闘えっ!!七瀬改第2話その1 投稿者: いいんちょ
『第2話 沈黙のバトルッ! その1』


「浩平っ!」
七瀬改とみさきのバトルが終わった、麗らかな午後の休み時間。
折原浩平はいきなりの呼び声に昼寝を邪魔された。
「なんだ、瑞佳か。どうしたんだ?」
「どうしたんだじゃないよ。浩平こそ制服の上着、どうしたんだよ」
みさきと七瀬改の大食い(早食い?)対決を見ていた瑞佳は知っていたが、敢えて浩平の口からその事を聞きたかった。
「ああ、熱心なファンに持っていかれた」
「嘘だよっ!そんなファンいる訳ないよっ!」
「なんだよ、この前デートに誘おうかって言ったら、『浩平の事好きなコが悲しむ』って言ったのおまえじゃないか。
だったらファンがいてもおかしくないだろ」
「う〜〜〜」
浩平は瑞佳に嘘を付いている。
特に意味もなく適当にあしらわれただけなのだが、瑞佳には浩平が自分に嘘を付いたという事の方がショックだった。
「あのコ、名前は知らないけどあのコがいると邪魔だもん。七瀬さんと一緒で邪魔だよ…。
住井君っ」
「なんだい、長森さん」
「浩平の制服を持っていったコについて調べて欲しいんだよ」
「わかったよ長森さん」

次の日。
「お〜い、せんぱ〜い」
午後の授業も終わり、これから部室へ行って昼寝でもしようかと思っていた浩平は、顔見知りの姿を見つけて声をかけた。
そこに立っているのは川名みさき。かばんを持って幼なじみの深山雪見と立っていた。
「浩平君、こんにちは」
駆け寄ってきた浩平にみさきは挨拶を返す。
「また上着なくなっちゃったね」
「ああ。でも、もう慣れた」
「声が震えてるよ…?やっぱり寒そうだよ」
「じゃあ先輩が温めてくれ」
「どうやって?」
「いや、色々と…」
「よく分からないけど、嫌だよって言っておくよ…」
前にも繰り返されたやりとりをするみさきと浩平に深山が質問する。
「折原君は、いま帰り?」
「いや。ちょっと部活にでも行こうかなと…」
「浩平君ってなに部なの?」
みさきの言葉に浩平は少し間を置いて応える。
「…帰宅部」
「………」
「それは部活じゃないわよ」
「いや、ほんとは軽音楽部なんだけど…」
「うちにそんな部活あったっけ?」
みさきの疑問はもっともだ。
「ま、部員みんなが幽霊だしな。さしずめ幽霊船だからな。
で、先輩は?」
「元気だよ」
「いや、そうじゃなくて部活には入ってるのか?」
「入ってないよ。これから帰るとこなんだよ」
その言葉に深山が突っ込みを入れる。
「みさき〜。あんたはこれからうちの部活の手伝いでしょ」
「う〜〜。浩平君、雪ちゃんからお金を借りちゃ駄目だよ」
涙目でそんな事を言うみさき。
「みさき先輩、もう怪我は大丈夫なのか?」
「うん。いっぱい食べたからね」
「………」
思わず川名家のエンゲル係数が気になった浩平だったが、恐いので聞かないでおいた。
そんな話をしていると、浩平は突然背中に重いものを感じよろめいた。
「ぐあっ…って澪か」
澪が満面の笑みを浮かべて浩平の前に回り込む。
そしてスケッチブックを見せた。
『お洗濯終わったの』
澪はスケッチブックと紙袋を重ねて両手で持っていた。
紙袋を受け取り中身を取り出す。
「お、ありがとな。おかげで綺麗になったよ」
「………」うんっ、うんっ。
元気よく頷くと、再びがしっと抱きついた。
「澪、動きにくいんだが…」
「折原君、よっぽど上月さんに気に入られたみたいね」
「………」うんっ。
「うぅっ、寂しいよ〜〜」
みさきがそんな声を上げるがみんなで無視した(オイオイ)
「それじゃあ上月さん、私たち先に部活行くわよ」
『わかったの』
みさきと深山が去っていくと、澪は反対へと歩き出す。
「部活へは行かないのか?」
『かばんを取りに行くの』
そう言って(?)澪も去っていった。
「ま、オレも部室に行くか…」
そう言って浩平もそこを後にする。

