雪の降った朝は(切ない初夢編) 投稿者: いけだもの
こんばんわっ、いけだものです。
今年最後のSSが書き上がりました。
やっぱり茜の話になっちゃいましたけどね。
さぁ、どうぞっ!
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あいつが帰ってこないまま、私は新しい年を迎えた。
年末に降り始めた雪は、もう3日も降り続いている。


私は詩子と2人で公園に来ていた。
そう、あいつと見つけた公園に。
花壇には色とりどりの花が咲き、公園をとりまく木々からは小鳥のさえずりが聞こえてくる。
詩子はさっきから楽しそうに話をしてるけど、私は半ば上の空でそれを聞き流していた。
まわりの景色に何か違和感を感じていたからだ。
でも...
詩子が口にした言葉で、そんな違和感は吹き飛んだ。
それは忘れたはずの名前。
私が待ち続けている人の名前だったから。

...どうして?
戸惑う私をよそに、詩子は私の後ろを指差しながら驚きの声をあげた。
「ああっ!」
そして、意味ありげに笑いながら言葉を続ける。
「やっぱりね、あいつは噂をすれば現れるようなタイプだと思ってたのよ。」
振りかえると、そこにはあいつが立っていた。
バツが悪そうに照れ笑いを浮かべて。
帰ってきてくれた...
嬉しさのあまり、私はあいつの名前を呼んだ。


「浩平!」


名前を呼んだ瞬間、目の前の景色が暗転した。
「...」
意識がはっきりするにつれて見えてきたのは、カーテンの隙間から差し込む光でうっすらと明るくなった自分の部屋。

「...夢...だったの?」
全身の力が抜けていく。
そして枕を抱いて、ベッドの上にうずくまった。
『浩平が帰ってくる夢』を見たのは今回が初めてではない。
だけど今までに見た夢はどこか非現実的で、夢の中でさえ、それが夢ではないかと思えてしまうようなものばかりだった。
でも、今回は違う。
あの公園で...詩子が浩平を思い出して...そして浩平が...
決して、ありえなくはないシチュエーション。
それだけに、ショックが大きかった。

どれくらいの時間、そうしていただろう。
枕に顔を埋めていても、部屋の中がかなり明るくなってきたのが分かる。
気力を振り絞って顔を上げると、机の上に置いてあったカレンダーが目に止まった。
今日は1月2日。
「...!!」
もう一度、日付を確認すると、私は手早く着替えをして家を飛び出した。


『初夢は正夢になる。』
子供の頃、おばあちゃんから聞いた昔からの言い伝え。
それを思い出した。だから...
はっ、はっ、はっ、はっ。
私は夢中で走っていた。
住宅街を...
ほかの人が聞いたら、バカことだと笑うだろう。
それでも、私はそんなちっぽけな希望にでもすがりたかった。
商店街を...
雪は止んでいたけど、雪の積もった歩道は滑りやすくて何度も転びそうになる。
でも、そんなことにかまってはいられなかった。
一分、一秒でも早く、あの公園へ...
浩平が帰ってくるかもしれない。
そう思ったから。


だけど...
公園に、浩平はいなかった。
当たり前といえば、当たり前のこと。
それなのに、涙があふれてきた。
「浩平!」
そして私は、衝動的に浩平の名前を叫んだ。
返事があるはずないことは、もちろん分かっていた。
でも、叫ばずにはいられなかった。
そうしないと、自分が壊れてしまいそうだったから。

雪の積もった公園が、どこか物悲しく見える。
「やっぱり、夢は夢なんですね...」
自嘲気味に呟いたとき、どこからか夢の中での詩子の言葉が聞こえてきた。
『そうだよね、もうすぐ私たちも卒業だし。』
卒業...
そう、夢の中の季節は春だった。
そして、詩子もいた。
今、自分がいる公園の風景が夢とはまったく違うことに気付く。

だったら...
ちっぽけな希望は、まだ捨てずにいよう。
もしかしたら、あと少しの辛抱なのかもしれない。
卒業式は、2ヵ月後だから。
そう思ったら、心が少しだけ軽くなった気がした。

「...浩平、私は待ってますから。」
青空を見上げてそう言うと、私は公園を後にする。
雪が解けて...
色とりどりの花が咲いて...
小鳥たちのさえずりが聞こえて...
そして、暖かな風が吹く次の季節に...

