闘えっ!!七瀬改第2話その2 投稿者: いいんちょ
『沈黙のバトルッ!その2』


「こんにちは〜〜。部活の見学をさせて頂きたいんですけど、いいですか?」
元気あふれる声が、部屋に響き渡る。
その声を聞いて、演劇部部長の深山雪見は奥の部屋から顔を覗かせた。
声の主は七瀬留美。まだ転入してきてからあまり経っていない彼女は、今日も部活の見学にいそしむ。
「いらっしゃい。あなたね、この前転入してきた2年生って…」
「え…?なんで知ってるんですか?」
ちなみに深山が七瀬改=七瀬留美だと言う事に気付いていないのはお約束だっ!
「あ、うん。この前折原君に聞いたからね。同じクラスなんでしょ?」
「あ、はい。その、折原何か言ってました?」
「ええ。
『ほんとは相撲部にでも入った方がいいくらいパワフルな奴だから、なにか備品壊すかも知れないけど大目に見てくれよなっ!根はいい奴だから』
って言ってたわよ」
七瀬のこめかみは破裂寸前だ…。
「折原君どこにいるか知りませ〜〜ん?」
七瀬はひきつった笑顔で深山に訊ねた。
「さあ?あ、そう言えば部室で昼寝するって言ってたわね」
「部室?」
「ええ。軽音楽部だって言ってたわよ」
深山の言葉が終わると同時に七瀬は走って去っていった。
「見学、いいのかしら…?」
だっだっだっだっだっだっ。キキィ〜〜。
戻ってきた七瀬は肩で息をしながら再び演劇部のドアを開けた。
「すいません。軽音楽部の部室ってどこですか?」

『いやなの』
澪は首をふるふるとしながらスケッチブックにそう書いた。
それを見た瑞佳の顔が曇る。
「住井君、話が違うよ」
「ごめんね、長森さん。でも、ここまで嫌がってるのに無理に改造する事もないんじゃないかな」
「でも、それじゃ七瀬さんと闘えないよ」
その言葉に澪がスケッチブックを見せる。
『大丈夫なの』
皆がそれを見たのを確認すると、澪は再びスケッチブックに何かを書き込む。
『たたかえるの』
「だって、相手は七瀬さんだよ。七瀬さん。七瀬さんなのに〜〜。
あの七瀬さんに普通の人が勝てる訳ないよ〜」
その言葉に澪は再びスケッチブックに向かう。
が、その手からぽろりとペンが落ちた。
澪がそのまま倒れそうになるのを、住井が受け止める。
「こんな事もあろうかと、さっきの寿司に眠り薬を仕込んでおいたのさ」
中崎がそんな事を言った。

「くぉらぁああっ!折原っ!!起きんかぁああああ〜〜〜〜〜いっ!!!」
七瀬は軽音部の部室のドアを開けると同時に叫んだ。
七瀬の咆哮を聞いた文化系の部員たちが何事かと廊下に顔を覗かせる。
辛うじて入れ違いに七瀬は部屋の中に入ったので顔を見られずに済んだ。
見られていたら文化系の部から、これから先、見学を断られるところだったであろう。
「って、誰もいないじゃない」
部室の中には誰もいない。
「おかしいわね。部屋間違えたのかしら」
が、入り口に戻ってみると確かに軽音楽部と書いてある。
七瀬はそこでふと思い付いた。
「そうよ。折原がすぐ分かるようなところで寝てる訳ないじゃない」
そう呟くと七瀬はまず、ロッカーの中を調べる。
「…なんでラグビーボールと竹刀が入ってるのかしら…?」
取り敢えずロッカーを閉める。
しかし、他に身を隠せそうなところはない。
「まさか、机の下とかっ!」
七瀬は謎はすべて解けたとばかりに机の下を覗き込むがやはり見つからない。
と、七瀬は机の上に鞄が置いてあるのに気付いた。
「これって、折原の、よね」
何も入ってないのではと思えるほどの軽さの鞄は確かに折原浩平のものである。
「どこに行ったのかしら…?」
呟きながら鞄を元に戻す。
「…何かしら、この紙」
七瀬は鞄に挟んである紙に気付いた。
「なになに…『折原浩平は預かったの。返して欲しかったら明日の放課後、地図にあるところまで来るの』
…なにこれ?」
七瀬はしばらく考え込む。
「…ま、どうせまた折原の冗談ね。相手にするだけ無駄よね」
そう言って七瀬は紙をごみ箱へ捨て、部屋を出た。

