茜ちゃん忍法帖 第1話 投稿者: いいんちょ
『闘えっ!!七瀬改 番外編 茜ちゃん忍法帖 第1話』

「里村さん、一緒に帰らない?」
「…嫌です」
いつもの学校のいつもの光景。
南が一緒に帰ろうと里村茜を誘い、茜はそれをあっさり断る。
「そんな事言わないでさ。あ、来週からテストだし、一緒に勉強するって言うのはどう?」
「…嫌です。それに今日は大事な用事がありますから…」

「詩子、仕事です」
BOSバーガーの店内。
茜はにんにくデカナイスバーガーをかじっている女性、柚木詩子に言った。
詩子はバーガーを喉に詰まらせる。
「んが、んぐ…」
慌ててオレンジジュースを喉に流し込む詩子。
「い、いきなり机の下から現れないでよ…」
「詩子、仕事です」
無表情に詰め寄る茜…。
「わ、わかったわよ」
「…アップルパイ、もらっていいですか?」
既に茜はその手に持っている。
詩子は頷くことしかできなかった。

『主(ぬし)よ、タネも仕掛けもないことをお許しください』
茜と詩子の声が闇に響く。
一瞬の後、忍び装束に姿を変えた二人が降り立った。
「いくよ、茜」
「…はい」
二人は目の前に立ちはだかる塀を見て言った。
詩子がふわっと空中に身を躍らせる。
物音一つ立てずに塀の上の立った詩子はロープを垂らして茜が登ってこれるようにした。
ゆっくりと茜が登ってくる。
「茜、早くしないと見つかっちゃうよ」
「…これで精一杯です」
「仕方ない…」
詩子はそう言うと懐から何やら取り出す。
背中に背負った忍者刀の先に糸を括り付け、取り出した物を結び付けた。
それを茜の登る速度に合わせて鼻先に垂らす。
と、茜の登るスピードがぐんっと上がった。
そして糸の先に食らいつく。
糸の先に括り付けられていたのはたいやきだった。
「ほら、早く登れたじゃない」
「…詩子、ひどいです」

2日前――
滅多に参拝客の訪れることのない初秋の神社で手を合わせる女性が1人。
「浩平のテストの点数が上がりますように」
小さな声で、その女性は呟くと踵を返し手水舎の隅で水垢離をする。
そして再び社の前で手を合わせる。
「浩平ちっとも勉強しようとしないんだもん。一緒に3年生になれるか心配だよ」
何度も往復しながら女性は呟いた。
「何とか今度の中間テストはいい点とって貰わなきゃ。勉強できるように改造してあげようとしたら浩平嫌がるし…。
わたしにできる事はもうこれくらいしかないもん」
御百度参りを続ける長森瑞佳を、茜は社の裏からじっと見ていた。
「幼なじみのために御百度参りまでする健気な乙女…。
これは、彼女の願いを叶えなくてはいけません」

がさっ。
植え込みに身を潜ませた二人は建物の方を窺った。
今回の彼女たちのターゲットは2学期の中間試験の模範解答だ。
だが、外部にそれが漏れるのを防ぐため総ての解答は校長の自宅の金庫に隠されている。
健気な少女の願いを叶えるためにはそれをなんとしても奪取しなければいけないのだ。
全身黒ずくめの見回りの男が二人の隠れる植え込みの傍を通りすぎていく。
「…今です」
茜は詩子に合図して屋敷の中へと駆け出した。
「詩子、三歩先に地雷があります」
「オッケ〜」
「詩子、赤外線センサーです。右手を頭の上において腰を45度傾けて左足から歩いて下さい」
「わかった」
茜が罠を次々と発見し、二人は屋敷へと近付く。
「詩子、10メートル先にバイオ粒子反応があります。伸身マルケロフ一回ひねりで飛び越えて下さい」
「鉄棒ないんだけど…」
「…冗談です」
と、さっきとは別の見回りの男が行く手を塞ぐように現れた。
詩子が身構える。それを茜が制した。
「大丈夫です、詩子」
その言葉の通り男は何事もなかったように通り過ぎていく。
「茜、どうして分かったの…?」
「あの人、夜なのにサングラスかけてます」
「…ホントだ」

