初めまして。犬二号という者です。 初投稿なので、よろしくお願いします。 所有ソフトは「月改」のみなので、そういうSSばかりになります。 ああ、「おね」か「鈴うた」が買いたい。 *** A棟巡回員の怠惰なる日常・1 今日もまは当たり前のように朝が来た。 毎日遅くまで仕事しているのにも関わらず、ちゃんと朝八時までには目が覚める から不思議だ。 とりあえず他の仲間を起こすと、俺たちは取り留めのない事を喋りながら、 俺たちの持ち場・・・A棟に向かった。 A棟に所属する人数は、他棟に比べるとかなりすくない。この、一応は宗教団体を 装っている超能力研究機関「ファーゴ」では、超能力(ここでの呼称にならえば 「不可視の力」)の精神レベルにおける受容のしやすさで信者が格付けされている。 そのままでは全然見込みのないクラスC、磨けば光るクラスB、そしてかなり 期待大のクラスA。他にもあるらしいが、知らんでもいい事は知らん方が身のため なので詳しい事は知らん。もちろん、クラスAがA棟所属である。クラスAには、 よっぽどのひどい目にあった奴でなければ入れないらしい。死の淵をさまよったり 目の前で親兄弟が死んだりといった感じの奴らだ。ひどい目にあった分精神強度が 高いらしいが、詳しい事は知らん。現在クラスAは、もう数年いるという古株と、 この前入った新入りの二人だけである。ちなみに、信者は全員女である。なぜかは 知っているけど、教えない。 「新入りのA−12だっけか?なかなか可愛い子ちゃんじゃないか?」 「うん、まあ、そうだが、元からいたA−9もな、うん」 「何言ってるんですか、あんたたちは。万年助平親父ですか」 A棟に着くと、俺たちはそれぞれの持ち場に向かった。 「じゃ、また後でな」 「では」 さて、仕事だ。 俺がA棟巡回員になってから、もう数年が経つ。不景気の折に職探しに明け暮れて いた頃、大学のサークルの先輩に紹介されて、単なる研究所のバイトかと思って、 入ってみたら大間違いで、外出禁止、電話も禁止、何でも禁止の宗教団体。「話が 違う」と抗議してみたが聞いてもらえない。どころか、銃の訓練はさせられるわ、 他棟で事故発生の度に出動させられるわ、超能力(本当にあったのだ!ファーゴの 異常とも言える警戒体制はこのせいだったのだ。信じなくてもいいけど)の受容に 失敗した信者(「ロスト体」と呼ばれている)に手首をへし折られるわ、箸が当分 持てなくなるわでとんでもないハードワークだ。しかし、数年したら、もうかなり 慣れてしまったから恐ろしい。 (ん?) 向こうから、何やら綺麗なものがやってきた。 上手に染め上げられた長い金髪、落ち着いた上品さをさりげなく演出なんかしたり している紫色のケープ。A−9、鹿沼葉子・・・だったと思う。 「おい」 「・・・はい?」 A−9が止まった。 「とりあえず確認だ。手の甲を出せ」 「・・・わかりました」 A−9が、言われた通りに手の甲を差し出す。なぜかこの女、素直ではあるが、 どこかで人を拒んでいる。外とあまり関係を持ちたくないらしい。 「お前、新入りとはどうだ?」 「どうといわれましても、何がですか?」 「いや、仲良くできそうか?」 「さあ。わかりかねます」 「わかりかねるって、お前、自分の気持ちはどうかって訊いてるんだ。お前自身、 彼女をどう思うかって」 「何とも。ただ、未だファーゴの教えに懐疑的なのは戴けませんが」 「まあ、新入りだから仕方ない。そのうち慣れるだろうさ。でもお前、同じ棟の 奴とは仲良くした方がいいぞ」 「なぜです?」 「なぜって・・・」 いかん。どうしてもこの女と話すと、後が続かなくなる。 「友達はいないよりはいた方がいい。その方が、人生が豊かになる」 「必要ありません。私はファーゴのやり方で人生を豊かにするつもりですが、その 他の事にはあまり興味はありませんので」 「・・・」 この小娘。俺は知ってるんだ、最近新入りからもらった携帯ゲーム機で遊ぶように なった癖にとか続けてみたくなったが、止めた。大人気ない。 「よろしいですか?」 「ん、ああ、確認した。行ってよし」 「・・・失礼します」 A−9は、すっと俺から離れるようにして向こうに行ってしまった。 