俺と茜の学園祭(その4) 投稿者: いけだもの
こんばんわ、いけだものです。
学園祭(その4)をお届けします。
でわっ、どうぞっ。
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前回のあらすじ
たい焼きの中身を何にしようかなって考えて、簡単なお菓子を作ってみました。
上手くできたか、ちょっと心配です。
お昼休みにでも、みんなに試食してもらわないといけませんね。


この日の午前中は、体育やら教室移動やらで休み時間に余裕がなく、茜が作ってきた試作品は結局食えず終いだった。

そして昼休み...
今日は茜が弁当を持ってこなかったので、長森も交えて学食で昼飯を食べることになった。
「はい、浩平、どうぞ。」
茜が試作品の入った箱をテーブルの上に置く。
なんでも餡子とかの具(?)を、小麦粉などから作った生地で挟んで焼いたものだそうだ。
「長森さんも食べてくださいね。」
「じゃあ、も〜らいっ。」
長森が手を出すより速く、どこからともなく現れた柚木が先陣をきって試作品を食べ始める。
『いただきますなの。』
続いて澪が柚木の後ろからひょっこり顔を出し、箱に手をのばした。
「私も貰うねっ。」
2人につられるように、長森もそれを口に運ぶ。
「あっ、これ、つぶ餡だね。」
「こっちはチョコだよ。」
『これもチョコなの。』
「...味は、どうですか?」
少し不安そうに尋ねる茜。
「おいしいっ、さすが茜だよね。」
「ほんと、おいしいよ。」
澪はうんうんと頷いている。
「そうですか、よかったです。」
3人の評価に、茜はほっと胸を撫で下ろした。

まあ、わざわざ聞かなくても3人の表情を見れば、それが美味しいものであるということに疑いはない。
実のところ、俺はこの試作品に警戒心を持っていた。
茜だけに激甘練乳スペシャル味ってことも考えられるからな。
しかし、それも取り越し苦労だったようだ。

「じゃあ、俺ももらうか。」
箱の中から1つをつまみ、ひょいっと口に放り込む。
もぐもぐもぐ.........
しかし、2、3回噛んだところで俺の動きは止まった。
「...どうしたんですか?」
不思議そうな顔で、茜が俺の顔を覗きこむ。
「...ぐぁ、あ、甘い。」
俺が食べたそれは、山葉堂の例のワッフルと同じ、いやそれ以上に甘かった。
コップの水で口の中のそれを一気に流し込む。
「なんだこりゃぁ。」
「...カスタードだったみたいですね。」
「カスタードにしては、めちゃくちゃ甘かったぞ。」
警戒心がまったく途切れていただけに、今のパンチはかなりきつかった。
「...練乳と蜂蜜を混ぜ合わせましたから...」
「ええっ、カスタードに練乳と蜂蜜?」
長森が驚きの声をあげる。
「はい、山葉堂のワッフルを参考にしてみたんですけど...」
茜はそう言いながら、箱の中から試作品を2つ取り出す。
「...食べてみて下さい。」
それぞれを2つに割ると、3人に手渡した。

「...」
「...」
『...』
それを持ったまま、しばし固まる3人。
「じゃ、じゃあ、食べるよ。」
茜に悪いと思ったのか、長森は恐る恐るそれを口元に移動させる。
そして意を決して、口に放り込んだ。
もぐもぐもぐ.........
「んっ、んんっ!」
俺と同じく2、3回くらい噛んだところで、血相を変えて周りを見回す。
「水か?」
口に手を当てて、思いっきり大きく頷く長森。
「澪、悪いけど水を持ってきてくれ。」
『わかったの』
澪は大急ぎで給水器の方へ走って行った。

澪が持ってきた水で、長森はなんとか息を吹き返した。
「はぁ、はぁ、ありがとう、澪ちゃん。」
『どういたしましてなの。』
「...長森さんの口には合いませんでしたか。」
そう言って、茜は柚木に視線を向ける。
「え?わ、わたし?」
柚木は茜と試作品を交互に見つめる。
それを口に入れることを、かなりためらっているようだ。
無理もない...
茜は視線を澪に移す。
『...』
澪は今にも泣き出しそうな表情でふるふると首を振っている。
「...わかりました。私が食べます。」
茜は大きくため息をつき、柚木と澪から試作品を引き取ると、それらを平然と食べてしまった。
「里村さんって...」
長森は青ざめた顔で茜を見つめ、その場に立ち尽くしていた。


