いざ、お見舞いへ (後編) 投稿者: いけだもの
こんばんは、いけだものです。
なんとか後編をお届けすることができました。
では、ど〜ぞっ。
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これまでのあらすじ

折原くん、一所懸命料理をしてたみたいだけど、いったい何が出来たのかな?
折角だから、味見くらいさせてもらわないとね。
でも、こんなことまでして貰えるなんて、ほんと茜って幸せ者だと思うよ。


茜の部屋...

ドアを開けると、部屋の中には3人の茜が俺を待っていた。
想像力の限界を遥かに越えた事態に、部屋の入口で唖然として立ち尽くす俺。
「...何をぼーっと突っ立ってるんですか?」
『...料理が冷めてしまいます。』
「...」
無論、そのうち2人は柚木と澪が変装した偽者なんだけどな。
しかしながら、まったくもってよくやるもんだなと、怒りを通り越して感心するばかりだ。
「はぁっ。」
大きくひとつ溜め息をつくと、俺は気を取り直して部屋に入りドアを閉めた。
「ほら、ここに置いとくから食べたいなら勝手に食べてろ、ニセ茜。」
そして部屋の真ん中に置いてある小さなテーブルにトレーを置くと、1人分のミルク粥をお椀によそいながら、2人のニセ茜にそう言い放す。
「...ニセ茜なんて酷いです。」
『...せめて2号、3号って呼んでください。』
なおも三文芝居を続ける2人を無視し、お椀とスプーンを持って茜の横に腰掛ける。
こうなったら、何も言えなくなるくらいに熱いところを見せつけてやるしかないか。
そんな想いを胸に秘めて。

「待たせて悪かったな。」
「...そんなことないです。来てくれただけで嬉しいですから。」
「そうか?」
「...はい。...ところで、何を作ってくれたんですか?」
「特製ミルク粥だ。食べてみるか?」
「はい、いただきます。」
嬉しそうに頷き、お椀を受け取ろうとする茜。
「いや、俺が食べさせてやるから、そのままでいいぞ。」
その言葉に茜は耳まで真っ赤になる。
「...」
「ほら、あ〜んしてみろっ。」
「...自分で食べられます。」
「駄〜目。」
言いながらお粥をスプーンで取り、ふうふうして見せる。
「...羨ましいです。」
『...私にも同じように食べさせてください。』
くそっ、まだ言ってやがるか。
だけどこれで茜が食べてくれれば、いい加減あいつらも静かになるだろう。

「...分かりました、お願いします。」
しばらくの間、無言で俺の表情を伺っていた茜だったが、俺の意志が変わらないと観念したのか、そう言っておずおずと口を開く。
すかさず、その口にスプーンを近づけると...
ぱくっ。
目の前で恥ずかしげにスプーンを咥える茜。
可愛いっ、可愛すぎるぞっ!
しかもこの行為、思っていた以上に照れくさいじゃないかっ!
図らずも顔が熱を帯びてくる。
だがここで照れくささに負けてしまったら、柚木から更に悪質なひやかし攻撃を受けるのは必至。
そこで俺は2人に気付かれないよう、細心の注意を払いながら軽く深呼吸をして平静を装い、再び茜に話しかける。
「味はどうだ?」
「...美味しいです。」
「そうかっ。それは良かった。」
「...もう一口いただけますか?」
「おう、遠慮せずにたくさん食べてくれ。」
茜の口へお粥を運び、二言三言会話を交わす。
そんなことを何度か繰り返すうちに、少しづつ冷静さを取り戻してきた俺。
「まったく、茜も大胆よね。」
『こっちが恥ずかしいの。』
そしてどうやら柚木達も、俺達のあまりのアツアツぶりにあきれてくれたようだ。
作戦成功。
いつまでもやられっぱなしの俺じゃないぜってんだ。


