いけだものです。
「...中編になってますけど?」
うをっ、流石はつっこみ茜ちゃんっ、鋭いツッコミだっ!
「...どういうことですか?」
いやぁ、書いてたらどんどん長くなっちゃったんで、途中で切ったんだよ。
「...そうだったんですか。」
それでは、ついに茜ちゃんが登場する『中編』をどうぞっ!
「...本当に出てくるんでしょうか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これまでのあらすじ
今日ね、茜が風邪をひいて学校を休んだのよ。
そこで放課後にお見舞いに行ったんだけど、折原くんったら1人だけ遅れて来てさ。
でもこれから、茜のために手料理を作ってくれるんだって。何ができるか、楽しみだね。
「さてと。」
材料の入ったスーパーの袋をテーブルの上に置くと、ポケットから長森に貰ったメモを取り出す。
「まずは鍋で牛乳を沸騰させる訳だが...こういうのは土鍋で作った方が感じが出るんだよな。」
そう思った俺は、土鍋を探すべくコンロの下の収納スペースを漁る。
がさがさがさ
「...あった、あった。」
土鍋は意外にあっけなく見つかった。
「これも俺の茜を思う気持ちが為せる技かもな。」
なんて七瀬みたいなことを呟きながら、それに牛乳を注いで火にかける。
.
..
...
ぐらぐらぐらぐら
「お、沸騰してきたな。え〜と、次は...味噌を溶かす、か。」
俺としては赤味噌が好みなのだが、長森に言わせるとこの手の料理にはあわせ味噌が良いらしい。
少し悔しい気もするが、まだまだ序盤だ、ここは素直に従っておこう。
出汁入りのあわせ味噌を鍋の中に入れ、ぐるぐるとかき混ぜる。
「で、ご飯とミックスベジタブルを入れて、中火で軽く煮込めばいいんだよな。」
.
..
...
ぐつぐつぐつぐつ
「うん、見た目はいい感じだぞ。味の方は...おっ、なかなか美味いじゃないか。」
これで長森から教えてもらった『ミルク粥』はほぼ出来上がりだ。
レシピでは、ここにとき卵を入て固まったら完成となっているが、このままじゃあ単なる受け売りで芸がない。
そこで俺は、あるものを探して調味料の入った棚の中を物色する。
「おっ、これこれ。」
案の定、棚の中にはお目当ての白く濁ったガラス瓶が並べられていた。
それを取り出し、おもむろに鍋の上で傾ける。
どぼどぼどぼどぼどぼどぼどぼ
予想以上の勢いで流れ落ちていく、乳白色の練乳。
「うをっ!」
その勢いに驚き、慌てて瓶を起こすが時すでに遅し、ガラス瓶の中の練乳は約1/5の量を残すのみとなっていた。
「少し...入れ過ぎたか?」
そうは思うものの、入った練乳の量を考えると味見はしたくない。
「まあ、食べるのは茜だからな。恐らく問題ないだろう。」
多少の不安を感じながらも都合の良い解釈した俺は、味見もしないで仕上げのとき卵を流し込む。
待つこと数分...
「よし、出来あがりっ!」
こうして、特製ミルク粥は見事に完成した。
「じゃあ早速、茜の部屋へ持って行くとするか。」
暖かいうちに食べてもらおうと、土鍋とお椀とスプーンをさっとトレーに乗せて、足早にキッチンを出て茜の部屋に向かう。
が、
そうだ、散々からかってくれたお礼に、あいつ等にもこいつを食べさせてやるか。
階段を昇りかけたところでそんなことを思い付いた俺は、キッチンへと舞い戻り、ニヤリとほくそ笑みながらお椀とスプーンを2つ追加した。
茜の部屋の前...
両手が塞がっていてドアを開けることができない俺は、部屋の中に向かって声をかける。
「お〜い、澪でも柚木でもどっちでもいいからドアを開けてくれ〜」
と、程なく『かちゃっ』と音がして、僅かにドアが開く。
「さんきゅな。」
とりあえず礼は言ったものの、もっとしっかり開けてくれよなと思いながら、肘を使ってドアを大きく開けようとする。
そのとき、その隙間からちらと栗色の髪が見えた。
茜か?
いや違うな、柚木のヤツがまた何かくだらないことを企んでるってトコか。
「おい、茜にドアを開けさせるなんて、お前等何を考えてるんだ?」
そう判断しつつも、とりあえずそんな非難の言葉を放ちながら部屋に入った俺であったが、次の瞬間、目が点になった。
「...遅かったですね。」
『...待ちくたびれました。』
「...」
「...」
部屋の中には3人の茜。
1人は脳天気そうににこにこと笑う、青色の瞳をした茜。
もう1人はスケッチブックを持った、やけに背の低い茜。
最後の1人はベッドの上で上半身を起こし、俯いて肩を震わせながら笑いを堪えている茜。
「...早く手料理を食べさせて下さい。」
『...お腹がペコペコです。』
「...こ、浩平...ひょ、表情がありませんよ。」
本物の茜は、今にも笑い出しそうに声を震わせている。
そりゃあそうだろう。
俺だって、こんな展開になるとは夢にも思わなかったからな。
それにしても柚木...制服は茜に借りたとしても、そのかつらはいったい何処で調達して来たんだ?
しかも澪のと2人分。
「...熱そうですから、口移しでお願いします。」
『...少し恥ずかしいですけど。』
そんなことをのたまいながら、一応は恥ずかしそうな表情を作って、目なんか瞑って見せる2人のニセ茜。
「...わ、私は...そんなこと...い、言いません。」
一方本物の茜は、こみ上げて笑いに言葉を詰まらせながらも、ニセ茜の台詞を否定する。
「...まだ待たせるんですか?」
『...1人でこうしてるのは、寂しいです。』
しかし2人は、それを気にする様子もなく三文芝居を続けていた。
そして俺はと言えば...
「...」
部屋の入り口で言葉もなく立ち尽くし、よくもまあここまでできるもんだなと、怒りを通り越して、ただただ感心するばかりだった。
・・・・・ 次回でおわり(のハズ)です ・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
はいっ、中途半端でごめんなさ〜い(苦笑)。
冒頭でもお話しましたが、長くなったってことで急遽話を切りまして...こんな風になっちゃったんですよねぇ。
でも茜は数的に(笑)たくさん出てきましたし、とりあえずは言うことないかなっ♪←オイ
好き勝手にキャラを壊していますので、お気に召さない方にはごめんなさい。
異様な世界観をお楽しみいただけたのなら幸いですけど。
『後編』をできるだけ早くお届けできることを祈りつつ...
じゃあ、まったね〜http://village.infoweb.ne.jp/~fwiv2654/index.htm