そのころ屋上では...
1人の女生徒が言わずと知れた2人の男子生徒と対峙していた。
「こんなところに呼び出したりして、何の用?」
「七瀬さんに折り入ってお願いがあるんだ。」
「お願い?」
「ああ、学園祭で折原がたい焼き屋をやるらしくって、それに対抗して俺達も大判焼き屋をやろうとしてるんだ。」
「そこで、七瀬さんに売り子をしてもらいたいな〜と思ってね。」
「売り子ぉ?」
すっとんきょうな声を上げる七瀬。
「そう、七瀬さんが協力してくれれば、俺達の勝利は間違いない。」
「協力してくれないかな。」
2人の男子生徒は不気味なくらいにこやかな表情で七瀬を見つめる。
一方、七瀬は冷ややかな視線を2人に向けている。
「おあいにくさま、折原とあんた達との勝負になんて興味ないわ。悪いけど、他を当たってくれる?」
そう言い放って、七瀬は2人の横をとおり抜け、階段へと歩いて行った。

「そうか、男まさりの七瀬さんにはやっぱり売り子は向いてないよなぁ。」
住井がぼそっと呟くと、七瀬の歩みが止まる。
「ああ、茶道部とか華道部とか、見学の時点で入部を断られるくらいだもんな。」
七瀬は振りかえり、2人を睨みつけた。
「なんでそんなこと知ってんのよ!」
「有名な話さ、みんな言わないだけだよ。」
七瀬の問いに、住井は肩をすくめ、首をおおげさに左右に振りながら答える。
「え...」
がくっと膝から崩れ落ちる七瀬。
2人は先ほどと変わらぬ不気味な笑みを浮かべている。
「でも、それって、折原のせいなんだよな...」
「そうだな、あいつがあんなにしつこく付きまとわなけりゃ、皆も七瀬さんのこと可憐な乙女だと思ってただろうに...」
「...」
住井が七瀬の肩にポンと手を置く。
「なあ、七瀬さんが真の乙女だってこと、学園祭で折原に見せつけてやらないか?」
「...」
「どうかな?」
七瀬は住井の手を払いのけると、肩を震わせながら立ち上がった。
「わかったわ、やってやろうじゃないのっ!ほーっほっほっほっほっほっ。」
「そうこなくっちゃ。くっくっくっくっくっ。」
「へっへっへっへっへっ。」
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴るまで、3人の怪しい笑い声が、抜けるような秋晴れの空に響きわたっていた。


・・・・・ つづきます ・・・・・

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はい、どうでしたでしょうか。

なんやかんや言っておきながら、激甘の菓子を出しました。
でも、七瀬の登場も含めて、とりあえず今回の話で自分の中ではなんとかメドが立ったなぁって感じです。
あと数回お付き合いくださいねっ。

あとリレーSS、なんと3話まで続いてますぅ。
藤井勇気さんとバブルスライムさん、ありがとうございますと言うか、申し訳ありませんと言うか、あんな軽〜いノリで書いたヤツに面白い続きを書いていただいて。
誰も書いてくれなかった時のために、一応続きも考えていたんですが...よかったですっ。
でも、自分では考えつかないような展開になってくのが楽しいですね。ほほ〜って感じです。
この企画、かなりイケてるなぁ。火消しの風さん、どうでしょうか?

