A棟巡回員の怠惰なる日常・10(下)  投稿者:犬二号


上からの続きです。正真正銘のラスト最終回!

***

A棟巡回員の怠惰なる日常・10(下)

俺が解放されたのは、日が西に半ば入りつつある黄昏時の事だった。
「じゃ、さようなら、葉子さん。私達、もうそろそろ帰りますね」
「さようなら、晴香さん。勘定は、私が払いますから、ご心配なく」
赤ん坊を含め、四人が席を立った。
「それにしても、巡回員さんも可哀想ですよ、緊張で顔が紫で汗びっしょりでしたよ」
「いいのよあんな奴。さ、行きましょ。未悠も帰りたがってるし。ね、未悠」
「うあ?うん、きゃはは」
「それにしても、可愛いわねー、未悠ちゃん」
奴等が出ていった後、俺は大きく一つ、ため息を吐いた。
「疲れましたか?」
「大分な…」
すっかり冷たくなったエスプレッソを全部飲み干すと、俺はハンカチで顔の汗を
拭った。
「…まあ、一ついい経験をさせてもらったよ…ふう」
「そうですか?それなら、呼び止めた甲斐がありました」
「…って、それが目的だったのだよ」
「いえ、単に、加害者側と被害者側を同席させたらどうなるか、見てみたかった
  だけです」
「あー、そういう事か…まあ、感謝しとくよ。当分の間は、もうやりたくないがな」
しばらく、息をするのも辛かったが、それでも一分後にはどうにか回復していた。
「…怒ってるか?」
「何がですか?」
「覗き見の件だよ。あれは本当に反省してるよ」
「ああ、その事はもういいです。もう、やらないでしょう?」
「あ、ああ、そりゃもちろん」
「だから、いいです」
鹿沼はそう言うと、にっこり微笑んだ。
許された。
と、胃袋が一気に柔らかくなっていくのが分かった。
「有難うよ」
「当たり前の事をしたまでです」
「いや、結構気にしてたんだ、個人的に」
「そうでしたか…でも、いいですよ、もう」
そう言うと、今度は鹿沼の方が緊張した顔になった。
「当たり前と言えば…あの…」
「ん?」
「これも…当たり前の事なんでしょうが…その…」
「何だ何だ、どうした」
よっぽど言い難い何かがある。
何だ?
(私…自首した方がいいのでしょうか…)
(…自首…だって?)
テレパシーを使っている。口にするとまずい事のようだ。
それにしても、自首?
一体、何の話だというのだ。

(私は…C棟にいた頃…母を…殺しました…)

