浩平旅行記98夏 後編 投稿者: 偽善者Z
洞窟の騒動の後、俺は西瓜割りに参加したり、長森や七瀬と泳いだりして一日を過ごした。そして旅館に戻り夕食を済ませて夜もふけたころ、住井達が昼間とってきた(密漁)魚介類を、誰かが調達してきた酒のつまみしてに食べていた。
住井「いやー、大変だったぜ!南はうつぼに噛まれるし、漁師に見つかって逃げるはめになるし・・・・」
そう言えば一人足りないような気がする・・・。
住井「よし、浩平!昨日の続きしようぜ!」
昨日のプロレスの続きをするらしい・・・、だが、昼間の騒動で俺は疲れていた。
浩平「悪い、俺ちょっと、風呂行って来る」
住井「なんだよ、付き合い悪いなぁ・・・・」
文句を言う住井は相手にせず、俺は少しふらつく足取りで風呂に向かった。
浩平「少し飲み過ぎたな・・・・」
風呂の脱衣所で浴衣を脱ぎながらぼやく。風呂時間帯のせいか誰も入ってない。ここの風呂は天然で露天風呂もある。俺はそっちに行くことにした。
浩平「くぅーーー!気持ちいいーーー!」
酒がはいってるせいか、俺はあたりに響く声で言った。
みさき「あれ?もしかして、浩平君?」
浩平「その声みさき先輩か?」
女風呂の方からみさき先輩の声が響いた。
浩平「先輩も露天風呂にはいってるのか?」
みさき「うん、こっちの方が気持ちいいからね」
浩平「先輩一人か?」
みさき「うん、雪ちゃんと一緒だったんだけど、雪ちゃんのぼせちゃって先にあがったんだ」
浩平「のぼせたって、どれくらいはいってたんだ?」
みさき「うーん、30分くらいかな?」
浩平「げっ・・・・・・」
30分・・・、よくはいっていられるな。食欲だけでなく、忍耐も尋常じゃないな・・・・。
浩平「と、ところで、先輩一人で戻れるのか?」
みさき「うーん、まだ、道を覚えてないからちょっと不安かな」
浩平「それなら、俺が部屋まで送るよ」
みさき「ありがとう。じゃあ、あがったらお風呂の前でまっててね」
浩平「わかった、じゃあ先にあがってるぜ」
みさき「わたしは、もう少しはいってるね」
まだ、はいるのか・・・・・・、そう思いつつ俺は風呂をあがった。
みさき先輩があがるのに、たっぷり30分かかった・・・、待ちくたびれた俺だったが、風呂上がりの先輩を見て目を見開いた。
みさき「おまたせー、あれ?浩平君どうしたの?」
浩平「き、綺麗だ・・・・・・」
みさき「もう・・・、何言ってるんだよ・・・・・」
俺は先輩の風呂上がりを見て、そう言わずにはいられなかった。なんといっても、色気が凄い・・・・・・しっとり濡れた黒髪・・・、そして、その黒髪がまとめられて見える白いうなじ・・・、それらがあわさることによって先輩の魅力が倍増していた。
みさき「ねえ、せっかくだから、外に出て海を見ようよ」
浩平「あ、ああ・・いいよ」
俺とみさき先輩は、海岸に向かった。
みさき「うーん、いい風」
外は少し風が吹いていたが、寒いほどではない。
浩平「おっ、月がでてる」
みさき「何点?」
浩平「74点」
みさき「厳しいね」
浩平「俺は辛口だからな」
空には三日月がかかっている。海辺で先輩とこんなおいしいシュチュエーションが起きるとは、旅行に来て正解だったな・・・。
みさき「あっ、そう言えば約束覚えてる?」
浩平「約束?・・・・ああ、夕日のことか」
みさき「うん、今日は何点?」
浩平「88点」
みさき「高得点だね」
浩平「水平線が見えたからな。先輩の方は?」
みさき「うーん、80点かな」
浩平「めずらしく厳しいな」
みさき「うーん、本当は100点満点だけど、浩平君がいなかったから・・・・・」
浩平「みさき先輩・・・・・・」
水面が月光に照らされきらめき、波の音が夜の闇に響く中、先輩の言葉は続く。
みさき「わたしね、旅行に来てひとつ考えたんだ。目が見えなくなっても、いいことってあるんだなぁって」
浩平「・・・」
みさき「はは、わたしって単純だからね。でもね、本当にそう思うんだ・・・」
先輩の顔には優しい微笑みが浮かんでいる。
みさき「風の気持ち良さを感じたり、雪ちゃんとかいろんな人に親切にしてもらったり・・・」
浩平「・・・」
みさき「何よりも、ある人の暖かさがわかるんだ・・・。その人の優しさが伝わってきて、わたしすごく幸せを感じるんだ・・・・・・・。その人には迷惑がかかってるけどね・・・」
浩平「先輩っ!!」
俺は先輩を愛しく思う気持ちが抑えられなかった。先輩の体を引き寄せ抱きしめる。
浩平「迷惑なわけない!俺だって先輩といれて幸せだ」
みさき「浩平君・・・・・・」
浩平「先輩、ごめんな・・・。今日ずっと一緒にいてられなくて・・・・・」
みさき「いいんだよ・・・。浩平君の自由を奪うわけにはいかないよ。それに、今こうして一緒にいてくれてるじゃない」
浩平「先輩・・・ありがとう・・・・・」
みさき「浩平君を信じるからね・・・・・・」
浩平「ああ・・・」
俺達はそのまま無言で抱き合った。しばらくして、冷たい風が俺達を通りすぎるようにふいた。
浩平「・・・湯冷めしないように、旅館に帰ろうか」
みさき「そうだね・・・」
俺は先輩から離れ、今度は先輩の手をとった。そして、寄り添うようにして旅館へと歩き出した・・・・・・・。

