雪の降った朝は(君がくれた勇気編)  投稿者:いけだもの


こんばんわぁ、いけだものです。
今度の日曜日は、いよいよバレンタインデー。
ってな訳で、なんとかこのネタ間に合いましたっ!
では、どうぞ〜
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とある日曜日...

ピピピピッ...ピピピピッ...ピピピピッ...
規則正しい目覚し時計の電子音が、今日も彼女に朝を運んできた。
ピピピピッ...ピッ
目覚し時計を止めてベッドから起きあがると、まだ眠りから醒めきっていない身体を引きずるように窓へと歩み寄る。
ガシャッ
カーテンを引き、一気に窓を開け放す。
『朝一番の空気を感じること』
何年も繰り返してきた彼女の日課だ。
彼女の名は『川名みさき』、景色を映すことのない瞳を持つ19歳の女の子である。

ゆっくりと深呼吸。
今朝の空気は特に冷たく澄んでいて、穏やかに吹く風が、いつもより多くの音を運んできてくれた。
遥か上空を飛ぶ、飛行機の音。
レールの継ぎ目を通過する、電車の車輪の音。
牛乳屋さんの、原付バイクの排気音。
そんな音達を楽しんでいると、その中に普段聞き慣れない音が混ざっていることに気付く。
きゅっ、きゅっ、きゅっ、きゅっ
それは、雪を踏みしめながら歩く人達の足音。
「やっぱり...雪、積もったんだね。」
ため息混じりに呟くみさき。
確かに、昨夜聞いた風の声は、雪が降ることを告げていた。
雪は嫌いではない。
でも、今日だけは降らないで欲しいと願っていたのに...
しかしそれも一瞬のこと。
「こればっかりは仕方ないよね。」
すぐに気を取り直すと、みさきはもう少し、朝の空気を楽しむことにした。


プルルルルルルルル...プルルルルルルルル...
朝食を済ませ、リビングでくつろいでいるところに電話がかかってきた。
「たぶん、雪ちゃんだよね。」
電話の向こうにいる相手を予想しながら受話器を取る。
かちゃっ
「もしもし、深山ですけど、み...」
「はい、川名です。只今外出しておりますのでご用件の方は...」
「みさき...朝っぱらから、いいかげんにしないとホントに切るわよ。」
「冗談だよ〜」
予想どおり、幼なじみの雪見からの電話。
もっとも、今日は2人で出かける約束をしていたのだから、当然ではある。
「はいはい、ところで今日のことなんだけど、雪も積もってることだし、中止にしない?」
「だめだよ。来週って訳にはいかないんだから。」
「それは分かるけど...危ないわよ。」
「でも、こんな日だからこそ行きたいんだよ。」
「強くなったね、みさき。分かったわ、そこまで言うなら付き合ってあげる。」
「ありがとう、雪ちゃん。」
「お礼は今日のお昼ご飯でいいわよ。」
「う〜、雪ちゃんのいじわる〜。」
「冗談よ、じゃあ、10時に迎えに行くから。」
「うん、よろしくね。」
ピッ
「さて、そろそろ準備をしようかな。」
電話を置くと、みさきは誰に言うとでもなく呟いて、自分の戻って行った。


そして10時すぎ...

みさきは雪見に連れられて家を出た。
今日の目的地は商店街。
雪が踏み固められ滑りやすくなった歩道を、ゆっくりと足元を確かめるように進んで行く。
微妙な感覚のズレ。
何度も歩いているはずの道が、一度も歩いたことのない道のように感じられる。
ふつふつと湧き上がってくる不安。
思わず、足を踏み出すことを躊躇してしまう。
でも...
「みさき、大丈夫?」
隣には、心から自分のことを思ってくれる幼なじみがいる。
握られた手から、その気持ちが伝わってくる。
だから自分も勇気を出して、いつものように振舞えるようにがんばるんだ。
「...大丈夫...だって言っておくよ。」
『あの日、背中を押してくれた君のためにもね。』
自分にそう言い聞かせ、みさきは再び一歩を踏み出した。


商店街のファンシーショップ...

「ありがとうございました〜。」
明るく響く店員の声。
「良かったわね、みさき。」
「うん。雪ちゃんのおかげだよ。」
「はいはい、ありがとうって言っておくわ。」
こうしてみさきは、なんとか無事に今日の目的を果たすことができたのだった。


その夜...

