ぐっど こみゅにけーしょん 投稿者: いけだもの
どうもこんばんは、いけだものです。
今回は季節モノではありませんが、時期としては2月中旬から下旬にかけてのお話です。

では、どうぞ〜
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『どうしたらあの人に想いを伝えられるの?』
少女は切実に頭を悩ませていた。
彼女の名は『上月 澪』、生まれながらに言葉を持たぬ少女である。

その無邪気さゆえに誰からも愛される彼女、そんな彼女のために今年も誕生日会が開催されることとなった。
参加メンバーは、当事者の澪のほか発案者の柚木詩子、里村茜、折原浩平、深山雪見そして川名みさきの6人。
当然うれしくない訳がない。
しかし、澪の頭には昨年の誕生日会でのちょっとした事件がひっかかっていた。


昨年の誕生日会...
川名みさきからプレゼントをもらった時、彼女はあまりの嬉しさに突然抱きついてしまった。
それは彼女にしてみれば普段と変わらぬ行動であったが、目の見えないみさきは軽いパニックを起こして転倒し、机の角で頭を打ってしまったのだ。
幸いみさきは軽い怪我で済んだのだが、この時彼女は自分のなにげない行動が、目の見えない者にとっては危険極まりない行為だということ知ったのだ。


誕生日会は来週の日曜日...そんなことがあったにもかかわらず、みさきは今年も誕生日会に出席してくれると言う。
彼女はこれまで、スケッチブックに書いた文字で人に自分の気持ちを伝えてきた。
しかし、みさきの目はスケッチブックに書かれた文字を映すことはない...
彼女は思った、『今年こそ、川名先輩を危険に晒すことなく、自分の想いを伝えたい』と。


部活へ行くために廊下を歩いていた私は、顔見知りの2人を発見した。3年生の折原先輩と里村先輩だ。
いつものように後ろから勢いよく折原先輩に抱きつく。
「ぐあっ!だ、誰だ?...って、澪か。」
「上月さん、こんにちは。」
『こんにちはなの。』
「澪は、今から部活か?」
『そうなの。』
「そうか、もうすぐ舞台だもんな、がんばれよ。」
『がんばるの。』
2人はどうするのだろうと思って、じーっと見ていると里村先輩がそれを察して答えてくれた。
「私達は、これから帰るところです。」
『部活には行かないの?』
「この時期に3年生が部活をしているのは演劇部くらいですよ。もっとも私は帰宅部でしたけど。」
「俺の所もほとんど休部状態だったしな。」
『何部だったの?』
「一応、軽音楽部という名前だったぞ。」
『楽器は何をやってたの?』
「こう見えてもサックスだ。」
何の変哲もない会話、でも折原先輩の言葉を聞いて私の頭にあるアイディアがひらめいた。
『教えて欲しいの。』
「え?何をだ?」
折原先輩は私のお願いの意味が分からず、きょとんとしている。
『楽器、教えて欲しいの。』

私がひらめいたアイディアは、気持ちを楽器の音で表現することだったの。
実は私、音楽ってすっごく苦手、しかも誕生日会まではあと2週間しかない。
でも折原先輩に教えてもらえばきっとなんとかなる、そう思ったの。

「それは良い考えですね。」
「ああ、澪にしては上出来だ。」
『失礼なの。』
「悪い、悪い。まかせろ、協力は惜しまないぞ。」
『うれしいの。』
「じゃあ早速、ウチの部室で練習するか。」
うんっ。私は大きく頷いて答えた。
「私もご一緒します。」
3人で軽音楽部の部室に向かう。
「ところで澪、楽器は何にするんだ?」
『これから決めるの。』
「ちなみに得意な楽器はあるのか?」
『カスタネット。』
私の答を聞いて先輩たちは無言で来た道を引き返そうとする。
あう〜、待って〜。本当なの〜。
必死で先輩たちを引き止めた。
「上月さん、もしかして音楽苦手なんですか?」
『そうなの。』
「それじゃあ、できるだけ簡単な楽器にしないといけませんね。」
うん、うんと頷いて里村先輩の意見に同意する。
「ってことは、縦笛とかハーモニカくらいか。」
「ハーモニカなら首にかけて固定する器具もありますし、いいかもしれませんね。」
「そうだな、部室に行けば2、3個は転がってそうだし。澪、ハーモニカにするか?」
うんっ。私は強い意志を込めて頷いた。

ハーモニカ...小学生の時以来さわったこともないけど、川名先輩に想いを伝えたい、だからがんばるの。

それから毎日、折原先輩と里村先輩はお昼休みに私を指導してくれたの。
最初の1週間は思った音を出せるようになるので精一杯。
でも2週目の後半には、なんとか自分なりのリズムを付けて音を出すことが出来るようになったの。
そしてついに誕生日会の前日になった。

