闘えっ!!七瀬改第二話その3 投稿者: いいんちょ
『第二話 沈黙のバトルッ!その3』


「ははははは。里村茜は頂いていくぞ。さあ、追ってくるがいい七瀬留美。
いや、改造人間七瀬改」
仮面の男の笑い声が響く。
「くっ!!」
七瀬ははやる心を押さえる。
(折原に続いて里村さんまで…。
クラスメイトが2人も誘拐されたのに黙っていたら、乙女がすたるわっ!!
何としても救い出さなきゃ)

ナレーション『友を思う心…友情が熱く身体を突き動かす時、体内の漢(おとこ)回路が働き、七瀬留美は改造人間七瀬改へと変身するのだっ!!」

七瀬は左手を腰の辺りに溜め、右腕を斜めに上げそのまま半回転させる。
そして腕を入れ替えて同じようにすると、胸の辺りが輝いた。
「とおっ!!」
七瀬が高く跳ぶ。
ぼて。
すたっ。
軽い音をたてて着地したのは、紛れもなく七瀬改であった。
「うわああああぁぁぁあん!!」
地面に落ちて泣く繭。
変身シーンが台無しだった。

ガコ…ン……。
鉄の、重い扉を開く音。
コッコッコッ…。
虚ろに響く足音。
七瀬改は広間から奥の通路へと歩き出した。
その表情は硬い。
(折原に里村さん、無事だといいんだけど…)
七瀬改の後ろを繭はついて歩く。
変身時に振り落とされた繭は再びおさげにぶら下がろうとした。
七瀬改にはおさげにサボテンが仕込まれている。
むろん、繭は知らない。
しかし、動物的な勘で危険を察知して思いとどまった。
「みゅ〜〜〜」
漠然とした不安を感じてか、繭は七瀬改の制服の袖にしがみついた。

大画面に映し出される七瀬改の映像。
瑞佳はそれを見ている。
「あ、繭…。繭まで七瀬さんがいいの?」
その声は悲しそうだ。
「はあ〜〜。疲れたよ、プロフェッサー瑞佳」
住井護はそう言いながら仮面を外し、身を包む黒ずくめを脱ぎにかかった。
下にはなぜか、ちゃんと制服を着ている。
「はぁっ。みんな、あんなに簡単に負けるなんて情けないよ」
瑞佳の言葉の先には気を失っている3人の男がいる。
中崎、南、南森だ。
「でもプロフェッサー、ちゃんと目的は果たしたよ」
住井がソファに寝かされた茜を示す。
「住井君だけだよ、ちゃんと役に立っているのは」
事実そうであった。
改造手術では助手を務め、怪人の闘いを利用して資金を作り、戦闘にあっては目的を必ず果たす。
住井護はこれ以上ない腹心ぶりを発揮している。
住井は今入ってきた扉の方を見ながら言う。
「次は、彼女の番だね」

なぜそこにアレがいるのだろう?
なぜ、あたしを見てソレは鳴くのだろう?
「ニャーニャー」
「ミャー」
「みゅ〜〜っ」
七瀬改の立っている数メートル先には、ダンボール箱があった。
中身は…。
「ニャー」
「ミャー」
「ンナー」
「みゅ〜〜〜〜♪」
「う、うぅっ」
(これは罠よっ!どう見ても不自然じゃない)
だが、七瀬改の頭脳は別の事を計算中だ。
そして結果が出た。
捨て猫と乙女の定番率―82%
「ああっ!そんな目であたしを見ないでぇ」
「みゅ?」
七瀬改の抵抗もそれまでだった。
何も考える事ができずにダンボールの中の、3匹の小猫の1匹を抱き上げる。
「捨て猫に優しくほお擦りをする。乙女にしか為せない技よね☆」
ガシャーン。
天井から檻が降りてきて七瀬改を閉じ込めた。
「ああっ!」
「みゅ〜〜〜〜」
罠だと分かっていながら乙女であるが故に、ついつい嵌まってしまった自分にちょっとだけ七瀬改は酔っている。
と、通路脇のドアが開き小柄な女の子が姿を現した。
スケッチブックを持っている。
『………』
暗いためになんて書いてあるか読めない。
チュイーン…。
七瀬改のアイゲージがたまる。
その双眸から強力な光が放たれた。浩平の目の奥まで届く強力な光だ。
『はじめましてなの』
ただの挨拶だった。
「あ、はじめまして」
七瀬改も挨拶を返しておく。
(どこかで会ったような…?)
少女が再びスケッチブックを見せる。
『たたかうの』
「え…?」
七瀬改が呆然としているうちに目の前の少女はスケッチブックを脇に置き、その手にはいつの間にか包丁が握られている。
その目つきがかなりヤバそうだ。
ヒュオッ。
風を切る音がして、七瀬改の髪の毛が数本ぱらぱらと落ちる。
「え…?」
「みゅっ」
事態を把握できぬまま、七瀬改は本能で迫り来る兇刃を避ける。
「ちょっ、なんでっ」
しかし七瀬改の呼びかけに少女はこたえる事はなく、ただ檻の隙間から刃を繰り出すだけだ。

