めざまし 投稿者: いけだもの
こんばんわ。いけだものですっ。
なんとか茜SSが書けましたっ。浩平SSのような気もするけど、ホント久々だよなぁ。
それでは、どうぞっ!
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ある日の夜...

『...浩平、明日の朝8時に、いつもの公園まで来てくれませんか?』
それは茜からの唐突な提案だった。
しかも待ち合わせの時間が朝の8時とは、春休みに入って遅寝遅起きという不摂生な生活に慣れきってしまった俺には、非常に厳しい要求だ。
「8時とはやけに早い時間だな。何か特別な事でもあるのか?」
『...明日は、浩平の誕生日じゃないですか。』
「え?...ああ、そうだっけ、言われてみると確かに明日は24日なような気がしてきたぞ。」
『...今日が、何月何日何曜日なのか分かってますか?』
「正月三が日の休曜(休養)日だろ?」
『...違います。しかも最後がすごく苦しいです。』
さすがは茜、間髪入れずにするどいつっこみを入れてくる。
「は、ははっ...」
でも春休みに入って約半月、こうも休みが長く続くと日付や曜日の感覚がなくなってくるのも当然のことに思えるんだが。
「なあ、もう少し遅い時間にならないか?」
『...駄目です。絶対に遅れないでくださいね。』
「はあっ...分かった、善処するよ。」
『...絶対に、です。それでは、おやすみなさい。』
「はいはい、おやすみな。」
かちゃっ
電話を置いて再びソファーに腰を下ろし、何気なく天井を眺める。
「明日で...丁度1年になるんだな...」
去年の3月24日、茜に深い悲しみを負わせて俺はこの世界から消えた。
そして先月、なんとか帰ってくることが出来たけど、俺を待ち続けた約1年という日々が、茜にとってどんなに辛いものだったのかを想像する度に胸が痛む。
「もうこれ以上、茜を待たせる訳にはいかないよな。」
そう呟くと、俺は部屋へ戻り、早々とベッドにもぐり込んだ。


翌日...

「はっ、はっ、はっ、はっ。」
公園へと続く道を全速力で駆け抜ける。
昨夜、早々とベッドにもぐり込んだまでは良かったけど、早く眠らなければという想いとは裏腹に、寝付くことができたのは夜中の1時過ぎ。
生活のリズムっていうはそう簡単に変えられないと言うことを、痛感させられてしまった。
って、要は寝坊しちまったんで、こうやって走ってるって訳だ。
「くっ、目覚しでもあればこんなことには...」
以前使っていたヤツは由起子さんに捨てられてしまったし、去年茜が誕生日プレゼントに準備してくれたヤツも結局は貰えず終いで、現在俺の部屋には目覚し時計と言うものがない。
もっとも、目覚し時計があったからって、ちゃんと起きられるとは限らないんだけど。
そんなことを考えつつ最終コーナーを曲がると、公園までは残り約100m。
「3分前...なんとか間に合いそうだな。」
俺はスピードを緩めて、走って来たのを悟られないようにと息を整えにかかった。

公園に着くと、既に茜はベンチに座っていた。
「あっかっねっ、おっはよっ。」
約束の時間に間に合ったことを誇張するように、とびきり爽やかな笑顔で声をかける。
「...おはようございます、浩平。」
「どうだ、時間どおりだろ?」
俺の言葉に腕時計を見る茜。
「...ぴったりです。浩平らしいですね。」
「そうか?」
「...はい。」
「で、こんな早い時間から何をするんだ?」
そう問いかけると、茜はにこりと微笑みながら改めて俺の顔を見る。
「浩平、お誕生日おめでとうございます。...それからこれ、誕生日プレゼントです。」
そして側に置いてあったバッグから、いかにもプレゼントって感じのする箱を取り出して、俺に差し出した。
「ありがとうな。」
うやうやしくそれを受け取る俺。
好きな人からのプレゼント。しかも1年ごしだけに嬉しさも倍増だ。
でも、これを渡すだけならこんな早い時間でなくても良かったんじゃないだろうか、なんて思ってしまう。

「開けてみてもいいか?」
「はい。」
がさがさがさがさ
リボンをほどき、丁寧に包装紙を取っていく。
「あ...」
箱を開けた瞬間、俺は言葉を失った。
中に入っていたのは、見覚えのある物。
去年の誕生日に貰い損ねた目覚し時計に、間違いなかった。
「茜、これ...」
「...去年、浩平に渡せなかった目覚し時計です。」
「でも、なんでこれを...」
「...どうしてでしょうね。少し考えてみてください。」
茜の言葉に再び目覚し時計に目をやって、その真意に考えを馳せてみる。
しかし、箱からそれを取り出して裏から表から隅々まで見てみても、電池が抜けていて動いていないこと以外は特に変わったところもない。
単純に、渡し損ねたものを渡したいって事じゃないだろうし...

