闘えっ!!七瀬改第一話その2 投稿者: いいんちょ
お詫び
前回の話で川名みさきが目が見えているかのような言動をしていた事をお詫びします。


佐織「これまでのっ!」
詩子「あらすじ〜〜〜!!」
♪(音楽スタート)
詩子「舞弦学園に通うカイト君の前に現れた転校生コレ――」
佐織「詩子ちゃん、それゲーム違うよ」
詩子「あれっ…?」
佐織「長森瑞佳は高校2年生。
今日も幼なじみの折原浩平くんと毎朝の日課となった学校までの1500mダッシュをする幸せなひとときを満喫していました」
詩子「しっか〜しっ。そんな2人の前に現れた乙女チック転校生七瀬留美。
彼女はあろう事か浩平くんにちょっかいをかけまくります。
さらにっ!彼女は秘密裏に実行されたクラスの女子の人気投票で乙女チックぶりを発揮し、なんと1位を獲得、浩平くんと喜びを分かち合います」
佐織「そんな彼女に対する嫉妬が極限にまで達したとき、瑞佳はある事に気付きました」
詩子&佐織『あれは演技に違いないっっっ!!!』
佐織「瑞佳はそんな七瀬さんがヒロイン・ザ・ヒロインの座を手に入れ、さらに浩平くんまで手に入れる事が許せません」
詩子「浩平にちょっかいかけるなんて許せないもんっ!お嫁にいけない身体にしちゃうんだよっ!!」
佐織「瑞佳は七瀬さんに一服盛り、さらに改造手術を施すことにしました」
詩子「きゃっ瑞佳っ、なにするのっ!」
佐織「そう言って脅える七瀬さんのメッキを剥がすべく瑞佳は彼女に『漢回路』を埋め込んだのです」
詩子「ところがっ!!そうして恋のライバルを減らした長森さんの前に新たなライバルが出現しますっ!」
佐織「彼女の名前は川名みさき。いっこ上の先輩です」
詩子「そして再びライバルを排除すべく長森さんは川名先輩に一服盛り、改造手術を施そうとしたのですっ!!」
詩子&佐織『ああっ川名先輩の運命やいかにっっ!!!』
詩子「ねぇ佐織ちゃん、これってまるで長森さんが主人公みたいだよね」
佐織「うん☆」

『第一話 怪人異次元イブクロンあらわる その2』


「う…ん……」
「目が覚めましたか、川名先輩」
暗闇に響く男の声。
「誰…?」
その言葉に、別の声、女性のそれがこたえる。
「わたし?私は長――」
「わ〜〜〜〜〜」
女性の声を打ち消すように男の声がかぶさる。
「だめだよ、名乗っちゃ」
「そうなの…?わかったよ、住――」
「わ〜〜〜〜〜〜〜〜」
暗い部屋に響く大声に眉をひそめながらみさきは訊ねる。
「ここは…?」
「ここは秘密の手術室だよ」
「手術室…?」
「うん。川名先輩の目を見えるように手術したんだよ」
その言葉にみさきの顔が輝く。
「えっ!?じゃあ、私、目が見えるようになったの?」
「うん。でも目が見えるようになるにはたくさんのエネルギーが必要なんだよ」
「エネルギー?」
みさきの言葉に女性の声がこたえる。
「たくさん食べて、エネルギーを供給すればいいんだよ」
そう言って、背後の男に声をかける。
「あれを持ってきてよ、住――」
「わ〜〜〜〜〜」
大きな声を上げて男が何かを差し出した。
それを女性がみさきに差し出す。
「このサングラスをかけるといいよ。いきなり眩しい光を見るのは目によくないもん。
ついでに副作用で目から光線が出るようになったから気を付けてね☆」

朝の清々しい空気を感じながら七瀬留美は物思いに耽っていた。
そんな彼女に声をかける人物がある。
「よおっ、七瀬、おはよ〜〜」
「あ、うん、おはよ」
七瀬留美は後ろの席の折原浩平に挨拶を返した。
「どうした、七瀬?元気ないな」
「え…?そんなことないよっ」
「そうか…?ならいいけど…」
そう言って浩平は席に着いた。
(言える訳ないじゃない。瑞佳に改造手術されたなんて…)
七瀬が悩んでいると担任が姿をあらわす。
「んあ〜〜。みんな席に着け。出席とるぞ〜〜」
こうして日常の一コマが再び始まった。

