浩平犯科帳 第一部 第二話「夕日の記憶」前編 ガラッ! いつものように雨戸の開かれる音と、そして目の奥を貫く陽光。 お瑞「ほら、起きなさいよーっ!」 浩平「うーん・・・後三つだけねむらせてくれぇ・・・」 お瑞「・・・・・・・・・、ほら、三つたったよっ!」 浩平「しまった、短すぎた・・・」 お瑞「一度言ったんだから、ほら、ちゃんと起きなさいよぉっ!」 浩平「うーっ、わかったよ・・・」 浩平は仕方なしに布団からもぞもぞと抜け出す。 お瑞「起きようとしたら、起きられるんじゃない」 浩平「どうも、お前に起こされると条件反射で、惰眠を貪りたくなるんだよ」 お瑞「そんな勝手だよぉーっ」 浩平「もっと違う起こし方してくれたら、すぱっと起きれるかもな」 お瑞「どんなだよ」 浩平「目覚めの接吻で起こすとかだな・・・」 お瑞「もーっ、またなに言ってんだかっ・・・。どうせそんなことしたって、ぐーぐー寝てるくせに」 浩平「いや、さすがに起きるだろう」 お瑞「どうして?」 浩平「ドキドキするからだ」 浩平は言ってから、何をバカなことを言ってるんだろう、と思う。 お瑞「えーっ、どうしてドキドキするのっ?わたしだよ、わたしっ!浩平、わたしなんかに接吻されて嬉しいのっ!?」 浩平「うるさいな、お前は。男とはそういうもんなんだよっ」 お瑞「はぅーっ、じゃあ、嬉しいんだぁ・・・」 浩平「先、飯食ってるからな」 浩平は着物をひったくると、逃げるように座敷へと向かう。着物に着替え顔を洗い、朝食をかき込む。浩平が準備を整えると、すでにお瑞は玄関の前に立っていた。 お瑞「今日ははやかったね。これだったら、どこかよっていけそうだよ」 浩平「じゃあ、芝居小屋にでもいくか」 お瑞「そんなにはないよ」 二人は長屋を出る。 お瑞「でも芝居小屋なんて、ずいぶんいってないね」 浩平「そうだな」 お瑞「暇なとき一緒にいこうよ」 浩平「いやだ」 お瑞「どうして?あっ、浩平は寝ちゃうもんね」 浩平「まあな、だから別のところだ」 お瑞「「じゃあ、別のところを探すよ」 浩平「無理に探さなくていいぞ」 そんなことを話してる内に、二人が別れる道につく。 浩平「じゃあ、また昼に」 お瑞「あっ、浩平」 浩平「なんだ?」 お瑞「浩平のところのお米、もうなくなってるから、昼前にこっちに来てよ」 浩平「めんどくせー」 お瑞「だめだよ、浩平は無理言って特別に安くしてるんだから。配達までしたら、おとっつぁんに申し訳が立たないよ」 浩平「しょうがねー、わかったよ」 お瑞「じゃあ、まってるね」 そういってお瑞は家に戻った。そして浩平も自身番に向かった。 ・ ・ ・ 正午前、浩平は日課である十手の手入れを済ませ、長森屋に来ていた。 お瑞「え〜と、米三升ね。代金は月末でいいよ」 浩平「すまねぇ」 浩平はお瑞から米の入った袋を受け取る。その時、店の奥からお瑞の父親が顔を出した。 お瑞の父「お瑞、ちょっとすまないが頼まれてくれ」 お瑞「なに?おとっつぁん」 お瑞の父「あれ?浩ちゃんも一緒かい」 浩平「あっ、こりゃどうも。いつもお世話になってます」 当たり前だが、浩平とお瑞の父との付き合いは長い。そうでなかったら、年頃の娘を男に近づかせたりしない。内心、浩平だからこそ近づけてるのかもしれないが・・・・・・・。 お瑞の父「よしてくれよ、浩ちゃんは、息子みたいなもんだ!どんどん世話をかけさせてくれ!」 お瑞「頼み事って?」 お瑞の父「おっ、そうだった。浩ちゃんもいるならちょうどいい。実は、川名神社への配達を忘れてて、さっき、店の奴を他のところへ配達させちまったんだ」 お瑞「つまり、川名神社に配達しろってことね」 お瑞の父「そういうことだ。すまないが浩平ちゃん、お瑞一人に任せるのは、荷が重いすぎる。手伝ってやっくれないか?」 浩平「お安い御用ですよ。