金持ちなだけじゃ駄目かしら3 投稿者: いいんちょ
七瀬留美…。
僕は彼女の事が気になっていた。
初めはただの見てくれだけのバカ女だと思ってた。
わざわざ僕が構う価値もないような。
だが、折原と繰り返される漫才を見ているうちに、いつの間にか、折原と同じく彼女がいないと学校がつまらないと思いはじめていた。
そして、昨日の漢字テスト。
不思議な女性だ。
見た目のかわいさとは裏腹の、がさつそうな本性は折原との会話でのみ垣間見える。
そして、さりげなく発揮される知性。
このクラスで、僕とつりあう女性がいるとしたら長森さんだけだろうと思っていた。
だから、これはとても意外な事だった。
彼女が普段何を見て、何を考え、何をしているのか。
僕が今知りたいのはそういう事…。

「中崎〜」
不意に僕にかけられる声。
声の主は住井護。
折原たちと組んでよく暇つぶし企画を考える奴だ。
まあ、こいつも僕の退屈を紛わせてくれる人物の1人という事だ。
だから、話しかけられたら邪険にはできない。
「どうしたんだ、住井」
「あと、おまえを入れて3人だけだぜ、投票してないのは」
そうなのか。
今は誰が一番なんだろう…。七瀬さんかな…?
って何で長森さんが最初に浮かばないんだ、僕は…。
「今、どんな状況なんだい?」
「途中経過か?まあ、おまえには教えてやるよ。
現在のトップは七瀬さんだ。で、2位が2票差で長森さん。で、3位は里村さんだ」
里村…?ああ、なんか人形みたいな綺麗な娘がいたな。
しかし、そうか。七瀬さんがトップか。
彼女について何かが一つ明らかになるにつれ、その人気は高まっていくのかもしれない。
でも、長森さんもやはり凄いな。
僕が彼女に入れて、他の2人も入れたなら逆転も有り得る。
どうせ入れるなら、僕に相応しい女性に入れたいな。
しかし、どっちの方が僕に相応しい素敵な女性なんだろう…?
………。
……。
…。
まだ、わからないな…。
「悪い、住井。他の2人を先にあたってくれ」
「まだ、決めかねてるのか…?」
「まあ、そんなところさ」
「じゃあ、仕方ないな」
そう言うと住井は去って行った。
授業が始まり、取り敢えず僕はいつものように折原と、そして七瀬さんの席の方を眺めていた。
だが、今日に限って折原は何もしない。
どうした、折原。おまえのコメディアン魂はその程度だったのか…?

ぐるるるる…
……?
5時間目の授業中、相変わらず折原が何かしないかと期待して見ていた僕は、不意にそんな音を聞いた気がした。
気のせいかな。
ぐるるるる…
いや、気のせいなんかじゃない。
確かに聞こえる。
しかし、どこからだ…?
ぐるるるる…
また。
と、七瀬さんの隣の女生徒が首をかしげる。
だが、他の生徒は気付いた様子がない。
つまりは、音源は七瀬さんか折原の辺りという事になる。
…そうか、折原が七瀬さんになにかしたのか。
僕はそう結論し、二人をじっと見守る事にした。
「ぐるるるるるるる…」
…折原が突然唸り出した。
なんだ、折原の唸った声だったのか。
授業中に無意味に唸るとは、相変わらず変な奴だ。
と、僕は気付いた。
七瀬さんの顔色が悪い事に。
どうしたんだろう…?
「ぐるるるるるる…」
折原はまだ唸っている。
いつまで唸ってる気だ…?
そんな事では僕から笑いはとれないぞ、折原。
すると、まるでその僕の考えが伝わったかのように、折原は唸るのを止めた。
そして七瀬さんに何事か話しかけている。
何を話しているんだ…?
気になった。自分でも不思議なくらいに。だが…。
「中崎、次を読んでみろ」
二人の会話に全神経を集中して聞き取ろうとしていた僕は心中で舌打ちした。
面白い話をしているに違いないだろうが仕方ない、諦めるか。

チャイムが鳴り、授業が終わると折原は七瀬さんを担ぐようにして教室を出ていった。
僕も後を追う。
すると、折原を残して七瀬さんはどこかへ行ってしまった。
しばらく折原を見ている。
廊下を見回していて、何かを始める気配があったからだ。
「ふぅ…」
「お、七瀬。良くなったか?」
折原の言葉に視線を動かすといつの間にか七瀬さんが戻ってきていた。
そして、折原のきらきらした目が元に戻っていた。う〜ん残念。
「うん、おかげさまで」
「そりゃ良かった」
「でも、なんかおかしな感じ。食あたりとかじゃなくて下剤飲まされたって感じ。
ほんとう、何事もなかったみたいにすっきりなんだもの」
そうか、トイレを我慢していたのか。
って事はあの音は七瀬さんのお腹…?
僕の席まで聞こえるなんてすごいお腹だな…。
「おまえの腸が強靭すぎるだけだ。ナイフで切断したって一日でくっつきそうだ」
「くっつかないっ!」
「なんにしても、人気を損なうようなことにならなくてよかったな」
「ま、そうね」
クラス内の人気を落とさないために授業中ずっとトイレを我慢していたのか…?
あ、そういえば折原の奴七瀬さんに人気投票のお知らせ見せてたな。
その結果に響く事を気にして、か。
しかし、そのために青い顔をしてまで我慢していたのか。
僕はその忍耐力に驚いた。
僕にはとてもそんな事はできない。
少しでも人によく見られようと努力を惜しまない七瀬さん。
僕はますます興味が湧いた。

