氷の上で 投稿者: いけだもの
おっはよ〜ございま〜す。いけだもので〜す。
さあ、2月も今日で終わりですね。明日からは3月、季節はもう春です。
ってコトで、冬モノSSはこれで終わりの予定っ。
それでは、どうそ〜
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嬉しかったのに...
『七瀬、明日って暇か?』
昨日の夜なんか、ドキドキしてあんまり眠れなかったのよっ!
『チケットを2枚貰ったから、一緒に遊びにでも行こうかと思ってな。』
この服だって、今朝1時間もかけて選んだんだからっ!
『じゃあ、10時にいつもの公園で待ってるから、遅れんなよ。』
なのに...なのに...
「何でこんな場末のスケート場なのよっ!!」

思わず口をついて出た大声に、折原はきょとんとした表情であたしの顔を見つめている。
「何か不満でもあるのか?」
「チケットなんて言うから、てっきり遊園地かコンサートかと思ってたわよっ!」
「あれ?俺、『スケート場のチケット』って言ってなかったか?」
「言ってないっ!」
今、あたし達がいるのは、こぢんまりした市営スケート場のリンクの上。
まわりには、スケート教室に参加してる親子や、小学生の集団ばかりでムードのかけらも見当たらない。同じスケートをするにしたって、もう少しロマンチックな場所があると思うんだけどな。
でも、あたしが不満に思ってることはもう1つあった。それは...

「そんなに恐い顔するなって。せっかく来たんだから楽しまなきゃ損だろ?」
「まあ、そうだけどさ...」
「とりあえず鬼ごっこでもして、体を暖めようぜ。じゃあまずは七瀬が鬼な。」
そう言って折原は、すいーっとあたしから離れていく。
「え?ちょ、ちょっと待ってよ折原っ!...って、きゃっ!」
慌てて折原の腕をつかもうとした私は大きくバランスを崩し、
ずてーーーーーん
見事に転んでいた。
「あいったぁ。」
そう、実はあたし、スケートって苦手なのよ。
中学生のころは(腰を痛めるまでだけど)剣道で名を馳せ、今の学校に転校してきてからもスポーツ万能でとおってきたあたしだけど、スケート...って言うよりもスキーやスノーボードといった『滑り』系のスポーツはまったく駄目。
だいいち、地に足がついてないような感覚がなんとも言えず嫌なのよね。
最初からスケートって分かってれば、別のところに行こうって提案したのに。

「お〜、七瀬らしい豪快な転びっぷりだったな。」
にやにやと笑いながら、折原が戻ってきた。
「笑ってないで、手ぐらい貸してくれたらどうなの?」
「ああ、悪い悪い。」
思い出したかのように、手を差しだす折原。
でも、その手に掴まって立ち上がろうとした瞬間、折原はぐるんと体を反転させた。
「わわっ!」
その反動で、あたしの体はリンクを囲んでいるコンクリートの壁めがけて滑り始める。
「だ、誰かとめてぇ〜〜〜〜〜」
情けない声で救いを求めるあたし。でもその甲斐も無く...
がこぉっ!
見事に壁に衝突してしまった。
「ごめんごめん、バランス崩しちゃってさ〜」
なんて言いながらも、悪びれる様子もなく近づいてくる折原。
そして止まりしな、
ジャーッ!
スケート靴のエッジで氷を削って、あたしに振りかけてくる。
「...」
「お〜、またやっちまったよ。悪気はないんだけどな。」
「...」
何でこんなことできる訳?
浮かれてた自分がバカみたいに思えてくる。
はぁっ、何やってんだろなあたし...

