みさきリフレイン(0)  投稿者:いばいば


        <序>  ―― 冬 ――
 
 
  ゆっくりと押し開けられる扉、
 
  次いで靴音、
 
  茜射す屋上に、微かに息を切らせながら少年が現れる。
  見回すまでもなく、彼の視線はすぐに先客を捉えた。
 
  その先には、夕焼け色に染まった少女の、
  錆びついたフェンスにもたれながら、長い黒髪を風になびかる姿。
  長く長く背伸びをした影法師は、少年の足元にまで影を落とす。
 
  まるで映画にでも出てきそうなワンシーン。
 
  なのに、その幻想的ともいえる光景に見入る少年の目は……ただ不安に怯えていた。
 
  奇妙な対照だった。
 
  鉄扉のたてる騒音が少年の来訪を告げてからこちら、
  少女の口元は悪戯っぽい笑みを形作っていた。
  それも、歩き出した少年の足音が近寄るにつれて、
  堪えきれないといった様子で、益々楽しげな表情を見せる。
 
  どちらも互いの表情を知る術もなかったけれど、
  少女の背中を隔てて、二人の間には全く相反する感情が存在していた。
 
  たった一つだけ共通するものがあったとすれば、
  その表情に孕まれた何かを期待する光
 
  ひとりは今や遅しと待ち兼ねた様子で、
  もうひとりは最後に残された希望に縋るように。
 
  そして少年が自らを鼓舞するように、ひとつ頷いて、
  最後の一歩を踏み出そうとした、刹那、
 
  均衡は破られた。
 
  少女は振り返り、歩き出す。
  既に彼女のどこにも、直前までの楽しげな様子は見つけることは出来なかった。
  少年が何かを言いかけたが、それには気付かない様子で彼の傍を通り過ぎる。
 
  屋上と校内とを結ぶ扉の前で、
  ほんの僅かな間、少女の足が止まった。
 
  それだけだった。
 
  冷たい音をたてて、扉は閉ざされ、
  どちらも一言も発することもなく、二人の邂逅は終わる。
 
  まだ肌寒い2月の風が吹く屋上に、
  ただひとり、
  少年だけが残された。
 

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投稿2回目ですけど、前のは半年も前で、覚えてて下さってる方もいないと思うので、
改めまして、よろしくお願いします。
 
それでもって、前回投稿時にご丁寧に「はじめまして」メッセージに感想まで下さった
KOHさん、吉田樹さん、レスさん、ニュー偽善者Rさん、変身動物ポン太さん、
雫さん、いけだものさん、ばやんさん、まねき猫さん、ひささん
(抜けてる方いらしたら、すいません)どうもありがとうございました。
もう滅茶苦茶嬉しかったです。
その後ずっとSS投稿が無く、お礼も出来ませんで、申し訳ありませんでした。

今回懲りずに拙い文章書いた最大の原動力が「お礼書かねばっ!」だったんですが、
こんな遅くなるとは……(汗)
お目汚しではありますけど、今度はしばらくお世話になると思います。
 
これだけじゃ何なので、とりあえず下に続きもう一個あります。
それと僅かながら感想等、短くてすいません。

・Percomboyさん
>悔恨への帰還 2
ちょっとずつ「?」が増えてって、最後の先輩の台詞と浩平の独白でゾクっときました。
先の展開が全く読めないので、色々と楽しみです。
 
・YOSHIさん
>ロード オブ アルジー
設定なんかも色々と凝ってて、本格的ですね。書くの凄く大変そうですけど、頑張って下さい〜
 
・サクラさん
>フュージョン
バスタードですか?  随分読んでないので、自信無いのですけど。
 
>枕が涙でぬれた日
涙で濡れたあとが存在した証、って詩的な表現が格好良かったです。
 
・いちのせみやこさん
>シンデレラのリボン
一途だけど不器用な澪に、なんかゲーム中で浩平が澪に抱いてた感情がわかったような気分になりました。
『真の乙女にしかなせない技』気になるんですけど、教えるのが七瀬というのが少し不安。
 
・苦悩者さん
>消えゆく僕の求める絆
ゲーム本編をやった時は、シュンが何を求めてたのかよくわからなかったんですけど…成る程。
 
・まてつやさん
>あこがれの主ぬい
「近年稀に見ない」「ぬいぐるみを使用」……すっげえ気になります(爆)
 
・PELSONAさん
>私の、望み
こう考えると本編ラスト付近の繭の成長も、また違ったように取れました。
「受容」っていうか何ていうか……深いですね。
 
・北一色さん
>髭先生の華麗な生活
何故出席簿まで、確かに何か「華麗」ですね。あと私も浩平の策には気づきませんでした。
 
・壱弥栖さん
>ARUZII
オチにはやられました。七瀬ひとりだけでも怨念で連れもどしそうです。
しかしあの怪獣を一瞬で屠るとは、流石。私なんか郁未達3人掛かりでも結局倒せなかったのに(爆)
 
・から丸さん
>未来
作品全体に流れる空気みたいのが何とも言えず、話に引き込まれました。
これまた続きどうなるか予想出来ず、期待してます。
 
・幸せのおとしごさん  
>海と私達の物語(前編)
ちょっとずつ海の方に進んでる茜がかわいいです。「わっふる決定」って表現も。
最後のはやっぱ詩子+澪来襲???
今年も海に行けなかったのですけど、幸せのおとしごさんのSS読んで乾ききった心が癒されました(爆)
 
変身動物ポン太さん>
>感想SS”中部SS作家座談会−途中参加記念(←おい)
いちいち頷かされました。特に最後のなんて身につまされて(爆)
 
・ひささん
>二学期
浩平らしくて瑞佳らしい「相変わらず」な二人のやりとりを、ここまで違和感無く書けるって凄いです。
ラストも余韻が残りました。……そういや私もレポートまだ真っ白(泣)