二人は難なく屋敷へと入る。
と、いきなりサイレンが鳴った。
「なにっ!?」
詩子が叫ぶ。
その声に応えるかのように何処からともなく声が響いた。
《はっはっはっ。テストの模範解答を盗みに来る元気な生徒、校長先生は好きだぞ。
でもズルはいけないなぁ。お仕置きが必要だ》
その言葉を合図に二人の行く手にシャッターが下りてきた。
「茜っ!」
詩子はそう促し走り出す。
だが、あと一歩というところで間に合わなかった。
「仕方ありません。いったん戻りましょう」
「そうね」
だが、戻りかけた二人の目の前でやはりシャッターが下りてきた。
「あ、あかね〜。閉じ込められちゃったよ〜〜」
詩子がそんな事を言って茜に抱きつく。
ちゃっかり顔を胸に埋めたりしながら…。
「詩子、ここでは人目があるから駄目です」
オイオイ、何を始める気だ…。
「…詩子、あのシャッター破れますか…?」
「う〜ん、試してみるね」
詩子はそう言って茜から離れるとシャッターの前に立つ。
背中の刀を抜き放ちぶら下げた。
「はぁーっ!」
詩子の息吹とともに刀が振り下ろされる。
がきぃぃーんっ!!
だが、柚木家に伝わる名刀『九字兼定』をもってしてもシャッターは破れなかった。
シャッターと言ってもその厚さと強靭さは周りのベトンの壁と何ら変わりはないだろう。
「詩子でも駄目ですか…」
と、壁の上部に10センチ四方の穴がいくつも空き、そこから白濁色の液体が流れ出した。
《溺れない程度に反省しなさい》
そんな言葉が密閉された空間に響く。
「わっ!」
壁に近いところに立っていた詩子はその液体をかぶってしまった。
「あかね〜〜」
また泣き顔になって茜に抱きつこうとする詩子。
「れんにゅう…」
「え…?」
「それは、練乳です」
そう言って茜の方から詩子の方へにじり寄った。
思わず詩子は後退る。
「そうなんだ…」
「詩子、動かないでください」
そう言うと、茜は詩子に飛びかかった。
「きゃ〜〜☆」
茜はちょっと嬉しそうな詩子の服を脱がし、それについた練乳を舐め出す。
「おいしいです」
一通り舐め終えると、くるりと詩子の方をむく。
詩子の身体にはまだ練乳がべっとりだ。
「そっちもおいしそうです」
「きゃ、茜、そんなとこ舐めちゃ…。あぁん…」
………。
……。
………。
「はぁ、よかった…」
しなを作りながら詩子がへたり込む。
「ごちそうさまでした」
茜は練乳をなめつくして満足そうだった。
ちなみに部屋を埋めつくさんと穴から出ていた練乳も全部茜のお腹の中だ。
「そろそろ脱出しましょう」
まだへたり込んでいる詩子を尻目に茜はそう言うと左のおさげの中をごそごそと探る。
「ありました」
そう言って茜が取り出したのは、ロケットランチャーだ。
それを肩に乗せて構える。
「詩子」
「あ、ちょっと待って」
そう言うと詩子は周りに散らばっていた服をかき集め、慌てて身につける。
そして、ロケットランチャーを支えた。
『発射ーーっ!!』
どおぉぉ〜〜〜んっっ!!!
轟音と共にシャッターが破壊され、道が開けた。
慌てたような声が、通路の奥の、ぼろぼろになったスピーカーから聞こえる。
《こ、高校生が、ロケットランチャーなんか携帯しちゃあいかんぞっ》
誰が持ってても銃刀法違反だ…。多分…。
「…聞く耳、持たないです」
そう言うと、茜は更にロケットランチャーを発射した。
《ま、待て。模範解答は渡すから、これ以上儂の家を壊さないでくれ…》
「…わかりました」

「綺麗なお月様だね…」
長森瑞佳は窓から外を眺めながら、猫に話しかけた。
と、窓に数枚の紙の束が落ちてくる。
「…?」
瑞佳はそれを手に取り見てみる。
「わっ!これ試験の答えだよ。これを浩平に見せたらきっと喜ぶもん」

夜の街を走る影。
乙女の味方、忍者茜ちゃん。
「わたしもいるよ」
と、他1名。
「あんな事言ってるよ、茜」
「…違います」

試験当日――
「…問題が違ってます」
テストは茜の奪った物とは違う問題に直されていた…。
まあ、当然の処置ではある。
「長森、おまえのせいだぞっ!」
「わたし悪くないもん」
「い〜や、おまえのせいだ。
おまえが『これがあればいい点が取れるよ』なんて言うから暗記してやったのに。
ぜんぜん問題が違ってるじゃないか。
まったく、無駄な努力させやがって」
「普段から勉強してればいいんだよっ」
「なに〜〜」
「なによ〜〜」
「ふかーっ!」
「うーーっ」
そんな、二人の威嚇し合う声がいつまでも教室に響いた…。


もしかしたら続くかもしれない…

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いいんちょ「…オレは結局、何を書きたかったんだろう?」
七瀬改「柚木さんと里村さんの○ズシーン…?」
いいんちょ「いや、違うはずだ。でも、ちょっと書きたかったかも…」
マッド瑞佳「じゃあ、わたしの健気なところ」
いいんちょ「それも違う。いずれ書きたいが」
七瀬改「じゃあ、折原と瑞佳の威嚇しあうシーン」
いいんちょ「まあ、それはいつでも書きたいな。瑞佳とのシナリオ(?)中でも5本の指に入る好きなシーンだからな。
『闘えっ!!七瀬改』の中では書けそうにないシーンだし」
マッド瑞佳「セイント・○ール?」
いいんちょ「いや、漫画もTVも見た事ないし…。人から聞いた事のある部分しか知らないからな。
書こうと思っても無理だ。それにまてつやさんが七瀬使って既に書いてるし」
七瀬改「これってあたしが転校してくる前の話よね…」
いいんちょ「まあな。あ、そうだっ!『闘えっ!!七瀬改』の中の茜の裏設定に触れるために書こうと思ったんだ」
マッド瑞佳「佐織と詩子さんが予告で言ってた話だね」
七瀬改「…ぜんぜん内容違うじゃない。あんまり面白くないし…」
マッド瑞佳「里村さんのファンの反感買うかもしれないね」
いいんちょ「ぐぅ…。書き直す時間がなかったんだ…。でも今週は毎日書くって言っちゃったし。
ホントはこんな筈じゃ…。しくしく…。
気に入らない人は読み飛ばして下さい」
七瀬改「あとがきで言っても遅いって…」

おしまい