木漏れ日の下で 投稿者: いけだもの
こんばんわ〜、いっけだものですっ。
なにはともあれ、ONE発売一周年、おめでとぉ〜ございますぅ♪ ←誰に言ってるんだ?
今回のSSは、それを記念してってことで書きました。
では、どうぞっ!
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きーんこーんかーんこーん...きーんこーんかーんこーん...
遠くで昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴っている。
それに反応し、うっすらと目を開ける俺。
鬱蒼と生い茂る木々の葉の間から差し込む光が眩しい。

ここは高台の公園の奥にある、雑木林の一角。
すぐ向こうのフェンスを越えれば、そこはもう学校だ。
でも俺は、何事もなかったかのように目を閉じる。
今の俺には、そこに行く必要がないから。

すう...


...ざわざわ
ざわざわ...
突然の俺の登場にざわめき立つ教室。
声をかけて来るクラスメート達と軽く言葉を交わしながら、学級日誌を書いている瑞佳の前へ。
「コホン」
わざとらしい咳払いに、瑞佳が顔を上げる。
「え〜と...」
本当に言うのか?
あの言葉を。
そんな想いが頭をかすめ、出かかっていた言葉が喉につかえる。

『ずーっと前から好きだったんだ』
冗談のつもりで言った言葉だった。
『俺と付き合ってくれ』
だからそれは、それまでの2人の関係を壊してしまうだけの、野暮な言葉だった。
悪いのは俺だったのに...
勘違いして舞い上がる瑞佳を見てられなくて...
自棄をおこして瑞佳を傷つけて...
やっと本当の気持ちに気が付いたけど...
お互いの気持ちを確認し合うことができたけど...
もう、手後れだった。

だけど今、俺はこうして瑞佳の前にいる。
だから今度はあの言葉を、心からの言葉として伝えなくちゃいけないんだ。
移り行く季節を、たった1人で俺を待っていてくれた、瑞佳の想いに応えるためにも。
そう思い直し、瑞佳の顔を見つめながら、俺は再びあの言葉を紡ぎ出す。
「ずーっと前から好きだったんだ。もう一度俺と付き合ってくれっ」
すると瑞佳は、ほのかに頬を赤く染めて...
でも、普段とさほど変わらない口調で、俺の知ってる長森瑞佳のままで、
「うん、いいよ...」
って、答えてくれたんだよな。

それが...嬉しかった。


すうすう...

...ン

すうすう...

...コン

ん?

ひゅぅっ...コン...ひゅぅっ...コン

何か硬い物が飛んできて、木に当ったような感じの音が聞こえる。
しかも一定のリズムで。

ひゅぅっ...コン...ひゅぅっ...コン

しばらく無視を決め込んでみたが、音は一向におさまる気配がない。
何の音だ?
不信に思い、音の正体を見極めようと上半身を起こす。
と、

ビシッ!
威勢の良い音を立てて、俺の眉間を大きな石が強襲した。

ぐあ...
頭をピヨらせ、うめき声を上げる俺。
すると少し離れたところから、聞きなれた声が。
「うわぁ、当っちゃったぁ...」
「瑞佳っ!何すんだよっ!」
腫れた眉間を押さえながら、俺は声の方向に罵声を浴びせる。
「当てるつもりなんかなかったんだよ!」
「むちゃくちゃ痛かったぞっ!」
「ごめんね、それは謝るよ」
「ばかっ!世の中にはごめんで済むことと、済まないことがあるんだぞっ!」
「でも今のは、浩平が急に起き上がったから当ったんだよ!」
「何ーっ。お前、自分のした事を正当化するつもりかっ!」
「そんなつもりないもん!それより起きたんなら、早く学校へ戻ろうよ!」
「話題を変えてごまかそうったって、そうはいかないからなっ!」
「もー、いい加減にしなよー」
「『いい加減に』とは何だっ!少しは反省しろ、だよもん星人っ!」
「私はちゃんと謝ったもん!それに私はだよもん星人なんかじゃないもん!」
「その態度が、反省してないって言うんだっ!」
「ふーーーっ!」
「うがーーーっ!」