ぜひ、やらせてください」 お瑞の父「おお、ありがてぇ。じゃあ、任したぞ。米はもう積んであるから」 こうして、浩平は川名神社まで米を配達することになった・・・・・・・。 浩平「クッ・・・・けっこう米って重いんだな」 お瑞「四俵も積んでるもん」 浩平は米だわらの積まれた力車を引いている。 お瑞「うふふ、浩平が手伝うなんてこともあるんだね」 浩平「うるせえ」 お瑞「あっ、怒ってる」 浩平「怒ってねーよ、それにしても川名神社ってこんなに遠かったか?」 川名神社は両国の外れにある。ちょうど苅田神社とは正反対」の方向である。 お瑞「浩平、本当にわたしも引かなくていいの?」 浩平「ああ、大丈夫だ」 お瑞「そういえば、あいかわらず浩ちゃんって呼ばれたね」 浩平「いつまで、子供扱いなんだか・・・」 お瑞「ふふ、おとっつぁんね、本当に浩平のこと家族だって思ってんだよ。前なんかね、浩平を養子にしようなんて言ってたんだよ」 浩平「・・・家族か・・・・・・・」 お瑞「あっ、ごめん!わたしそんなつもりじゃ・・・・・」 浩平には両親がいない。幼いころに死んだのだ。唯一の肉親である伯母が浩平を引き取り、育ててきたのだが、浩平は十四の時自立をして、一人暮らをしていた。その理由は、伯母に迷惑をかけたくないためだった。 浩平「いや、別に謝ることはない。ところで、川名神社にいくなんてひさしぶりだな」 浩平は今の会話を忘れるかのように言った。 お瑞「えっ?あ、うん、そういえばそうだね」 浩平「みさきさんにも、ずいぶん会ってないよな」 お瑞「昔はよく遊びにいったよね」 そうして、しばらく歩くと前方に鳥居が見えてくる。 お瑞「あっ、浩平見えてきたよ」 浩平「ふ〜っ、やっとついたか」 二人は鳥居をくぐり、境内の前に立った。そして、お瑞が社の中に向かって声を出す。 お瑞「長森屋ですぅ〜、お米を届けに来ましたぁ〜っ」 ・・・・・・・・・・・・。 お瑞「あれ?だれもいないのかな?」 声「はいはい、ただいま〜」 社からではなく、左く側にある渡り廊下から声が聞こえてきた。そして、廊下を白い巫女衣装を着た女が走ってきた。 浩平「おっ、あれ、みさきさんじゃないか」 浩平はその姿を見て言った。 みさき「すいません。遅れまして」 お瑞「お米を届けに来ました」 みさき「あれ?この声、お瑞ちゃんでしょ!」 お瑞「わかりました?」 みさき「わかるよ、大人っぽくなってるね」 浩平「俺もいるぞ」 みさき「その声は・・・・・う〜ん、わかんないや」 浩平「がくっ!」 みさき「あはは、うそうそ!浩平ちゃんでしょ、すぐわかったよ」 浩平「ちゃんはちょっと・・・・」 みさき「え〜っ、かわいいのに・・・」 お瑞「それにしても、本当に久しぶりですね。みさきさんはいつ巫女になったんですか?」 みさき「うん、最近ね。わたし目が見えないから、他に仕事ないし」 この巫女姿の女の名は、川名みさき。年は十八で、この川名神社の娘である。みさきは事故のため十才の時、目を失明した。そのため、世間に出ることはあまりない。また、浩平とお瑞は子供の頃、苅田神社と同じように、ここにも遊びに来ていた。しかし、浩平が自立してからは、あまり時間が取れず、位置的に遠いここには来なくなっていた。 みさき「ここじゃあなんだから、中に上がってよ。今ちょうどぼたもちを作ってるから、一緒に食べようよ」 浩平「その前に、米をなんとかしたいんだけど」 みさき「そうだったね、今、蔵の鍵をもってくるから」 そう言って、みさきは再び廊下を走っていった。二人はしばらく待つ。 みさき「おまたせっ、はい鍵。蔵はそっちだよ」 みさきは社の裏手を示す。そこには蔵があった。 浩平「さて、いっちょ働くか!」 みさき「お瑞ちゃんは、ぼたもち作るの手伝ってね」 お瑞「うん、じゃあ、浩平がんばってね!」 