浩平旅行記98夏 前編 投稿者: 偽善者Z
カシャアッ!
カーテンの引かれる音。同時にまばゆい陽光が瞼の裏を刺す。
長森「ほらぁ、起きなさいよーっ!」
ガバァッ!
浩平「うーん・・・・・・・、もう少し寝させてくれぇー」
長森「何言ってるのよー、もう朝食できてるよー!」
?・・・なんかいつもとセリフが違う。
長森「ほら、住井君達も早く起きてー」
住井?・・・なんで俺の部屋に?・・・。そう思い辺りを見回すとそこ
は俺の部屋ではないことに気付いた。
住井「ふぁ・・・あっ、長森さん、おはよう」
長森「おはよう、朝食できてるから桐の間に集合だよ」
住井「そう、よし!お前等すぐにいくぞ!」
住井は同じ部屋に転がっている数人の男共に声をかけた。
長森「わたしは浩平と一緒にいくね。」
住井「ご苦労様・・・じゃぁ俺達は先にいってるから」
そう言って住井達は部屋を出ていった。
長森「ほらぁ!浩平も早く起きないと海にいけないよー」
海・・・・・・その言葉を聞いて俺はようやく思い出した。俺は今旅行
に来ている。「夏休みの思い出が欲しい」と言う長森のために俺が企画し
たものだ。企画といっても行き先と宿泊場所の条件を言って、後は全て
長森に任した。そして、今俺は長森の予約した旅館にいる。だが、この
旅行には一つの大きな誤算があった・・・。行き先は俺の希望通り海で
ある。旅館も安くて部屋も広い。だが、メンバーが多いのだ。「人数が多
い方が楽しい」という長森の一言の為に、俺が片っ端から声をかけたのだ。
そのため、部屋の数の都合上、男は一室に入れられ広いはずの部屋が修羅
場と化し、昨日は枕投げに始まりプロレスにいたった。
浩平「うー、昨日ブレンバスターに失敗して腰が痛ぇー」
長森「はぁー、どうりで浩平達の部屋がうるさかったんだ・・・」
浩平「それは、俺達の部屋を分けないからだ!」
長森「そんなの関係ないもん!高校生にもなってそんなことしてる浩平
が悪いんだよ!」
浩平「大体人数が多すぎるんだよ!」
長森「浩平があつめたんでしょー!」
浩平「なにぃ」
長森「なによぉ」
浩平「フーーーーーーッ!」
長森「ウーーーーーーッ!」
浩平「・・・って、こんなことしてる場合じゃねぇ!」
長森「そうだ!いそがないと!」
お互いに威嚇をやめ俺達は桐の間に急いだ。それにしても・・・旅行でも
こんなことしてる俺達って一体・・・・・。
七瀬「遅いわよ、二人とも。」
桐の間についた俺を七瀬の声が迎えた。
浩平「遅刻したわけじゃないだろ」
そういって、俺は七瀬の横に座った。
七瀬「どうして、わたしの隣に座るのよっ!」
浩平「ここしか、空いてないから」
七瀬「はぁ・・・どうして、旅行に来てまであんたの近くにいなきゃなら
いの・・・・・」
ぼやきながらご飯を口に運ぶ七瀬。それを横目で見ながら俺も朝食をとる
にした。膳を見ると旅館だけあって、いかにも和食という面々だ。まず、
紅鮭、小松菜のお浸し、白菜の漬物、人参やじゃが芋の煮物、そして、日
本人にはかかせない味噌汁。具は豆腐だ。シンプルながらこういった料理
に飢えているおれには嬉しい品々である。箸をすすめながら前方をみると
凄いものを見た。みさき先輩である。
みさき「おかわり!」
深山「みさき・・・あんたこれで10杯目よ・・・」
みさき「うーん、おかずが少ないからどうしてもおかわりしちゃうんだよ
ね」
そう言いながら呆れ顔のおばさんに茶碗を渡す先輩。おかずなしで焼のり
(おかわり自由)だけでご飯10杯を食べるのは、味が飽きてしまい、ま
ず、無理だ。
浩平「先輩・・・朝からすげーな」
深山「そうよ、みさき、あんた朝からギネスに挑戦するつもり?」
みさき「ひどいよー雪ちゃん、これでもいつもより控えてるんだよ」
浩平「ますます、すごいぞ。」
そんな先輩を見ながら俺は食事を終えた。そして、半数程すでに食べ終え
部屋に戻り人気のなくなった部屋に寝そべりながら今日の計画を立てた。
うーーーん、やはり海に来たからには泳ぐかな・・・。
長森「浩平。」
でも午前中は寝てようかな・・・。
長森「浩平!」
なにやら、俺を呼ぶ声がさっきから聞こえるが空耳だろう。
七瀬「ちょっと!折原!さっきから瑞佳がよんでるわよ!」
長森の声に混じって、七瀬の声もきこえてるが構わない、俺は今壮大な青
春プランを立てているのだ。
七瀬「人の話を聞けーーーぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
浩平「ぐぇっ!・・・」
堪忍袋の緒が切れたのか、七瀬はフライングエルボーをかけてきた。
七瀬「瑞佳が呼んでるわよ!」