「な〜な〜せっ。」
我に返ると、折原があたしの顔を覗きこんでいた。
「お前、半泣き顔になってるぞ。」
誰のせいだと思ってるのよ、この鈍感男っ!
あたしの気も...あたしの気も知らないでっ!
「いい加減にしてよっ、このアホッ!」
ぼくぅーーーーーっ!
突き出した拳が、折原の顔面を見事に捉える。
「ぐぁっ!」
うめき声をあげて、鼻頭を押さえる折原。
「あたし、帰るっ!」
そう言い放して立ち上がり、リンクから出ようと歩きだす。でも、
つるん!べちゃっ!
上手く歩くことができずに、氷の上にころがる。
だからスケートは嫌いなのよっ!
それでもめげずに立ち上がろうとしては、
つるん!べちゃっ!
また転ぶ。
くすん。心も体も、もうボロボロよ。

「七瀬...もしかしてお前、マジで滑れないのか?」
そんなことを5回ほど繰り返した頃、折原が神妙な顔をして声をかけてきた。
見れば分かるでしょ、見ればっ!
冗談でココまでやる人なんて、あんた以外にはいないわよっ!
「...滑れなくて何か悪いことでもあるのっ?」
顔を睨みつけながら、怒鳴り気味に答えてやる。
「...」
黙りこくる折原。
「...」
しばらくの沈黙の後、
「ごめんな、七瀬。」
折原はそう言って、抱きかかえるようにしてあたしを立ち上がらせてくれた。
「ちょっと調子に乗りすぎてたみたいだな。」
そして申し訳ないといった表情で優しく手を引き、リンクの出入り口まで誘導して行く。
ふうん、少しは反省したみたいね。
「ねえ折原。」
「どうした?」
「もうあんな意地悪なことしない?」
「ああ、しないよ。」
「それならもう少し付き合ってあげても良いわよ。」
「え?」
「スケート、教えてもらえるんならだけど。」
あたしの言葉に、折原はバツが悪そうな笑いを浮かべていた。


この後、あたしは折原にみっちりと滑り方を教えてさせてやった。
折原の滑りがやけに上手いと思ったら、小さい頃に瑞佳とよくここへ遊びに来てたんだって。
ちょっと妬けちゃったけど、過去のことはどうにもならないのよね。
だから、これから2人で色々なことを沢山したいって思ってる。
そしていつか、今日の氷の上での出来事を「そんなこともあったね。」って笑って話せる日が来るといいな。
ね、折原。


・・・・・ おしまい ・・・・・

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はい、おさまつさまでしたぁ。

七瀬が主役のSS、久しぶりに書いたなぁ。
しかも七瀬視点なんですけど...ホントにこいつは七瀬か?
う〜む、暴れさせておくには割と簡単なんですけど、こうシリアスっぽく書くと難しいですね。
でも最後は、ちょっと乙女チックに書けたからOKかな(笑)。

それでは、昨日のひささんのまでの感想ですぅ。

雫さん
・髭の困惑(続後編)
 ホントにピンチの時には、ちゃんと助けにくるあたりがやっぱり茜も人の子なんですねっ。でも、それまでの過程が笑えすぎますっ。オチも予想外で良かったですっ、長森も七瀬もあわれよの〜(笑)。

ひささん
・喜待 〜マツコトノヨロコビ〜【後編】
 待つこと、そして待たせることに対する2人の考えが、なるほど〜って思わせるほど上手く表現されてると思いました。守ってきた約束の分だけ、2人は深い絆で結ばれているんでしょうね。
・感想だけでもいいですか?(4)
 みさき先輩、ホント答えになってないよ(笑)。それからレス、どうもです。実は自分、密かにひささんがいつ『つっこみ茜』を使うのかって、心待ちにしてるんですよぉ。そうしたら(無理やりにでも)『つっこみ茜ちゃん普及委員会』に入ってもらうのに〜。

ここにあるよ?さん
・ONE〜輝く季節へ〜始まりその9
 どこにでもあるような、のどかなお昼の風景が良い感じです。でも、むむっ!今回は後をひく終わりかたですね〜。いつにも増して、続きが気になっちゃいます。それからみ〜ちゃん、『風に』だから勘弁してねっ。

WTTSさん
・感想<後編>(番外投稿)
 おおっ、これは広瀬SSですねっ。ここまで読んだ限りでは、根は良い娘のように思えますね。さて、どんな続きになるんでしょうか?楽しみにしてま〜す。

まねき猫さん
・瑞佳の休日
 長森と飼い猫達との休日、話の全体にほのぼの感が漂ってて、良いじゃありませんかぁ。それに長森には、ちゃんと猫の気持ちが分かってるって感じがしました。
 おおっ!つっこみ茜ちゃんが久しぶりにほかの方のSSに乱入してるっ!!ってことで、まねき猫さんには、つっこみ茜ちゃん普及委員会の会員番号08を(嫌だと言われても)差し上げますっ(笑)!