お瑞とみさきが廊下の奥に消え、浩平は蔵の前に立つ。そして錠前の鍵を開け、かんぬきを外し中へと入る。中は真っ暗である。浩平は辺りを見回す。 浩平「しっかし、暗いなぁ。んなこと言ってないで米を運ぶか」 浩平は米だわらを担ぎ蔵に運び、蔵にならべていく。そして、全ての米だわらを運び終えると、外に出て再びかんぬきをかけ、鍵を閉じた。そして、背中を伸ばし伸びをする。 浩平「うあ〜、やっと終わったぁ!慣れないことはすんじゃないな」 浩平はその時、前方に気配を感じそちらを見た。 浩平「だれだっ!?」 鳥居の陰に隠れ、こちらを見る人影がある。しかし、浩平の問いかけには答えず、脱兎のごとく逃げ出した。 浩平「まちやがれっ!」 浩平は追ったが、距離が離れているため、すぐに見失った。仕方なく、境内に戻る 浩平「なんだったんだ?今のは」 浩平が疑問に思っていると、廊下から声がかかった。 みさき「浩平ちゃーん、ぼたもちできたよー!」 浩平「ちゃんはやめてくれ・・・・・」 みさきの後ろからは、山盛りに積んだぼたもちを、皿に乗せ運んで来るお瑞が見える。 浩平「げっ!・・・なんだよ、あれ・・・」 みさき「ぼたもち」 みさきが笑顔で返す。 浩平「それはわかってるけど・・・・・・・」 お瑞「はぅ〜っ、浩平手伝ってよ〜」 浩平「今いくっ!みさきさんあがらせてもらうよ」 みさき「うん、どうぞ」 浩平は草履を脱ぎ、渡り廊下にあがった。そして、お瑞の持っている皿をもってやる。 お瑞「はあっ・・・重かった」 浩平「みさきさん、これどこにもってけばいい?」 みさき「ここでいいよ、こっちの方が風を感じるからね」 そう言ってみさきは廊下の縁に腰かける。浩平はぼたもちを降ろし、みさきの隣に座る。その浩平の隣にお瑞も座った。 みさき「さっそく食べようよ!」 浩平「それじゃあ、いただきます」 お瑞「いただきます」 三人は同時にぼたもちを口に運んだ。 浩平「うまい!」 みさき「おいしいね」 お瑞「うん!」 浩平「それにしても、なんでこんなに作ったんだ?」 みさき「えーっ・・・と、お供えする分と、あと、おすそわけする分もふくんでるからかな」 浩平「それでも、多いぞ・・・」 みさき「でも、浩平ちゃん達が遊びに来てくれて本当に嬉しいな。最近全然来てくれないだもん」 浩平「だから、ちゃんは・・・」 お瑞「ここに来たのって、いつ以来だったかな?」 みさき「おととしの、祭り以来だよ」 お瑞「へぇ〜、もうそんなになるんだぁ」 ここで言う祭りとは、川名神社で行われる祭りのことで、毎年春になると行われる。 みさき「そういえば、もうすぐ祭りなんだ。二人とも来てね」 お瑞「うん、絶対いくっ!」 浩平はいつの間にか大量にあったぼたもちが、半分ほどになっているのに気付いた。しかし、浩平はまだ、三個ほどしか食べていない。お瑞にいたっては二個目に今手をつけてるぐらいだ。 浩平「・・・みさきさん、あいかわらずよく食うな・・・・・・・」 みさき「かわってないでしょ」 お瑞「うん、でもみさきさんしばらく会わないうちに、きれいになったね」 みさき「え〜っ、そうかな、自分じゃわかんないから。でも、お瑞ちゃんもかわいくなったんでしょ」 お瑞「そんなことないよっ!」 みさき「浩平ちゃんはどう思う?」 浩平「みさきさんは、たしかにきれいになったけど、お瑞は・・・・・・・」 浩平はそこで口を閉じた。今まで意識したことがなかったが、よくよくお瑞を見るとたしかにかわいいと思った。よく住井が、両国一の美人だと言っているが、浩平は悪いところがないだけだ、と否定していた。だが、欠点がないからこそ美人だと言える。 お瑞「わたしは?」 浩平「あ、え、え〜っと・・・」 浩平は返答に困っていた。正直に言えばかわいい。しかし、今までお瑞に対して、そんなことを言ったことがないので、言えなかった。