きーんこーんかーんこーん...きーんこーんかーんこーん...
そんな感じで俺と長森が牽制し合っていると、5時間目の始まりを告げるチャイムが聞こえてきた。
「わぁっ、授業が始まっちゃったよ!」
腕時計と学校の方角を交互に見ながら、慌てふためく瑞佳
「わっはっはっはっはぁ、残念だったな瑞佳」
そんな瑞佳を勝ち誇ったように笑い飛ばしてやると、瑞佳は溜め息混じりに俺に非難の言葉を向ける。
「はぁっ、留年が確定したからって、授業をサボるのは止めようよ」
「どうせこの時期の3年生の授業なんて、あってないようなもんだろ?」
「そんなの勝手な解釈だよ!」
「だけど今更教室に戻ったところで怒られるだけだからな。今日のところは諦めるのが得策だぞ」
「はう〜」
しかし最後には、的を得た俺の言葉に反論もできず、情けない声を上げてしまうのだった。


「いいんだもん!私は浩平に無理矢理付き合わされたんだもん!」
それでもしばらくの間、うしろめたいといった表情でおろおろとしていた瑞佳であったが、いい加減踏ん切りがついたのか、そう言い放って俺の横にちょこんと腰をおろす。
「俺はそんな覚えないけどな」
俺はさらりと言い返し、再び横になると目を閉じた。
「浩平?」
「どうした、瑞佳?」
「まだ寝るの?」
「ああ」
「なら、膝枕してあげるよ」
「そうか、ありがとうな」
寝転んだままもぞもぞと体を動かし、頭を瑞佳の太股の上まで移動させる。
「気持ちいいな」
「うん、そうだね」
触れ合った部分から伝わってくる、瑞佳の暖かさと柔らかさ。
穏やかにそよぐ風に乗って、鼻腔をくすぐる新緑と瑞佳の香り。
さっきまでは眩しいだけだった木漏れ日も、今は優しく俺達を包んでくれているように感じられる。
気を抜くと、このまま風景に溶け込んでしまいそうな錯覚を起こすような。
そんな心地良さに、俺は全身を浸らせていた。

「浩平?」
もう1度、俺の名前を呼ぶ瑞佳。
「...」
「また私を置いて、どこかへ行っちゃわないよね」
その声は、僅かに震えていた。
ああ、そうか...
このシチュエーション、まるであの時みたいなんだ。
不安になるのも無理ないよな。
「ああ、行かないよ」
「嘘じゃないよね」
「指切りしようか?」
「やだよ、浩平指切らないもん」
「はははっ、そんなこともあった...」
バサッ...
その刹那、俺の言葉を遮るように、すぐ近くの木の枝から小鳥が飛び立った。

「...!!」
瑞佳の体が、一瞬びくりと硬直する。
でも...
俺はここにいた。
当たり前のことだけど。
それが、今の俺達にとっては大きな意味があることだと思った。
目を開くと、瑞佳と視線が合う。
その大きな瞳には、うっすらと涙が浮かんでいて。
ごめんな。
またお前を不安な気持ちにさせたことは謝るよ。
でもこれで、少しは安心してもらえたみたいだな。
お前の顔がそう言ってくれてるよ。

だから俺は、瑞佳をもっと安心させてやりたくて...
「ほら、大丈夫だろ?」
そう言いながら起き上がり、顔をくしゃくしゃにして微笑む瑞佳をぎゅっと抱きしめたんだ。


・・・・・・ おしまい ・・・・・

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どもどもでした〜

 えっと、やはり1周年記念ってことなんで、永遠の世界を意識して長森シナリオの後日談にしてみました。
 そんな訳で、全篇にわたって浩平に長森のことを「瑞佳」と呼ばせています。ちなみにこれは自分としては初の試みです。
 現実の世界に戻ってきた浩平にとって長森は、「長森」でも「みずか」でもましてや「みさお」なんかじゃなくって、「瑞佳」なんだろうな〜って言う勝手な思い込みなんですけどねっ(笑)。

 今日は1周年ってことで、たくさんの方が投稿されてますねっ。これからゆっくりと読まさせて頂きますっ。

次はいつ投稿できるかな?
それじゃあ、まったね〜♪

http://village.infoweb.ne.jp/~fwiv2654/index.htm