(…!)
その話は、ファーゴにいた頃耳にした事がある。有り得る話だがと思って、半ば
聞き流していた噂だが…やはり本当だったのか。
(知ってるよ。クラスAになりたがっていたお前のお袋さんが、一番手っ取り早い
  方法として娘であるお前を殺そうとした。それで、もがいているうちに、逆に
  お袋さんを殺してしまったって話だな…悪い。デリカシーないよな、確かに)
(いいんです、要するにそういう話です。母殺しは、当たり前ですが、重罪です。
  もちろん…裁きを受けるべきなんでしょうね)
相変わらず涼やかだが、凜とした瞳で、彼女は俺にそう問うていた。
(…それは…)
俺は戸惑った。まさか、こんな事を俺が彼女に問われるなんて、想像してなかった。
(…少し、考えさせろ…)
やっとそれだけ答えると、俺はハーブティーを追加注文すると、考え込んだ。
(そうなんだ…こいつもまた、罪人だったんだ)
罪を背負い、罪におののき、罪を償いたい、許されたい、乗り越えたいと強く願う、
そういう奴なんだ、こいつは。
罪を抱いた日常が、いかに苦渋に満ちたものか、俺には少し、分かる。罪悪感の強い
彼女にとっては、なおさら苦渋に満ちた人生である事だろう。
天沢達に、よっぽど相談したかっただろう。ひょっとして、今日もその事を相談する
つもりで皆を呼んだのかも知れない。
それでも、彼女は黙っていた。アンフェアだからだ。友達の天沢達は止めるに決って
いる。友達の天沢達じゃない、単なる知人の俺に、公平な判断を下して欲しい。つまり
そういう事なんだろう。
こいつの神秘的な佇まいの正体が、少しだけ見えたような気がした。その上品さだけを
問題にしてはいけなかったのだ。何よりその、自分の罪に対する姿勢の真面目さ、
ひたむきさにこそ、その核心があったのだ。
(母殺しか…)
正直、想像もつかない。
覗き見や銃の所持だけで苦しんでいた俺にとって、彼女の苦しみはいかばかりか、
到底及びもつかなかった。
その事が、俺の判断力を鈍らせる。
それに…
(やっぱり、個人的な事もあるな…)
俺は、やっぱりこいつの事が嫌いではないのだ。
こいつの、これ以上の苦しみを見たいとはあまり思わないのだ。
かつて、悪魔のガキがAー12、天沢郁未に抱いていた感情を思い出した。
恋と呼ぶには、あまりに動機が打算に満ちた恋。
俺の今の気持ちも…恋と呼ぶには、動機があまりにも劣情に満ちている。自分の
気持ちを追求すると、やはり彼女の着替えシーンとかを覗き見していた事が全ての
始まりのような気がしてきてならない。
俺の判断力が鈍り、乱れに乱れていくのが分かる。
(悩むな…結構、これは…)
本当に彼女の事を思うなら、刑務所でみっちりイビられ通しで働かされてみるのが
正しい、それが償いやら、ひいては社会全体や死んだお袋さんからの許しや、自力での
罪の克服につながるという、正しいが愚直な魂の声が聞こえてくる。
一方で、彼女がシャバにいたまま罪を償える方法を考えていくべくではないかという、
甘っちょろい上に何も考えてないが、やけに魅力的な声も聞こえてきてもいる。
(大体、懲役どころか、死刑や無期関連になったら嫌だしなあ)
人を見殺しにしたり、地獄に送ったりするのは、もうそろそろ止めると牢の中で誓った
ではないか。
(…そう…だな)
俺の事はあくまで俺の事。俺は、ファーゴでの惨劇を見て見ぬふりしていたのが
辛かったから懲役一年を甘んじて受けた訳だが、それをさっきの天沢に語るつもりは
なかった。天沢は、他人を見殺しに出来ないという面では俺を先んじていた上に
はるかに行動的だったし、救えない奴に対する済まなさを、一生魂の支柱に組み込んで
生きていくだけの強さがある。

あいつはかつて、俺より人間的に上だった。それが、加害者がどうの、憎悪がこうのと
いう、並の人間が取るような態度をとったから腹が立ったのだ。麻雀で言えば、四暗刻
テンパイで役満が狙える奴が、ロンで和了って格落ちの対々三暗刻の満貫で上がって
いくような、そんな感じである。確かに得点上の実利はちゃんと確保しているには
違いないが、もっと上狙ってみろよって気分だ。麻雀が分からない奴にはさっぱり
訳が分からないだろうが、要するに「そこそこで安定してしまった」という事だ。
そんなあいつの今の態度が、どこか気に食わないのだ(これは巳間の妹にも言える)。

まあ、あれはあれで、認めねばならない。「そこそこで安定してしまった」奴等の
おかげで、俺みたいな跳ねっ返りの若僧が無茶出来るのだ。

そういう意味で、名倉は偉かった。ちゃんと四暗刻、役満を狙ってる。
そして、鹿沼は…気が遠くなるくらいのずっと昔から、四暗刻の上に字一色と
大四喜を絡めてトリプル役満を狙い、静かに、しかし確実に和了に近づいている。
俺は、彼女が贖罪という牌を引き、最後に「自らで自らを許す」というツモ和了の
瞬間を、是非この目で見たいのだ。

「…鹿沼」
「はい?」
「お前の親父さんは?」
「…ずっと昔に再婚して、新しい家庭を築いていました、一度、挨拶したきりで、後は
  私一人で暮していますが」
「…そうか」
俺は、ハーブティーの香りを胸一杯に吸い込むと、決断した。
「決まりだ。お前、シャバにいろ」
「えっ?」
「ん」
俺は自分の胸を軽く叩いた。
(どうして…ですか?)
俺のポーズの意図する所に気付いて、彼女はテレパシーを使ってそう訊いてきた。
(社会全体に貢献する何かをやるのが償いってもんだ。お前、死刑になったって、
  何にもならんのだぞ。そこら辺分かってるのか)
(しかし…私は…)
(お前は罪を償いたいのか、それとも罪を抱いたまま罰だけ食らって、それでよしと
  するのか?)
(それは…償いたいですけど…)
(じゃあ、働くんだな。それが、本当の意味で真っ当な罪の償いだと思うぜ)
(…それと、お前、自分で自分を許せないって気分が、どこかあるだろ)
(…あります。今まで、母を殺してから、ずっとその事ばかり考えてました)
(それは…)
俺は、ハーブティーを半分ぐっと嚥下した。
俺は、久しぶりに、言った事を後で激しく恥ずかしく思うだろうクサい台詞を吐こうと
している。
「…あー…」
胃がカーッと熱くなってくる。
言うんだ。さあ。