部屋に戻ったみさきは、机の引き出しからフォトスタンドを取り出した。
裏のパネルを外し、入れられていたものを大事そうに手に取る。
それは、1枚の年賀状。
一見、何も書かれていないように見える裏面を指でなぞる。
『あけめしておめでとう...』
そこには、点字でそんな言葉が刻まれているのだ。
今はいない、そして今も待ち続けている人が存在していた、たった1つの証。
この年賀状の存在が、何度みさきを勇気づけたことだろうか。

2、3度それを読み返し、丁寧にフォトスタンドにしまい込むと、机の上に立てる。
そして、その前に可愛くラッピングされた小さな箱を置いた。
「はい、浩平くん、チョコレートだよ。」
それは今日、商店街のファンシーショップで購入したもの。
「明日はバレンタインデーだからね。」
「雪が積もってたけど、商店街まで買いに行って来たよ。雪ちゃんに助けてもらってだけど。」
「それで、雪ちゃんったらね...」
フォトスタンドに向かって、今日の出来事を楽しそうに話すみさき。
だが...

「今日ね、雪ちゃんが私のこと、『強くなったね』って言ってくれたんだよ。だけど...」
「ホントは...凄く恐かったんだ。」
抑えていた感情が、一気に込み上げてくる。
その感情につられるようにして、涙がとめどなく溢れ出し、頬を濡らす。
「でもね...君が...私に勇気をくれたから...」
「色々なことに挑戦しながら...君を待ってようって...決めたんだよ。」
「だから...」
精一杯といった感じで言葉を絞り出すと、みさきは涙を拭った。
「...」
しばらくの沈黙。

「はあっ...」
大きく息をつき、そして、再び言葉を紡ぎ始める。
「だから、早く帰って来てね。」
心からの願い。
「明日までに帰ってこなかったら、このチョコレートは私が食べちゃうんだからね。」
冗談ぽく呟いたみさきの顔には、いつもの笑顔が戻っていた。


・・・・・ おしまい ・・・・・

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はいっ、おそまつさまでした。

『あれ?曜日が...』って思われた方もおられるかとは思いますが、来年のバレンタインデーは月曜日なので、一応つじつまは合ってます。
それにしても、バレンタインSSなのに湿っぽい話になっちゃいましたねぇ。
でも、『冬ぐるめ(蟹)』のブラックさに比べたら、こっちの方が気持ちよく読めるような気はしてるんですけどね。
いつか、みさき先輩のほのぼのSSが書けると良いなぁ。

さて、それでは、昨日のGOMIMUSIさんのまでの感想にいきましょうっ。

いちごうさん
・替え歌に初挑戦(^^;;
 こういう替え歌って、キャラを持ち上げることが多いのに、人気投票でさらっと負けさせるトコとか、そうでないのが笑えました。

変身動物ポン太さん
・激突!! 第二章 (第7話)
 マイナーキャラの怒涛の攻撃(嘆きかも)が楽しいですねっ。ついにメカもの対戦にまで発展しましたか(笑)。
・激突!! 第二章 (最終話)
 パワフルなこのシリーズ、ついに終わりましたね。白熱のバトルの後にバレンタインネタに持って行くとは、想像もしてませんでした。びっくりですっ!
・感想SS”繭ちゃんご推薦の品(?)発見!?”
 画鋲、彼女にとっては確かに死活問題ですねっ!思わず笑いがっ!それから、レスどうもでした〜。あの時、焦ってたんですか、気が付かなかったです〜。

もももさん
・浩平無用!in 絆 <9>
 茜の下僕と化した浩平、なんか笑えるぞっ。詩子のボケもナイスすぎですし。それよりなにより、手旗信号って難しいよね〜。
・浩平無用!in 絆 <10>
 浩平ついに忘れられてしまいましたね〜。こうなったら1人でがんばるしかないのでしょうか?ガンバレ浩平っ!

