読書の秋 投稿者: いけだもの
こんばんは、いけだものです。
ホーム・ページがリニューアルされて、このコーナーがなくなったかと思いましたよ。びっくり、びっくり。

秋にちなんだ作品ですが、季節感はありません。

では、どうぞ〜
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『読書の秋』
こんな言葉にも過剰に固執する女学生がいる。
彼女の名は七瀬留美。
究極の乙女になることを夢見て日夜精進しつづける健気な女学生である。


昼休み、茜と食事を終えた俺は教室に戻ってきた。
茜がとっとと席に戻ってしまったので授業が始まる時間までは凄まじく退屈である。
そこで(勝手に)目の前に座る七瀬と遊ぶことにした。
「おーい七瀬、なにかして遊ぼーぜ。」
「うるさいわね。『読書の秋』なんだから本を読んでるのよ。邪魔しないで。」
つれない返事だ。
「そんな本なんてどうでもいいだろう。いつものように豪快に電話帳でも引き裂いてみせてくれ。」
「そんなこと、いつやったっ!」
七瀬が殺気を宿した眼差しで俺を睨みつける。
「おー、それでこそ七瀬だ。」
「くっ。」
小さく呟いた後、七瀬は半ばあきれた表情で言った。
「あのねぇ、深まりつつある秋の麗らかな午後に窓辺でひとり読書を嗜む...乙女にしか為せない技よ。」
「ムリしてまでそんな技を使うこともないだろう。」
「もう話しかけないでっ!」
七瀬はプイッと前を向いてしまった。
「はーぁ、そうですか...」

七瀬には振られてしまったが退屈なのに変わりはない。
そこで俺は七瀬の『読書』ぶりを観察することにした。

七瀬は片ひじをついた姿勢で本を読み、時折遠くを眺めるように窓の方に顔を向ける。
後ろからはその表情までは分からないがどことなく知的な雰囲気が漂っていおり、気を抜くと思わず見とれてしまう。
もともと容姿は非のうちどころがない七瀬だけに、この姿を見ている限りではクラスの男子の過半数が七瀬ファンになってしまうのも納得である。

ふと七瀬の机の上にもう1冊のブ厚い本があることに気がついた。
(何の本だ?)
背表紙を見てみる。
『英和辞典』
(...読書ってそんなに無理してまですることか?)
しばし呆然となる俺であった。

...5分経過...
七瀬の頭が小刻みにカクッカクッと動いている。
睡魔と戦っているようだ。
(予想通りの展開だな。)
そして机についた肘がじわじわと机の端に移動してく...
次の瞬間、
ガンッ!!
七瀬は机に頭つきをしていた。
「いったぁ〜。」
顔を上げ、きょろきょろと周りを見回す。
当然のごとくクラス中の視線は七瀬に集まっていた。
「あ...へへっ...お、折原くん、後ろから急に押さないでよぉ...」
俺の方を向き、愛想笑いをうかべながらこんなことをのたまう。
(こいつは...)
結局クラスの連中はいつものように(?)俺が七瀬にちょっかいを出したものと解釈したようであった。

「おい、七瀬っ!俺が何したんだよっ!」
小声で七瀬に非難をあびせる。
「ごめん。他の言い訳が思いうかばなかったのよ。」
「これじゃあまた、お前のファンから闇討ちくらうじゃね〜か。」
「そんなことあったの?」
「お前のファンはお前に似てバイオレンスな奴が多いからな。」
「誰がバイオレンスよっ!」
七瀬はまたプイッと前を向いてしまった。
 
...さらに5分経過...
前回の教訓を生かしてか、七瀬は椅子にもたれて本を読んでいる。
しかしまたたもや頭が小刻みに揺れだした。
(おいおい、また寝てるぞ。)
そう思った次の瞬間、
「どりやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
突然七瀬が叫んだ。そして
ガシャーン!!
大きな音と共に七瀬の机が前に倒れる。
どうやら、寝ぼけて机を蹴飛ばしてしまったようだ。
いったいどんな夢をみていたのやら。
「えっ、なに、なにがあったの?」
机が倒れた音で目が覚めたものの、状況を理解できない七瀬はおろおろと周りを見回している。
再びクラス中の視線が七瀬に集中する。
俺はしかたなく机を起こしてやると、七瀬の肩をポンと叩いて言ってやった。
「七瀬、やっぱお前に読書は似合わないって。」
「...」
がっくりと肩を落とす七瀬。

「ところで、何の本を読んでたんだ?」
ひょいっと七瀬が読んでいた本をとりあげる。
「ちょ、ちょっと、見ないでよっ!」
七瀬が慌てて本を取り返そうとするが、もう遅い。
『タイタニック(英語版)』
俺はあきれた目で七瀬を見返す。
「...」
「素直に映画見に行けよ...」
「ううっ、一緒に行ってくれる白馬の王子さまがいないのよ...」
「じゃあ日本語版読めよ...」
「うううっ、間違えて買っちゃったのよ...」
「...」
七瀬の瞳は涙で潤んでいた。


七瀬留美、乙女への道は長く険しい...


・・・・・おしまい・・・・・

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さあ、読書の秋ですっ!もりあがって行きましょう!!

では、感想ですっ。

天ノ月紘姫さん
 おいっ浩平っ、おまえがいながらみさき先輩をさらわれるなよ。って感じですね。

KOHさん

 こんな桜の見方があったんですね。読んでてほっとするいいお話でした。
温泉に行こう−1−
 茜が行きたがる××温泉、どんなところなんでしょうか。楽しみです。
温泉に行こう−2−
 繭の視点いいですね。駅弁を10個も食べる人を見たのは初めてだったんでしょうね。それは楽しいでしょう。

ありえないよ。の茜空(3)
よもすえさん
 うるるるるる〜(涙)。感動ですっ。やっぱりハッピー・エンドはいいですねっ。

GOMIMUSIさん
 おおっ、澪がしゃべっているっ。でもこの澪はほんものなんでしょうか?なにせここは永遠の世界ですしね。

火消しの風さん
 1回からうって変わってシリアスになってますね。

もうちゃん@さん
「乙女と殺戮の狭間で・・・」
 七瀬が人間じゃなくなってますね。こんなバイオレンスなスネ夫は初めて見ましたよ。
『今だ!勝利の大魔球』
 すごい野球ですね。それにしてもオチがいいです。

T.Kameさん
 南くん、ついに主役の座を獲得!でもむくわれないのかな?

偽善者Zさん  
浩平犯科帳
 繭が働くとは...いったいどうなるんでしょうか。
吾が輩はハムスターである3
 茜、ハムスターに逃げられなくてよかったね。昔、自分が飼ってたハムスターが行方不明になって半年後に物置の隅でひからびているのを発見したことを思い出しました。ううっ(涙)

ここにあるよ?さん
 1ヶ月のおかわり禁止はみさき先輩にとっては地獄の苦しみでしょうね。

だよだよ星人さん
 いや〜、いいですねぇ。ぜひアニメ化してもらいましょう。(笑)

いちごうさん
戦う乙女たち!!
 やっぱりあの2人はタッチを拒否するんですね。みさき先輩の頭突きはそうとう強烈なんでしょうね。痛快な話でした。
日常の中のにちじょう (その2)
 散々な日ってことは繭はお金をむりやり取られて、みあは苗字が分かるまで引っ張りまわされたんでしょうかね。

静村 幸 さん
 静岡県、いいところですね。ぜひ、この作品を静岡県の観光ガイドに掲載してもらいましょう。ちなみに静村さんは『湖西市』を知ってますか?一応静岡県にある自分の故郷ですが。

ではでは、みなさんお元気で〜。