「うーん・・・」 A棟にはあまり人がいない。それも、大部分が男だ。A棟では女は貴重な話し相手 なのだが、その相手が彼女のようなタイプだと、どうにも会話に困る。折角の美人 なのに、そこが少し不満だ。何か悔しいので、彼女の部屋に通じている通気口から 部屋を覗き見とかしてみたりする。 (しっかし、いい体してるんだよな、あいつ。ぬっふっふ) この前、着替えシーンを丸々しっかとこの目で見た。役得である。 (うーん、いいなあ。ああいうのが、ベッドの上で乱れたりすると、おっと) よせよせ。彼女は元クラスC信者だそうじゃないか。 (その手の行為が、彼女にとっちゃ地番の苦痛なんだろうな) よし、止めた。 「・・・」 ふと気がつくと、もう一人、綺麗だが何やら憔悴しきった顔の女がやってきた。 少し青みがかった長い黒髪、学校はどうしたんだお前と一度は突っ込んでみたい 赤い制服。A−12、天沢郁未・・・だったはずだ。うん。 「おい」 A−12がこっちをむく。こいつもなかなか美人なのだが、A−9とは雰囲気が 違う。A−9のような神聖なたたずまいはない代わりに、足掻く者の持つ悲壮感が ある、というのは俺の勝手な思い込みだろうか。 「もうちょっとしゃきっとしろ、しゃきっと。折角の美人が台無しだぞ」 「・・・」 返事をしない。代わりに、彼女の目が「何だ、変な奴」と言っている。 変だ。 俺は女と話す時には、女をまず褒める所から始める。そうすれば大抵の女は心を 開くもんで、実際そうして俺はもててきたが、こいつらは違う。全然嬉しがって くれない。なぜだ。変だ。 「・・・ようし、番号を確認した。行っていいぞ」 「・・・わかったわ」 A−12もまた向こうに去っていった。 しかし、誰だ、彼女が賑やかな女の子だなんて言い出したのは。全然賑やかじゃ ないじゃないか。 「ふう・・・」 どうにもこうにも疲れてならん。やはり、一人でウロウロして、他人と出会っても 会話出来ないというのは辛い。こればかりは何年かかっても慣れうるものではない。 (ま、これで昼までは暇になったな) とにかく、寝たい。この仕事は、暇なくせに妙に疲れるから困る。 俺は、向こうにある「安息室」と書かれている部屋に向かった。安息室は、本来 信者をベッドに寝かせ、その信者の精神強度を数値化して測定するための、まあ 実験室のようなものらしいが、どうせ今日は二人とも使わないはずだし、勝手に 寝ちゃっても誰も気づくまい。 俺は扉を空け、中に入った。 「・・・ん?」 「やあ」 しかし残念な事に、中には先客がいた。 「お、お前は・・・」 (続く) *** あとがぎ Q・さて、A棟巡回員は一体誰と出会ったのでしょうか? 1・「悪魔」の少年 2・A棟安息室管理人 3・氷上シュン(大穴) >北一色さんへ 「BLUELEAF4」の元ネタですが、ひょっとしてこれですか? *** 「お、お前は・・・誰だ!?」 ベッドに座っていたのは、全く知らない男だった。 そのシャツから覗いている傷は、その男が相当戦い慣れしているという事を無言で 示していた。 (自衛隊か?ヤクザ?それとも、最も考えたくないが・・・警察か!?) 気がつくと、相手は黒曜石のナイフを構えていた。 「な!?」 「昔、山で戦った時に作った黒曜石のナイフだ。普通のナイフより貫通力が強い」 (く、くそっ・・・何やら知らんが、A棟で巡回員らしい事をするのはもしかして これが始めてなのか!?) 俺は謎の侵入者に向かって銃を構えたが、なぜか指がトリガーを引けない。 見ると、いつの間にかシリンダーに黒曜石のかけらが噛ませてある。 「ち、畜生!ジーザス!」 俺は銃で相手の鼻と上唇の間を殴りつけようとした。 その一秒後、何が起きたのか、俺は永遠に理解出来ない。 ひゅっと音がして、それで最後だった。額を、何か鋭いものが貫いたような感触が あったが、それっきり何も感じなくなった。何も考えられなくなった。 ただ、最後に聞こえた声だけはよく覚えている。 「俺の名前だ。地獄に落ちても忘れるな」 *** と、いうことで、4・少年サンデーで連載されていた(と思う)「ジー○ス」だと 思うのですが、どうでしょうか? とにかく、暇を見つけては投稿しますので(多分3〜5話完結)、よろしくお願い します。