ぐい、ぐい。
里村茜は唐突に袖を引っ張られ振り向いた。
そこにはにこにこと屈託のない笑顔を浮かべる小柄な女の子、上月澪がいた。
「どうしたの?」
茜が聞くと澪はかきかきとスケッチブックに文字を書いて見せる。
『ケーキの作り方、教えて欲しいの』
「ケーキ…?」
『バレンタインなの』
ああ、と茜は納得した。
「チョコレートケーキを作って贈りたい?」
うん、うん。
澪が元気に頷く。
「わかりました。では、一緒に帰りましょう」
澪はやっぱり不器用だった。
卵を割れば殻まで落とし、小麦粉を出せば頭からかぶる。
卵を泡立てさせればボールから何回もこぼしてしまい、分量が足らなくなる。
見かねた茜が澪に言う。
「澪、私が代わりに作りましょうか?」
だが、澪はうーんとねと首を傾げた後、スケッチブックに字を書こうとしてボールをひっくり返す。
中身をかぶってしまう澪。
ひぐっ、ひぐっ。
とうとう半べそをかいてしまった。
「泣かないでください、澪」
そう言って茜はボールを流しに置き、澪を布巾で拭いてやる。
そして、澪にシャワーを浴びてくるように言うと茜は床を片付け始めた。
澪がシャワーを出てくると、香ばしい匂いが台所から漂ってきた。
?と言う顔で台所に立つ茜の元へ行く。
「綺麗になりましたか、澪」
うん、うん。
元気良く頷いた澪は、この香ばしい匂いが何なのか気になった。
『いい匂いがするの』
スケッチブックに書いたその問いに茜が答える。
「ちょうど今スポンジを焼いているところです」
その言葉を聞いた途端、澪の顔が険しくなる。
「どうしました、澪?」
『だめなの』
「え?」
『わたしが作らなきゃだめなの』
「でも…」
『だめなの』
澪が怒った顔で詰め寄った。
「…ごめんなさい、澪」
茜の言葉に澪は表情を和らげた。
「浩平のこと、本当に好きなんですね」
うんっ。
翌日。
澪は、あれから茜に見守られながら更に奮闘して完成させたケーキを持って、家を出た。
しかし、遅くまでケーキ作りに奮闘していたため起きるのがいつもより遅くなってしまった。
遅刻しないように、ケーキを大事に抱えながら澪は道を急ぐ。
と、曲がり角で聞き慣れた声が聞こえた。
「長森、急げっ」
浩平の声だ。
「浩平、前っ」
「え?」
ほえ?としている澪に浩平が突っ込む。
「のわあぁっっ」
どっしーん☆
「ぐあ…」
暗くて前が見えない。
と言うか何かが顔にへばりついてる。
と言うかべたつく。
と言うか甘い。
取り敢えずオレは顔の前にへばりついた物体をどけてみた。
すると、目の前で澪がおろおろしている。
ん?
どけた物体を見ると、それはチョコレートケーキだった。
無残に地面に落ちて潰れている。
…そう言えば明後日はバレンタインデーだったな。
あ…。
おろおろしていた澪はオレが大丈夫だと分かると今度はケーキを見てうなだれている。
えぐっ、えぐっ。
とうとうしゃくりあげだした。
「浩平っ、なに固まってるのっ」
長森の声でオレは金縛りから開放される。
「ほらっ、謝って」
「あ、ああ。澪、ゴメンな」
しゃくりあげながら澪はじーーっとオレの方を見ている。
もしかして…。
「これ、オレにか?」
こくん。
いつものような元気はないものの確かに澪は頷いた。
オレは、地面に落ちたチョコケーキの一部を拾って食べてやる。
「うまいな、このケーキ」
なんか、甘すぎるような気もしたがオレはそう言った。
『汚いの』
澪がそんなオレを見てスケッチブックにそう書いた。
「心配しなくてもちゃんと地面についてないとこ食ってるぞ」
そう言ってもう一口頬張る。
「うん、うまいな。澪、また今度作ってきてくれるか?」
うんっ、うんっ。
澪は元気な顔で頷いた。