翌朝。

カシャアッ!
カーテンが開かれ眩しい日差しが飛び込んでくる。
長森「ほらぁ、おきなさいよーっ!」
浩平「ぐーっ・・・」
長森「はやく、起きてご飯食べてよーっ!」
浩平「ぐーっ・・・」
長森「帰りの電車に遅れちゃうよーっ!」
ぐーっ・・・って、電車に遅れるだと?
往井「じゃ、長森さん先に行ってるよ」
長森「うん、わかった」
ガバァッ!
長森「あっ、起きた。ほら浩平、はやく食べて帰りの準備しないと」
浩平「帰りの準備ってどういうことだ?」
長森「どういうことって、朝食を食べたら、もう帰るんだよ」
浩平「ぐあっ・・・、しらなかった」
長森「はあ・・・、説明聞いてなかったね・・・。いつまでいる気だったんだよ・・・」
長森はあきれたようにため息をつく。
長森「ほら、早く行こう」
浩平「うーっ・・・」
俺は渋々朝食に向かった。




朝食を食べ終え、帰りの準備を済ませて部屋に出ると、みさき先輩と会った。
浩平「おっ、みさき先輩。残念だよなぁ・・・今日で帰るなんて」
みさき「うん、残念だよね・・・」
浩平「せっかく、一緒にいられると思ったのになぁ・・・」
みさき「そうだね・・・」
浩平「でも、旅行が終わってもずっと一緒だからな」
みさき「うん!そうだね!」
みさき先輩は満面ん笑みをうかべた・・・・・・・。


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偽善者Zです。ふう・・・・、やっと終わりましたこの3部作。大変でした、短期間でしあげるのは。特に中編は徹夜で4時間、気がついたら朝でした。まあそのことはおいといて、中身についてまず一言、澪と椎名の出番が少ない・・・。ごめん!二人とも!そこまで手がまわらなかった!時間の設定はいい加減だし、中編はかなり強引でした。それと七瀬が八稚女を使う場面があるけど、通常のセリフを言ってるのは私の気まぐれです。すいません。あと、後編からシリアスに移ったのも強引でした。もっと修行します。
さて次回の作品はシリーズ物を予定しています。ネタは秘密です。