「お前が自分を許せなくても…俺がお前を許してやる」

「え?」
鹿沼の目が点になっている。
(…あーあ…)
言っちまった。鹿沼にとっても俺にとっても、クリティカルヒットな言葉を。

鹿沼はしばらく逡巡した後、全く予想外の反応を示した。
「お…おい、鹿沼?」
「…どうして…そんな事…あなたが…出来るんですか?」
目から、ぽろぽろと大粒の涙をこぼしながら、かすれた声でそう呟き出したので、
俺はえらく困惑した。
「え…なぜって、その…」
いかん。効き過ぎた。
「だって…お前は俺を許してくれたじゃないか。出来る出来ないの問題じゃなくて、
  俺はお前を許さない訳にはいかないだろ…」
と、鹿沼の体に大きな痙攣が走った。俺はますます混乱した。下手な事言って、
こいつの魂をさらにメチャクチャに揺さぶっているのではないだろうか。
「お、おい、鹿沼?」
「外…出ませんか」
そう言うと、鹿沼はすっくと立ち上がって、勘定を払って出ていってしまった。
あまりの急展開に慌てながら、俺は残りのハーブティーを飲み干すと、彼女の後を
追った。

「鹿沼…?」
鹿沼は、外で、俺に背を向けて立っていた。
「鹿沼、泣くな…な?」
女に泣かれるのには慣れてない。
「…私…」
彼女に近づいた俺に対して、彼女のとった行為は、俺の予想をまたしても越えた。
「…嬉しいです」
「…何ぃ…?」
彼女は、俺を強く抱きしめたのだ。
「か、鹿沼、おい、ちょっと待て、一体、どうしたんだ、おいってば」
すっかり慌てた俺に、彼女はもう泣き止んだ声で言った。
「…とっても…気が楽になりました。やっぱり、私…誰かに許して欲しかったのかも
  知れません…」
「…」
「郁未さん達なら、絶対に私を許すだろうと思ってました。でも、それはあまり
  フェアな方法とは思えませんでした。だから」
「だから、俺だったんだな。俺なら、許すか許さないか、五分五分って訳か」
「それでも…許されたんです、私は…」
「…」
「有難う…本当に有難うございます…」
「…鹿沼」
俺は鹿沼を抱き返した。
そして、一瞬、ほんの一瞬だけ、不謹慎にも彼女との出会いを俺に与えてくれた
ファーゴに感謝した。
そして、ファーゴが潰れた事に対しても、神に…ファーゴ教主なんかではなく、
本物の神に対して感謝した。

これで、彼女はもう本当に大丈夫だ。
平和な日常を、送れる。
怠惰な日常ではない、本物の揺るぎない平和な日常を。

俺も、今から築いていこう。俺の人生を、納得のいくまで。

***

今日もまた当たり前のように朝が来た。

そして、忙しい一日が始まる。
ファーゴが潰れてから、怠惰になってる暇もない。たまに、当時の事を思い出す。
そして、当時の怠惰な日常を送っていた頃を懐かしんでみる。
だが、誰が帰りたいなんて思ってやるものか。

(…起きなさい…)
(…頼む、あとせめて十分、いや五分…)
(…駄目です)
「ぐわっ!?」
体が宙に浮くと、パジャマが不可視の力によって剥ぎ取られ、無理やり着替え
させられる。
「今日の朝食は、あなたですよ。そろそろ、お腹が空きました」
「わー、分かった!下ろしてくれ!心臓に来るんだ、この起こし方は!」
「…分かりました」
ベルトがギュッと終った所で、俺は地面にふわりと着陸した。
「うはー、心臓が…」
「大丈夫ですか?」
「お前な、昨日寝かさなかったくせに、そういう事言うか?」
「そう怒らないで下さい」
「…ぬう」
俺は、月に数回、鹿沼の家に通っている。あれ以来、何となく俺と鹿沼は親しくなり、
「もういい加減大人なんだから」イベントを一通り過ごしてしまっていたりする。
ただ、いつもの仕事が忙しくてそんな甘い生活をそうそういつも味わってる暇がない。
「甘い生活送ってるよなあ」と一番強く思うのは、やはり彼女の家に泊まりに行った
夜なのだが、それで睡眠時間三時間になるまで燃えてるせいか、朝が辛い。
(…こいつも同じだろうに、どうしてこんな元気なんだ?)
鹿沼の血色のいい顔を見てると、非常に複雑な気持ちになってくる。
「今日のご飯のリクエストはー?」
「卵焼きをお願いします。ファーゴ風の、例の胡麻油使ったのを」
「ラジャー」