初夢が正夢になることを願って。


・・・・・ おしまい ・・・・・

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はいっ、おそまつさまでした。

初夢が正夢になるって話、ウチの地方だけの話かもしれませんが、自分では夢のある話だなぁと思ってました。
そこでひらめいたのがこのSSです。
浩平を待ち続ける茜に、こんなエピソードがあってもいいんじゃないでしょうか?
ちっぽけでも希望を持つことは大事ですよねっ。

では、今朝のGOMIMUSIさんのまでの感想で〜す。

YOSHIさん
・はぐれ三匹【恋愛編】住井の場合〜その4〜
 住井に不可視の力(しかも不完全)、そして時間との戦いって要素が加わって、がぜん面白くなってきましたね〜。あと、さりげなく格好いい南森にも注目ですねっ!
・はぐれ三匹【恋愛編】住井の場合〜その5〜
 強いぞ南森〜って思ってたら、おいおい中崎がめちゃくちゃ強いじゃないですかっ。どうなる住井?そして長森は力を発動させるのかな?

偽善者Zさん
・浩平犯科帳 第三部 第十二話「濁流」
 シュン、やっぱり死んじゃったんですね。ちょっと残念な気もしました。あと、お瑞にひざ枕をしてもらってる場面の浩平の心情、せつないよな〜って感じでした。
・聖夜特別SS!復活のハムスター
 『ななぴ〜』ですかっ!いい名前ですねっ!こりゃあ騒がしくなりそうですぅ(笑)。それから浩平と茜の生活も順調って感じで良かったです。
・SSトレーニングルーム
 感想、どうもありがとうございましたっ。う〜む、目隠し団に参加するためにはまず『Piaキャロ2』を入手せねば...(←持ってないヒト)
・浩平犯科帳 第三部 第十三話「決戦」
 ラス前ってことで、各キャラ見せ場が盛りだくさんでしたね〜。特に浩平、格好いいっ!男らしいっ!やはり主役っ!ついに次回は最終回、めちゃくちゃ期待してますよっ!!
・なぜなに犯科帳!2とF(すみません、一緒にさせてもらいました。)
 こうしてみると、ホントに多くのキャラが出てきてたんですねぇ。しかも1人1人の設定もかなりしっかりしてるし、偽善者Zさんの企画力にただただ脱帽ですぅ。と感心しつつも、実は茜にも着ぐるみを着せて欲しいな〜なんて思ったりして(笑)。
・浩平犯科帳 第三部 最終話「帰還」
 完結おめでとうございます、そしておつかれさまですっ。何度も言ってますが、自分はこのシリーズの格好良い浩平がすっごく好きなんです。最終回はそれが極まったって感じで最高でしたっ。そしてけなげな瑞佳にやってきたハッピーエンド、いや〜、もう言うことないですねっ!
 次回作も期待してます〜♪

KOHさん
・聖夜の出来事
 猫ってことでラストは長森がくるかと思ったら、詩子でしめましたねぇ。良い意味での意外なラストでした。でも、なにかしら猫にプレゼントして行くなんて、みんないいトコありますよね。

WTTSさん
・応援歌は一曲だけ(投稿 6th)
 今回のはバリバリ季節モノ(Part2はちがうけど)ですね〜。特にお正月は短い曲の中で笑いのポイントが押さえられててグー(死語)でしたよっ。最後に、感想ありがとうございました。

WILYOUさん
・イヴ
 長森サンタはいいですね〜。そのうっかりさと25日の夜に配りなおしてるってところがむちゃくちゃ可愛いですっ!あと、浩平がサタンなのには大笑いでした。
・Let's AfterSchool
 喫茶店の位置設定がナイスです〜。それにしても詩子に嫉妬した浩平の行動が笑えますっ!誰が砂糖飽和状態のコーヒーを飲むんじゃいっ(笑)!それから、お祝いの言葉、ありがとうでした〜♪

変身動物ポン太さん
・粉雪の舞う舞台で・・・ (4)
 『俺は深山先輩の舞台の上にいた』っていう消える前の場面、浩平が深山先輩の呪縛をとりさったっていうエピソード、すごくよかったですっ。深山先輩シナリオとして申し分ないですね。
・感想SS”ポン太の雑記手帳”
 感想ありがとうございましたっ!また来年お会いしましょ〜。...ってこのメッセージはポン太さんにとどくのだろうか?