住井と瑞佳はそれをモニターで見ていた。
「さて、七瀬さんは彼女をどうやって倒すのかな」
そう呟いて住井はふと、疑問を抱く。
「そう言えばプロフェッサー。今回の手術ではなにを改造したんですか?」
住井はいろいろと裏工作をしていて、改造手術全般を把握する間もなく助手を務めていたのである。
いったい七瀬改に対する切り札はどんな物なのか。
かわいい顔で殺人的に凶悪な行為をしている小柄な少女、上月澪。
その身体に、どんな改造を施したのか。
だが、長森は一言だけ言った。
「舌でさくらんぼのへたが結べるようになったんだよ」
…………。
………。
……。
…。
たっぷり4秒の間をおいて住井は聞き返す。
「へ…?」
「だから、舌でさくらんぼのへたを結ぶことができるようになったんだよっ」
「地味すぎぃ〜〜〜〜〜!!」
思わず住井は叫んでいた。

「こ、これじゃいずれやられるっ!」
七瀬改はまたも辛うじて澪の繰り出した包丁を避けつつ唸る。
いくら七瀬改の身体能力が優れていようと、檻という狭い空間で避け続けるのには限界があった。
「ならばっ!」
七瀬改は澪の繰り出す攻撃に構わず、檻の格子に飛びついた。
がしっと2本の格子を掴む。
その二の腕を澪の攻撃が掠める。
「ぐっ」
だが、七瀬改は怪我など気にしないでそのまま両腕に力を込めた。
「乙女の底力っ!カイナ・クラァ〜ッシュ!!!」
「みゅみゅ〜〜〜〜っ」
その言葉と共に、格子が飴細工よりも容易くぐにゃりと曲がった。
『びっくりなの』
澪がいつの間にかスケッチブックにそう書いていた。
「よくもやってくれたわね」
七瀬改の周りの温度が10度は上がっている。
七瀬改がじりっと詰め寄れば澪もささっと後退る。
『ごめんなさいなの』
澪はそうスケッチブックに書いたが、七瀬は聞く耳(?)を持たない。
必死になって頼るものを探し澪は周りを見回すが、誰も見つからない。
えぐっ…。
七瀬改の歩みが止まる。
えぐっ、えぐっ…。
澪がしゃくりあげる。
「え…?ちょっと待ってよ」
七瀬改の慌てた声に構わず澪は今にも泣きそうな顔だった。
「待ってってばっ!」
そう言うと七瀬改は澪の頭を優しく撫でた。
「ほ、ほら。もうお姉ちゃん怒ってないわよ〜〜」
ひきつった笑顔で何とか澪を慰めようとする様は、かなり間抜けである。
澪は少しだけ泣き止み七瀬改の顔を見る。
と、澪はいきなりさくらんぼを取り出す。
「…?」
訳の分からない七瀬改を尻目に澪はそれを口に含んだ。
もご。
もごもご。
もごもごもご。
そして舌を出す。
その上には見事に結ばれたさくらんぼのへたがあった。
「こ、これはっ!!!」
「みゅ〜♪」
七瀬改の頭脳が急回転を始めた。
乙女がさくらんぼのへたを舌で結べる事の定番率―71%
「これよっ!!」
七瀬はガッツポーズを作る。
「ねえ、あとで私にもそれ教えてくれない?」
『わかったの』
「じゃ、あたしは先急ぐから」