「待たせたね」
住井がそう言って姿をあらわす。
皆、部活なり帰宅なりで既に誰もいなくなった教室。
沈黙の中に佇む、ただ一人の少女を除いて。
再び、住井が言う。
「待たせたね」
少女が振り向いて言った。
「遅いよ、住井君」
「ごめんね、長森さん」
「それで、なにか分かった?」
瑞佳の言葉に、住井はレポートを手渡す。
その表紙に書かれている名前を瑞佳は口に出す。
「上月…澪」
さすがに瑞佳はその漢字を読む事ができるようだ。
「そう、彼女の名前は上月澪。この学校の演劇部に所属する1年生さ。
どうやら何らかの理由で喋ることができないらしい。
さすがに3サイズを調べる時間はなかったけど、高校に入ってからの成績、誕生日や血液型、家族構成まで調べておいたよ。
ちなみに多分まだ処女――」
ばふっ!
「そんなこと調べてどうするんだよっ!住井君」
瑞佳にネコのぬいぐるみを投げつけられた住井は軽く服を払い言う。
「ごめんよ、長森さん。
で、どうするんだい?」
「まずはこのコを捕まえてきてよ、住井君」
「また七瀬さんと闘わせるんだね」
「そうだよ」
「心配しなくても既に手は打ってあるよ。僕にいい考えがあるんだ」

「……」…?
澪が教室に戻るとその戸口に円盤のようなものが置いてあった。
何だろう、と近寄ってみると、それは皿であった。
その上には…。
『お寿司なの』
皿の上には赤貝の握りが載っていた。
拾い食いをしてはいけない、という母親の言葉が脳裏に浮かんだ。
しかし、本能には逆らえなかった(笑)
『おいしそうなの』
澪は鞄の事はすっかり忘れて寿司に飛びつく。
そして皿の端に垂らしてあった紫に少しだけつけて口へと運ぶ。
澪の顔が歓喜に満ちた。
『この赤貝の歯ごたえがなんとも言えないの』
本当なら料理漫画ばりの解説をスケッチブックに書きたかったが、誰に見せる訳でもないし紙が残り少ないのでやめておく。
と、澪が満足して立ち上がると少し離れたところに今度は烏賊の握りがあった。
その隣には、「寿」の字が入った湯呑みにお茶が入っている。
『気が利いてるの』
澪はお茶をずずっと啜って赤貝の味を口から流し、今度は烏賊の握りを食べる。
そうして季節物の平目や蛤、穴子と食べていき大トロを食べた澪は満足そうにお茶を啜った。
『もうお腹いっぱいなの』
ふと周りを見ると、そこは来た事のない場所だった。
校舎内である事は確かだが、1年生である澪には来た事のない場所は幾らでもある。
『ここはどこ?なの』
と、男の声が聞こえてきた。
「ようこそ、上月澪さん」
そして姿をあらわした男に澪は見覚えが無い。
『こわいの』
スケッチブックにそう書くと、首をふるふるとする。
「怖がる事はないよ。ただ君に協力して欲しいだけなんだ」
だが、澪は警戒の色を強めるだけである。
『だれなの?』
「おっと、これは失礼。僕は中崎勉。この学校の生徒、2年生だよ。
さっき言ったように君に協力して欲しい事がある。
引き受けてくれたら、もっとお寿司をごちそうしよう。
どうだい?」
『う〜〜〜ん』
真剣に悩み出す澪。
「ま、取り敢えず話だけは聞いてよ。ここじゃなんだからこっちの部屋へ来てくれるかい?」
『分かったの』
2人は側の扉の奥へと姿を消していった。

浩平はほとんど誰も立ち入らない部室のドアを開ける。
「扉を開けると見知らぬ美少女が窓際に立っていた…。
なんてことはないんだよな〜〜」
そう言って部屋の隅の机に鞄を置くと、特にやる事もないので机に伏せる。
どんな所でも、どんな時でも寝ようと思えば寝られるのが折原浩平の得意技の一つである。
そして、しばらくして寝息が部屋の沈黙をわずかに破るだけの空間ができる。
遠くの運動部の掛け声も、ほとんどここには聞こえてこない。寝るには絶好の場所だ。
もっとも聞こえていたとしても浩平の睡眠を妨げるものにはなり得ないだろう。
ガラ。
沈黙を破る音があった。
「浩平?寝てるの?」
瑞佳だ。
後ろには住井と南森がいる。
瑞佳は浩平に近付いていき、軽くつついてみる。
反応はない。
さらに揺すってみる。
「う〜〜〜ん。長森、あと3年寝かせてくれ〜〜」
思わず猫のように飛びすさる瑞佳。
「浩平、起きてるの?」
だが反応はない。どうやら寝言のようだった。
「住井君、大丈夫だよ」
その言葉に従い、住井と南森が入ってきて浩平を両脇から抱える。
「でも、浩平をさらってきて何をするの?」
「前回のように、ただ七瀬さんに怪人をぶつけるんじゃなくて罠を張って待ち伏せた方がいいと思うんだ。
こいつはその為の囮だよ」
「ふ〜ん。よくわかんないけど住井君に任せるよ」
「それからさっき中崎から連絡が入って、上月さんを買収する事に成功したそうだよ。
やっぱり無理矢理怪人にするのはよくないからね」
「じゃあ、思う存分手術していいんだね」
瑞佳はなぜか嬉しそうだった。