「中崎〜」
「ああ、住井か。いま、どうなってる?」
「もうおまえだけだぞ投票してないのは。
いま、長森さんと七瀬さんが同点首位だ」
つまりは誰がトップになるかはすべてこの僕にかかっているという訳か。
他人の運命をこの手に握っている感覚。
悪くはないな。
こう言う感覚は僕のように選ばれた人間でもそうそうしょっちゅう得られるものじゃない。
「中崎、おまえは誰に入れるんだ…?」
誰に入れるか。
いま、最も興味を持っている女性…。
それは既に決まっていた。
僕はその名を書いて住井に手渡した。
そう、それは七瀬留美だった。

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マッド瑞佳「今回短いね」
いいんちょ「感想がたまる一方なんで、いま書けてる分だけ小出しにしようと本編を短くしたんだが。
というか、暫く中崎の話はお休みのつもりだったのを無理矢理途中まで書き上げたというべきか」
七瀬改「どうりで雑ね。感想も一週間以上前のものばっかりだし…」
いいんちょ「それは言わないでくれ…」
七瀬改「とっとと感想行きましょ」


ニュー偽善者R様
・ONE総里見八猫伝大蛇の章 第十一幕
どんなに悲しい事件があっても、浩平と瑞佳がじゃれあってるのを見ると安心できますね。
話が進んでもそう言う部分が残ってるといいと思います。
で、ちょっとだけ突っ込み。
9世紀初頭の時点では、確か佐渡の金山は開発されてません。(開発は16世紀ごろ)
当時の金は奥州がその生産のかなりの割合を占めています。
あ、突っ込まれるの嫌でしたら言って下さい。

・ちびな悩み
いや〜。偽善者さんに嫌われないで良かった(笑)
しかし、流石ですね。
偽善者さんにはあのクイズでは簡単すぎましたか。

・緊急募集!なぜなにONE猫スペシャル!
一応出演希望って事で…。
なんか、募集からだいぶ経ってますが、まだOKですかね?
OKなら希望設定メールで送ります。


変身動物ポン太様
・激突!! 第二章 (第一話)
七瀬の目配せの受け取り方が浩平らしくていいな。しかも美男子星人だし。
しかし…まるで展開が読めない…。
第一章読んでないからかなぁ?

・激突!! 第二章 (第二話)
…冒頭の二人って誰…?
おおっ!マッド瑞佳が出てる(笑)
しまった。ジェノサイドバスターって七瀬V(ヒロイン大戦仕様)とかぶってる?


YOSHI様
・乙女チックごーいんぐまいうぇい!〜その2〜
あれ…?その1もしかして読み損ねたかも…。
しかし七瀬親衛隊って…。最後に出てきたのは澪かな?


えいり様
・恐怖の牛乳
牛乳ご飯。
そうか、瑞佳にも茜とタメ張る物があったんだ…。
しかし、一口食べただけで気を失うとはおそるべしっ牛乳ご飯!!


PELSONA様
・ダイエットは大変だなぁ
食事の量を半分に減らしてもなおラーメン6杯、チャーハン4人前、餃子3人前とは…。
…1ヶ月後には浩平が太ってる気がする…。
ところでPELSONAさんも信長やってるんですね♪


WILYOU様
・青空の重さ(1)、(2)
これってちびみずか…?
みさおが死んでるって事はそうだと思うけど…。
う〜ん。難しいです。(←理解能力皆無)


七瀬改「以上で〜す♪」
いいんちょ「…もしかして、かわいく言ってるつもりか?」
七瀬改「かわいいでしょ?」
いいんちょ「気持ち悪い」
七瀬改「なんじゃと〜われぇ〜っ!!」
いいんちょ「げふっ…」
マッド瑞佳「はぁっ…。ほんと、余計な事ばっかり言って七瀬さんを困らせるんだから…」
いいんちょ「おまえに言われたくないぞ…。しかし三日続けて投稿とは我ながらすごいな。
きっと偽善者さんやPELSONAさんもびっくりだ。
そうだ、今週はSS週間として毎日投稿しよう。土日は無理だけど…」
七瀬改「それよりとっとと感想追いつかせなさいよ」
いいんちょ「…できるだろうか?」
マッド瑞佳「やらなきゃ駄目だよ」
いいんちょ「まあ、最善は尽くそう…」
七瀬改「どうせ、口だけよね」
いいんちょ「しくしく…」

おしまい