茜シナリオのその後です。なにせ茜びいきなもんで。 展開のバレバレぎみで長い話になってしまいましたが... ではどうぞ。 浩平「はあっ。なんとかこの世界に帰ってこれたけどこれからどうなるんだ...」 浩平は由起子さんの家の2階の部屋でタオルケットにくるまりため息をついていた。 話は今日の放課後へさかのぼる... 茜、長森、七瀬ほかクラスメートとの再会を喜んでいたのもつかの間、浩平は現実をたたきつけられたのであった。 −指導室− 髭「あー。あと少しで卒業式を迎えるわけだが...折原、お前だけ進路が決まってないぞ。」 (うっ、そう言えばそんなことすっかり忘れてたぞ...) 髭「あー。出席日数はぜんぜん足りてないし、テストも受けてなかったみたいだな。どういうつもりだ?」 (あたりまえだろっ。俺はついこの間までこの世界にいなかったんだぞ) 髭「あー。まあ今の時代このまま卒業してもなかなか就職先もないし、もう1年にこの学校に通ってみたらどうだ。」 (それって留年じゃねーか...) 髭「あー。とりあえず2、3日考えてみろ。」 浩平「...はい...」 浩平「はあっ。由起子さんになんて説明すればいいんだろ...」 そんなため息をつきながらいつのまにか寝てしまった。 −次の日− 長森「ほらっ、朝だよ浩平。はやく起きなよー。今日は登校日だよ。」 浩平「むにゃむにゃ...」 長森「こーへーってばー、お・き・な・よー。」 長森に起こされる朝が始まったことに安心してか時間ギリギリまで寝てしまった。 (走って登校するのも久しぶりなのに会話上手は変わってないな。) そんなことを思いながら通学路を長森と走り抜ける。 長森「もうすぐ卒業だってのに...結局3年間走ってばっかりだったよ。」 浩平「そう言うなって。そういえば長森は4月からどうするんだ?」 長森「隣町の大学に行くんだよ。」 浩平「そうか。じゃあ長森に起こしてもらうのもあと少しなんだな...」 長森「そうだよ。これからは1人でちゃんと起きるんだよ...」 浩平(やっぱり長森も俺の進路が決まってないことに気付いていないようだな) 長森「...って、前!!」 (このパターンは七瀬か...) そう思うと俺は減速もしないで頭から突っ込んでいった。 ごちん... 浩平「ぐあっ」 ものすごい音と衝撃を感じた直後、目の前が真っ暗になり火花が飛び散っていた。 みさき「う〜痛いよ〜」 浩平「うっ...その声は...み、みさき先輩か...」 みさき「こ、浩平くん?久しぶりだね。」 浩平「ごめん。でもどうしてこんなところに?」 みさき「朝の散歩だよ。外出の練習にね。」 浩平「そうか、先輩もがんばってるんだな。」 みさき「少しづつだけどね。で、浩平君は?」 浩平「俺は学校に行くところだ。」 みさき「じゃあ遅刻しない.ように..ね...」 バタッ 浩平「おいっ!先輩!しっかりしろ!」 さすがに頑丈なみさき先輩もさっきの激突のダメージは大きかったらしく深い眠りについてしまった。 長森「むちゃくちゃだよ浩平は...おんぶしてあげなよ...」 浩平「そうだな...」 俺と長森はみさき先輩を家に届けると全速力で学校へ向かった。 −教室− 登校日といってもすることはほとんどない。暇なので七瀬にちょっかいを出してみる。 浩平「七瀬、お前卒業したらどうするんだ?やっぱり女子プロレスラーをめざすのか?」 バキッ!! 浩平「うぐっ」 威勢のいい音とともに俺の顔が180度反対方向を向いた。 七瀬「ざけんなよオラ〜」 そう言ってつばを飛ばしながら俺の胸ぐらにつかみかる。 (こいつも相変わらずだ...) 浩平「な、七瀬...ま、まわり...」 七瀬「えっ、へへへっ、お、折原だいじょうぶ?首の運動もほどほどにしときなよ。」 周囲のざわめきに気がつくと急に可愛らしい声をあげてその場をとりつくろう。 七瀬「あっ、進路の話だったよね。一応隣町の短大に行くの。でもね、ウフッ。」 声のトーンが一段あがった。 七瀬「この前の日曜日に商店街を歩いてたらスカウトされちゃったのよ。