次の日。
折原浩平は学校へは来なかった。
「…まさかね」
胸中で生じる不安を七瀬はかき消す。
「んあ〜〜。今日は折原に住井、中崎、南、南森それから長森が欠席か。
なんか、多いな」
髭がそんな事を言っている。
(――瑞佳も欠席?)
なんとなく嫌な予感がする。胸中の不安が形を持たないままだが大きくなっていくのが分かる。
「みゅ〜〜♪」
七瀬のおさげにぶら下がる少女。
「みゅみゅ〜〜〜♪」
「…はぁっ」
七瀬はため息を吐く。
「やっぱり、こうなるのね…」
折原浩平と長森瑞佳という保護者のいない今、繭の暴走を止められるものはいなかった。
「放課後、か…。
折原なんていなくても良いような気はするけど、これ何とかするためにはしょうがないか…」

「さて、と…」
すべての授業が終わり、七瀬は席を立った。繭はまだぶら下がっている。
「ねえ、そろそろ離してくれない?」
「みゅ〜〜?」
繭は疑問符を浮かべながらも一瞬その手を離した。
「チャ〜ンス」
素早く七瀬はその場から離れる。
「みゅ〜〜〜〜」
繭がなんか言ってるがきっぱり無視だ。
と、里村茜がやってきて七瀬を呼び止める。
「…七瀬さん。浩平知りませんか?」
「え…?」
「昨日、一緒に帰る約束をしていたので部室に迎えにいったら鞄だけ残していなかったんです…。
それに…今日も休んでます」
「さ、さあ?風邪でも引いたんじゃないの…?」
七瀬はそう言って廊下に出ようとしたが、茜は通してくれない。
「七瀬さん、嘘、ついてますね」
「うっ…」
茜が詰め寄り、七瀬はたじろぐ。
「…今からどこへ行こうとしてたんですか?」
「め、珍しくよく喋るのね」
「…どこへ行こうとしてたんですか?」
話題を転じようと七瀬は試みるが、しょせん茜とでは役者が違った。
「…べ、別にこれから別校舎へなんて行かないわよ?」
「…分かりました。私も一緒に行きます」
茜がそう言った時、既に再び繭は七瀬のおさげにぶら下がっていた。

美術室や音楽室などの特別教室が並ぶ別校舎の奥の部屋。
そこが指定された場所だった。
2人が扉の前に来ると、そこには、『立ち入り禁止』と書かれている。
「…鍵がかかっています」
茜は扉を確かめ言った。
と、茜はヘアピンを取り出し、伸ばして棒状にする。
その先端をL字に曲げると鍵穴に突っ込んだ。
ややあってカチャン、と音がした。
「…開きました」
「何でそんな簡単に開けれるのよ…」
だが、茜は扉に手をかけたまま動かない。
「どうしたのよ」
「開きません。電子ロックもかかっています」
茜に言われて脇を見ると、確かに電子ロックがあった。
「…なんでそんなものまでついてるのかしら」
そんな事を呟く七瀬に茜が心底困ったという感じに言う。
「…電子ロックははずしたことありません」
「諦めるしかないわね」
「…嫌です」
七瀬改の状態ならいとも簡単に蹴破れる扉だが、生身ではさすがに難しいだろう。
だからといって茜がいるのに変身する訳にはいかなかった。
「でも、しょうがないじゃない。
だいたい向こうはここを指定してきてるんだから、外で待ってればそのうち姿を現すんじゃないかしら」
「…駄目です。こういう時、後手に回っては不利ですから」
茜は一体今までどういう生活を送ってきたのか非常に興味が湧いたが、七瀬は恐いので聞かないでおいた。
しかし、茜がここまで浩平を助けようとする理由が分からない。
「ねえ、何でそんなに折原を助けようとするの?」
「…そんな事ありません。ただ、鯛焼き屋を探す約束を守って欲しいだけです」
結局甘いものが第一だったりする…。
「はっはっはっ。よく来たな」
不意にかけられる声。
扉の向こうからだろうか、廊下には姿が見当たらない。
と、その声が急に勢いをなくす。
「…あれ?なんで七瀬さんがいるんだ?
里村さんを呼び出したはずじゃ…」
明らかにそれは困惑していた。
別の声が割って入る。
「バカッ!マイク切れ!マイクッ!」
しばらく物音が続いた後、それが途切れる。
「…?」
茜と七瀬は顔を見合わせた。
ややあって再び声が響く。
「ふはははっ。2人揃ってきてくれるとは好都合。さあっ、来るがいい。地獄への道程をっ」
その声に反応してキーが解除された。
そして開いた扉の向こう側には、薄暗い空間と、更なる闇へ誘わんとする地下への階段がある。
「行くしか、ないわね」

