みさきリフレイン(5)  投稿者:いばいば


簡潔ですけど、間空いちゃったので一応あらすじらしきもの等。

1>卒業式を迎えても外の世界への恐怖から抜け出せないみさき、
屋上で不思議な親しみを感じる少年と出会い、再会の約束を交す

2>次の朝、起こされたみさきを待っていたのは、何故かもう過ぎ去ったはずの2週間も前の日付だった。
更にその少年が、大切な人になりつつあった浩平だったことを”思い出す”に至り、
みさきは理解不能な、2回目の高校生活最後の日々を受け入れる。

3>浩平と再会、でも手に入れた幸せな日常生活が崩れるのを恐れたみさきは何も言い出せない。

4>そのまま毎日を今までと同じように過ごしていたみさきだが、
もう終わったはずの楽しい高校生活への負い目と恐怖、
そして同時に、変っていくこと、知らないことの嬉しさを思い出し、
浩平に一緒に歩いて欲しいと頼み、勇気を出して再び外の世界へ足を踏み出す。

………なんか自分で書いててわけわからん(爆)
以下続きです。
 
 
        <5>  ―― “二周目” 三月二日 ――
 
 
 
  耳元を通り過ぎる風の音に、二人分の足音だけが合わさる。
  遊び疲れて間延びした、浩平君と私の足音。
  この時間になると、商店街から少し離れただけで人の気配がなくなってしまう、
  ずっと近所に住んでたはずなのに、そんなこともこの一週間で初めて知ったことだった。
 
  少しずつ冷たさを増していく夜の空気には、夕ご飯の匂いがまざりだしてた。
  すぐ近くで焼き魚、その向こうからシチューの香り。あっちは…親子丼かな?
  冷たいけど優しい空気、ほっとするのと同時にどこか寂しくなる。
 
  ……ずっと恐かった。
  幸せな高校生活が終わるのが、
  光を取り戻すことの出来る、唯一の場所を後にするのが、
  何もわからない外の世界が…。
 
  今だって変わらない、
  私の行く手に広がってる、怖いものに溢れた世界。
  平気だと言ったら嘘になるんだと思う。
 
  でもそれだけじゃない。
 
「……三月って寒いんだね」
  ぽそっと呟きながら、空いてる手で襟をよせる。
「ん?」
 
  知らなかった沢山のこと。
  商店街の風、公園の風、それから…帰り道に吹く風。
 
  色んなとこ歩き回ったせいで足はクタクタ、
  体は冷え切ってるのに、そんなことおかまいなしに風はどんどん冷たくなってく。
  浩平君がいてくれるのに、どうしてか心細くて暖かい部屋が恋しくなる。

「先輩、急にどうしたんだ?」
「……えっと…早く家に帰って暖かい物食べたいな、って思ったんだよ」
 
  こんな気持ちだって、ずっとずっと忘れてた。
 
「……さっきオレの財布空にしたばっかだろ」
「う〜」
「いや、わかるけどな。こんな冷える日は炬燵に鍋でもあれば最高だからな」
「うん」
 
「しかしもう三月なのに非常識な寒さだよな」
「耳なんか痛いぐらいだよ………ひゃっ!」
  途端、耳が摘ままれた。
 
「ほんとだ。冷たいな…」
「浩平君の手は…暖かいよね」
  じんわりと広がる熱のお陰で、麻痺してた感覚が少しずつ帰ってくる
「ああ、ずっとポケットにつっこんでたからな」
 
「あ、私も右手はずっとぽかぽかだよ。浩平君が温めてくれてるからね」
「…いっそのこと左腕も組んでみるか?」
「それじゃ歩けないよ」
  ――ちょっと残念だけどね。
  聞こえるか聞こえないかぐらいの声で付け足す。
 
「……ね、浩平君。今度お鍋食べようね」
「そうだな」
「うんと寒いところに行ってからうんと暖かくして……きっと美味しいよっ」
「でもこれからはどんどん暖かくなってくと思うぞ」
「そうだよね。……じゃ、来年の冬かな」
 