いつもなら「そんなことはない」とでも言うのだが、お瑞の期待のまなざしを見て、戸惑っていた。 浩平(くっ・・・お瑞!俺をそんな目で見るな!) お瑞「どうしたの?浩平」 みさき「浩平ちゃん?」 二人に急かされる浩平は、ついにそれに耐えれなくなった。 浩平「あっ!そう言えば、蔵の鍵かけ忘れたかもしれない!」 そう言って浩平はその場を離れた。 お瑞「あっ!浩平!?」 みさき「浩平ちゃん!」 浩平「ちゃんはやめてくれ!」 お瑞「どうしたんだろ、浩平」 みさき「うふふ、照れてるんだよ。きっと」 お瑞「どうして?」 みさき「幼なじみだからね、素直になれないんだよ」 お瑞「?」 お瑞はよくわからなかった。鈍感である。一方、浩平は再び蔵の前に来ていた。 浩平「くそーっ、なんでこんなにあせんなきゃいけないんだ」 鈍感と言えば、浩平も相当鈍感である。 浩平「あ〜っ、戻りづれ〜」 浩平がそう言ったとき、またしても先ほどの人影に気付いた。 浩平「また、てめえかっ!」 十手を抜き、今度は本気で追いかける。しかし、相手の足もかなり早く、またしても見失った。 浩平「くっ、二度も逃すとはっ!」 お瑞「浩平なにやってんのーっ」 お瑞が向こうから力車を引いてやってくる。その隣にはみさきさんもいる。 お瑞「へんだよ浩平、さっきから」 浩平「怪しい奴がいたんだ」 みさき「浩平ちゃんのこと?」 浩平「ちがう!俺じゃなくて、別の奴!」 みさき「冗談だよ。でも、いまのこと本当?」 浩平「ああ、みさきさん心当たりは?」 みさき「全然ないよ」 浩平「うーん、なんだったんだ」 みさき「大丈夫だよ。家には盗むものなんてなんにもないから」 浩平「まあ、なんにしても気を付けてな」 お瑞「それじゃあ、みさきさん、わたしたちはこれで」 みさき「うん、お祭り来てよね」 お瑞「はいっ!」 浩平とお瑞は神社を出た。その帰り道、浩平は空いた力車に自分の米と、お瑞を乗せて歩いていた。 お瑞「浩平、本当にいいのわたしが乗って」 浩平「ああ、いつも世話になってるしな」 お瑞「なんか、今日の浩平いつもより優しいね」 浩平「なにバカなこと言ってるんだ」 お瑞「ところで浩平」 浩平「あ?」 お瑞「お祭り一緒にいこうね」 浩平「ああ、別にいいけど」 お瑞「やったあ、じゃあ浴衣着ていこうかな」 浩平「わざわざそこまですることないだろ」 お瑞「あるんだよ」 そんなことを話している内に、長森屋に着いた。浩平はお瑞を降ろし、力車を店の中に戻した。 お瑞の父「おっ、帰ってきたか。二人ともありがとう。お瑞休憩していいぞ」 お瑞「うん、わかった。そうだ、浩平。今日は中原亭にいこうよ」 浩平「うーん、じゃあ、そうするか」 中原亭とは、表通りに面す居酒屋で、昼間は食堂を兼ねている。 浩平「今日はなんにしようかな」 お瑞「わたし鮭飯」 浩平「お前、いつもそれだな」 二人は、中原亭の暖簾をくぐった。中に入ると、いつもとは違う賑わいがあった。 浩平「おっちゃん!今日はいったいどうしたんだ?」 店の親父「浩平の旦那か、いやーっ、新しい娘をやとったんだけど、その娘がべっぴんさんでさあ、こうして男どもがむらがってんのよ」 たしかに店の中は、男ばかりである。 浩平「ふ〜ん」 お瑞「浩平座ろうよ」 二人は店の一番奥の席に座った。しばらくすると店の奥から、女が出てくる。人気はかなりのもので、浩平達の所に来るまで、男どもに声をかけられていた。 娘「遅れて申し訳ありません。注文は?ってあんたは!?」 浩平「あっ!?お前は!」 お瑞「あっ、昨日の」 お七「なにやってんのよ、こんなとこで」 お七は、先ほどの大声を隠すように声をひそめる。 浩平「飯を食いに来ただけだ。お前は?」 お七「わたしは、ここの看板娘よ」 浩平「なんだ、用心棒かと思った」 お七「ちがうわっ!