まあ、こういう平和な日常を、しかも二人で送れるというのも、やっぱりいいもんだ。
神に感謝、である。

「さーて、今日も一日、がんばるぞー!」
俺は、チェックのエプロンを羽織ると、台所へ乗り込んだ。

(終)

***

あとがきと、個人的な諸々

…という訳で、いかがでしたか、<A棟巡回員の怠惰なる日常>は?
お楽しみ頂ければ、幸いこの上なしです。
巡回員「それにしても、ハッピーエンドでよかったよ」
犬「そうか?やっぱり、鹿沼葉子とラブラブってのがよかったか?」
巡回員「…感謝しとくぜ、犬」
犬「どういたしまして」
少年「とりあえず、完結おめでとう」
犬「え?…うわああっ!?お前、死んだはずじゃなかったのか!?」
巡回員「塩だ!とりあえず塩まいとけっ!」
塩を浴びても涼しい顔の少年。
犬「ひえっ、コ、コイツ不死鳥のごとく…」
少年「はっはっは、馬鹿だなあ、あっち(本編)とこっち(まえがき・あとがきなど)
      じゃあ、世界が異なっているって設定を作ったのは、犬本人じゃないか」
犬「分かってるよ、冗談さ。それにしても、本ッ当に長かったわな」
巡回員「これで、足掛け半年だっけか?」
犬「おうよ。とにかく、めっちゃ疲れたわな。何かと思う所もあったけど、とにかく、
    今は、一休みしたい気分だよ。ひたすら寝潰れて、それで24時間過ごすの。
    明日は土日だから、ぐっすり眠れるな」

少年「ところでさ、犬、君は何がやりたかったんだい?」
犬「端的に言うのは難しいよ」
少年「…それ、僕の台詞じゃないか」
犬「そうだっけ?まあ、大まかな事を言おう。人生を納得行くように過ごすには
    どうするべきかって事を考えていたのさ」
少年「それで?」
犬「ファーゴは、ほら、人の道に真っ向から喧嘩売ってるような非人道的な世界だった
    だろう?人の生き様が人生なら、人が人である事を止めさせられているファーゴで
    生きている奴等は、まともな人生送ってない可能性が大だ。それと、シャバにいる
    人生を結構豊かに生きている奴等(そうそういる訳じゃないが)の違いをな、比較
    してみると何か分かるんじゃないかと思ったのさ、最初の頃は」
少年「最初は?途中で考え直したの?」
犬「ていうか、新たな結論が出た。『君子危うきに近寄らず』というのが、最初の
    結論だったんだ。あいつらはファーゴのような、人生を踏み外すような罠に
    引っ掛かってないからちゃんとした人生を送ってられるんだと思ったんだ」
少年「それは…それで正しいんじゃない?」
犬「それじゃ罠に引っ掛かった奴は救われねえだろうがよ。そっちの方はどうするか、
    考えてたのさ。それで、至った答えが…」
巡回員「『世界は悪意に満ちている。悪意を制した者だけが、真に勝利に鍵を得る』」
犬「その通りだ。運命は自分の手で掴め。ただ、世界はそんなに甘くない。甘ったれた
    ガキを、この世界は生け贄、搾取対象として必要としている。そんなのが嫌なら、
    抜け出すしかない。世界の色々な法則を我が物とすれば、逆にそれを逆手に取って
    生け贄から抜け出す事が出来るのさ。いじめられっ子でも、見返してやるために
    体を鍛えるのと、そのままズルズルいじめられていくのとではかなり展開が
    違うぞ。そういう事だ。『君子危うきに近寄らず』は、その『世界の法則を
    我が物にすれば、生け贄から脱出出来る』という結論の一部でしかなかった」
巡回員「ああ。俺はファーゴを認めていないが、あそこで得るものが沢山あったという
        のも事実だ。『世界を貪り尽くせ』と、お前は言ったんだよな」
犬「それを、お前に課した。その結果はどうだ?」
巡回員「俺は俺の人生に納得してるよ。そういう話だったんだな、これは」
犬「そういう事。しかし、マジで疲れたよ。大学一年生が語るべき内容じゃないしな」
少年「とにかく、書き通したんだから、よく頑張ったと思うよ、僕は」
犬「…台詞の流用じゃねーか、お前こそ」