「あ〜あ、からかい甲斐がなくなっちゃったね。」
柚木がかつらを取りながら、つまらなさそうに呟く。
『見せつけられちゃったの。』
澪も『はぁ〜』っとため息をつきながら、柚木にならってかつらを取る。
「澪ちゃん、近くにいると熱くて融けそうだから、2人で寂しく部屋の隅っこでお粥でも食べてよっか。」
『そうするの。』
そう言ってミルク粥をお椀によそうと、本当に部屋の隅に移動する2人。
おっ、あいつら本気で食べるつもりか?
薦めてもないのに、自ら食べようとしてくれるとは好都合。
思わず口元が緩んでしまう。
「...本当に美味しいですよ。」
「んくっ!」
更に茜がそんなことを言うもんだから、思わず吹き出しそうになってしまった。
「いっただっきま〜す。」
『いただきますなの。』
行儀良くいただきますをして、同時にミルク粥を口に運ぶ柚木と澪。
ぱくっ、もぐもぐも...
ぱくっ、もぐもぐも...
そしてこれまた同時に動きが止まる。
はははははっ、まったくもって可愛い奴等だ。
「2人とも、どうかしたのか?」
「○☆※△◇@×!!」
『〜〜〜〜〜!!』
素知らぬ顔で2人に声をかけてやると、一瞬俺を睨むような素振りをみせたものの、意味不明の言葉を発しながら、そろって部屋から飛び出していった。
「わははははははははっ。」
まさに思惑どおりの結果に、高笑いの俺。
「...2人とも、どうしたんでしょうか?」
茜は何が起こったのか理解できず、不思議そうな顔をしている。
「さあ、どうしたんだろうな?」
「...やけに嬉しそうですよ?」
「そうか?まあ気にするな。ほら、もう一口食べるか?」
「...あ、いただきます。」
ぱくっ...もぐもぐもぐ。
「早く元気になって、今度は俺に弁当でも作ってくれな。」
「わかりました。楽しみにしてて下さい。」
俺の言葉に、茜はにこやかに微笑んで応えてくれた。


しばらくして青ざめた顔で茜の部屋に戻って来た柚木と澪は、次々と俺に非難の言葉を浴びせてきたが、「茜向けに作ったお粥だからな。」と言うと、何も言わなくなってしまった。
2人の反応に、茜はどこか心外そうな表情をしていたけど、俺もアレを平気で食べられる茜の方が変わってると思うぞ。
それにしての茜が食べられない甘さってのは、いったいどれくらいの甘さなんだろうな。
まあとにかく、茜に喜んでもらうって言う目的が果たせた事はなによりだ。

でも...
何故かこのとき俺の心は、茜に喜んでもらえたことよりも、久々に柚木に一泡吹かせてやれたことへの満足感に包まれていたんだよな。


・・・・・ おしまい ・・・・・

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はいっ、おそまつさまでした〜。

あらすじにしろ、この終わりかたにしろ...これって詩子SSだったのかな(笑)?
ま、この辺はみなさんが判断してください♪←いいかげん
今回はひさびさの直接的らぶらぶシーンありーの、してやったりな浩平を前面に押し出しーので書いてみました。
でも、らぶらぶシーンはいつもながら書いてて照れますよねぇ。特にお粥を食べさせてあげるシーンなんかは、それはもうって感じでした(笑)。
それから、浩平が作る料理をいろいろと予想して楽しんでいただけたみたいで、嬉しいです。
結局は、長森に教えてもらったってのが伏線のド真中のストレートだったんですねどね。


では続いて、昨夜から今朝にかけて投稿されていたSSの感想で〜す。

パルさん
・スケッチブックのいらない日
 スケッチブックがなくたって、お互いの優しい気持ちがあれば楽しい時は過ごせるんですね。最後のほうの少し大胆な行動が可愛かったです。

うとんたさん
・めざせ、たいやきくん!
 たいやき...良いですねぇ。ちょっと外道入ってましたけど、茜が可愛かったですよ〜。

神凪 了さん
・アルテミス 第二十六話
 穏やかな展開でしたね。でも長森...ヤバそうだなぁ。だけど、そんな結末なんて浩平は望まないよねぇ?そう、希望を持って行きましょうっ♪

雀バル雀さん
・危険な遊戯
 危険な遊びって色々とあるもんですね〜(笑)。個人的には『びるまのたてごと』がお気に入りですっ♪
 でも、ニルスの不思議な旅とかスクールウォーズを知ってらっしゃるとは、結構古い人ですかぁ?
・『グレート・ミオは喋らない』
 あんた、あの子の何なのさ?な〜んて超古い曲(みんな知らないだろうなぁ)が頭の中でぐるぐると...澪、恐るべしっ(笑)!


読んでくださいましたみなさん、さらに感想までお寄せくださいましたみなさん、ありがとうございました♪
さて、次回作をお届けできるのは何時になることやら...
みなさんに忘れられる前に投稿できると良いなっ♪
「...無理かもしれませんね。」
げふうっ!今回もキツイつっこみがっ!!
そ、それじゃあ、まったね〜

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