休み時間になると浩平は廊下に向かう。
その先には深山雪見の姿があった。
「折原くん、おはよ」
「おはよう先輩。みさき先輩は見つかったか?」
浩平の言葉に深山は少し顔色を曇らせる。
「それが、まだなのよ。昨日は家にも帰ってないんだって…。
まったくどうしたのかしら…」
そう言う深山は本当に心配そうな顔をしていた。
みさきは目が見えないのだ。そのことを思うと余計に心配が増してくる。
もっとも、みさき自身はその事を喜ばないかもしれないが…。
「みさきのお母さんがね、今日も帰ってこないようなら警察に届けるって…」
深山の、幼なじみを思う気持ちを目の当たりにして浩平はふと、自分の幼なじみの事を思った。
彼女も今日は学校に来ていない。いや、みさきが姿を消した昨日の午後からいないのだ。
それでも朝、浩平が起きれたのはある意味、僥倖といえるかも知れない…。
因みに住井もいなかったのだが、浩平は気付いてもいなかった(笑)
(もしかして長森がいないのもみさき先輩と何か関係があるのか…?)
だが、瑞佳の親から瑞佳について何か聞かれるような事はなかった。その事からすると瑞佳は家に帰っているのかもしれない。
そんな事を考えていた浩平に深山が声をかける。
「…折原くん。また後でみさき探すの手伝ってくれない?」
「ああ、いいよ」
その言葉を聞いて深山は少しだけ安心したような顔で教室へと戻っていった。
それを見送ると浩平はトイレへと向かう。
用を足して再び廊下へ出る。
ごんっ。
急に視界が暗くなる。額に衝撃があった。
というか痛い…。
「ううっ。いたいよ〜〜〜」
浩平はその声に聞き覚えがあった。
額を両手で押さえる女性。
その、薄い色のサングラスの下に見える、涙を浮かべた表情が何とも愛らしい。
そう、なぜかサングラスのようなものをかけている。
「みさき先輩…」
「え…?浩平君……なの…?」
「ああ」
その浩平の返事を聞いてみさきは慌てたように立ちあがる。
「先輩…?」
だが、その声が聞こえた様子もなくみさきは走ってその場を去っていった。

き〜んこ〜んか〜んこ〜ん。
2時間目のチャイムが鳴る。
と、同時に滑り込んでくる二つの人影があった。
「はぁっ、はぁっ、大遅刻だよっ」
「そうだね、プロフェッサー」
「今は長森さんっ」
「オッケ〜、長森さん」
そんな2人を見ながら浩平と七瀬はそれぞれ複雑な表情を浮かべていた。

昼休み。
「よおっ里村。偶然だな」
里村茜の前の席に陣取り浩平は後ろを向いてそう言った。
どこから偶然という単語が出てくるのか謎である。
しかし声をかけられた本人はもう慣れたといった感じで弁当を広げ始めた。
「おっ、そのコロッケうまそうだな。一つくれない?」
「…嫌です」
そんなやりとりをしている2人に食堂から戻ってきた南がげんなりとしながら言う。
「折原、席は貸してやるからパン一つくれないか?」
「…どうしたんだ?食堂で食ってきたんじゃないのか?
まさか金が無いとか…」
「おまえとは違う。食堂で凄い騒ぎがあってとても食事ができそうな様子じゃないんだよ」
「はぁ…?どういう事だ?」
「なんか3年の先輩が食堂にたてこもっているらしいんだ」
……3年の先輩…?
……食堂にたてこもる…?
浩平の脳裏にある人物の顔が浮かんだが、あまりに馬鹿らしいのでかぶりを振ってそれを打ち消した。
「ま、嘘だと思うなら見てこいよ。百聞は一見に如かず、だ」
浩平はその言葉に従うように廊下へと向かう。
「あっ、どこ行くの浩平」
瑞佳がそれを呼び止めた。
「食堂で飯を食おうかなって思っただけだよ」
「えっ…?どうせなら私の席で一緒に食べようよ」
「やだよ」
「じゃあ私も行くよ」
「来なくていいって。それに長森、おまえは友達と食べてる最中だろうが」
「う……ん……」
そう言って浩平は再び廊下へと向かいかけたが、ひとりで行くのもなんなので七瀬を無理矢理誘う。
「七瀬、食堂で食わないか?」
「え…?もうお弁当広げちゃったから…遠慮しとくわ」
「おっ、このカツ貰いっ」
「あ〜〜〜っ!!」
「はっはっはっ。これでまたカツサンドにクラスチェンジだ。
これ以上取られたくなかったら一緒に食堂行こうな」
「うぅっ」
そんな2人のやりとりを瑞佳は嫉妬のこもった目で見ている。
「う〜〜〜。わたしが一緒だと駄目でも七瀬さんならいいんだ…」
そう言うと瑞佳は佐織達に一言言って浩平達より少し遅れて食堂へと向かった。