「じゃあ澪、吹いてみろ。」
「ファッファファファッ」
「『こんにちは』だな。」
うんっ。当たりなの。
「じゃあ、次。」
「ファファファッファ、ファファファファー」
「『プレゼント、ありがとう』ですね。」
うんっ。正解なの。
「じゃあ、次。」
「ファファファファッファファ」
「『お腹減ったの』か?」
ぶんぶん。違うの。
「『川名先輩』ですよね。」
うん、うんっ。大正解なの。
「...茜、よく分かるな。」
「なんとなくですけど。」
「でも、だいぶ言葉に近くってきたって感じだな。」
「本当です。」
「よくがんばったな、澪。」
『2人のおかげなの。』
きっと私1人の力じゃ、ここまでできなかったのと思う。
本当に感謝なの。
「この調子なら、みさき先輩にもなんとか分かってもらえるんじゃないか?」
「そうですね。」
『明日、がんばるの。』
そう誓って私は家路についた。

誕生日会当日...ちなみに会場は折原先輩の家なの。
川名先輩が到着すると私は早速ハーモニカでお出迎えをした。
「こんにちは〜。」
「ファッファファファ〜(こんにちは〜)」
「あれっ?ハーモニカ?」
「ああ、澪が吹いてんだよ。」
折原先輩が川名先輩に説明してくれる。
「澪ちゃん、もしかして今の『こんにちは』かな?」
「ファファファファファ(当たりなの)」
「当たりなんだね、でもいきなりハーモニカなんてどうしたのかな?」
「みさき先輩と直接話をしたくて練習したんだよな、澪。」
「ファッ(うんっ)」
「えっ、そうなんだ...」
「ファファファファッファファ、ファファファファーファファ(川名先輩、ありがとうなの)」
「ううん...私こそ、ありがとうだよ...澪ちゃん。うぐっ。」
川名先輩の声が潤んでる。
「...澪ちゃんの誕生日会なのに...私がプレゼントをもらったみたいだよ。えぐっ。」
そう言って、川名先輩は私を優しく抱きしめてくれたの。
「ファッファファファ、ファファファ(そんなこと、ないの)」
私の目からも涙がこぼれた。
やっと伝えられたの、私の想い。


「今日の料理って茜ちゃんがつくったのかな?」
「はい...そうですけど。」
「やっぱりね。すっごく美味しいから、きっとそうだと思ったんだよ。ね、澪ちゃん。」
「ファファファファファファ(本当なの)」
「えっ?『食べ過ぎなの』って?いやだなぁ、澪ちゃんまでそんなこと言わないでよ。」
「...」

がっくし、なの。

・・・・・おしまい・・・・

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はい、どうもでしたっ。

きっと皆さんも、みさき先輩と澪が通訳為しで会話できないかと1度は考えたことがあるのではないでしょうか?(もしかしたら既に誰かが書いてるかも)
単純な展開ですが、自分なりにちょっといい話に仕立ててみたつもりですけど。

う〜ん、相変わらず次々と新しい作品がでてくるんで(良いことだ)、ちょっと気を抜くと感想がたまりますね〜。
では、感想ですっ。

dojinanoさん
 やっぱり澪にはハーモニカが必需のようですね。う〜ん、それにしても悲しいなぁ。

ひろやんさん
 繭、引っ越しちゃったんですか、思っても見ない展開でした。最後の「とりあえずは、『おかえり』…だな」って台詞、いいですね。

スライムさん
・Moonな日々(後編´)
 この感じでは晴香は本当に捨て駒になりそうですね。少年役はシュンは適任じゃあないでしょうか。
・Moonな日々(後編)
 長森、瞬間移動したり澪とコミュニケーションしたり凄いです。次回はいよいよ葉子さん(茜)の登場ですねっ。 

GOMIMUSIさん
 茜の台詞、迫力ありました。心に痛みを抱える茜ならではの言葉ですね。

もうちゃん@さん
 南くん、テンション高いですっ。う〜ん、浩平の背中ってそんなに居心地が良いのでしょうか?

KOHさん
 広瀬がなんか「いいひと」モードになってて、意外な展開でした。それにしても「非情提督ルミナ」とは深山先輩も変わったセンスしてますね。

ここにあるよ?さん
 長森&ここにあるよ?さんペア、大健闘ですね。しかし、バツゲームがきっついですね。 

天ノ月紘姫さん
 茜、凄いです。材料を持ち歩くなんて、よっぽどあのワッフルが好きなんですね。

だよだよ星人さん
 詩子作の歌詞ですね。8匹のネコはコミカルな内容がグッド、ゆらめくひかりはちょっとせつないですがいい感じでした。

まてつやさん
・〜光と闇3〜
 うるうるうる〜。深山先輩によるみさき先輩の描写、感動しましたっ。ぜひとも、ハッピーエンドをお願いしますっ。
・怪盗ミラクルルミ3!
 こいつは茜と七瀬と浩平の3角関係ってやつですねっ。今後の展開がすっごく楽しみですっ。しかしC子...相変わらず面白すぎです。

11番目の猫さん
 絆があったのなら、本当に2人とも早く帰ってきて欲しいものです。それにしてもONEへの思い入れがかなり深さを感じます。 

では、まったね〜。