花より団子じゃない気分 投稿者: いけだもの
こんばんわぁ。いけだものですっ。
今週もSSが書けましたよ〜。
うん、良いペースだ。
それでは、どぉぞっ!
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「...奇麗です。」
視界の大部分を占拠しまうほどに咲き誇る、淡いピンクがかった白色をした花を見て、茜はそう呟いた。
「ああ、ホントだな。」
商店街から程近い公園。
公園を幾重にも取り囲むように植えられたソメイヨシノの木々は、今が盛りとばかりに満開の花を身に纏わせている。
平日の昼下がり...この界隈では桜の名所であるこの公園も、この時間では人手もそんなに多くはない。
俺と茜はそこを狙って、のんびりと花見をしに来たのであった。


まあ、しかしだ、確かに桜は見事だが、俺にしてみれば公園内を賑やかに演出している出店の方が気にかかる。
なにしろ、こういった雰囲気の中で食べるテイクアウト・フードの味は格別だからな。
『花より団子』とは、まったくもってよく言ったものだ。
いまだ桜に心を奪われている茜をよそに、俺はめぼしい出店がないか公園内を見回してみる。
すると、少し離れたところのひときわ人だかりのできた1件の店が目に入った。

なんだ?
目を凝らしてよく見ると、店のまわりには『山葉堂』とか『みたらし団子』といった幟が立てられている。
山葉堂って確かワッフル専門店だったような気がするんだが...
まあ、昨今の団子ブームに便乗ってところだろう。
しかしながら山葉堂も、ワッフルと言えばこの店と言われるほどの名店。
そんじょそこらの団子屋とは、一味も二味も違った団子を食べる事が出来るに違いない。
そう判断した俺は団子を買いに向かうべく、茜に声をかけようとする。
が...
一瞬にして、気は変わった。
店を囲む人達の頭で見え隠れする品書きの一枚を、俺は見てしまったのだ。
両目を合わせて4.0の視力を誇る俺の目が捕らえたその品書きには、はっきりと『甘党の方も大満足! 特製 花見団子』と書かれていた。

俺もかなりの甘党だけど、山葉堂の言う『甘党の方』ってのは尋常じゃないほどの甘党の奴を指す言葉だ。
しかも『大満足』って言うくらいだからな、もしかしたらあのワッフルよりも甘いのかも知れない。
「ぐあ...」
そんな事を考えているうちに舌先に激甘ワッフルの味がよみがえり、俺は思わずうめき声を漏らしてしまった。
「...浩平、どうかしましたか?」
うっ!
かけられた声に一瞬体が硬直する。
ゆっくりと隣に目をやると、さっきまで桜に見とれていたハズの茜が、不思議そうな顔をして俺を見ていた。
まずい、まずいぞ。
茜が『あれ』に気付いたら、間違いなく食べたいと言い出すだろう。
なんとかしてこの場を取り繕って、早々にここから立ち去らなければ...

俺は山葉堂が茜の視界に入らないように体制を入れ換えると、おもむろに脈絡のない話を始める。
「ど、どうもしてないぞ。それより茜、腹が減ってこないか?」
「...減ってませんけど。」
「そうか、でも俺はちょっと小腹がすいてきたんだよな。」
「...では、そのへんのお店で何か買って食べましょう。」
しまったっ!これじゃあ墓穴を掘ったようなものじゃないかっ!
自分のフォローの下手さ加減に、心の中で頭を抱える。
「い、いや、やっぱりしっかりした物が食べたくなってきたぞ。なあ茜、せっかく来たばかりで悪いけど、商店街にでも行って何か食べようじゃないか。」
もはや言い訳がましいだけになってきた俺の言葉。
「...浩平。」
茜の顔が怪訝そうな表情に変わる。
「ど、どうした茜?」
「...何か隠し事をしていませんか?」
ぐはぁっ!
茜っ、どうしてお前はそんなに勘が鋭いんだっ。
「べ、別に隠し事なんてしてないぞっ。」
「...顔が引きつってます。」
なんだ、動揺が顔に出ていただけか...でも俺って、結構嘘が下手みたいだな。
「そ、そうかっ?け、今朝はパックをしてくるのを忘れたからな、肌がつっぱっててそう見えるのかもしれないぞっ。」
しかし、ここで引き下がる訳にはいかない。
そう決心した俺は、むなしいへりくつをこね続けるのであった。


...あーかーねー...あーかーねー...
俺と茜がそんな問答を続けていると、どこからか茜を名を呼ぶ小さな声が聞こえてきた。
「...今、何か聞こえませんでしたか?」
「な、何も聞こえなかったぞっ。」
とりあえず、そう答えておく。
...あーかーねー...おーりーはーらーくーん...
すると、また声。
「...あ、またです。」
「そ、そうか?絶対に、間違いなく空耳だと思うぞ。」
断定的な言葉を使って、声の存在を否定する。
なぜなら今、俺の目には、山葉堂の前でぶんぶんと手を振りながら声を張り上げて俺達のことを呼ぶ柚木の姿が見えているからだ。
柚木、何故お前はそこにいる?
そう思わずにはいられない俺であった。

...あかねってばー...こっち向いてよー...
「...やっぱり、聞こえます。」
3度目の呼びかけに、ついに茜は後ろを振り返る。
ああ...
絶望の縁へと追いつめられる気分。
「...浩平。」
しばらくの間、詩子と山葉堂の方を眺めていた茜が俺の方に向き直る。
「ど、どうした茜?」
「あのお花見団子、食べたいです。」
そして、確かな意志と有無を言わせぬ視線を伴う笑顔ではっきりとそう言った。
「よ、よし、そうしようか...」
ははっ、思ったとおりの展開だ。
これはもう、『花より団子』どころじゃなくなったな...