「みさき〜〜〜っ!!馬鹿な事はやめなさ〜〜〜いっっ!!!みんなに迷惑かかってるでしょっっっ!!!!」
食堂に近付いた2人の耳にそんな叫びが届いた。
「ぐあっ…。やっぱりみさき先輩だったのか」
人ごみを掻き分けていくと、最前列で食堂の入り口に立った深山が食堂の中に向かって叫んでいた。
「深山先輩…」
「みさき〜〜!!!って、あら、折原くんじゃない」
「どうしたんです…?」
「どうしたもこうしたも…。とりあえず見てよ…」
ため息を吐きつつ指をさす深山に従って食堂の中を覗き見る。
そこにはひたすら食事をしているみさきの姿があった。
しかも周りに散乱している皿、サラ、さら……。どんぶりやお椀もたくさんある。
「みさきったらやっと見つけたと思ったら、
いきなり食堂占拠して全メニューを食べ尽くすんだよって…」
深山は困惑顔で言った。
「しかも誰かが入ってこようとすると、『わたしの食べ物取っちゃ駄目だよっ』って攻撃しかけてくるのよね…」
確かに迷惑この上ない。
その時、それまで黙っていた七瀬の瞳に光が宿った。
(みんなが困っている…。誰かがこの状況を打破してくれる事を望んでいる…。
ここでみんなを助けなきゃ乙女がすたるってモノよね)
よく分からない事を考えつつ七瀬はやはりよく分からない決意を固めた。
そしてこっそり浩平の側から離れ、トイレの中へと隠れる。

ナレーション『義理や人情……そういった感情が昂ぶると体内の漢(おとこ)回路が働き、七瀬留美は強力なパワーを発揮する七瀬改へと変身するのだっ!!』

ややあって、いつまでも食べ続けるかのようなみさきにかけられる声。
「川名みさきっ!!これ以上食堂を占拠するのはこの七瀬改が許さないわよっ!!」
そこには人々の期待を一身に背負っている(かもしれない)改造人間七瀬改の姿があった。


つづく…?

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七瀬改「ねぇ冒頭のお詫びって何なの?」
いいんちょ「ああ、既に突っ込んでる人がいるかもしれないけど…。(まだ過去のログ見てない)
あれは第一話その1の中でみさき先輩の台詞に『あれ…?カツカレーが踊ってるよ?』というのがあったんだ。
視界が歪む事で薬が効き始めた事を表現しようと思ったんだが…」
七瀬改「川名先輩は目が見えないから視界はない、と」
いいんちょ「そう、まさしく盲点だな」
七瀬改「つまんないわよ」
いいんちょ「ぐっ…。取り敢えず言い訳というか設定とか理由付けとか考えたんだが、やっぱり素直に謝るのが一番かな、と」
七瀬改「まっ、人間素直が一番よね。ところで今回もあたし出番少なかったわね」
いいんちょ「ぐっ…」
マッド瑞佳「詩子さんと佐織の方が台詞あるよ」
いいんちょ「ぐあっ…」
マッド瑞佳「相変わらず何も考えてないよね〜〜〜」
いいんちょ「そこまで言われて黙ってられるかっ!」
マッド瑞佳「甘いもん(ポチッ)」
いいんちょ「ぐはぁっ!」
七瀬改「学習能力も無いし…」
マッド瑞佳「ところでこのお話って何を描きたいの?」
いいんちょ「………」
七瀬改「ダメよ、瑞佳。そんな事聞いちゃ。こいつがなにか考えてる訳ないんだから…」
いいんちょ「ぐっ…。あいかわらず酷い言われようだ。アシスタント変えようかな…」
七瀬改「そんな事あたしが許す訳ないでしょ」
いいんちょ「オレは真っ当な長森がアシスタントに欲しいな。他は要らない」
マッド瑞佳「わたしはまっとうだよ」
いいんちょ「じゃあ膝枕してくれ」
マッド瑞佳「嫌だよって言っておくよ…」
七瀬改「それキャラ違う…」
マッド瑞佳「え…?(照れ照れ状態)」
いいんちょ「(ラ、ラヴリ〜)……うん。おまえでいいや」
七瀬改「はぁっ。ほんとアシやめようかな…」
いいんちょ「おお。そうしてくれると有り難い。
さあっ長森、2人で愛を育もうじゃないかっ」
マッド瑞佳「きゃ〜〜〜」
七瀬改「って、やめんか〜〜〜!!!」
マッド瑞佳「(ポチッ)」
いいんちょ「がふっ!ぎゃあっ!!ぐはぁっ!!!げふっ!!!!ごほぉっ!!!!!」
七瀬改「やっぱりあんたの暴走止めるためにもやめられないわ…」

おしまい