「…ああ」
「でもその前に、春も夏も秋もあるんだよね」
「……」
「楽しみだよねっ」
「ああ、そうだよな」
  ……気の無い返事。
「…浩平君?」
 
「……着いたな、先輩」
「え?  ……うん」
  お話しに夢中になってるうちに、そこはもう家の前。
 
  どちらからともなく足を止めて、腕をほどく。
  寂しいけど、寂しくない。
 
「また明日、だね」
「……」
「どうしたの?」
 
「……な、明日は卒業式だな」
  浩平君が私の手をとって、門に触れさせてくれる。
「うん」
  大きくて暖かい手が離れると、金属の冷たい温度だけが残る。
 
「みさき先輩、まだ外を歩くのは恐いか?」
「今は浩平君がいてくれるから平気だけど……まだ…ちょっと恐いよ」
「……」
 
「でもわかってるよ、嬉しいことも沢山あるんだよね」
「ああ、先輩の好きな美味しいものだって沢山あるぞ」
「うんっ、だから今は楽しみなんだよ」
  勢いよく頷く。
  今が楽しくて、明日が待ち遠しくて……。
 
  だけどそれに応えて浩平君が口にしたのは、
「だからオレなんかがいなくても、きっと大丈夫だ」
  思ってもなかった台詞。
  笑おうとした顔が、そのまま固まるのがわかった。
 
「先輩は強いから……すぐ何処にだって、好きなもの食べに行けるようになる」
  もうこれが最後みたいな口ぶり、その声音はあまりにも儚げで……。
「そんなことないよっ!」
「頼りないかもしれないけど、オレが保証する」
「それでもっ…それでも浩平君がいなくちゃ駄目なんだよっ」
「すまない、オレはもう先輩といられそうもないけど――」
  なのにこっちの声が耳に入ってないみたいに、ただ言葉を連ねる。
 
「浩平君と一緒じゃなきゃ嫌だよ、ひとりじゃ…嫌だよ……」
「……ずっと応援してる」
 
「その……ほらっ、美味しいものはどんなに沢山あってもすぐなくなっちゃうけど、
浩平君はずっと一緒にいても、なくなったりしないからね」
  震える声を抑えてわざと冗談っぽく……そしたら浩平君もつられて冗談だ、って笑ってくれそうで。
「だから浩平君がいてくれなきゃ、困るんだよ」
 
  ……。
 
「…浩平君?」
  反応を確かめようと、小声で呼びかける。
  ひょっとしたら、呆れられてるのかもしれない。
  耳を澄まして様子を伺う。
 
  ……けど、いくら待ってみても返事はなくって。
 
「浩平君てばっ!」
  手を伸ばす。
 
 
  そこには、何もなかった。
 
 
「嘘……返事してよ。ね、浩平君…」
  闇雲に腕を動かしても触れるものはなく、ただ空を切る。
  必死に呼びかける。
「浩平君っ!」
  けど何処からも応えは返ってこない。
  どんなに大きな声で呼んでみても、それは同じで。
 
  ……立ち去る気配も、足音も聞こえなかった。
  だけど浩平君はもうここにはいない、それだけはわかる。
  鼓動も、息遣いも、さっきまで傍にあったはずのものが何も感じられない。
  まだ体に残ってる浩平君の体温さえ奪うように、ただ冷たい風が吹きつける。
 
  嫌、嫌だ。
 
  過ごしたかった毎日にも、思い描いてた未来にも、行ってみたかった場所にも、
  そのどこにも、浩平君はいない。
 
  追いかけなくちゃいけない。
  走って、
  走って、
  呼んで、
 
  ……だけど私の手は門に張り付いたままで、足も進もうとしない。
 
  何が出来る?
 