そう言って七瀬は部屋を出ていった。
浩平「今のは強烈だった・・・・・。」
長森「浩平がふざけてるからだよ。ねぇ、ところで、今日はもちろん泳ぎ
にいくんでしょ?」
浩平「うーん、一応そのつもりだが部屋で寝てようとも思ってる」
長森「だめだよ、せっかく海にきたんだから泳ごうよ」
浩平「まあ、別にいいが・・・」
長森「じゃあ、着替えたら海の家の前で待っててね!」
浩平「ああ・・わかった」
何がそんなに嬉しいのか、笑顔で部屋に戻る長森を見ながら俺も部屋にもど
った。
  部屋には誰もいなかった。テーブルの上を見ると書き置きがあった。
浩平「何々・・・『魚貝類の捕獲に向かう 住井』
奴等は密漁に向かったようだ。口止め料に収穫をいただこう。俺はそんな
ことを考えながら着替えた。
  ・
  ・
  ・
浩平「おせーな・・・長森」
俺は先に海の家に着いたが長森は来ず10分程待たされていた。
浩平「しょうがない・・・。迎えにいくか」
俺は長森を迎えに砂浜を歩き出した。すると右腕をぐいぐい引かれた。
浩平「って、服着てないからいてーぞ!」
振り向くとそこには澪と椎名がいた。もちろん水着だが澪はスクール水着
で椎名は長森と買いにいったワンピース。だが、全く色気がない(一部に
はうけるだろうが)。こいつらの子供っぽさもさることながら、その所持
物だ。澪はスケッチブック、椎名は浮輪。こいつらにはピッタリだな。
浩平「澪・・・痛いから放してくれ・・・ところでなんか用か?」
澪『あのね』
『お城つくるの』
椎名「みゅー」
どうやらこいつらは泳がないらしい、約束があるのでやめておこう。格好悪い
  し。  
浩平「ごめんな、また今度な!」
椎名「みゅー・・・」
椎名の声は半音下がり、澪の表情はいかにもざんねんそうだが俺は立ち去
った。
二人と別れて歩いていると、みさき先輩達がシートに寝そべっているの見
つけた。
浩平「よう、先輩達何してんだ?」
みさき「あっ、浩平君。えーとねぇ、雪ちゃんと日光浴ってところかな」
浩平「じゃあ、今日は泳がないんだ。」
みさき「うーん、明日も泳げないとおもうよ。危ないから・・・」
そうか・・・やっぱりみさき先輩は泳げないのか。
深山「感謝しなさいよみさき、つきあってあげてんだから」
  俺も一緒にいようかな、と思っていると長森の姿が見えた。
みさき「もちろん感謝してるよー。あ、浩平くん、長森さんが来たよ。それと、
今日の夕日は何点か教えてね」
浩平「ああ、そのかわり今日の潮風は何点か教えてくれよ」
みさき「うん、楽しみにしてるよ」
浩平「じゃあ、また後で・・・あ、いい忘れる所だった。水着似合ってる
ぜ。」
みさき「・・ありがとう・・・」
深山「・・・わたしは?」
俺は深山先輩の言葉を聞こえないふりをしてその場を去った。
長森「浩平ーーー!ごめん!」
浩平「おせーぞ!何やっ・・・・・!」
こちらに走ってくる長森に罵声を浴びせようとしたができなかった・・・・・。
長森「ご、ごめん・・・水着探すのに時間がかかって・・・あれ?どうし
たの?」
浩平「い、いや・・・」
俺は久しぶりに見る長森の水着姿に見とれた。学校の授業では男女別々のた
め、俺が長森の水着姿を見るのは小学校以来だ。
長森「ねえ、似合ってるかな?これ。」
うっ・・・、聞かれたくないことを!・・・、正直に言えば似合っている。し
かし、長年の付き合いである長森の成長ぶり(特に胸)を見て、俺は少し動
揺していた。誉めるのも癪だし・・・。
浩平「1、100点かな・・・」
長森「ほんと!嬉しいな!」
浩平「1000点満点だけどな」
長森「もー、なによそれー、これ浩平が似合うていったから買ったんだよ!」
浩平「あれ?そうだったか?」
長森「はあ・・・やっぱり適当だったんだね・・・」
七瀬「ちょっと瑞香、こんなばか相手にしてないで泳ぐわよ」
浩平「お!七瀬はビキニか・・・似合ってるぞ!」
七瀬「そ、そう(嬉しそうに)」
浩平「おう、まさに馬子にも衣装だな」
七瀬「なんですってっ!」
詩子「楽しそうね3人とも、ねえ仲間にいれてよ」
浩平「なんで、お前がいるんだ!」
詩子「茜に誘われたのよ。ねえ、向こうにさあ洞窟があるんだけど、行って
みない?」
浩平「洞窟・・・単純に泳ぐよりもおもしろいかも・・・よし!行くぞ、七瀬!」
七瀬「なんで、わたしが!」
長森「浩平が行くなら、わたしも行くけど・・・」
七瀬「はあ・・・、瑞佳も行くのね・・・じゃあ、わたしもいってあげるわよ」
浩平「茜は?」
茜「嫌です」
浩平「・・・」
詩子「ほら、行くわよ!」
こうして、俺たち4人は探検にむかうことになった・・・・・・。