盲目少女みさきちゃん3 激闘篇(3/3) 投稿者: ぎぃ
前回のあらすじ
人造人間るみちゃんに続き、召喚士まゆちゃんをも打ち破った(?)
盲目少女みさきちゃん、しかし新たな敵がその前に立ちふさがる!
果たして彼女は無事に家に帰れるのか?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「七瀬選手、椎名選手に激闘の末…」
「わたし、なんにもしてないよ」
「…こほん、激闘の末勝利を収めた川名選手の次の対戦相手は、
  里村&上月ペアだぁ!!」
無言でたたずむ茜の脇で、澪が
『がんばるの』
と書かれたスケッチブックを掲げていた。
「おい、いいのか2対1だぞ」
「細かいことは気にしないっ! レディー、Go!!」
解説者の立場を忘れかけている浩平を無視して、住井はゴングを鳴らした。
「良く考えたら何で俺は解説者なんかやってるんだ?」
「おおっとぉ、上月選手、なにをはじめたのかぁ?」
疑問はさて置き、浩平は試合に注目することにした。
見ると、澪がせっせと茜のおさげ髪を解いていた。右、そして左。
「これはどういう事なんでしょう、折原さん」
「そうですねー、また編み直すってわけではないでしょうねぇ・・・」
また解説者に戻っているノリのいい浩平だった。
一方澪によって解かれた茜の髪は、うねうねと生き物のようにうねり始め、
そして激流のごとくみさきに襲い掛かった。
「先輩、よけろ!!」
「え?きゃあ! な、何?」
なすすべもなく、みさきは触手のような茜の髪に絡み取られてしまった。
「こ、これはすごい、里村選手、謎の髪技で川名選手の動きを封じましたぁっ!」
「…それだけではありません」
「!くぅっ」
茜の髪がみさきの体を締め付ける。
「き、きつい・・・」
「もがけばもがくほどきつく食い込んで行きます。
  もはや逃れるすべはありませんよ」
『そうなの』
みさきの顔に苦悶の表情が浮かぶ。
「はうぅうぅうぅぅぅん」
「縛られて悶えるみさき先輩も色っぽいなー
  ・・・じゃねーよ!!
  このままじゃ先輩が…、ちくしょう、どうすればいいんだ!」
思わず天を仰いだ浩平の目に映ったもの、それは
「月・・・月だ」
その月に浩平は祈った。
「先輩に、力を・・・」
その祈りに応えてか、月から一条の光のようなものがみさきに降り注いだ。
周囲の空気がちりちりと音を立て、そしてみさきの全身が淡い光に包まれる。
その幻想的とも言える光景に皆が声を失って見入っていた。
「これは、月からのマイクロウェーブ?  ま、まさか」
「ふっふっふ、その通りですよ、住井さん」
みさきの体にあふれる光はやがて彼女の2つの瞳に集約して行き、
「いけー!みさき先輩!!!!サテライトキャノンだ!!!!!」」
光とエネルギーの奔流となって放出された。その光条は
みさきを拘束していた髪を一瞬にして焼き切り、さらに茜と澪に直撃し爆発した。
その光に誰もが目を眩まされた中で、ちゃっかりいつのまにかサングラスを
かけていた住井が実況を再開した。
「すごい、超絶にすごい、川名選手のサテライトキャノン!
  これでは里村&上月ペアもひとたまりも無いでしょう。
  おや?・・・い、いや、立っています。二人ともその場に立っています!」
「なにィ!!」
やっと視力が回復した浩平が見てみると、たしかに茜も澪も倒れていなかった。
茜の前で、澪がスケッチブックを前に突き出すように構え、
そこから後ろだけが光とエネルギーの爆発から免れていた。
「上月選手、スケッチブックでサテライトキャノンを防いでいたぁ!!
  名づけてS.B.フィールドだぁ!」
澪は、そのスケッチブックを開くとサインペンで何事か書き込んだ。
『ばたんきゅー、なの』
その言葉の通りばたんきゅーしてしまった。
よく見るとスケッチブックも澪自身も黒焦げでズタボロだった。
「上月選手、身を呈して里村選手を守りましたぁ!くぅー、感動的だぁ!」
「お前が言うとあんまり感動的に聞こえないんだが」
「さて、無傷の里村選手はどんな反撃に出るのか?」
しかし、茜はその場に立ったまま動かなかった。彼女は無傷ではなかったのだ。
「…髪が」
サテライトキャノンによって焼き切られた茜の髪は焦げ縮れていた。
茜の瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「おっと、里村選手、女の命をやられた精神的ダメージは大きかったようです。
  完全に戦意を喪失しています」
「後味の悪い勝利でしたね」
再びどこからともなく現れた瑞佳が茜を慰める。
「大丈夫だよ里村さん。ここの所で切っちゃってもまだ私と同じくらいの長さだし、
  里村さんかわいいからどんな髪型でも似合うよ。ね?
  これから夏なんだし、イメチェンするのも悪くないよ。
  わたしいい美容院知ってるから、今度いっしょに行こ?」
茜をなだめつつ、ばたんきゅーした澪を抱えて瑞佳は去っていった。
浩平は呟いた。
「ナイスフォローだ。長森」
そして解説者席から立ち上がると、住井に話し掛けた。
「今度こそ終わりだろうな」
住井はにやりと笑うと、
「いや、まだひとりエントリー選手が残っている」
そもそもいつから武闘会もどきになったんだという疑問はおいといて、
「誰なんだ、それは?」
「私だよ、浩平」
茜を送っていったはずの瑞佳がそこにいた。
「何でお前まで」
「浩平には内緒だもん」
「さあ、最後にして最強の挑戦者、長森選手が登場だあ!」
どうやら否応無しに試合は始まるようだ。
「まずいぞ、サテライトキャノンを撃ったみさき先輩は
  かなり体力を消耗しているはずだ」
そのとおりであった。
「おなかすいたよー、ご飯食べたいー」
夕食も食べてないみさきはかなり疲れているようだ。
「そうだ!
  よし、長森!この勝負、「大食い競争」で決着をつけるぞ!!」
「ええーっ!何でそうなるの??」
「ふっ、もう決まったことだ。従うしかないのだ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「まずは大盛りカツカレー5杯完食、制限時間は30分だぁ!!」
「わーい(^o^)」
「ふぇーん(;_;)」
こうして、最強最後の刺客、長森も敗れ去った。

みさきと浩平、これからも二人の前には数々の困難が待ち構えているだろう。
しかし、お互いを想い、信じあう心があればどんなものにも立ち向かって行ける。
そう思う二人の心は一つであった。
がんばれ、浩平。たたかえ!盲目少女みさきちゃん!!
                                                         (おわり)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
すいません、やりたかったんですサテライトキャノン。
ところで、このちょーもない(超しょーもないの略)お話を書くために
ONEをやり直したんですけど、実はみさき先輩も語尾に「だよ」を
つけることが多いって事に気づきました。
瑞佳と二人揃って「だよだよシスターズ」なんてのもいいかもしれません。
「とりあえず嫌だって言っておくよ」
「私も嫌だもん」

ではみなさま、ここまで読んでいただきありがとうございました。