かふさん
・永遠は地球を救う?第1話(3)
 ボランティア...長森はともかく、浩平には似合いそうもないな〜って思った早々、台詞がボランティアになってないしね(笑)。
・永遠は地球を救う?第1話(4)
 あはははは。結局七瀬の努力(口止めとも言う)は報われないんですねぇ。でも、最後の台詞、おもいっきり次を期待させるなぁ。
・永遠は地球を救う?第1話(5)
 おおっ、なんか浩平ってば、予想外に最後までいいひとモードはいりまくりでしたね〜。正義は勝つって王道の話でしたね。

将木我流
・感想SS『白い吐息〜FreezingHeart Mix』編
 なんか茜と良い雰囲気になってますね〜って、永遠の世界がそこにっ(笑)!それから、感想ありがとうございました〜。

ニュー偽善者Rさん
・ONE総里見八猫伝大蛇の章 第二十幕
 浩平、なんとか勝てましたね、愛の力で。しかし今回の飛主となぞの女、行動がひかえめでしたね〜、もうひと波瀾あるかと思ったんですけど。
・ONE総里見八猫伝大蛇の章 第二一幕
 おおっ、水浴び=サービスカットっ!爽やかに書かれていて、良い感じでしたぁ。水のあるところに霊は集まり易いらしいですからね、気をつけましょう。

天ノ月紘姫
・Remember Mistress(No2)
 おを。あら?って思ってたらやっぱ詩子シナリオなんですね。幼なじみが帰ってきたコトで、シナリオに突入するってのは、無理なく感じましたよ。
・川の流れに・・・(最終話)
 茜が前向きになったてくれて、よかったです。さすが澪、冷え切ったココロにぬくもりを運んでくれる明るさが彼女の魅力ですよね。

YOSHIさん
・はぐれ3匹【恋愛編】乙女チックごーいんぐまいうぇい!
 合格おめでとうございます〜。『乙女チックごーいんぐまいうぇい!』シリーズもハッピーエンドで終わってるし、よきことよきとこっ。

パルさん
・遠い空の向こう側 学校の怪談
 定番アイテムとか言って、『火の玉』を取り出すセンスがいいですねぇ。やっぱり浩平の妹なんだな〜なんて思いました。みさおちゃん、ホント優しいねですねぇ。
・空色のクレヨン −7−
 良い話でしたよぉ〜、マジで半泣き状態...。浩平の下手だけど上手い芝居(コケたやつね。)や白色のクレヨンで書いた澪の想いに、パルさんのONEへの思い入れが見えたような気がしました。

幸せのおとしごさん
・感想っす!
 レスどうもでした。今度はSSの感想を書いていただけるように、SSを書かねばっ(笑)!
・だって雪なんだもん
 なんてらぶらぶな話んだ〜っ!相合傘で肩を抱いて、腕を組んで...ああっ、もうっ!羨ましくなっちゃいますね。

ひささん
・−斜陽−【瑞佳SIDE】
 はじめまして〜。付き合い出したばかりのような2人の情景が、気持ち良く感じられました。こりゃぁ、浩平SIDEが楽しみです。

いいんちょさん
・金持ちなだけじゃ駄目かしら5
 七瀬がご飯粒をほっぺたに...これは七瀬ファンにはたまらないでろうな〜。中崎っ、お前の気持ちはわからんでもないぞっ!
・金持ちなだけじゃ駄目かしら6
 中崎は変態じゃなかったんだぁ。それにひきかえ南森は(笑)。でも、浩平と一緒にボコボコにされてたら、もっと仲良くなれたかもねっ。

KOHさん
・チョコレート・狂想曲
 ギャグあり、ほのぼのありで楽しいバレンタインがいっぱい詰まってますね。読みなおしてみても、やっぱり澪のがいいなぁ。

GOMIMUSIさん
・沈黙は語る
 見ず知らずの男の心まで癒してしまうとは、『伝えること』に対する澪の一途な想いって凄いな〜と改めて思いました。

最近、澪の出番が多いですよね。
それもグッとこさせる役が多いように感じます。
あ...また涙腺が...
それから、バレンタインSSは今朝までのところ2本ですか。
週末には、みなさんどど〜んとカキコするんでしょうねぇ。
楽しみですっ♪

さて、最後にちょこっと宣伝ですっ。
只今、ウチのHP『ほんわか日和』では、宝探しクイズなる暇潰しイベントを開催しております。
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よろしければ、参加して下さいね。
それから、後書きとはちょっと違うSS後記も『ほんわか伝言板』に書くようにしましたので、こちらもご覧ください。

それじゃあ、まったね〜