階段を降りると、その先には真っ直ぐ廊下が伸びているのが、間隔を置いて脇に並ぶ燭台によって分かる。
どこまで続くのか分からない一本道。
「どうしてこんな物が学校の地下にあるのかしら」
七瀬は呟く。
「…七瀬さん」
不意に茜が七瀬を呼んだ。
「え…?」
「そこ、罠です」
茜の言葉が終わらないうちに、ガコン、と音がして七瀬の鼻先を掠めたものがあった。
それはそのまま壁に突き立つ。
「って、ぎゃ〜〜〜」
七瀬のあげる、乙女とは程遠い悲鳴に動じる事無く茜は飛んできたものを観察する。
「…大丈夫です。毒は塗ってありません」
茜は七瀬に、手にした矢を見せながら言った。
表情一つ変えない茜の様子に、七瀬はますます茜が分からなくなった。

「…そのブロック、罠です」
「え…?って、ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜」
「みゅ〜」

「そこ、赤外線センサーがあります。ってもう引っ掛かってますね」
「ぐぁ…」
「みゅ〜〜〜♪」

「七瀬さん、そのボタンいじっちゃいけません」
「………。ゴメン」
「みゅ?」

どれほど歩いたのか。
時間の感覚も狂うほどの暗闇をしばらく歩いていた2人(+1匹?)は、不意にひらけた場所に出た。
ちなみに七瀬が一体どれだけの罠に引っ掛かったのか、そのボロボロの姿から推して知るべし、である。
さながら小ホールのようなその場所は円形で、奥の方が一段高くなっている。
その先に立つ4つの人影。
「よく来たな。折原浩平は我らの後ろの扉の奥だ。助けたければ我らを倒す事だ。
行けいっお前達っ!!」
『だよも〜〜ん!!』
全身タイツのようなものを身につけた戦闘員3人が七瀬と茜に襲い掛かる。
「うお〜〜〜七瀬さんの制服は俺が貰ったっ!!」
「いや、僕だっ!!」
3人のうちの2人が同時に七瀬に飛びかかった。
「なに晒すんじゃへんた〜〜いっ!!」
あっさり2人は撃ち落とされた。
「あんた達、顔見せなさいっ」
そう言って七瀬は2人の覆面を剥ぎにかかる。
「させるかっ!」
命令を出していた仮面の男が七瀬から2人を庇うように前に出た。
七瀬は飛び退って距離をとる。
「次はあんたね」
七瀬はそう言って仮面の男との距離を詰める。
七瀬の繰り出した突きは仮面の男に容易に避けられた。
(やっぱり、変身しないと駄目ね…)
七瀬の攻撃を余裕を持って避けながら、仮面の男は残る一人の戦闘員の方を窺う。
「里村さんっ好きだ〜〜〜〜」
ぺし。
おさげの一撃を受けていとも容易く沈黙するみな――もとい戦闘員3。
「…使えんな、こいつら」
男が呟く。
「やむをえんっ!!」
男がそう言うと部屋のあちこちから煙幕が吹き出た。
その中に男は姿をくらます。
「あっ待ちなさい」
七瀬が追うがおさげにぶら下がり続ける繭が邪魔で挙動が遅れる。
既に姿は見えなくなってしまった。
「まだいたのね、繭…」
「みゅ〜〜♪」
「きゃっ」
煙幕の向こうで上がる悲鳴。
七瀬は叫んだ。
「どうしたのっ、里村さんっ!」
だが、返事はない。
代わりに男の声が響いた。
「ははははは。里村茜は頂いていくぞ。さあ、追ってくるがいい七瀬留美。
いや、改造人間七瀬改」
「!?」
七瀬の顔に驚愕の色が浮かぶ。
「そんなっ!瑞佳と浩平以外に私の正体がばれてるなんてっ!!」
だが、もはやそれに応えるものはない。
煙が晴れた広間には、もはや何も残されてはいなかった。