  あてもなく暗闇の中に飛び込んで、名前を呼び続けて、
  それで私に…何が出来る?
  どれだけ必死になっても、私には見つけることだって……。
 
「浩平君……嘘吐きだよ」
 
  ひとりで歩いても大丈夫になるまで一緒にいてくれる、そう約束したのに。
  強くなんかない、大丈夫のはずない、
  私は……こんなにも弱いのに。
 
 
 
 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 
二ヶ月ぶりです。覚えてて下さってる方もいなそうですけど、5個目です。
忙しいのとずっとやる気が出なかった為、メールや掲示板以外は全く文章書いてませんでした(^^;)
たまに思い出したように書こうとするんですけど、自分の文章がむかついてむかついて(笑)

でも今後は就職活動やら試験勉強やらで忙しくなりそうなので、
この辺でけじめということで、終わりの(10)まで、出来れば短い間隔で投稿したいと思ってます。
こんなこと言って、恥かきそうですけど下書きは出来てるのでなんとかなるかなー、とか。
…………って下書きだけなら投稿始めた時から出来てたはずなんですけどね(^^;)
 
それとここもクリスマスムード全開な中、
ひとりだけ思い出したように、こんなSS投稿して雰囲気崩しててすいませんm(_ _)m
 
矢田 洋さん、WTTSさん、北一色さん、吉田樹さん、変身動物ポン太さん、
毎度感想ありがとうございます。
 
では僅かながら感想等、しかも無茶古いです(^^;)
間空けちゃって、手後れっぽい気はしますけど、最後までに出来れば追いつきたいとこです。
 
・北一色さん
>初の感想SS挑戦!!
うう、その場面想像してしまい、二度笑い。
微笑ましいけど、ぶら下がってるうちに千切れて落ちて泣いちゃったりして(笑)
 
>乙女の秋(中編)
「食欲」だし「スポーツ」といえないこともないし「芸術」っぽい気もするし、確かに「読書」だけど、
なんか違うぞー(笑)……流石ONEキャラ。特に芸術ならぬ「魔術」は怖すぎ。
周りがこんなで、まだあれだけやる気満々とは、こっちはこっちは怖いし(笑)
 
>うぃるす!!
うーむ、悲喜交々。繭本人にしてみればどういう状況なんだろ?  気にしなそうでもあり、
みんなが「みゅー」つってれば嬉しがりそうでもあり、てりやき売り切れてたら嫌がるだろうし……。
だよもん病は世の中平和になりそうな気もする(笑)
*この感想書いてて、ローマ字入力で「まゆ」打とうとして「A」打ち損なうと「みゅ」
  になるのを初体験…………………それだけです、ごめんなさい(爆)
 
・Percomboyさん
>悔恨への帰還 7
うあ、長森がひたすら健気。浩平早く戻ってこーい。
しかしあんな目覚し貰えるとは幸せ者ですねー……って勿論目覚しだけじゃないですけど。
とまれ連載お疲れ様でした〜
 
・矢田 洋さん
>お名前なんてーの?
良い話でしたぁ。最後でしんみりじんわり涙。みんな幸せそうですし、これからも幸せなんでしょうねえ。
途中迄の浩平節全開には、長森の「浩平、少しは大人になろうよ〜」が、全てを表してますね(笑)
詩子もそうだけど、パワーアップしてるようである意味それが結構いい大人な気も、
*お仕事ご苦労様ですー、朝一で電波系ですかぁ……(^^;)
*>う〜ん、どなたかの個人ページにでも置かせてもらいましょうか…?
  いっそのこと矢田さん御自身がHP制作される、とかは?(笑)    
 
・Matsurugiさん
>中崎町防衛部 Vol.3 <Aパート>
うあ、ほんとに部活だったのか……。みゅーつー制作費だので、部費幾らぐらいなんだろ?(笑)
 
>中崎町防衛部 Vol.3 <Bパート>
七瀬が見事なまでの七瀬っぷりをみせてますねー。浩平はなんかやたら美味しいとこ奪ってってますね。
バリアに囲まれて「首都消失」状態に、予告の秘密平気。続き気になります。
 
・神凪 了さん
>アルテミス
「長い御伽噺」……余裕なのか、はたまた時間稼ぎなのか???  ……どんな話かも気になるし。

・壱弥栖さん
>落ちたくまさんクッキー
やっぱ会長っていうぐらいだからテディベアとか沢山持ってるんだろうか、浩平??
あの一見なんもなさ気な部屋にも、実は山のようなくまさんグッズが隠れてて……(笑)
 