約15分後...

俺の右手には、3本の花見団子とジュースが入ったビニール袋があった。
そして左側には...
「...お団子、何処で食べましょうか?」
「あっ、あそこっ、あのベンチなんかいいんじゃない?」
「...そうですね。」
「はぁっ、何処だっていいって。」
花見団子の味を想像しては溜め息をつく俺をよそに、楽しげに会話を交わす茜と柚木。
そんな2人を横目で見ながら、軽く伸びなんかをしてみる。
うん、気持ちが良い。
しかもこうして穏やかな空気に身を委ねてると、この花見団子も美味しく食べられるんじゃないかって思えてくるから、春って本当に不思議な季節だよな。


そうは言ってもな柚木、笑ってられるのもきっと今のうちだけだぞ。


・・・・・ おしまい ・・・・・

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はいっ、お付き合い、ありがとうございましたぁ。

今年は桜の開花も早いみたいなので、早速お花見SSを書いてみました。
だ○ご○兄弟のブームもあって、近所の桜祭りの出店でも団子屋が多くなるんじゃないかと、団子好きの自分は密かに期待してたりします。
みたらしの甘辛いタレが好きなんですよね〜
う...久々に食べ物系のSSを書いたら、みさき先輩で遊びたくなって来た...いかん、いかん。

続きましては夕方のニュー偽善者Rさんのまでの感想ですっ。

雀バル雀さん
・茜草記
 帰ってくるのに30年とは、ひねってますね〜。でも待ち人の心は変わらなかった、そしてまた巡り合えたことは幸せですよね。

ひささん
・感想だけでもいいですか?(7)
 強い風の日も、激しい雨の日も、その傘をさして待っていたのでしょうから、痛んでるのも当たり前かな?ホント諦めが悪いですねぇ(笑)。それから、感想ありがとうございました♪

壱弥栖さん
・お伽話を語ろうか
 おおぅ、このギャグっぽい雰囲気でここまでアクシデントが何もない平和な話も珍しいですね。確かに平和が一番ですけどっ。

WILYOUさん
・空白(3)
 ちょこちょこっとした小ネタでくっくっくっと肩を震わせて笑ってたら、1/1の2000年問題でもう大爆笑。感情を得たロボ浩平のちょとセンチなトコロもいい感じ。まだまだ続いて欲しい気分です。

神凪 了さん
・メサイア
 むっ、今回はシュン視点ですね。話の流れもONE本編と上手く絡めてあります。さて『彼女』は誰だろう? そして由依との関係は?気になる要素が目白押しですね。
・アルテミス 第十話
 戦いを控えた住井の想い、男だねぇって感じがしました。それに引きかえ南は...トホホです。4人の娘達の能力の会得が間に合わなさそうなところを見ると、まだまだ先が長そうですね。
・アルテミス 第十一話
 『ラグナロク』、手のうち読まれてますね。それでもって『バルキリー』出陣。あと晴香には良祐をあてがって...これ、勝負になるんでしょうか?

ばやんさん
・『かせぐの』−7−
 キスして、見つめて、笑いかけて、こりゃ効きますよね〜。のっくあうとっ!って感じです。にしても茜は何処でこういうコトを覚えたんでしょうか?浩平じゃなくても気になります。

ニュー偽善者Rさん
・アルジーと一緒
 ああ、アルジー三昧の茜の部屋...寝る前に『生』はいなくなったみたいだけど、2人はどうなったんだろう(笑)?でも、転んでもタダでは起きないってことで、侮りがたしですっ!
・ONE総里見八猫伝彷徨の章 第六幕
 妖怪の友情物語、なかなか感動的でしたね。でもまたひとつ浩平の心に嫌な経験刻み込まれたみたいで、記憶が戻る前に心が荒まないことを願います。
・ONE総里見八猫伝彷徨の章 第七幕
 正体が分かってて一芝居打つとは、浩平も人が悪いですねぇ(笑)。でもこの猫又、茜に頭が上がらなさそうだし、結構笑えるキャラに仕上がってるよなぁ。

いいんちょさん
・闘えっ!!七瀬改 第5話 その1
 わ〜い、七瀬改の再開だ〜い♪冒頭部でシリアスぎみに今後の方向性を示しつつも、後半はONE本編の台詞やイベントをの織り交ぜながらのギャグっぽい展開で面白かったですぅ。

もうちゃん@
・〜絆〜「カエリビト」
 シリアスがすっかり板についてきてるなぁって感じました。取るか?取っちゃうのか?って思ってましたが、やっぱ手を取っちゃいましたねぇ。でもこれが、情と言うものなのでしょうか。

YOSHIさん
・はぐれ3匹【FARGO編】〜その7〜
 住井の語り、今後の展開が暗〜くなりそうな雰囲気をだしてますね〜。茜も浩平も、な〜んか捨て石って感じがしますしね。

さて、明後日はSS座っ談っ会〜♪
参加していただけるみなさん、よろしくお願いしま〜す。

じゃあ、まったね〜

http://village.infoweb.or.jp/~fwiv2654/index.htm