めざせ、たいやきくん! 投稿者: うとんた
私の名前は里村茜。ちょっと(?)甘いもの好きな何処にでもいる普通の女子高生です。

今日はせっかくの日曜日ですし、どこかに行きたいですね。

クー

いけません、お腹が鳴ってしまいました…恥ずかしいです。
それでは何か食べに行くことにしましょうか。
どこに行きましょう?山葉堂は…いつも行ってますし…
そうです!たいやきやさんに行きましょう、この間浩平と行った時にはたどり着く事が
出来ませんでしたし…しかしあの時浩平はほんとに私をたいやきやさんに連れて行ってくれる気が
あったんでしょうか?
…まさか、そのたいやきというのは実は数量限定で、浩平はそれを独り占めするつもりだったのでは?
…と言う気がしてなりません、まあ行ってみれば分かる事ですが。

でも、たいやきやさんなんて、どこにあるのでしょう?
ま、いいです。時間はたっぷりあることですから。歩いてる内に見つかるでしょう。

テクテク…

「あ、茜じゃない!」
私が歩いていると、詩子と出会いました。
「詩子…どうしたのですか?」
「いやあ、ちょっと暇だったからそこらへんをぶらぶらとね。そういう茜は?」
「私は、たい…」
「たい?」
おっといけません、たいやきを食べに行くなんて言ったら、きっと詩子はついて来るに決まって
ます。詩子と行ったりなんかしたら、私の食べる分が減ってしまいます。
なんといっても数量限定のたいやきなんですから。(いつの間に?!)
ここは誤魔化さなくては。

「たい…くつしていました」
「そう、それならちょうど良かった、一緒にどこか遊びに行きましょ?」
それは困ります…どうしましょう?…そうだ…
「それじゃあ山葉堂に行きましょう。ちょうどお腹も空いてましたし。」
「えっ?」
ピキッと詩子の顔が引きつるのが分かりました。
「私のおごりで良いですから。私のおすすめする新(?)製品があるんです」
「は、ははははは…(汗)」
もう一押しです…
「ぜひ詩子にも食べて欲しいです。」
「わ…私は…あ!ゴ、ゴメン茜!そういえば私、用事があるのを忘れてたわ!それじゃあね!」
「あ…詩子…」
詩子は慌ててどっかに行ってしまいました。
ふふふふ…作戦成功、ですね。
それにしても皆さんどうして私があのワッフルを食べましょうと言うとイヤな顔をするんでしょう?
あんなに美味しいのに。
それはそうと、捜索再会ですね。

てくてく…

それにしてもまだ見つかりませんね…少し疲れました…
「ふう…」
「あれ、その声は里村さん?」
「えっ?」
そんな声がしたので振り向くと、3年生の…確か、川名みさき先輩、でしたっけ?…一度浩平に
紹介してもらった記憶があります…が、いました。

川名みさき先輩…確か浩平の話によると、この先輩の通った後にはペンペン草一つ残っているとか
いないとか…要チェック、ですね。

「今何してるの?」
「はい、たいや…」
「え、たいや?」
あっといけません、またうっかり口を滑らせてしまうところでした。みさき先輩にこんなこと
話した日には、それこそたいやきやさんそのものが食べられかねません。

「タイヤ…がパンクしたので、自転車屋さんにいって修理してもらってるんです」
「ふーん、そうなんだ」
「みさきーどうしたのー?早く行くよー!」
「あっ、雪ちゃんが呼んでる。ごめんね、そういうわけだから。それじゃあね」
「はい、さようなら」
みさき先輩は雪見先輩の後を追っていきました。
…これで一安心、ですね。

てくてく…
…それにしても、たいやきやさん…まだ見つかりませんね。

『こんにちはなの』

てくてく…
一体どこにあるのでしょうか?

『こんにちは、なの』

てくてく…
やはり歩いている内に見つける、というのは少し無理がありましたか…

『こんにちは!なの!』

てくてく…
誰かに聞いた方が良いかもしれませんね…

『気付いて、なの!』
むー!(怒)
ぽかっ!

