彼女の運動会 投稿者: いけだもの
こんにちは、いけだものです。
相変わらず皆さんペースが速いっすね〜。

すぺしゃるWeekに1票投じた手前、今回はみさき先輩モノです。(ただ書きたかっただけ)

では、どうぞ〜
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秋晴れの運動会...
100m競争のスタートラインに盲目の少女が立っていた。
彼女の名は『川名みさき』この学校の2年生である。
今、彼女は自分の意志でここに立っている。
「位置について。」
スタート係の声がグラウンドに響く。
「さあ、いくよ。」
彼女は自分にだけ聞こえる声で言うと、大きく息を吸い込んだ。
「用意!」
グラウンドが一瞬、静寂に包まれる。
『パァン!』
雷管がはじける音と共に、彼女は走り出した。
彼女の心のスクリーンに描かれた100m先のゴールに向かって。


ひと月前のホームルーム...
「では、来月の運動会の選手を決めたいと思います。まずは100m競争ですが...希望者はいますか?」
委員長はそう言うと教室を見回した。
「はいっ!私やります!」
彼女の発言にクラス中が騒然となる。無理もない、誰もが彼女の目が見えないことを知っているからだ。
後ろの席のクラスメートが彼女に声をかける。彼女の幼なじみだ。
「みさきっ、あんた何考えてんの?」
「だいじょうぶだよ。私の足が早いって事、雪ちゃんよく知ってるでしょ?」
「でも、100mもまっすぐ走れる?」
「だいじょうぶだって。」
委員長も心配そうに彼女に声をかける。
「川名さん、本当に大丈夫ですか?」
「うん、たいじょうぶだよ。」
「...」
委員長はしばらく考えた後、彼女に言った。
「それじゃあ、川名さんお願いしますね。」
「まかせてよ。」


この学校に入学して1年半、小学生のころ毎日のようにこの学校で遊んでいた
私はこの学校の中では光を取り戻すことができた。
でも、最初の1年間はやっぱり怖かったんだ。私が描くことができた学校と実際の学校には多少のギャップがあったから。
でも今は平気。校内を自由に行き来することはもちろん、体育の時間にグラウンドを駆け回る事だってできるようになった。
だから今年の運動会は、普通に、みんなと一緒に参加したかったんだ。


彼女はゴールに向かって一直線に走る。
風が気持ちいい...
みんなの声援が聞こえる...
自分が何位を走っているのかは分からない...
でもそんなことはどうでもよかった。
こんなに充実した運動会は本当に久しぶりだったから...
一段と大きな歓声が聞こえる...
もうすぐゴールだ。
そして私は自分だけに見えるゴール・テープを切った。

その瞬間...

「えっ?」
胸に何かが当たった感触。
(何だろう。)
そう思っていると雪ちゃんの声が聞こえた。
「みさきっ!」
すごく興奮しているみたいだ。
「凄いよ、みさきっ!1位だよっ!1位!」
雪ちゃんは私の手を取って、まるで自分のことのように喜んでいた。


長 森「ねえ浩平、さっきの2年生女子の100m競争見てた?」
浩 平「見てないぞ。」
長 森「すっごいことがあったらしいんだよ。」
浩 平「どんな?」
長 森「トップを独走してた陸上部の人が転んじゃって、大混戦のレースになったんだよ。」
浩 平「それのどこがすごいんだ?」
長 森「それで結局1位になった人ってのがね、目が見えない人なんだって。感動的だよね〜。」
浩 平「へぇ〜。そりゃすごいな...ってなんでそんな娘が100m競争に出てんだ?」
長 森「そんなこと知らないもん。そんなこと気にしないで素直に感動してればいいんだよ。」


そんなうわさ話がとびかう昼休み...
「一生懸命走ったから、お腹がすいちゃったよ。」
そう言いながら彼女は20人分はあろうかという弁当をご機嫌でたいらげていた。

・・・・・おしまい・・・・・

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感想を書いていただいた皆さんありがとうございます。
前作は自分でも「オチが平和すぎるなぁ」と思ってたんですが、皆さんもそう思われたみたいですね。
まるでみさき先輩が好きだったドラマみたいだな〜。
さあ、またがんばって書くかっ。

では、感想ですっ。
偽善者Zさん
 繭のお母さんの話、リアリティーありますね。次回はやっぱり繭のあだ討ちになるのでしょうか。楽しみです。 

HMR−28さん
 永遠の世界を望む人って結構いるんでしょうか?浩平の学校では少なくとも3人目ですが。

GOMIMUSIさん
 幼いなじみがいなくなってる茜には消える人への思いがほかの5人とは違って複雑ですよね。

もうちゃん@さん
ミズエモン(キャラ紹介)
 ジャイアン役が七瀬じゃないとか、住井ができすぎくんとか意外な配役が面白いですね。
ミズエモン「怖いの暗いのお化け屋敷なの」
 ポケットの道具、手作りの七瀬お面...お前が怖いぞミズエモン!って感じです。

よもすえさん
 みんなを元気づけていく茜、けなげで良い話です(涙)。 

しーど&偽善者さん
 どれも遅刻コースって感じですね。

だよだよ星人さん
 この連中では名作もこんなになって...次の餌食は何の話でしょう?

KOHさん
 浩平がみさき先輩に犬をさわらせるやり方がうまいです。でも目が見えないところに犬ってすごく怖いだろうなぁ。

11番目の猫さん
 澪って本当に素直ですよね。きっと意地悪な人もこんな感じでやさしい気持ちにさせられるんでしょうね。

ここにあるよ?さん
 茜のさりげなくやさしいところがいいですね。次のワッフル、気になります。

火消しの風さん
 むむっ、ホモネタですか?でもシュンだと違和感がないですね。

スライムさん
 ほんとに『困ったの』ですね。まあ気長に行きましょうか。

続きモノはどうしても先が気になりますね〜。
では、また〜。