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いいんちょ「う〜ん。初めてだな、澪のSSなんて」
詩子「なんで澪ちゃんの話なのにあたしが出てないのよ」
いいんちょ「なにしろ、澪は繭と並んで書きにくいからな〜」
詩子「当然、次はあたしが主人公のSS書くのよね」
いいんちょ「澪は喋れないから、テンポの良い掛け合いとかできないし、
繭は日本語喋らないから(?)テンポの良い掛け合いができない」
七瀬改「同じ理由じゃない。しかも掛け合いって事はギャグしか考えてないって事でしょ?」
詩子「あたしはチョコ作るより、茜にチョコ貰いたいなっ」
いいんちょ「どうせおいらはギャグ専さ。中崎SSだってシリアスのつもりで書いてたんだ(けっこうまぢ)」
マッド瑞佳「でも出来上がったら、ああなっちゃったんだよね〜」
いいんちょ「しかも5話と6話で暴走具合が足りないって偽善者さんに言われる始末…」
マッド瑞佳「もう誰もギャグ以外の物として見てないよね」
詩子「あ、でも手作りのチョコを茜にあげてラヴラヴってのも良いかな☆」
いいんちょ「…詩子、あとがきに出るならちゃんと人の話し聞いて会話に参加してくれ…」
詩子「そうと決まったらチョコ作ろうっと」
いいんちょ「全然聞いてないし…。しかもバレンタインは昨日だぞ」
マッド瑞佳「行っちゃったね、詩子さん」
七瀬改「あ、そうそう」
マッド瑞佳「これ、二人からの義理チョコだよ。一応二人の手作りなんだよ」
いいんちょ「これ取りに行っててさっきいなかったのか。しかし…七瀬の手作り…。不安だ」
七瀬改「なによ。こう見えてもお菓子作りは得意なのよ」
いいんちょ「まあ、確かに料理はともかくお菓子なら大丈夫か…。でも、瑞佳の本命チョコが欲しかったな」
マッド瑞佳「浩平にあげるからダメだもん」
七瀬改「ところで、『ペルさんに負けるなっ!7連SS』はどうなったの?」
いいんちょ「ああ、ヒロイン6人と中崎で話を考えていたんだが…」
七瀬改「考えていたんだが、何?」
いいんちょ「ネタかぶったり、別のキャラの話に吸収されたりしちゃってな。
単独の話としてまだ残っているのは茜と七瀬だけなんだ。で断念せざるを得なくなった。
偽善者さんのとこでちびみずかのリレーSS書いてたりして忙しかったし…」
マッド瑞佳「その割には偽善者さんのところに書き込んだ話、すごく短いよね」
七瀬改「あとがきの方が長いんじゃない?」
いいんちょ「くっ。いや、でもほら、バレンタイン終わっちゃったし…」
マッド瑞佳「さっさと書かないからいけないんだよ」
いいんちょ「いや、だから書く時間がなかったんだ…」
七瀬改「チャットする時間はあるのに?」
いいんちょ「ぐあ…。やっぱりチャットしてるとSS書けなくなると言うのはホントだな」
七瀬改「書かなくなるの間違いでしょ」
マッド瑞佳「PELSONAさんの方は対抗していっぱいSS書いてるよ?」
いいんちょ「くっ。しかし、SSコーナーを活性化させる事には成功したからいいや」
七瀬改「煽っただけじゃない…」
いいんちょ「でも、マジで忙しいんだ。今日なんてまだチャットに参加してないぞ」
七瀬改「昼まで寝てただけでしょ…」
いいんちょ「だって誰も起こしてくれないから…」
マッド瑞佳「はぁっ。それで、書きかけの話はどうするの?」
いいんちょ「う〜ん、完成はさせるけど…。気が向いたら投稿しようかな。
投稿しなくてもHPには掲載するぞ」
マッド瑞佳「そう言えばHP1月中に公開するって言ってなかった?」
いいんちょ「………」
七瀬改「相変わらず計画性ないわね…」
いいんちょ「いいもん…」
七瀬改「って、言ってるそばからチャットすなあぁぁ〜〜〜っっ!!!」
いいんちょ「げふぅっ!!」
チャットのし過ぎには注意しましょう(笑)
おしまい