つづく…だろう

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佐織「これからのっ!!」
詩子「あっらすじ〜〜〜〜!!」
佐織「澪ちゃんの買収に成功した瑞佳たち」
詩子「さらに住井君は七瀬さんを陥れるべく罠を張り巡らせるぅっ!!」
佐織「詩子ちゃん、なんか興奮してない?」
詩子「そんなことないよっ」
佐織「そして瑞佳たちによってさらわれた折原君」
詩子「果たして七瀬さんは待ち受ける罠を突破できるのかっ!!
とらわれの王子様を救うために今っお姫様が立っち上がるぅっっ!!!」
佐織&詩子『ああっ2人の恋の行方はっ!?』
佐織「次回」
詩子「闘えっ!!七瀬改」
佐織&詩子『沈黙のバトルッ!(その2)』
詩子「私たちも本編に出番欲しいよね」
佐織「うんっ☆」


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七瀬改「ちょっと、あたしの台詞どころか出番も全然ないじゃないっ!
前回の予告じゃ出番があるかのように聞こえたけどっ!!」
いいんちょ「(無視)どうだ、瑞佳。出番多いだろ」
マッド瑞佳「住井君も出番多いよ。長い台詞なんか考えるとわたしより台詞も多いもん」
いいんちょ「う…。じゃあ、次回で住井は殉職する事にしようか?ちょっと煮詰まってるし…」
七瀬改「あたしを無視するんじゃないわよパ〜〜ンチッ!」
いいんちょ「ぐわっ!まったく、暴力的な女だなぁ。ああ、やだやだ。瑞佳はこんな風になるんじゃないぞ」
七瀬改「あんまりそんな事言ってるとあたしのファンを敵にまわす事になるわよ…」
いいんちょ「うぐっ…それは避けた方がいいかも…」
七瀬改「だいたいあんた、某所のONE病診断であたしに萌分率26%だったじゃない。
どうしてあたしにそんな態度がとれるのよ。跪くくらいしなさいよ」
いいんちょ「いや、いくら萌えてもそこまではせんぞ、普通」
マッド瑞佳「跪いて欲しいんだよっ」
いいんちょ「ははっ」
七瀬改「あんた、人間としてのプライド棄ててるわね…」
マッド瑞佳「だって、わたしには萌分率35%だったもん。もうキャラ病だからね〜〜」
七瀬改「ONE同化症なんだって、あんた。ま、無理もないわよね、去年のクリスマスの所業考えれば…」
いいんちょ「うぐっ…。言い返せない」
七瀬改「ちゃんとあの後フォローしといたの?」
いいんちょ「だから口もきいてくれないんだってば(T_T)
一応クリスマスのやり直しを企画(?)してるんだけどね」
マッド瑞佳「…まさか、教室に呼び出したりしてONEシンクロしないよね」
いいんちょ「そこまでの勇気は持ちあわせておりません(^^;;」
七瀬改「どんなこと企画してるの?」
いいんちょ「そうだな、先ずはプレゼントとは別に、彼女はぬいぐるみが好きだから、今年の干支にちなんでうさぎのぬいぐるみでも…」
七瀬改「で、そいつにバニ山バニ夫って名付けるのね」
いいんちょ「な、なぜわかる!?」
七瀬改「ばぁか」
マッド瑞佳「ほんと、ばかだよねぇ。ちなみにね、茜病も併発してるんだよ。萌分率31%で」
七瀬改「SS書かせるよりこいつの場合社会復帰させる方が先決のような気がするわね…」
いいんちょ「ううっ。あいかわらず酷い言われようだ…」

おしまい