「住井君、データは採れた?」
「はい、プロフェッサー。
漢度(おとこど)8ポイント、筋力12ポイント、反応速度6μ秒、エネルギー効率7%の上昇を確認しました。
漢回路は確実に成長しています」
住井の声に満足そうに長森は頷く。
「もうすぐだよ。もうすぐ浩平が私を見てくれるようになるもん」
「プロフェッサー、もうじき七瀬さんがここにも来ます。早く撤収しましょう」
「分かったよっ」
そう言うと長森は、一瞬、茜と別のソファに寝かされている浩平に近づこうとして思い止まる。
「長森、さん…」
住井の声はどこか悲しそうだった。

「うおりゃ〜〜っ!折原、おきんかあああぁぁぁあいっ!!!!」
「みゅっみゅみゅ〜〜〜〜〜っ!!」
七瀬改は扉を思いっきり蹴破った。
そこは既にもぬけの殻だ。
巨大モニターに豪華なソファ。猫のぬいぐるみ。冷蔵庫。キッチンにトイレ。
入り口からはそんな物が目に入る。
モニターには校舎からここに至るまでの各所が映し出され、ソファには…。
「折原っ」
七瀬改は駆け寄り浩平の体を揺さ振り声をかける。
「大丈夫?しっかりしてよ」
「みゅ〜〜」
繭も心配そうに声をかける。
「う〜〜ん、長森、あと10ヘルツ寝かせてくれ」
「…単位がおかしいわよ、折原」
「なんか七瀬みたいな喋り方だな」
「寝ぼけてないで起きてよ」
「声も七瀬みたいだ…ってうわぁっ!!」
「あ、起きた」
「驚いたぞ。まさか長森に七瀬の変装ができるなんて…」
「みゅ?」
七瀬改はため息を吐く。
「…冗談だ」
「冗談に聞こえないわよ」
「みゅ〜〜〜〜」
繭は嬉しそうに浩平に抱き着いた。
「…ところでここはどこだ?」
「別校舎の地下よ」
「何でこんなところにいるんだ、オレは」
と、浩平が疑問を口にした時遠くから爆発音が聞こえた。
放棄した基地は爆破していく。
マッドサイエンティストのお約束である。
「早く逃げないとっ」
七瀬改は別のソファで眠っている茜に駆け寄ろうとする。
「まて、七瀬。変身といてからにした方が良いぞ。茜にばれると困るんだろ?」
「そ、そうね」

数分後、別校舎の地下で起こった爆発により校舎その物が傾いた事は言うまでもない…。


つづく…ような気がする

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佐織「これからのっ!」
詩子「あっらすじぃ〜〜〜!!キャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
佐織「詩子ちゃん…」
詩子「だって嬉しいんだも〜〜ん♪」
佐織「密かに人気が上がるあたしたち2人」
詩子「調子に乗って遂に本編に登場かっ!?」
詩子&佐織『遂にあたしたちの時代が来るのね?』
佐織「果たして何かネタはあるのか?」
詩子「未だかつてない無謀な企画に、作者が根性を入れて挑むっ!!」
佐織「次回」
詩子「闘えっ!!七瀬改」
詩子&佐織『戦士の休息』
佐織「ほんとにやるの?」
詩子「うん♪せ〜のっ」
佐織「ぅぁあああああ兄貴ィーッ!!」
詩子「ゥウーッス!!!」

