だから外に出ようよ。雨もあがったし」
「そうだな・・・それじゃあお七、また後でな」
「二度と来るなっ!」
そう言って、浩平とお瑞は繭を連れ外に出た。
「わあーっ!綺麗な夕焼けだよ」
「みゅーっ!」
外の世界は、夕焼けの赤に染まっていた。それを見て、お瑞と繭は歓声をあげた。ちなみに繭は着物が乾いたので、浴衣から着替えている。
「どこに行くんだ?」
「うーん・・・・・・そうだっ!繭に会った記念に何か買ってあげようよ!」
「みゅーっ!」
お瑞の提案に、繭は嬉しそうな声をあげた。
「感情がすぐわかる奴だな・・・やれやれ、さっさと行くぞ」
浩平達は表通りの小間物屋に入った。
「繭どれが欲しい?」
「みゅー・・・」
お瑞と繭は、店内に置かれた品を見て楽しんでいる。しかし、浩平は取り残されたようで退屈だった。
「椎名、これなんかどうだ?」
ついに耐え切れなくなった浩平は、二人に割って入った。浩平は店内に置かれていた襟巻きのような、よくわからない毛皮らしき物を繭に見せた。
「浩平・・・それ何?」
お瑞は浩平のセンスに呆れながらも聞いた。
「みゅーっ!」
だが、繭はそれが気に入ったのか、首にまいて喜んでいる。
「おっ、椎名は気に入ったみたいだぞ」
「はあ・・・繭それが欲しいの?」
繭は頷く。
「いくらだ?」
浩平は店員に値段を聞いた。しかし、値段を聞くと・・・
「た、高いっ・・・椎名別のにしないか?」
「みゅー・・・」
椎名は離そうとしない。
「浩平仕方ないよ、二人で払おう・・・・」
浩平達は代金を払うと外に出た。すでに日は半分以上沈んでいる。
「それじゃあ繭、そろそろ帰るよ」
「家はどこだ?」
「みゅーっ・・・・・・」
浩平とお瑞の言葉に繭は不服を示す。
「だめだよ繭、お母さんも心配してるよ」
「・・・・・・お母さんなんかいないもん・・・・・・・」
「えっ?・・・」
繭の言葉に、お瑞は耳を疑う。
「どういうこと?」
「・・・・・・・・・・・」
繭は答えない。お瑞も黙ったところで、その沈黙を浩平が破った。
「椎名、家に帰らないと夕飯が食べれないし、夜になったら人さらいにさらわれるぞ」
「うーっ・・・・・・帰る・・・」
「よし、送ってやるぞ」
浩平達は繭を送ってやることにした。繭の案内に従い、浩平達は歩いた。そして三十分ほど歩いて、浩平達の前にあったのは・・・・・・・。
「こ、これがお前の家か?・・・・・」
浩平の質問に繭は頷いた。浩平が驚くのも無理はない、目の前にあるのは神奈川一の両替商、椎名屋だったのだ。
「繭、すごいところのお嬢さんだったんだね」
お瑞も驚いている。浩平達は店の前にいてもしょうがないので、中に入った。
「申し訳ございません・・・もう閉店で・・・繭っ!?」
中に入ると、上品な女性が迎えた。そして、繭を見ると驚きの声をあげた。
「繭っ!いままでどこに行ってたの!?」
女性はどうやら母親らしい。
「・・・・・・・」
繭は母親の問いかけに答えず、奥へと入ってしまった。仕方ないのでお瑞が答える。
「あの・・・お嬢さんはいままで私達と遊んでたんです」
お瑞はこれまでのことを説明した。
「申し訳ありません・・・ご迷惑をかけて」
「いや、こっちも楽しかったからいいですよ」
浩平は母親の謝罪に、そう答えた。
「あの・・・立ち入ったことを聞くんですが、繭がお母さんなんていないっ、て言った意味は?・・・・・・」
お瑞の質問に母親は、暗い表情で答えた。
「実は・・・わたしはあの子の本当の母親じゃないんです・・・・・・あの子の母親は繭が小さい頃に、追いはぎに殺されたんです・・・・・・」
「・・・・・・・・」
母親の告白に二人は沈黙した。やるせない空気が三人に流れる。
「あの子は母親が死ぬのを目の前で見たんです。それ以来、繭は飼っていた動物以外、心を開かなくなったんです・・・・・」
母親の言葉の後には、沈黙が続いた。
「すいません、こんなことを聞いて・・・・・・」
お瑞はそう言うのが精一杯だった。
「それじゃあ、俺達はこれで・・・」
「繭を送っていただいて、ありがとうございました・・・」
母親の言葉に見送られて二人は店を出た。帰り道で二人の会話は続かなかった。
(俺と同じだな・・・・・・)
浩平は沈黙の中でそう思った・・・・・・・。

つづく・・・・・。


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長いよ・・・・。ほんと、ごめんなさい・・・・・。気を取り直して、予告と一言。

繭の心は開くのか!?そして、繭にせまる危機とは!?旅先でも浩平は暴れるっ!
次回浩平犯科帳 第五話「繭の手伝い日記」ご期待下さい。

住井「出番ねーぞっ!」
所詮わき役さ、お前は・・・・・・。