ところでこっちは?」 お瑞「お瑞っていいます」 お七「わたしはお七、よろしくね。それにしても折原、あんたにはもったいない娘ね」 浩平「ちがう、ただの幼なじみだ」 お瑞「あれ?お七さん、なんで浩平の名前を知ってるの?」 お七「昨日あの後、またあったのよ」 浩平「ああ、もう少しで殺されるところだった」 お七「そのことは言うなっ!」 お七が浩平に、慌てて耳打ちする。 お七「ところで注文は?」 お瑞「わたしは鮭飯」 浩平「俺は鮭茶漬け」 お七「鮭飯と鮭茶漬けね、それじゃあ、もう少しまっててね」 お七は店の奥に戻った。戻る時も声をかけられ、その度に笑顔を返す。 浩平「猫かぶりやがって・・・」 お瑞「でも本当にきれいな人だね」 浩平「性格以外はな」 そして、再びお七が来て鮭飯と鮭茶漬け、お茶を出す。 お七「はい、どうぞ」 お瑞「ありがとう」 浩平「さて食うか」 お七「食い逃げしないでよ、折原」 そう言い残しお七は去る。浩平達も食事を口に運んだ。 お瑞「ぼたもち食べたから、おなかがきついや」 お瑞は食べ終わると言った。 浩平「俺はまだはいるぞ」 二人は代金を払うと店を出た。 お七「ありがとうございましたーっ」 そして浩平とお瑞はそれぞれの持ち場に戻った。 ・ ・ ・ 数日後、祭りは前日に迫っていた。 浩平「あーっ、暇だ」 ここは三丁目の自身番屋、時はすでに夕方、浩平は暇だった。そこに髭が入ってきた。 浩平「あっ、髭さん。こんちは」 髭「浩平、また見回りさぼってるな」 浩平「へへっ、すんません」 髭「まあ、ちょうどいいから許してやる。明日、川名神社で祭りがあるだろ。その見回りのことを伝えにきたのよ」 浩平「はあ、それがなにか?」 髭「最近神社の方に怪しい奴がうろついてるらしい」 浩平「あっ、俺そいつ知ってますよ。こないだ見ました」 髭「なにっ!?顔は見たか!」 髭は突然、血相を変えた。 浩平「えっ、いや見てません」 髭「そうか・・・・・」 浩平「なんか、あるんですか?」 髭「みさきちゃんが、なんで目が見えなくなったか知ってるか?」 浩平「事故ですよね」 髭「どんな事故だ?」 浩平「いや、そこまでは」 髭「実はな、どんな事故かはだれも知らないんだ」 浩平「どいうことです?」 髭「八年前の祭りで、殺人が起きたんだ。被害者は川名神社の当時の神主、つまりみさきちゃんの祖父だ」 浩平「えっ!?そんなこと聞いたことありませんよ!?」 髭「ああ、お前は小さかったからな。と言っても、この事件については町の者もほとんど知らない」 浩平「?」 浩平はますます訳がわからなくなった。 髭「この事件には、上から圧力がかかってもみ消された。俺は当時の事件を担当したから、少し知ってるんだが、みさきちゃんの目が見えなくなったのも、その殺人が起きたときだったんだ」 浩平「ということは、事故じゃないと?」 髭「いや、そこまではいわねぇが、ただの事故じゃないと思うんだ。俺は最近うろついてる奴と、八年前の事件が、関係あるように思えてしょうがないんだ」 浩平「なるほど・・・・・」 髭「つまんない話して悪かったな。じゃあ、俺はこれでいくぜ」 浩平「あっ、それじゃ」 髭がいなくなった後、浩平は思案にふけった。 浩平(みさきさんの目は事故のせいじゃないだと・・・それに事件に圧力がかかっているのも気になる) チリン、チリン その時、外から鈴の鳴る音が聞こえた。浩平は外に出る。すると、屋根から声がかかった。 詩子「おーい浩平、こっちだよ!」 浩平「詩子か、めずらしいな顔を見せるなんて」 この女は柚木詩子。浩平と同じく仁義屋である。役割は召集の伝達と情報収集、ただし、茜のように予知を行うのではなく、隠密行動によるものである。 詩子「そんなことより、はやく来なさいよ。