Our way is FAR to GO/0(予告編)  投稿者:犬二号


まえがき
これは、『月』の法人宗団FARGO創設者にして悪魔の反逆者、声の主の物語、
「の、予告」です。
資料は株式会社コンパスの「タクティクス設定資料集」のみです。大丈夫なのかしら。
では、「Our way is FAR to GO」予告編、スタート!

***

その部屋には、二つの影があった。

(…声の主よ…)

小さな月影と、人の姿を持つ火影。

(…あなたの考えを…お聞かせ願いたい)

照明も窓もない密室だったが、そこは決して完全な闇ではなかった。

『…何かな…』

月が。
月の形をした何かが。
血の霧に歪められた、禍々しい生命の赤光を放っていた。

(…あなたは、いつまでこんな事を続けるおつもりですか?)

火影には肉体がなかった。そこだけ、膜一枚隔てて、空気の揺らぎが見て取れた。
見る者が見れば、恐らくそれは「幽霊」に見えた事だろう。

『…』

部屋の中空に浮かんでいる、血の色に輝く小さな月。大きさの点では人よりわずかに
勝るといった所か。もちろん、本物の月にははるか及ばない。それでも、この部屋に
入る事を許された者全てに、畏怖の念を抱かせるには十分であろう。
法人宗団FARGO創設者にして教主、『声の主』である。

(あなたの…いや、FARGOの行く道は、未だ遠いのですか?)

『…そうだ』

その声は、耳で聞き取れるものではなかった。魂そのものに、直接響いてくるような、
深く、そして穏やかな声であった。

(…いつまで…いや、どこまでやれば気が済むのですか?)

限りなく黒に近い紅色の影が、同じように空気を媒介としない声を放つ。その度に、
影の中にプールの底のような光の揺らめきが映る。

(…お答え下さい。それとも…答えられないのですか?)

『貴様は知っている…答える必要はない』

(…「同胞」を、一人残らず地上から抹殺するため…ですか?)

『…それで…合っている』

しかし、影の問はそこで終わらなかった。

(それはあなたの最優先の目的ではある。しかし、それが全てではないのでしょう?)

『…』

月の輝きが増す。表情のない、表面の荒い球体に、じわりと、何らかの感情の炎が
にじみ出してくる。

『そこから先は…既に、貴様の与り知る所ではない…』

(…今はまだ、語る気はないと?)

『…今はまだ、ではない…貴様に対しては、未来永劫、語るつもりはない…そう言って
いる』

その、壁や床や天井に何の外装も施されていない、完全な直方体の密室が、内側から、
歪み、ひしゃげていく。見る者がいれば、確実にそのような幻覚を見たであろう。
それほどの緊迫が走っていた。

ややあって、影が先に沈黙を破った。

(まあ、いいでしょう。しかし、私には、あなたのやっている事は邪悪な愚行にしか
映らない。たとえ、真の目的が何であっても、です)

『…』

月は、影の言葉を黙殺した。

沈黙を破ったのは、今度は月の方だった。

『改めてだが…一つだけ、答えよう』

(…?)

『既に、今はまだ、そして、もしかすると未来永劫…』

それが、月にとって精一杯の妥協であった。

『我等の行く道は遠い。それが答えだ』

***

      連載SS「Our way is FAR to GO」
      第0話「我等の行く道は遠い」

***

…そう、我等の行く道は遠い。

………
……
…

***

あとがき

まず、二つ謝っておかねばならない事があります。

「FARGO」、読み切りではなく、連載になりました。
余りにも彼について語るべき事が多いため、まとめきれない、というのが理由です。
少年「まとめる能力がないって事だね」
犬「…む」

そして、今回は予告編に留めざるを得ないという事態になりました。雀バル雀さまの
SS神社にお参りして、天の恵みによりどうにか書く体力が授かったので、それを全部
使って書こうとしたら、ちょうどここまで書いてギブアップしてしまいました。
区切りもいいので、書けた分だけ予告編という形で発表してしまおうかなーと思い、
こうして投稿した次第です。
巡回員「お前、絶対にプロに向いてないと思うぞ。スタミナなさ過ぎ」
犬「…うぐう」

と、いう訳で、「Our way is FAR to GO」を、秋からの新連載にしようと思います。
「怠惰」と違って、明るい話の出てこない、重ーいシリアス話になると思います。
シリアス病が確実に悪化するのですが、そうなりそうな時は「ネコ」や「小犬」を
投稿する事になります。
結果、秋のラインナップは、「FARGO」「ネコ」「小犬」の三つに大決定。

あと、「怠惰」10上中下ですが、変身動物ポン太さま、いばいばさま(二回も感想を
書いて下さったのには大感謝です)、壱弥栖さま、矢田洋さま、感想を下さって感謝
します。そして、「小犬」10/11ですが、、矢田洋さま(F先生の正体、ご存じ
だったとは驚きです)、北一色さま、同じく感謝します。

では、マジメ予告。
***

語られる声の主の過去。

声の主を襲う原因不明の奇病。
死への恐怖。
異能力の獲得。
そして、同胞との決別。

一体彼に何が起こったのか?
そして、影の正体は明かされるのか?

謎が謎を呼ぶ展開。次回、「FARGO」第1話、「世界は悪意に満ちている」!
乞うご期待!

***

では、今日はこの辺で。

最後に久しぶりにクイズ!

Q1・次は一体何が投稿されるでしょう?
A1・「FARGO」
A2・「ネコ」
A3・「小犬」

正解は…俺にも分かんねえや(笑)
二人「笑う所じゃないだろう、この犬」
二人、犬の脳天に踵落しを極める。
犬「…ぐはっ…ネロが、天使達が、ルーベンスの絵が見える…」
犬、今度こそ天国へ旅立つ。