別れ、そして… 投稿者: うとんた
*注:本作は本当なら廃棄する予定だったんですが、おとしごさんの1言を頼りに書き上げました。
と、言う事でONEの小説第三巻を読んだ人はあまり読まない方が良いかも…

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〜浩平がみさき先輩の前から消えてから〜

「浩平君、お待たせ〜」
アイス買ってくるだけなのにこんなに時間かかっちゃって、怒ってるかな浩平君?

「ごめんね浩平君、売り子のお姉さんが「…今新発売の練乳アイスがありますけど」なんて勧める
ものだから、つい色々食べたくなっちゃって…ねえ、見てみて。じゃーん!なんと5段重ね
なんだよー、えーとね、一番下がチョコミントで、次がココナッツ。その次がアーモンド、
ストロベリー…そして一番上がその練乳アイスだよ、良いでしょ?でも本当は10段重ね
くらいにして欲しかったんだけどね」
「…あ、もちろん浩平君の分も忘れてないよ、確かバニラだったよね?はい、どーぞ」
「…どうしたの?これ浩平君の分だよ、早く受け取ってよーアイスが溶けちゃうよ?」
「浩平君…怒ってるの?…何か言ってよー」
「こ、浩平君?」
私は浩平君が座っていると思われるベンチにおそるおそる手を伸ばした…でもそこにはただ、
何もない空間が広がっているだけだった…
「ど、どこに行ったの浩平君!?」
「…もー、待たせた事は謝るから意地悪しないで出てきてよー」
…どこ行っちゃったんだろ?とりあえずベンチに座って待とうっと。

…………………

…遅いなー浩平君…

♪チャ〜ララララ〜ラララ〜ララララ〜…

あっ、6時の音楽だ…そうかあ、もうあれから2時間近くも経ったんだ…

「…さき!」

…ほんと、どうしたんだろ?

「…みさき!」

…えっ、この声は…

「その声は雪ちゃん?…どうしたのこんな所で?」
「それはこっちのセリフよ!みさき、どうしてこんな所まで来れたのよ!学校から遠くには
行けないんじゃあなかったの?」
「ふふふ…実はね、浩平君に連れてってもらったんだよ、いいでしょー?」
「浩平君?それってひょっとしてみさきの彼氏?」

えー?彼氏だなんてそんなー…でももうあーんな事や、こーんな事までしちゃった仲だしーって、
きゃー、私ったら何考えてるのかしら!

「も、もう雪ちゃんったらー」
「はいはい、顔真っ赤にして言わないの。…でも安心したわ、あなた結構もてるのに、いつまで
たっても彼氏作らないから、実はそっち系かなーと心配してたのよ?」
「雪ちゃん!」
「ははは…冗談よ。…それより、その…浩平君、だっけ?その彼今度紹介しなさいよね。どんな
男の子がみさきのハートを射止めたのか、一度会ってみたいわ」
…え?
「あれ、雪ちゃん忘れたの?浩平君だよ、うちの学校の2年生の。ほら、屋上とか、澪ちゃんがいる
演劇部の部室とかで何度も会ってるじゃない?」
「え?…そんな子いたっけ?うーん…ごめんみさき、わたし記憶力は良い方なんだけどねえ、
やっぱり覚えてないみたい」
そんな……!?
この間あったばかりなのに?…雪ちゃん、覚えてないっていうより、知らないって感じ…

「ところでみさき、あなたさっきからここに座ってたみたいだけど…その彼を待ってるんでしょ?
…一体いつからここにいるの?」
「えーと、2時間くらいだよ」
「2時間も!?…その彼、どこに行ってるの?」
「それが分からないの」
「ひょっとして…あなたをほっといて先に帰っちゃったんじゃないの?」
「そ、そんな訳ないよ!浩平君はそんな人じゃないよ!酷いよ雪ちゃん…」
「ゴメン。でも、これだけ待っても戻ってこないって事は、彼に何かあったか、もしくはさっき
言ったような事じゃないかしら?」
浩平君に…何かがあったの?
「ま、とにかくもうここに彼が戻ってくる可能性は薄いわね。今日のところは家に帰った方が
良くないかしら?あたしが送ってあげるから、ほら、立って」
「う…うん…」

……………

「はい、着いたわよ」
「うん…」
「もう、なーにそんな落ち込んでるのよ?家に帰ってから彼の家に電話すれば分かる事じゃない?」
「うん…そうする」
「元気だしなさいよ、それじゃあね」
「うん…ありがと雪ちゃん、ばいばい」

私は家に入るとすぐに電話の前に立った。えーと確か浩平君家の電話番号は…
ピピポパポピポ…

プルルルルル…プルルル…
「はい、もしもし」
浩平君の叔母さんがでた。確か由起子さんって名前だったと思う。
「あ、あの、川名ですけど、折原浩平さんはいらっしゃいますか?」
「はい?そんな名前の方は家には居ませんけど?」
「え…?」
「私は今一人暮しなんですけど…」
「そんな!」
この間ここに電話したのに…!
「…確かに義兄に折原という人はいますけど…
えーと、川名さんって言いましたよね?あなた、どなたかと間違えていらっしゃいません?」
「そ、そんな事ありません!…浩平君!…そこにいるんでしょ?!…出てきてよ!」
「あ…ご、ごめんなさいね、今忙しいの。それじゃあ失礼しますっ(あたふた)」
ガチャ!ツー、ツー、ツー…
私の剣幕に尋常じゃないものを感じたのか、由起子さんは慌てて電話を切ってしまった。

それにしても…どういう事なの?

