ゆきみとみさき 投稿者: いけだもの
おはよ〜ございま〜すっ。いけだもので〜す。

昨日は体育の日でしたね。ってことで強行しております、勝手に体育の日すぺっしゃるの第3弾です。
お前は運動会ネタしかないんかい!と、あきれてる方もいるでしょう。
でも読んでくださいねっ。

では、どうぞっ。

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「ん〜、もう半歩左ね。それからほんの少し後ろ。」
グラウンドが見渡せる校舎の屋上で、深山雪見は小型無線機に向かって指示を出していた。
「いいわっ、そこでジャンプしてっ。」
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「あっちゃ〜、惜しかったわ〜。」

彼女の視線はグラウンドの中央にいるクラスメートに向けられていた。
そのクラスメートとは、ご存知、川名みさきである。
みさきは先ほどから空中に吊り下げられている物体に向かってジャンプを繰り返している。
そう、パン食い競争に出場しているのだ。


昨年の運動会で100mを完走したことに味をしめたみさきは、今年はパン食い競争に出場したいと言い出したのである。
最初はみさきの身を案じて反対していた雪見であったが、みさきの「最後の運動会だから...」という言葉に心を動かされ、自分をサーポートに付けるという条件で出場を認めたのだった。

ところが運動会の前日になって、競技で使われるパンが袋入りであり、みさきのよく効く鼻が期待できないことが分かった。
そこで急遽2人が考え出したのが『みさき遠隔操作作戦』である。
なにか凄そうな作戦に聞こえるが、なんのことはない。
小型無線機を使って雪見がみさきをパンの位置まで誘導するという安直な作戦だ。

しかし雪見はこの作戦を成功させるため、昨日1人遅くまで特訓をしていた。
すべては『みさきに運動会を楽しんでもらいたい』という想いからの行動である。


1人、2人とパンを咥え取った人がゴールしていく。ちょっと急がないとまずいわね。
今度こそと思いながら、みさきとパンの位置のずれを詰めるように指示を出す。
「みさきっ、一歩前に進んで。」
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「OK、あと、ほんの少しだけ右よっ。」
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「行きすぎよ、ちょっと左に戻って。」
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「よしっ、そこでいいわ。ジャンプしてっ。」
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「やったーーーっ!みさきっ、やったよっ!」
みさきがパンを咥え取ったの瞬間、思わずガッツポーズがでたわ。
まるで自分のことみたいに歓びがこみ上げてくる。

これまで私は保護者みたいに、みさきに危険が近づかないように気を配ってきた。
それが、私がみさきのために出来ることだって思ってたからね。
だからみさきの本心が分かっていても、あえて止めさせることも多かった。
でも今日は、本当にみさきのために何かができた気がする。
やっぱりみさきは元気に跳ね回ってるのが似合ってるわ。

そんなことが頭に浮かんできて、思わず涙がでてきた。
こんな気持ちになるなんて、やっぱり私達って幼なじみね。

みさきがゴールに向かって走り出したのを確認すると、私もグラウンドへ向かって一目散に階段を駆け下りて行った。


私がグラウンドに戻ると、みさきはクラスメートから祝福を受けていた。
「あっ、雪見〜、うまくやったわね〜。」
私に気付いたクラスメートが声をかけてくる。
「うん、まあね。」
軽く返事をして、みさきのそばに駆け寄った。
「みさき、やったね。」
「あっ、雪ちゃん。」
「どう?パン食い競争は楽しめた?」
「うん。雪ちゃんのおかげだよっ。」
「何言ってんのよ、私はパンの場所を教えただけだからね。後はみさきのセンスよ。」
「ううん、やっぱり雪ちゃんがいなかったら、こうはいかなかったよ。本当にありがとうね。」
ストレートなみさきの感謝の言葉にドキッとした。
「幼なじみなんだから、これくらい当然でしょ。」
照れくさいのを隠してさらりと答える。
「あれ?もしかして雪ちゃん、照れてるのかな?」
うっ、図星だ。
顔が赤くなっていくのが自分でも分かった。
「照れてなんかないわっ。そろそろ私も自分の準備があるから、行ってくるわよっ。」
そう言い残すと私は、そそくさとその場を離れる。
「雪ちゃん、がんばって〜」
脳天気そうなみさきの声が、なかなか耳から離れなかった。


スタート地点で自分の順番を待つ間、私はパン食い競争のことを思い出していた。
「はぁっ、それにしてもうまくいったものね。」
本当にそう思う。
昨日は3000円も投資して1個も取れなかったのに...

『UFOキャッチャーのぬいぐるみ』


・・・・・おしまい・・・・・

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楽しんでいただけましたか〜?

『続 幼なじみの運動会』のオチに使ったあんパンが頭から離れず、こんな話を作ってしまいました。
ちなみに今回の話の中に出てくる昨年の運動会のことってのは、先月の半ばころに書いた『彼女の運動会』のことで、自ら100m競争への出場を志願したみさき先輩が、なんと1位をとってしまう話です。
気になった方は、りーふ図書館へゴ〜。

これにて勝手に体育の日すぺっしゃるを終わらせていただきますっ。

はぁ〜、今週末は飛ばしたな〜。

では、感想でぇ〜す。

まてつやさん
・怪盗ミラクルルミ4!
 こんなにシリアスな七瀬を見たのは久しぶりのような気がしました。七瀬の過去...辛すぎですね。

GOMIMUSIさん
・心ください・4回目
 『こっちを選んだんだから、駄々をこねちゃ駄目だよ』ってのが良かったですっ。

だよだよ星人さん
・好き好き郁未先生!3
 澪をおんぶして帰る浩平、やっぱり最後はこうなる運命なんですよね。ほほえましいラストでした。

WILYOUさん
・うららかな午後に
 浩平の描いた『だよだよ星人』見てみたいなあ。それにしてもみんなのつっこみが面白いですね。

では、またお会いしましょうっ。
じゃあねぇ〜