犬「さて…処女作である<怠惰>が、こうして完結を迎える事が出来たのは、ひとえに
    周りの皆様方のご声援があったからだと理解しております。皆様方、今まで
    どうもありがとうございました。これからも、一層の精進の上、SSの投稿に
    励みたいと思います。そして、『月』元制作部及び営業部の皆様に、感謝の言葉を
    捧げるものであります。礼ッ!」
三人、大阪(多分)に向かって敬礼。

少年「あ、そうそう、<Our way is FAR to GO>は?」
犬「ああ、そうだった。今のうちに予告だ」

***

嘘の予告「Our way is FAR to GO」

BGM「ラ○ジング/アームドポリスバトライ○ー/External Vias」

西暦2014年、日本の某山を丸ごと所有するFARGO重工が数多くの犯罪に関与
しているとの情報を受け、警視庁は天沢郁未・名倉由依・巳間晴香の三人からなる
超能力戦闘部隊「ゼロポリス・超自然的兵器チーム」を設立、出動させる。
長き戦闘の末、三人はFARGO社長室にたどり着いたのだが…広大なる社長室に
いたのは、一匹の巨大なハムスターだけであった。
「…まさか…こいつが社長!?」
「冗談でしょう!?いくら何でも、ハムスターってサイズじゃないですよお!?」
「こらこらっ!そっちを突っ込むんじゃないっ!アレが社長って事に驚きなさいっ!」
逃げていくハムスター。追う三人。そして、三人はいつしか最終防衛ラインに到達して
いた。

BGM「Let Ass Kick Together!」

並ぶ砲台。その中央に、あのハムスターはいた。しかし、そのままハムスターは砲台の
中央に潜り込んでしまう。
「アイツ、どこへ…?」
「とりあえず、ビーム砲を全部壊すのが先ですよお!」
「ええい!しつっこい復活砲台ねっ!」
三人の奮戦により、最終防衛ラインは突破された。…しかし!

BGM「Drag Ster」

その瞬間、ビルの倒壊が始まった。
「自爆っ!?」
「…違います!見て下さい、アレ! 」
「…な…何なの、アレは…」
ビルの地下から、ビルそのものを突き崩しながら、何か巨大なものが浮上してきた。
三つに連なった赤い月。真ん中の月の上部には、三本の巨大なビーカーが突き刺さって
おり、下部には八方向回転ヒーム砲付きの巨大な赤い月がついている。月尽くしだ。
『これぞ…究極磁界制圧クラフト、Dis-aruziiであーる!』
中から、間抜けそうな声が聞こえてくる。
「でぃっ…てぃすあるじぃ!?」
さあ!その圧倒的というか、俺どうしてもこいつノーコンティニューじゃ倒せないって
くらいの強さを前に、彼女たちは生き残れるのか?
ところで、名倉由依って超能力使えなかったんじゃなかったのか?
そして、FARGO重工の幹部連中は何考えてこんな突然変異ハムスターなんぞを
社長に祭り上げたのか?
謎が謎を呼ぶ急展開!次回、「Our way is FAR to GO」請うご期待!

***

犬、二人にふん縛られている。

巡回員「おいっ!どういう事だっ!」
犬「嘘予告とゆーとろーがっ!」
少年「前回、やけにそっけない予告だと思ってたら、この嘘予告の伏線だったのか?」
犬「そのとーりっ!」

犬、二人に土突き回される。

犬「きゅう…」
巡回員「あ、気絶しやがった」
少年「一晩中、寝潰れるつもりだな、こりゃ」
巡回員「しょーがねえ。俺達で挨拶しとく?」
少年「ああ。手加減しときゃよかったよ」

二人「では、改めて、今までどうも有難うございました!さようならー!」
犬「(寝言で)さようならー」