わたしは先にいってるから」 そう言って、詩子は風のように浩平の前から姿を消した。そして、浩平も仁義屋に向かった。 浩平「ただいま着きました」 浩平はあばら家の中の暗闇に向かって言った。すると、奥でロウソクに火がともる。 声「やあ、もうみんなそろってるよ」 声の人物が言うように、浩平の周り気配が感じられる。 声「今回の依頼は、警護。対象は川名神社の巫女の川名みさき。期限は祭りが終わるまで。あと対象には警護していることを気付かれないように」 声はあくまで淡々としている。浩平はみさきの名を聞くと、声に向かって聞いた。 浩平「あの、お頭。依頼主はだれです」 声「めずらしいね、君がそんなことを聞くなんて。あと、お頭はやめてくれよ」 浩平「すいません」 声「まあ、そんなことはいいとして、依頼主は川名神社現神主、川名実濃吉」 浩平「そうですか・・・でも、なんでうちに依頼がきたんですか?それに、なぜ警護していることをきづかれてはいけないんですか?」 声「さあ、それはわからない。とりあえず、警護にいってくれ。依頼された理由もわかると思うから」 浩平はその言葉に疑問を思ったが、聞きはしなかった。浩平は外に出た。 浩平「まあ、とりあえずいってみるか」 詩子「そうよ、はやくいくわよ」 浩平「詩子、お前もか?」 詩子「そういうこと」 浩平「勘弁してくれよ〜っ」 詩子「なによーっ、わたしが邪魔だって言うの!」 茜「はやくいった方がいいですよ」 浩平「そうだった。よし、いくぞ!」 詩子「あっ!まちなさいよ」 浩平と詩子は川名神社に向かった・・・・・・。 後編に続く・・・。 @@@@@@@@@ う〜ん、長いぞ・・・・・。なぜだろう?予定では第一話よりも短かくするはずだったのに、前編、後編を合わせると一話より長いじゃないか・・・・・。なんか話を考えていると、どんどんネタがふくらんでいくんですよ。まあ、ある意味、ネタがつきないんでいいですけど。しかし、この話はキャラの呼び方に困る。特にみさき先輩なんか、どうすればいいのか。先輩っていうのは時代に合わないし・・・・。今後もいろいろでるからなぁ・・・・・。そういえば、今後と言えば歴史上の人物も出してみるつもりです。何はともあれ、予告と一言。 みさきに隠された秘密とは!八年前なにが起きたのか!はたして、浩平はみさきを守れるのか! 次回浩平犯科帳『夕日の記憶 後編』ご期待ください! 詩子「次回の主役はわたしっ!」 違います・・・・・・・・・。 感想(ある理由により新しい作品に対しての感想は書けません。すいません) 〜だよだよ星人さん BGM「雪のように白く」〜 うるうる〜、なんかすっげー切ないっすよー。なんで茜てこんな不幸なんだろう? 〜まてつやさん 南の想い+詩子の想い〜 南ネタはオリジナティがありましたね。CGすらないくせに主役をするとは。 詩子は親友を思う気持ちがでてましたね。内心あんなことをかんがえていたんですね。 〜ここにあるよ?さん みんなでキャンプ1〜 茜中心ですか?茜スペシャルウイークだったからなぁ・・・。 〜nabeさん 茜様御乱心〜 ラストの展開好きっす!反転した後の幸せですね。 〜よもすえさん こうへいさくら〜 なんかほのぼのして、いいですね。でもなんで浩平大王なんですか? 〜KOHさん 一緒に・・・〜 澪のパントマイムが見てえっ! 〜火消しの風さん 僕が描いた未来のシナリオNO6〜 ナナセジラか・・・欲しい!やはり暴れるんでしょうね。 〜藤井勇気さん ONE日本昔話『桃太郎』前編〜 長森は猫か、ぷにぷになところが0Kっすよ。 〜GOMIMUSIさん 迷いなれた道を歩こう〜 おもしろかったッス!でも最初の冒頭で誰になぐられたんですか?(七瀬っすか?) 〜天ノ月紘姫さん わっふるな午後(その3)〜 茜の誘いを断るとは・・・おそるべし浩平・・・・・・。