つづく…んじゃないかな

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佐織「これからのっ!」
詩子「あらすじ〜〜〜〜〜!!キャーッ!!!」
佐織「…詩子ちゃんテンション高すぎ…」
詩子「そんなことないよ」
佐織「唯一の仲間、里村さんまでさらわれてしまった七瀬さん」
詩子「そして遂に姿をあらわす怪人スタッバー澪ちゃん」
佐織「果たして七瀬さんは上月さんを倒し折原君と里村さんを救えるのか」
詩子「キャーッ!澪ちゃんかわい〜〜〜」
佐織「詩子ちゃん、詩子ちゃん、ちゃんと予告やろうよ…」
詩子「あ、ごめんね佐織ちゃん。かわいい怪人、澪ちゃんの兇刃が七瀬さんに迫るっ!!」
佐織「次回」
詩子「闘えっ!!七瀬改」
佐織&詩子『沈黙のバトルッ!(その3)』
詩子「茜って何者なんだろ」
佐織「わたしに聞かれても…」


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マッド瑞佳「変身シーンまでいけなかったね…」
七瀬改「ところで投稿の順序間違えてない?」
マッド瑞佳「いいんだよ。この方が読みやすいもん」
いいんちょ「もぐもぐ…」
マッド瑞佳「何食べてるの?」
いいんちょ「これか?ワッフルだが…」
七瀬改「とうとう茜萌えに変わった訳ね。今回、彼女瑞佳より出番多かったし。ま、あたしは出番結構あったけど」
マッド瑞佳「…そうなんだ。じゃあもうわたしたち要らないよね。つっこみ茜ちゃんにでも来てもらったら?」
いいんちょ「何でそうなる。単に家の近くにワッフル専門店があるから買ってきて食ってただけだ」
マッド瑞佳「それって蜂蜜練乳ワッフル?」
いいんちょ「あんな物が実在してたまるかっ!
これは生クリームワッフルと新発売の苺ワッフル、そして小倉と生クリームのワッフルだ。
ちなみにさっきまでは抹茶クリームもあったが異次元イブクロンにみんな食われた」
??「うぅっ、ひどいよ〜〜〜」
マッド瑞佳「…?」
七瀬改「何か聞こえなかった?」
いいんちょ「いや、幻聴だろ。取り敢えずこの小倉と生クリームのワッフルはお勧めだぞ。
一つずつやろう」
七瀬改「ありがと」
マッド瑞佳「珍しいね、何かくれるなんて」
いいんちょ「そうか?(ニヤリ)」
七瀬改&マッド瑞佳『もぐもぐ…』
七瀬改「ぐ…ぁ……」
マッド瑞佳「甘すぎるよ、これ〜〜」
いいんちょ「どうだ、蜂蜜練乳にも負けないこの甘さっ!
オレも最初に食ったときは胸焼けがしたぞ」
七瀬改「そんなん食わすな、ぼけぇっ!!!」
マッド瑞佳「ひどいもん(ポチッ)」
いいんちょ「ぎゃあぁぁぁ〜〜〜」
七瀬改「まったく…」
いいんちょ「わ、わるかった。お詫びにこの苺ワッフルもやろう」
七瀬改「ありがと」
マッド瑞佳「今度は大丈夫だよね」
いいんちょ「ああ、大丈夫だ」
七瀬改&マッド瑞佳『もぐもぐ…』
七瀬改「ぐ……あ………」
マッド瑞佳「!!」
いいんちょ「どうした…?あまりの美味さに声も出ないか?」
七瀬改「すっぱい…(>*<)」
マッド瑞佳「うぅっ…。なんでこの苺こんなに酸っぱいんだよ」
いいんちょ「そりゃ、あんな甘いもの食った後じゃすっぱいだろ」
七瀬改「分かってんなら食わすなっ!!」
いいんちょ「ぐはっ!!むぅ、ナイスキック」
七瀬改「パンチだって…」

おしまい