芸能プロダクションに。」 (確かにこの容姿だけ見ればスカウトされるのも不思議じゃないな...) 七瀬「これがスカウトさんの名刺よ。ほらっ。」 そう言って名刺を見せる。 浩平「『○○○プロダクション』か...ん?これって確かアダルト...」 言いかけた言葉を飲み込む。 (ここで言ったら俺にとばっちりがくるだろうな。それに七瀬ならヤられる前に逃げ出せるだろう。) そう思った。 浩平「そ、そうか...がんばれよ。」 名刺を返したとき、七瀬は『?』といった表情だった。 −昼休み− 浩平「茜〜、メシ食おうぜ〜。」 茜「...はい。」 俺と茜は中庭へ向かう。中庭で昼食をとるのは登校日のお決まりになっていた。 少しずつ暖かくなっていく日差しが気持ちいい。春はもうすぐそこまで来ているようだ。 茜「さっきの...だいじょうぶですか?」 七瀬とのやりとりを見ていたようだ。 浩平「ああ、今朝のみさき先輩との衝突とくらべればたいしたことない。」 茜「...みさき先輩が心配です。」 こんなとりとめのない会話をしながら昼食を食べる。 浩平「なあ、茜。」 茜「...はい。」 浩平「茜は卒業したらどうするんだ?」 茜「隣町の短大に行きます。詩子も一緒です。でも七瀬さんとは違う学校です。」 (隣町には大学がいくつあるんだ?) 浩平「そうか...」 茜「どうしたの?」 浩平「実は...」 俺は茜に昨日髭に言われたことを話した。 茜「...そうですか。でも、しかたないですね。」 浩平「『しかたないですね』って、俺が留年なんかしたら茜もかっこ悪いだろ?」 俺がそう言うと茜は俺の顔を見つめ、少し顔を赤らめて言った。 茜「...私は、浩平が帰ってきてくれただけで十分ですから...」 (茜っ!お前ってやつは...) あまりの感動に俺は茜を抱きしめようとした。が... 茜「...嫌です。」 浩平「う...」 茜「...ここじゃあ、恥ずかしいです。」 浩平「そ、そうか...ははははは...」 (まあ当然か) そう思い、力なく笑う。 茜「...これあげますから、元気だしてください。」 そう言ってかわいらしい袋を取り出す。 浩平「ああ、ありがとうな。ところでこれなんだ?」 茜「山葉堂のワッフルです。」 浩平「え゛...それって『あれ』か?」 茜「はい、そうです。いっしょに食べましょう。」 暖かい日差しのような笑顔の茜 浩平「そ、そうか...はははははは...」 (相変わらず凶悪な甘さだ...) そう思いながら茜と『あれ』を食べた。茜は2つ食べていた。 −夜− その夜、俺は由起子さんに今後のことを相談することにした。 由起子さんは深い詮索もしないで留年することを了承してくれた。 (すみません由起子さん迷惑ばかりかけて...) 俺はあらためて由起子さんの優しさを感じながら眠りについた。 −4月− 俺は3年生の教室に向かっていた。新しいクラスメートとの日常の始まり... (最初が肝心だからな) 長森がいなくても目は覚めたし。 (茜からもらった目覚しのおかげだけど) 髭「あー。今日から君たちの担任になった「髭」だ。まあよろしく。」 髭「あとクラス替えはなかったが、新しい友達が入ることになった。折原〜。」 (なんでこんなふうに紹介されなくちゃならないんだ...) そう思いながらも教室に入る。 髭「彼は特別な事情があってもう一年この学校に通うことになった『折原 浩平』君だ。」 浩平「折原 浩平です。よろしくお願いします。」 そう言って頭を下げるとクラス中から暖かい拍手が。でも教室の一角からひときわ大きい拍手があるのに気が付いた。 その方向を見ると... 澪『いっしょなの。』 にこにこと笑いながら澪が俺の方にスケッチブックを向けていた。 浩平「み、澪と同じクラスかよ〜。」 ・・・おしまい・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 初めての投稿です。ショートストーリーって難しいですね。 またがんばります。 七瀬ファンの方、気を悪くしないでね。