あっ!なんですか?!
…ふと横をみると、そこには怒ったような顔をした澪がいました。

「澪…いつのまにいたのですか?」
『さっきからずっといたの』

『気付いてくれなかったの』
「澪…思いは言葉にしないと相手に伝わりませんよ」
『……』
「冗談です」
ぽかぽか!
「止めてください、澪」

『ところで何してるの?』
「たいやきや…」
あっ、また私の口が勝手に!これでも口は固いほうなのですが。
また誤魔化さないといけませんね。
でも…私は少し考えます…少食の澪なら、一緒にたいやきやさんに行っても私の食べる分が減る
事はないでしょうし…このまま探して、たいやきやさんを見付けられなくてもこまります…
…それでは澪に聞いてみましょう。

「…澪、聞きたい事があるのですが」
『なんなの?』
「この辺にたいやきやさんのある所を知りませんか?」

うーん、と考え込む澪。やっぱり分からないのでしょうか…?

『思い出したの』
「えっ、本当!?」
『この間友達と行った事があるの』
「どこですか?」
『案内するからついてきてほしいの」
そう言ってぽてぽてと歩き出す澪。慌てて私もついて行きます。
しかし…澪に聞いて正解でしたね。

ぽてぽて…
てくてく…

「まだですか?」
『ついさっき歩き始めたばかりなの』

ぽてぽて…
てくてく…

「ま、まだですか?」
『結構遠いの』

まさか、澪まで浩平と同じように、たいやきを独り占めにしようとたくらんでいるのでは?
なんて事を考えていると、

『着いたの』
目の前に、『大判焼き』と書かれた看板のお店がありました。
良かった…澪に限ってそんな事はしませんよね。疑った私が馬鹿でした。
私達はその店に入っていきました。

「へいいらっしゃい!何にするかい?」
「たいやき下さい…」
そう私がいうと、店のおじさんはしぶい顔をしました。
「お嬢ちゃんごめんなあ、たいやきは冬季のみの限定販売なんだよ」
「たいやき、下さい」
「たこやきならあるんだけどねえ」
たった1字違いでも天と地の違いです…
「たいやき、下さい」
「いや、だからあの…」
「たいやき……」
『運が悪かったの』

私の肩をぽんぽんと叩いて慰めようとする澪。
でも…あきらめきれません…これでもあきらめは悪い方なんです…
そんな事を考えてると、

「おい、あの店の中に居るのがそうじゃないか?」
「あ、ほんとだ。…おーい、里村さーん、澪ちゃーん!」

声のした方向を見ると、浩平と長森さんがこっちに走ってくるのが見えました。

「はあはあ…探したぜ、茜」
「何の用ですか?」
「おう、あのな…実は今日、長森の家を大掃除してたら、物置から今までずっと使ってなくて忘れ
去られてたような物が色々と見つかったんだ、ぶら下がり健康器だろ、ダンベルだろ、トースターに
…あと、つり竿とか」
「その中にね、たいやきを焼く道具が有ったんだよ」
「!」
『!』
「それでいきなり浩平が『よし、これからこれでたいやきを作るぞ!』なんて言い出すもんだから、
どうせなら他の人も誘おうって言ったの。そしたら「じゃあ茜は絶対誘わなきゃな…」だって」
「茜にはたいやき探しの時、悪い事をしたからな、そのお詫びだと思ってくれ。んで、どうだ、
暇だったらこれから茜と澪も長森ん家に来ないか?」
「絶対に行きます」
『よかったね、なの』
「どうしたの?2人して」
「…秘密です」
「?…良く分からんけど、来るって事だよな、じゃあ早くいこうぜ」
「はい」
『らじゃーなの』


…結局たいやきやさんのたいやきは食べられませんでしたが、ちょっとだけ幸せな1日でした。

<おわり>

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後書き

はいこんにちは、「BM3rdの『LUV TO ME』の歌詞ってONEに通じるものがあるなあ…」(謎)
なんて思っているうとんたです。茜ちゃん一人称SS、いかがでしたか?
今回、ギャグにもシリアスにもなってませんねえ…ダメダメじゃん。
精進します。
ご意見、ご感想その他もろもろありましたらぜひメールを。お待ちしてますので。

では。