NANASEの逆襲(前編)  投稿者:壱弥栖


 −−これまでの話−−−−−−−−−−−−−−−−−
 要約すると、暴れまわったナナセをなんとか捕まえて、
 海に沈めて一安心、て所かな(超簡略)
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 カチャ
 扉を開けると、浩平はは妻に声をかけた。
「じゃあ行ってくるな、茜」
 ナナセの脅威が去って2年。
 2度の帰還の末、この度浩平と茜はめでたく結婚していた。
「……やっぱりするんですか?」
「ああ、ぜひしてくれ」
 仕方なさそうに茜が背を伸ばす。
「はい……ちゅ……行ってらっしゃい、浩平」
 顔を赤くしてキスをする茜。
 新婚の彼らは見てるだけで嫌になるほど甘々だった。
 意気揚々と家を出る浩平。
 今日もいい天気だ。



 ブーーッブーーッブーーッ!!
 ウゥゥゥ〜〜〜ーーーッ!!!
 様々なサイレンや警告音が鳴り響く。
 某国の原子力潜水艦のブリッジ。
 今、ここは喧騒に包まれていた。
「まだか、まだ出力は戻らないのかっ!!」
「駄目です! 全エンジンは最早暴走状態です!」
「くそっ……本国への連絡は!?」
「しましたが救援が来るまで持つかどうか……」
「くそ、なんとしても持ちこたえるんだ!」
「わかり」

 カッ

 瞬間、彼らは光に包まれた。
 この日、日本海に巨大な爆発による水柱が確認された。



 日本海で謎の爆発。
 この報せは浩平の元へも届けられた。
「謎の爆発、か。で、正体は?」
「正体が分からないから、謎なんだろう?」
 住井がつっこむ。
 現在、住井は浩平のサポート役として活躍していた。
「公には、謎なんだろ。それで本当の所はどうなんだ」
「やっぱりお見通しか。あの時刻、ちょうど某国の原水が航行していたらしい。
 おそらくはそれだろうな」
「おいおい、日本の領海じゃないか」
「だから公には"謎"なんだよ」
「なるほど、まあただの国際問題だな。後は政治家連中にお任せか」
 気楽に浩平は言う。
 防衛庁長官という立場に居ながら、こういう政(まつりごと)は気にしない男だ。
「所が、そうでもないんだな」
「ん?」
「こちらの送った調査隊の報告では、既に爆発の余波も収まり海は静かなもんだったらしい」
「結構な事だな、で?」
「それだけなんだ」
「何だ、結局何も無かったんじゃないか」
 がっくりした調子の浩平。
「ああ、何も無かった。原水があれだけ派手に爆発しておいて辺りからは少しも放射能が検出されなかった」
「なんだと……?」
「そして、これが現場の地図だ」
 スクリーンに地図がうつされる。
 それを見て、浩平の顔色が変わった。
「おい、ここは……」
「ああ、2年前、NANASEを沈めた所だ」



 NANASEの逆襲(前編)



 凄まじい爆発だった。
 その衝撃は死の炎と共に海中深くまで達した。
 そして、厳重に封印されたコンテナを直撃した。
 コンテナが壊れる事はなかったが、衝撃でナナセは目を覚ました。
 年月と爆発でいくらか脆くなっていたコンテナはやすやすと粉砕される。
 そしてナナセは荒れ狂う爆発と放射能の中にその身を投じたのだった。



「嫌な予感がする」
「奇遇だな折原、お前もか」
「ナナセはあれでも一応人間だよな」
「あんなにしたのはお前だけどな」
「でも人間なんだから、放射能を吸収するなんて芸当は無理なはずだ」
「いや、あれなら出来そうな気もするけどな」
「どうしてそう悪い方向に考えるっ」
 ずずいと浩平が住井に迫る。
「どれもこれも思い切り可能性があるじゃないかっ」
 負けじと住井もにじり寄る。
「ふぬぬぬぬっ」
「ぐおおおおっ」
「ふんが〜〜っ」
「が〜〜んすっ」
「って、んな事してる場合じゃないか」
「そうだな、最悪の事態を想定して対策を……」
 住井が言いかけた時、緊急通信が入った。
 そして二人の予想していた報告が入る。
 即ち。
 ―――ナナセ復活。



 夜。
 ナナセは暗い海をゆっくりと進んでいた。
 足止めに来た海上自衛隊は、先ほど瞬く間に壊滅。
 今は遠く離れた所から住井の乗ったヘリが追跡をしているのみだ。
「2年ぶりに見るが……また一段とたくましくなってるな」
 見た目に大きな変化はない。
 だが、その体からは生命力がほとばしっていた。
 と、ナナセの前方に小さな灯りが見えた。
 その小さな港町の灯を前にナナセは立ち止まった。
「? 何をする気だ……?」
 住井が訝しむ、その時だ。

 ナナセの両おさげがばちばちと紫電を纏い。

 ごおおおぉぉぉっ!!!

 その口から放射熱線が放たれた。

 かっ

 辺りは白い光に包まれる。
 そして光が消えた後……町は綺麗さっぱり消えていた。
「ばっ、馬鹿なっ!?」
 驚愕の声を上げた住井は慌てて通信する。
「お、おい折原! ナナセの奴、口からなんか吐いたぞ!」
「あん? ゲロか?」
「あほっ! ゲロで町が消えるかっ! なんか熱線みたいなのだ」
「そうか……よし、俺も頑張るからお前も足止め頑張ってくれ」
「お、おいちょっと待て。俺にあんなの止められるわけ……」
「じゃ、よろしくたのむ」
 ぷつっ
 そして一方的に通信は切れた。
「人の話を聞けーーーっ!」
 切れた通信機に叫ぶ住井を他所に、着実に都心へと向かうナナセ。
 果たして、人類の命運はいかに。


 〜次号(?)に続くっ!〜



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