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七瀬改「実はネタ何にも考えてないでしょ?」
いいんちょ「うん」
マッド瑞佳「ねぇ、私の出番少ないよ…」
いいんちょ「すまん、瑞佳。でも今までのパターンからするとその3における瑞佳の出番は少ないんだ…」
七瀬改「どういうこと?」
いいんちょ「つまり、その1では瑞佳と怪人にされる女のコとのやりとり。
その2で事件が起こってその3で怪人と七瀬改の対決という感じだな」
七瀬改「だからその1ではいつもあたしの出番はほとんど無いのね…」
いいんちょ「で、3回で話を終わらせるにはちょうど良いペース配分なんだが、マンネリ化するなぁと。
予告もそろそろ読んでる人が飽きてこないかと心配したり…」
マッド瑞佳「それで煮詰まってたんだね」
いいんちょ「いや、澪は喋れないから扱いづらくて悩んだんだ」
七瀬改「でも今回も同じペースで終わったじゃない。どうするのよ」
いいんちょ「どうしよ」
七瀬改「結局何も考えてないんじゃない」
いいんちょ「取り敢えず次は、1回で終わる話にしようと思ってる」
マッド瑞佳「改造させてくれないの?」
いいんちょ「う〜〜〜ん…」
七瀬改「ま、こいつはほっといて感想行きましょ、瑞佳」
マッド瑞佳「いいのかな」


しーどりーふ様
・カプチーノな朝 髭編!?
髭!?しかも剃ってる。剃り跡が青い?
さらにホ○ネタ!!う〜〜ん(←うなされている)


天ノ月紘姫様
・川の流れに・・・・(その1)〜(その3)
茜を2度も襲う辛い別れ。
そこから、茜を救おうとしたのが同じ記憶を忘れてしまった詩子だったというのが皮肉ですね。
しかし…詩子ってやっぱり……いや、考えるのはよそう(笑)


GOMIMUSI様
・二人で走ろう(改題・走る!少女たち)
う〜ん結構難しいっス。
何とか歌えるようにはなったけど…。


てやくの様
・『映画部作品=ONE&MOON.===NUKE』;br>
さりげなく(そんな事ないか)浩平が晴香を年増呼ばわりしてるし…。
晴香の攻撃で年寄りにされてたりして(笑)


パル様
・遠い空の向こうから
みさおの悪戯に乙女とは程遠い逃げ出し方をする七瀬…。
やっぱり七瀬はギャグキャラ、なんだろうなぁ。


ニュー偽善者R様
・ONE総里見八猫伝大蛇の章 第三幕
浩平を助けるためにがんばる瑞佳の姿が良かったです。
えぐい話ってどんなのだろう(笑)

・こんな幸せな日常2
うわ〜い続きだっ♪
フライパン攻撃…。やられたくないなあ。
やっぱりキスで起こされたい(←バカ)
みんなで牛乳を飲むシーンが笑えました。


変身動物ポン太
・激突!!外伝2”良く晴れた冬の朝には”
主を手に入れるためなら茜は何でもやりそうだ…。
しかし、南も茜に主をプレゼントすれば少しは報われる可能性もあるだろうに…。
ん?このネタ使えそうだ(謎)

・忘却者達の鎮魂歌 (1)
大丈夫ですよ〜。私もバッドは繭しか知りません。
しかし、村ってのが良かったなあ。


まてつや様
・繭とサラダ♪
ジャムパンに激甘ワッフルにクレープにキムチにテリヤキバーガー…。
既にサラダとは、いや、食べ物ではない何かのような気が…。
みさき先輩の好きなものとしてカツカレー入れてたら完璧だ(何が?)


かっぺえ様
・おねくえすと 第五章
えいえんはあるよ攻撃は仕掛けた人間に仕掛けられた人間が好意持ってないと駄目なんですね。
しかし、南…おまえってやつぁ…。犯罪はいかんよ。
みさき先輩のぼけっぷり(?)が良かったです。


よねぴん様
・なんか、ゲームのエンディングのシーンからエピローグへの繋がりの部分みたいな感じで良かったです。


まねき猫様
・ある日の翌日≪中編≫
罠って氷上が仕掛けたのかな?
なんでだろう?最後に出てきた男女とか師匠って…。
ああっ気になるぅ。


七瀬改「こんな物かしら?」
マッド瑞佳「うん。もうなさそうだよっ」
七瀬改「でも、こいつの事だからなんか抜けてるかもしれないわね」
いいんちょ「抜けてたらごめんなさい」
マッド瑞佳「次はヒロイン大戦だね」
いいんちょ「ぐあ…」

おしまい