次の日、私は学校に行った。卒業したからもう行かなくてもいいんだけど、どうしても他の人に
浩平君の行方を聞きたかったから。
とりあえず浩平君のクラスに行って、浩平君と幼馴染だった長森さんと話をした。

「えっ、先輩、私に何か用ですか?え、浩平君?折原浩平…それがその人の名前なんですか?
…いえ…?そういう名前の人はちょっと聞いた事はないです…
…あ、ちょっと待って下さいね…
七瀬さーん!折原浩平っていう人知ってるー?…え、知らない?ありがとねー!
住井くんは…聞いた事ある?この川名先輩の知り合いらしいんだけど…分からないって?ありがと。
…やっぱり知らないそうですよ、きっと違うクラスなんじゃないですか?」
「あ、もういいよ。ありがとう…」

それから私は浩平君と知り合いだったはずの人達のほとんどと話をしたけど、浩平君の事を覚えて
いてくれてる人は1人としていなかった。

そう、まるで初めから浩平君なんかいなかったかのように。

浩平君…さようならってこういうことだったの?ずっと側にいてくれるっていう言葉。あれは
嘘だったの?

…いつのまにか、私は屋上に来ていた。もう私はこの学校の生徒じゃないけど…別に良いよね…
屋上にはもう春の訪れを告げる風が吹いていた。
そんな暖かいはずの風も私の心にぽっかりとあいた穴を埋めてくれる事もなく、ただ冷たく
私の体をふき抜けて行く…0点だよ、浩平君。
…浩平君…これから私、どうすればいいの?、
浩平君は私が強いって言ってくれたけど…ううん、全然そんな事ない、浩平君がいないと、もう私、
何も出来ないよ…

「ここは風が気持ち良いね」
そんな事を考えてると、突然そんな声がした。男の人の声だ。
「だ、誰ですか!?」
「あ、ごめん、驚かせちゃったかな、僕は2年…いや、今度3年になるかな、の氷上シュンって
言うんだ」
「私は川名みさきだよ…今年卒業してもうここの生徒じゃないけどね…」
「へえ、君があのみさき先輩なんですか、色々話は聞いていますよ」
「そう…なの…」
「それより何で屋上なんかに?」
「なんとなく来ただけだよ、ここは私のお気に入りの場所だからね…」
そう、今までは。
「何か悩み事でもあるんじゃないですか?」
浩平君の事を聞いたって、知らないって言うよね、きっと。
「何でもないよ…」
「え、そう?泣いていたみたいですけど?」
「!」
「ほら、涙の跡が」
「……」
「僕で良かったら相談に乗ってあげますよ?」

そうだ…何もかも話してスッキリした方が良いかも…
私は氷上くんに浩平君が消えてしまった事、私以外の誰も浩平君の事を覚えていない事を話した…

「ふうん…」
ほらね、やっぱり信じてくれなかった。
「そうか、その彼はきっと永遠の世界に…」
えっ!?
「今、なんて言ったの?」
「いや、何でもないですよ、ただの独り言。…それより、川名さん、辛いですか?」
「うん…辛い…とても辛いよ…いっその事、全てを忘れてしまいたいくらい…」
「だったら良い方法がありますよ」
「えっ?」
「彼の存在自体を記憶から消去する…つまり自分に暗示をかけるんです、他の人が言う様に、
実は初めからそんな人はいなかったんだと思いこむ…。簡単ですよ、人1人忘れてしまうのなんて」
そう…きっとその方が楽になれるかもね…
「でも、本当にそれで良いんですか?」
……浩平君を忘れる…
本当に良いの、わたし?
…駄目!そんな、そんな事…!
「…いや!浩平君を忘れるなんて絶対にいや!」
すると氷上君は、
「ふふ、冗談ですよ、今のは貴方の気持ちが本物かどうかが知りたかっただけです」
えっ、えっ?
「大丈夫、僕が見た限りでは、貴方と彼との絆はまだ切れてませんよ、川名さんがその人の事を
ずっと思ってさえいれば、きっと彼は帰ってきます」
「えっ、本当に?」
「はい、本当です」
浩平君が帰ってくるの?
「川名さんが忘れなければ、の話ですよ?」
「絶対に忘れないわ!」
「ははは、分かってますよ、それじゃあそろそろ僕はこれで失礼しますね」
「うん!本当にありがとう氷上君!」
「いえいえ、どういたしまして」
そう言って彼は屋上から出て行った。

浩平君が帰ってくる…

浩平君…いつかきっと帰ってくるんだね?だったら私、浩平君の帰りをずっと待ってるからね…

そんな私にまた、一陣の風が吹き付ける…
でも、その風はさっきよりずっと暖かかった。


<to be continue to Misaki Ending…>

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どうもこんばんわ、うとんたです。
初挑戦のシリアスSS!…大失敗。まさかこんなに早く小説3巻が出るとは思わなかったから、
ゆっくり熟成させようと思っている内に、熟成させすぎて腐ってしまいました。(汗)
いやあ、ネタかぶり選手権チャンピオンですかねえ、自分。

しかし、やっぱりシリアスSSは難しいですねえ。最後の所なんて特にぼろぼろ。
いかがでしたか?(特におとしごさん)
多分もう、暫くシリアスは書けないだろうなあ…

・小説の3巻を読んで
本編において「瑞佳・七瀬・繭」「先輩・澪ちゃん・茜」は「」内のヒロイン同士でシナリオが
リンクしている所があるので、「3巻は澪ちゃん出まくり〜♪」と思っていたのにぃ(涙)
…ちょっと無茶でしたか。しかし4巻ではきっと澪ちゃんがヒロインに違いない!…多分この
ONEの小説は3巻完結だとは思うけど。(じゃあ書くなよ)

つっこみ、感想お待ちしております。
それでは。