ばやんさん
・集団リンチだ南君(感想用) その5(最終回)
 あははははっ、こっちも一応ハッピーエンドだ〜。ばやんさんも沈められなかったしね(と解釈しときます)♪それから感想あ〜んどお祝いの言葉、ありがとうございました。

パルさん
・永遠への誘い −その5−
 浩平はできれば澪に自分が約束を守れなかったことを思い出して欲しくなかったのかもしれませんね。でも、1つづつ乗り越えて強くなって欲しいです。浩平、ガンバだっ!
 あと、お祝いの言葉ありがとうございました〜。(テレテレ)
・永遠への誘い −その6−
 みさおの思い出を長森のとすりかえることで、浩平が心のバランスをとっていた、そしてそれが崩れた時に永遠の世界がやってくるっていう設定が上手いですね。
・永遠への誘い −その7−
 う〜、ONEのシナリオが頭に浮かんできて、思わずうるうるしそうになっちゃいましたよ〜(特にみさき先輩のトコ)。あと3人をどう描いてくれるのか、楽しみです。

もうちゃん@さん
・ミズエモン「海から現れたのは?」
 茜が外道だ〜。もはや最強キャラと言ってもいいんじゃないでしょうか(笑)?南、七瀬...君たちの活躍も忘れないよ(大笑)。

天王寺澪さん
・NEURO−ONE 11
 ついに長森の登場ですね。でもあのほのぼのとした世界はシナリオを暴走させて長森が作り上げた世界なのでしょうかという新しい謎があっ!(あう〜、理解力が乏しくてすみません)
・NEURO−ONE 12
 今回の戦闘シーン、迫力があってドキドキものでした。あと、話の後半の茜はなんとも言えず良いですねっ。彼女のらしさ(魅力)が存分に発揮されると感じました。

スライムさん
・上月家の食卓(おやつ編) 第一幕
 おおっ、待望のSSコーナー掲載ですっ。チョコパのちょっとクールな台詞が面白いですね。でもこんな異常事態にも、『食べるの〜』って姿勢を崩さない澪はすごいねっ。

noritoさん
・スーパードールミズカちゃん
 はじめまして。なんかほのぼの〜ですねっ。みさき先輩の当身攻撃なんか、効きそうにないですもんね〜。超電磁よーよーってのも、懐かしいかったです。

天ノ月紘姫さん
・わっふるな午後(その8)
 お久しぶりです〜。茜の嫉妬はコワイな〜、浩平も気をつけなくっちゃね。それから、おとも(?)の詩子のの〜天気ぶりはいい味だしてますねぇ。

enilさん
・新たな身体 第3話
 お久しぶりですっ。うさぎ星人作戦(勝手に命名)とはまた愉快な作戦を思いついたもんです(笑)。みんな(七瀬以外)にも受け入れられたし、さぁ、これからが楽しみですっ。

吉田 樹さん
・やさしい決断(後編)
 浩平にとってのバッド・エンドも、少し見方を変えて話を進めていくと、こんなハッピー・エンドの話になっちゃうんですねぇ。あと、この話の住井の考え方って共感できるトコロがあって好きでした。

Mr.C-Man改めいいんちょさん
・閑話休題
 はははっ、ホモネタ落ちだったワケですね。おいっ、シュンっ!前置きが長いぞ〜(笑)。七瀬改の仕様、面白すぎですね〜。
・乙女の決断
 あの時の七瀬の気持ちってこんな感じだったんですかねぇ。素直でいいと思いましたよっ。個人的には続きを書いてもらいたいです。
・闘えっ!!七瀬改第一話その1
 うわっ!ホントに来たぞ、この話っ。マッド瑞佳は楽しい性格してますよね〜。自分の作った怪人同士を戦わせて楽しむってワケですね。(笑)

雫さん
・髭の困惑(前編)
 きたよ、きたよ、きたよ〜♪髭VS茜ちゃん軍団、再び対決っ!茜の影響か、スライムさんの影響か、澪が外道化してるよ〜。でもこれで茜と良いコンビになりそうですねっ。(笑)

GOMIMUSIさん
・White letter
 はぁ、いい話ですねぇ。浩平が消えたことに落ち込んだみさき先輩の描写、上手すぎですっ。そして点字の手紙が後から送られてくるなんて、すっごくドラマチックでした。

年末になっても、みなさんのパワーは相変わらずですね。
感心しきりです。
じゃあ、まったね〜