・まてつやさん
>だよもん病
何故か「鳴いていた」で爆笑、確かにその通り。
最終手段は澪あたりにも通用しそうですね。「ビクッ」とか怯えて(笑)
 
・サクラさん
>永遠はいつもみずかとみゅー
これ読んで、みゅーが死んだ理由って繭が………とか思っちゃいました(笑)
 
・パルさん
>向日葵の笑顔(第1話)
おおっ、これは……ゲーム本編ではEND間に何があったとか、
結局どういう話だったかとかよくわからなかったんですけど、このSS読んでなんとなくわかった気が。
「探しにいった」ってことは、すずも祐児のために看護婦になったんですかねー?
 
・吉田樹さん
>ある日の南(感想)
うわ、怖いぞ南。教師も注意出来ないだろうな…。それでも冷静(酷)に対処してるとこが流石は茜。
 
>傷口とナイフ(夕焼けSS)
まだここのページで公開されてる情報しか知りませんけど、雰囲気とか受ける印象ゲームとピッタリです。
キャラプロフィールとか、あれだけでこういう風に書けるとは……。
もしゲーム遊んだらまた読み返してみます。
 
・犬二号さん
>Our way is FAR to GO/0(予告編)
バリバリシリアスですねー。いきなり場面緊張してますし。本編頑張って下さいー。
 
>変なおまけSSと感想
無茶幸せそうですねー、花畑でごろごろ。
幻覚症状?  はたまたやばい花だったのか?  それとも単に追いつめられてハイになってただけなのか?(笑)
*クジラに関しては……この前刑事板に書き込みしちゃったのでパスしときます、長くなるし(^^;)
 
・幸せのおとしごさん
>海と私たちの物語(後編)
わっふる決定でも、わっふるおごってもらっても、どっちにしろ地獄なんですね……。
ラスト、茜様やりますねー。もう邪魔者もいないし(笑)
 
・雀バル雀さん
>一発劇場!13
下僕(笑)がどんどん増えてくんですね。
語呂と「欲しがり」からすると「繭ちゃん」のが合ってる感じもしますけど、
……まぁ繭はてりやきと七瀬あたりさえいれば幸せなのかも。
 
>てんしのたまご
うわ、詩とか童話っぽいのに、内容がまた凄い……。
たまごは比喩な気もするけど、「できちゃった」感じもしたりで。
 
>いけない澪ちゃん お買い物
↑の13に続いて過激な澪ちゃんですね。
なんていうか、中坊だか小学生だかの時分に集団で初めて買いに行った時の気持ちが、こう…(爆)
 
>一発劇場! 14
中学生しめてる色黒坊主って……さすがや…。浩平の言ってることがほんとなんだろうなぁ……。
 
・PELSONAさん
>取り憑かれた女
うう、何で手袋買いに行くのかよくわかりませんでした。
そんな童話があった気もしないではないけど、違うんだろうし。
 
>ヤツラは銃弾を避けることが出来るんだ…
しょっぱなの「もぎゅ」って音が凄い好きです(笑)
マトリックスまだ観てないからよくわからんですので、浩平と同感。
 
・ひささん
>終わらない休日 第23話
音子にもちゃんと”伝えて”たんですね、よかったです。
いかにも嘘っぽい嘘がらしくてかわいいです。
 
・GOMIMUSIさん
>D.S Chapter.3
コウ強いですねー。……それでもバルハラ側結構余裕で、作戦もあるみたいですし。
人殺しを嫌う気持ちが、逆に見透かされてまた闘わなきゃいけないんですね(TT)
 
・MIO−Xさん
>[教祖が歌う日]
突拍子の無さがすずっぽくてかわいいっす……ある意味被害者ですけど。
しかもちゃんと信者いるし(笑)
*リーフ系SS、いつも楽しく拝見しておりますm(_ _)m