繭更正計画 投稿者: うとんた
「なあ椎名、学校は楽しいか?」
「うん」
「友達は出来たか?」
「うん、みあちゃんっていうの」
「そうか、それはよかったな…」

今日は日曜日。俺は今、俺の家に遊びにきた椎名と、他愛もない話をしていた。

…そういえば…
俺は椎名の顔を見る。
「こーへい、どーかしたの」
「あ、いや…」

…そういえば椎名って今年卒業だよな…来年からはコイツも中学生か…
…まてよ、もし仮に椎名が中学生になったとして、授業について行けるのか?
…うーん、まずもって無理だろうなあ…
…そうなるとやはり、今の内になんとかしてやらないと…
…よし、しょうがない、俺が勉強を教えてやるか。

「おい椎名」
「ほえ?」
「いきなりだがこれから勉強をやるぞ」
「べんきょう…キライ。おもしろくないもん」
「我慢しろ。これもお前の為だ。もし勉強できなくて、中学校に入れなかったら、今の友達とも
離ればなれになってしまうぞ。それでいいのか?」
「みあちゃんといっしょになれないの?」
「ああ、だから我慢して勉強しろ。いいな?」
「うん…がまんする」
「よーし、偉いぞ椎名」
俺は椎名の頭をくしゃくしゃとなでてやる。

…こうして俺と椎名の突発勉強会が始まった。


さあて、何を教えればいいかな…
うーん、小学校の授業といったら算数・国語・理科・社会だよな。社会は…俺が苦手だからパス。
(いいのかそんなんで?)
じゃああとは算数・国語・理科か、よーしこの3つを教えようか。
そうだ、テキストを用意しなくっちゃな。
「おい椎名、ちょっと待ってろ」
「うん」

俺の向かう先は押し入れだ。
ごそごそ…
確かここに…おっ、あったあった。

俺は押入れの中から小学校の時に使っていた教科書類を取り出した。懐かしいなあ…しみじみ…
おっと、感慨にふけってる場合じゃあなかった。
すぐに椎名の元に戻ろう…


ドサドサ…
俺は持ってきた教科書類を机の横に置く。
「待たせたな椎名、じゃあ勉強を始めるぞ」
「うん」

「よし、まずは算数の勉強だ」
「ほえ?」
「じゃあ最初だからちょっとレベルを落として…これくらいかな?」
俺が取り出したのは、『さんすう 小学校1年生用』だ。
…これはさすがに落としすぎか?まあいいや、徐々にレベル上げりゃあいいんだからな。

「これから俺がこの教科書の中から問題を出すからそれに答えるんだぞ」
「うん」
「よし、じゃあ聞くぞ、12−3はいくつだ?」
…うーん、ばかにしたような問題だな…
「うーんと、うーんと…」
必死で指を折って数えようとする椎名。おいおい、まじかよ!?
しかし10まで数えた所で椎名の指が止まった。
「うーんと…いっぱい」
…どうやら指が足りなかったらしい。
だああああああああ!

…そ、そこまでのレベルだったとは…しょうがない、分かりやすく教えてやろう。

「いいか椎名、ここにてりやきバーガーが12こあったとするぞ」
とりあえずお約束な説明をしてやる事にする。
「みゅ〜♪てりやき好き〜」
「それでお前がこの中から3つ食べたとする、するとどうなる?」
「もっと食べる」
「いや、そうじゃなくてな…」
「もっと食べるもぅん…」
「…はあ…駄目だこりゃ」


「よ、よし、算数はもう終わり。次は国語だ」
「うん」
「この漢字を一つ一つ書き取りしていけ」
と、漢字ドリルと書き取り帳を机に置く。
「みゅ?」
「この書き取り帳に漢字を書いていきゃあいいんだよ」
「うん、わかった…」

しばらくして…

「…できたぁ」
「おっ早いな、どれ、見せてみろ」
「はいこれ」
「おう」
………
「…で、なんだこれは?」
書き取り帳にはミミズののたくったような…じゃない、ミミズそのもののような物体が書かれて…
では無く、描かれていた。

「みゅー♪」
どうやら椎名はみゅーを描いたつもりらしい。

「椎名…今は美術をやってるんじゃあないんだぞ…」
「みゅ?」
「もういい…」


しょうがない、最後は理科だ。物理と化学と地学は器具とか薬品が要るから駄目として…のこりは
生物か、これならOKだな、ただ生き物や植物を見てりゃあいいんだからな。
(ちょっと違うぞ折原浩平)

「よし椎名、外にでるぞ。生物の時間だ」
「せーぶつ?」
「外の生き物とかを観察すればいいんだよ」
「うん、わかった」

そう言って椎名は外に走り出した。
…おいおい、どこにいくつもりだよ。
慌てて俺も後を追う。

…あれ、どっちにいったんだ?
見渡してみるが、椎名の姿は影も形もない。
しょうがねえなあ、探すか。頼むから迷子になったりするなよ…

…10分後…

まだ椎名の姿は見つからない。
…椎名…どこ行っちまったんだ…
などと思っていると、

「おい、そこのガキィ!」
「みゅ?」
な、なんか怒声が聞こえたぞ、それと椎名の声も。…行ってみよう。

声のした方に走ってみると、そこには椎名と知らない男が言い争っていた。
って…はうあああああ!
椎名と一緒にいる、いかにも『ヤ』の付く職業の格好をしたお方はあああ!?

「なにじろじろ見とんじゃあ!」
「こーへいが生き物を観察しろって」
「観察ー?ワシを見張っとるっちゅうことかあ!?」
「…よくわからない…そうかも」
「おいガキ、お前どこの組のもんに言われてこんなことやっとんならあ!」
「くみ?…うーんと、6ねん2くみ」
「…なめとんのか、ワレェ!」

あわわわわわわ!
俺は慌てて二人の元に走る。

「すっすみません、なんかこいつ、訳のわかんない事言う癖があるんで」
「なにい?…おい坊主、こいつはお前ん所のガキか!」
「は、はい、そうです」
「ちゃんと教育しとかんか、ボケェ!」
「はいいいい!(汗)」

俺は椎名の手を引いてそそくさとその場から逃げ出した。

「はあはあ…」
家に帰り、ようやく一息つく俺達。
「こーへい、どうしたの?」
「あのなあ……」


結局俺の、椎名に勉強を教える努力は徒労に終わった。

「椎名…お前はやっぱりそのままでいい…」
「みゅ〜♪」
「はあ…」
もう…疲れたよ…


<終わり>

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はいどーも。「そういえばPS版が出て大分経つけど、なつきSS書いてる人いないなあ…」などと
最近思っているうとんたです。

初めて書いた繭SSでしたが、いかがでしたか?(特に雀さん)
うーん、ちょっと繭の知能を落としすぎましたかねえ…反省。
まあ、馬鹿な子ほど可愛いって言いますしね。(賢い繭なんて繭じゃないやい!:自論)

うーん、それにしても久し振りにまとも(?)なSS書いたなあ。最近変なSSでお茶を濁してた
から…いかん、もっと頑張らなくては!
…だから見捨てないで下さいね(m○m)

それでは。