『何を言いたいのか、さっぱり分からないぞ。』
そう答えようとした時、頭の片隅に何かが引っかかった。
動いてない?
止まった針が示す時間は8時7分。
「もしかして、この時間...」
「...はい。去年の今日、浩平が消えた時間です。」
「やっぱり...でも、どうして?」
「浩平が消えた時、地面に落ちたはずみで電池が抜けたんです。そしてその目覚しは、時を刻むのを止めました。」
「...」
「浩平。」
「なんだ?」
腕時計をちらと見て、茜は言葉を続ける。
「もうすぐ、その時間になります。もう一度その目覚しに、時を刻ませてあげてください。そうしてくれたら、私も浩平がいなかった1年間へのわだかまりを、少しだけですけど捨てることができると思うんです。」
「...茜。」
昨日、時間にこだわってたのは、このためだったのか。
待ち続けた1年間を、俺を責めることなく昇華しようとしている茜。
その気持ちがありがたくもあり、申し訳なくもあった。

時間が刻々と近づいてくる。
俺は目覚しの裏蓋を外し、電池を入れる準備を整えた。
でも、これで茜の心は本当に癒されるのだろうか?
そして電池を入た瞬間、俺はあるひらめきを得て、とっさに目覚しの針を0時に合わせる。
ちっ、ちっ、ちっ
機械的な音をたて、動き出す目覚し。
「...?」
俺の行動を意味を理解できなかったのか、茜は不思議そうな顔で俺を見ていた。
「くだらないと思うかも知れないけど、この目覚しには俺達の時間を刻んでもらおうと思うんだ。」
そんな茜の顔を見つめ返し、そう提案してみる。
「...」
「なあ茜、これからずっとお前と同じ時間を過ごさせてくれないか?」
「...浩平。」
俺の言葉に、その瞳を少し潤ませて頷いてくれる茜。
それからしばらくの間、俺達は2人の時間を刻み始めた目覚しを眺めていた。


「...でも、これでは目覚しとして使えませんね。」
「ぐあっ、そう言えばそうだな...」
「どうしましょう?」
「う〜ん...そうだっ、これ去年買ったやつだろ?もう一つ買ってくれるってのはどうだ?」
「...嫌です。」
眉を顰めて即答する茜。
まあ、そうだよな。
自分でも無茶苦茶なことを言ったもんだと思うし。
「だよなぁ。仕方ない、自分で買うとするか。」
「買わなくても、大丈夫です。」
「え?どうしてだ?」
「...これからは、私が浩平の目覚しになりますから。それが、今年の誕生日プレゼントです。」
茜は少し恥ずかしそうに、でもはっきりとした声でそう言ってくれたんだ。


・・・・・ おしまい ・・・・・

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はい〜、おそまつさまでしたぁ。

え〜と、これを読んだくださったみなさん、目覚ましのCGを見てはいけません(笑)。
CGの目覚ましは4時35分くらいを指してるんですけど、それじゃあお話にならないんで、勝手に時間を変えさせて貰いました。
でも、重たい話になったよな〜。次回は、もっとすかっとする茜SSを書きたいと思いますっ。

そいでもって申し訳ないですが、今回、感想が書けてませんっ!
次回作か、つっこみ茜ちゃんシリーズで書きますんで、お許しを〜
で、なんでかって言いますと、自分の遅筆さをかえりみずにもう1本茜SSを書いてたからなんですよ。
「...最悪な理由ですね。」
ざくっ!
がはっ!!
あ、茜ちゃん...いきなりだね。
「...いつものことです。」
でも書いたのは、過ぎてしまったホワイトデーねたSS(しかも暗め)なんで、ここにカキコするのは止めました。
「...書いた意味がないじゃないですか。」
だからウチのHP『ほんわか日和』にのみ掲載することにしたんで、興味のある方がいらっしゃいましたら読みに来て下さ〜い。ちなみにタイトルは『笑顔のために』です。
「...きっといませんね。」
どごっ!
ごふっ!!
...だ、断言しなくても...
「...私に変なことさせようとしてたからです。」
ね、ねたをバラすのは、やめてくれ...
「...あ、そうですね。では私は帰ります、みなさんさようなら。」
てとてと...

ふぅ、危なかったぁ。
あ、それから『ほんわか日和』では今週末、暇潰しゲーム(かなりくだらない)をやってますので、潰しても良い暇をお持ちの方は遊びに来てくださいっ。
それじゃあ、まったね〜

http://village.infoweb.or.jp/~fwiv2654/index.htm