さて、感想をくださった皆さん、ありがとうございました。
ホント嬉しいかぎりですっ。
じゃあ、感想いきますね〜。

藤井勇気さん
・こんな感じかも
 「いただきます。」律儀でいいですっ。それにしても郁未をゆするなんて長森&由衣、まさに命知らずですねっ。
・感想SS(しか書けないの)
 レシピまで教えていただきましてありがとうございました。抹茶味、上手く使う方法を考え中ですっ。
・わんとむ〜ん 第1話 その2
 郁未もぶっ壊れてますけど、それ以上に由依が良い味出しまくってますっ。笑えるなぁ〜。
・リレーSS第2話「いつものはずの日常で…」
 バッチリな展開です。晴香なら暴れさせるも壊すも自由自在ですからね。あと、晴香と長森のかけあい、楽しいですねっ。

WILYOUさん
・チェンジ!3
 ちびみずかパワー炸裂っ!感染するってのがすごいです。さすが(?)改訂版の効果ですねっ。

しーどりーふさん
・幻
 忙しそうですね。まぁ1週間なんてすぐですよ。
 おぅ、みさおが守護霊みたいですっ。暖かな気持ちになりますね。

雫さん
・校内ミスコンテスト(その4)
 前回の澪に続いて長森の動機も可愛いです。どうして区別がつかないんだ?って思わずつっこみ入れたくなりましたっ。
・校内ミスコンテスト(その5)
 2回戦突入ですね。「みおなのさんっ!!」って七瀬大ボケだし、「七瀬ウエーーーイブゥ!!」ってすんごい怪しい技だし、とにかく笑えましたっ。
・校内ミスコンテスト(その6)
 沢口(南)の正体が明らかにっ、ちょっとだけ格好いいかも。でも、報われなさは変わってないのがまた良いですっ。笑いのツボを心得てますね〜。

偽善者Zさん
・浩平犯科帳 第二部 第一話「過去」
 う〜ん、奥が深いというか設定がしっかりしてるというか、さすがです。幕末の情勢に浩平をどう絡めるのか、楽しみです。
・永遠の世界から3
 お茶漬けと牛乳ですか...う〜ん、自分も長森と同様にご飯と牛乳は一緒にいけますが、お茶漬けだと液体−液体でいまいちでは?
 あと、自分のお奨めは『ごま蕎麦』ですね〜。ざる蕎麦のつけ汁に、いりごまを汁の表面が見えなくなるくらい入れて食べるという簡単なシロモノです。ごま好きの自分にはこたえられない一品ですっ。
・浩平犯科帳 第二部 第二話「京都」
 第2部に入って、浩平の格好の良さが際立ってますねっ。このシリーズの浩平、好きなんですよね。
・ホト連共感者出現記念
 とりあえず、よかったですね。次のネタ...何だろう?気になります。

ブラック火消しの風さん
・黒い心の炎 NO.4,5,6
 話が繋がりました。再書き込みありがとうございます。なんとか、さとみさんと長森に浩平の心の傷を癒してもらいたいと思います。

もうちゃん@さん
・テスト・・・(感想)
 感想ど〜うもです。テスト...大変ですね、がんばってください。って終わってますね。
・ミズエモン『恋する茜は頑張り屋』
 今回の浩平は平穏でしたね、茜と一緒に風呂に入れるなんてこの幸せ者っ。南も打たれ強くなったなぁ。

静村 幸さん
・夏の日C
 さすが茜、よくそれだけ食べられるもんです。甘味大食いならみさき先輩に勝てるかもしれませんね。

ここにあるよ?さん
・ゲームセンターONE!!2
 今回も作者出演ですか。剣道一筋だった七瀬はゲームに向かないみたいですね。それにしても夜7時からのUFOキャッチャーって...。

いちごうさん
・ファースト・キス
 繭の成長ぶりには感心させられるばかりですね。でも浩平ってホントにこの手のことに、にぶいよなぁ。

スライム&バブルスライムさん
・リレーSS第3話「天国と地獄」
 いや〜、面白いですねっ。「天国から地獄へ、そしてまた天国へ戻って来たという感じ・・・」って表現がまたいいなぁ。終わりかたも後をひくようで、上手いですっ。
・Moonな日々−3−(中編)
 シリアスが続いてますね〜。緊張感ありますっ。そういえば七瀬と澪はどうしてるのかと、ふと思ってしまいました。

まてつやさん
・簡素な感想2
 感想どうもです。住井−南組に七瀬も加わり笑い声は絶えないことでしょう。
 よろしければ、リレーSSに参加してくださいね。

さぁ、続きを書くぞっ。
まったね〜。