YOSHIさん
・はぐれ3匹【FARGO編】〜その2〜
 ん〜、FARGO編に入って重苦しい雰囲気になってますねぇ。今回の話、内容的にはそんなに重くないんですけど、そう感じました。幸せな時間は長くは続かない気がして。
・はぐれ3匹【FARGO編】〜その3〜
 今回で主要キャラは軒並み出そろったみたいですね。それぞれの動きをしっかり押さえとかないと、話に乗り遅れそうだなぁ。気合入れて読むぞっ。

もももさん
・浩平無用! in 絆 <16>
 住井、予想に反してめちゃくちゃ強いなぁ。そろそろやられ時かと思ってたんですけど、そうはいかないみたいですね(笑)。
・浩平無用! in 絆 <17>
 息をつかせぬ展開ですね。発動させた最終手段、藤隆自身が扉だということでしょうか?
・浩平無用! in 絆 <18>
 ただでは永遠の世界へは戻らない、住井の執念、恐るべしです。さて、これで永遠の世界に乗り込んで行かないといけない状況になりましたね。

ニュー偽善者Rさん
・ONE総里見八猫伝大蛇の章 第二九幕
 やって来ました総本山。これからの展開に向けて、新たな謎って言うか伏線がいくつもはられてる感じがしました。ホントまだまだ先が長そうですね〜、がんばって下さい。

変身動物ポン太さん
・おまけSS拡大版 2
 個人的には『澪ちゃんと夜の学校』が一番笑えました。髭が夜の校舎を巡回してたらさぞかし恐いだろうな〜ってね。それにしても、もう50作品ですか。凄いですねぇ。
・輝け!第一回男子人気投票!(その2)
 「校内に張り出すなああああぁぁぁぁーーーーー!!!!!」って台詞が浩平のだっての、上手いな〜って思いました。その後、七瀬にも蹴り落とされてるしっ(笑)。

天ノ月紘姫さん
・Remember Mistress(No3)
 ず〜っと校門で待ってるなんて、いじらしいですねぇ。これはこれで羨ましい限り...それにしても詩子の気が済むことなんてあるんでしょうか(笑)。

ばやんさん
・『かせぐの』−5−
 澪ががんばってる様子が、目に浮かぶようです。思わず応援したくなりました。長森の保母さん、自分も合ってると思いますけど、子供を甘やかしすぎそうですよね〜(笑)。それからレス、ど〜もでしたっ。

もうちゃん@(裏)
・他が為に鐘は鳴る(3)
 前回の予告で長森は死なないって言ってましたけど、読んでてドキドキしましたよぉ。絶望の縁から這い上がるためには、強い意志が大事だですよねっ。長森の意志が一瞬だけ浩平に届いたのでしょう。良いお話でしたっ。

まてつやさん
・茜の写真
 男ゴゴロをくすぐって金をせしめるとは...まさに外道。懸命に自分を正当化しようとする南が笑えました。でも、まてつやさん自身、消化不良のようですね。

壱弥栖さん
・里村茜抹殺指令 Act2
 いや〜、まさか『うさぴょん』が浩平のお母さんだとは...わ〜はっはっはっはっはっ!2人の追いかけっこの場面は大笑いでしたよ〜。終わりかたも意表をつかれたって感じでした。

さて、次回からは春モノSSを書くぞ〜。
卒業シーズンだし、ホワイトデーもあるし、イベントねたにはこと欠かないですよね。
でも、結構かぶりそうだけど(笑)。

それじゃあ、まったね〜

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