夕日に赤く染まる世界。
制止した世界。
べつに光景が止まっているわけじゃない。
光は動いているし、バイクの加速してゆくエンジン音だって聞こえる。
制止していたのは、それを見ている自分の世界だった。
真夜中、誰もが寝静まった中、遠くに犬の遠吠えや、バイクのエンジン音を聴くのに似ている。
そういうとき、ぼくは属する世界が違うという違和感を覚えるものだった。
聞こえるのだけど、そこにはたどり着けない。
永遠、たどり着けない。
どれだけ歩いていっても、あの赤く染まった世界にはたどり着けないのだ。
それがわかっていた。
そこには暖かな人々の生活がある。
でもそこにはたどり着けないのだ。ぼくは。
ころころ…。
微かな音がした。
それは確かにこちら側の音だ。
(あそこには帰れないんだろうか、ぼくは)
訊いてみた。
(わかっているんだね、あそこから来ってことが)
(ああ、わかる。でも、ほんとうにあの街のどこかに住んでいたわけじゃない)
(そう。すごいね)
(つまり、あっち側の一部だったってことがわかるんだ)
(でもね、旅立ったんだよ、遠い昔に)
(そうだね。そんな気がするよ)
(でも遠い昔はさっきなんだよ)
(それも、そんな気がしてた)
(つまり、言いたいこと…わかる?)
(わかるよ。よくわかる)
ずっと、動いている世界を止まっている世界から見ていた。
一分一秒がこれほど長く感じられることなんてなかった。
もどかしいくらいに、空は赤いままだったし、耳から入ってくる音は、変わり映えしなかった。
ちがうな…。変わるはずがないんだ。
進んでいるようで、進んでいない。メビウスの環だ。
あるいは回転木馬。リフレインを続ける世界。
(世界はここまでなんだね…)
ぼくは彼女に言った。
(飽きたら、次の場所へ旅立てばいいんだよ)
(……そうだね)
ヘッドライトがヘッドライトを追ってゆく。
何度も見ている一定の距離感を置いて。
(あなたはどこへゆきたいの…?)
彼女がぼくに問う。
いつの間にか、彼女は色とりどりの花が咲くただなかを走っていた。
そう、春のイメージだ。
(あなたはどこへゆきたいの…?)
どこへ…。
この終わってしまった世界の、どこへゆきたいんだろう、ぼくは。
(ねぇ、たとえば草むらの上に転がって、風を感じるなんてことは、もうできないのかな)
(ううん、そんなことはないと思うよ)
(そうしてみたいんだ。大きな雲を真下から眺めてさ)
(だったらすればいいんだよ。これはあなたの旅なんだから、好きなことをすればいいんだよ)
そうか。
(あなたはどこへ、ゆきたいの…?)
ぼくがそれに答えようとしたときだった。
髭面のおじさんが野太い声で言った。
『秩父山中』
(え…?)
『ち・ち・ぶ・さ・ん・ち・う』
えいえんはあるよ…
ここにあるよ……
こんな永遠なんて、もういらなかったんだ…
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いいんちょ「ああっ!ついにやってもーたっ!!」
七瀬改「なによ、これ…」
マッド瑞佳「わけがわかんないよ…」
いいんちょ「まあ、わからない人には全然わからないだろうな…」
七瀬改「なによ、それ…」
いいんちょ「いや、ペルさんの鉄の処女(内側に針一杯ついてる拷問具?)を
読んでて思いついた(謎)んだけど…。
初めて書いたちびみずかSS(?)がこれじゃあ、FC除名されかねんな…」
マッド瑞佳「最後に出てくるのって髭先生だよね?」
いいんちょ「投稿しなきゃ良かった…」
七瀬改「一発ネタなわりには長いしね」
いいんちょ「しくしく…。リーフ図書館には収録しないで欲しいな…。
と言う訳で(?)ちびみずかFCに来よう!」
七瀬改「なによ、それ…」
おしまいhttp://www2.odn.ne.jp/~cap13010/