チェンジ!3 投稿者: WILYOU
・事の始まり

前回で警察に捕まった俺達も無事めでたくシャバの空気を吸うことができた。
「はぁ〜、やっぱ外の空気は違うな。なんつったって自由があるよ、うん」
今日の三時間目は体育でマラソン。みんなが汗をかきながら苦しげな顔で走っているその中で、俺達はにこやかな笑みをたたえながら走っていた。
「不気味だ・・・」
「なんか青春してるな、あの二人・・」
今追い抜いた二人組が後ろでそんなことをいっているが気にならない。なにせ俺達はこれまでに地獄を見てきたのだ。
お縄になってから最初の一週間は家庭裁判所での審議、その間に住井の作った「俺達が正義さっ!マシーン(相手の脳をいじくることによって、こちらがわの正義を相手に植え付ける、いわゆるマインドコントロールである)」はみごとに裁判長の大脳皮質を破壊し尽くして失敗(廃人になっちゃったの♪)。
次の一週間は少年院から住井の作った「MOONの不可視の力を応用して作られたビームガン」は見事脱走はできたものの、小倉駐在の自衛隊第17なんとかに出動されて、海辺の埠頭に逃げ込むも39時間でお縄。
やっと昨日できた「みんなの脳から自分たちのした悪事を消しちゃえ☆マシーン」でなんとか誰にもとがめられることなくもとの世界に復帰できたというわけだ。
昨晩は警察などのデーターバンクから自分達の名前を消すために徹夜でハックしていたために寝不足であるが、この眩しい太陽の下にいると、そんなことはどうでもよくなってくる。みんなはジャージでも俺達は半袖短パン、まさに健康児そのものだ。
そうして何故か奇異の視線を向けられながらも体育の時間は終わった。


「あ〜、いい汗かいた」
俺は食堂の横にある自販機でジュースを飲もうと、クラスで着替え終わった後であらかじめもってきておいたオレンジジュース(70パー)を鞄から取り出して飲む。

ごきゅごきゅっ

「ぷっは〜」
ちょっと親父臭い言葉を吐きつつも、俺は一気にそれを飲み干した。
やっぱ風呂あがり・・じゃない、スポーツの後のちょっと苦めのオレンジジュースはうまいっ!
ん、苦め?
「あれ?この鞄に入れてておいた「改訂版住井君スーパー」は?」

びしっ

「あ、折原それ・・・・」
見ると、俺が手に持っていた缶には「X18999」と印されている。後はただのジュースのかんなのだが。
「住井!てめぇまたやりやがったな!」
俺は住井の胸ぐらを掴み上げる。
「違う!よく見て見ろ、それはおれの鞄だ!」
ほんとである、俺が自分の席だと思っていたところは隣の住井の席だ。
俺は手を離した。
・・・・・・・・・しかし・・
「んなパッケージにしておくなっ!さてはてめぇ市販の缶ジュースに混ぜる魂胆だっだろ!」
「実験は研究者の努力が報われる時なんだっ!」
「報われても被害にあった奴が報われんわっ!だいたいどうして「改訂版」・・」
「その方が怪しさが出るだろうがっ!」
「んなもん飲ますなっ!」
「お前が勝手にのんだんだろうがっ!」
「それよりいいんですか?」
突然横からかかった声におれと住井はピタリと止まり、そちらを向く。
見ると茜が立っている。どうやら女子の方の体育も終わったらしい。
「体、変わっちゃいますよ?」
「そうだ、解毒剤、解毒剤・・・」
住井はごそごそと自分の机の中をあさり始める。
そうか解毒剤があったか・・・
俺はほっと胸をなで下ろす。
「あったっ!ほれっ!」
住井は一本の試験管を取り出すとこちらに向かって放り投げた。

・・・・・・・・・すんばらしいスピードで、

ヒユウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッ!

パリンッ

後ろを向くと、黒板の真ん中当たりに液体がかかっていて、そこだけ色が濃くなっている。
「はっはっはっ悪いな、手がすべっちまったい」
後ろから奴の脳天気な声。
「浩平が難を逃れる可能性は少しでも断とうというわけですね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しょせん運命なのか・・・・・・・
俺は抗議する気も起きず、ただ黒板を流れる幾筋かの液体をじっとみていた・・・・・・・

しかし、そんな時間も終わりを告げる。俺の頭はきゅうに痛くなりだす、おそらく入れ替わるときの前兆だろう。
「今回のは副作用をまったくなくしておいたから、変わっても倒れることは無いぞ」
「よかったですね」
お前ら・・・・・・
そしてその時だった。
「あれ?浩平なんか顔色悪いよ?」
すぐそばで長森の声。どうやら事態は最悪となったようだ。
まずいっ!長森と目を合わせたらかなりとんでも無いことになるっ。くるなぁ〜っ!
「近づくな長森!」
俺は声の聞こえてきた方に向かって叫ぶ。
って、そっち見たらだめじゃん・・

あ゛・・・・・・
目があってしまった。
長森と目があってしまった・・・・

うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!
俺は視界がまばゆい光につつまれていくのを感じ、そしてそこで俺は意識を失ったのだった。


1,彼女は誰?
「目を開けると保健室だった」
「いきなりなにいってんだ?お前」
一人称ですすめていると、ついそんなことを口走ってしまう。
まあ、それはともかく俺は見覚えのある学校の保健室のベッドの上に居て、そして横には住井が居た。
「って、体っ!」
気を失う前のことを思い出して体をじっとみてみる。
うむ・・・・・・・・
俺の体である。どこをどうみてもそれは俺の体だ。
「あれ?」
「大丈夫だ、お前は変わってないから」
「そうか、そうなのか・・・。・・よくわからんがよかった・・・・・・・」
さすがにチェンジ!1,2のようにはなりたくない・・
俺は脱力した。
しかし、
「喜ぶのはまだ早い」
そんな言葉が住井の口から発せられた。
言っておくが、住井の口から出た言葉で良いことは当たった試しがないが、悪いことなら百発百中である。
俺は跳ね起きる。
「どういうことだ・・」
「長森さんがとんでもないことになった」
「どんなふうに?」
「さらにかわいくなった」
「良い事じゃないか」
「それが子供っぽいかわいさなんだよ」
「もとから子供だろ、あいつは」
「もっと子供っぽいんだ」
「ただのイメチェンじゃないのか?」
「そうかあ?そうは思えないけどな」
「そうだって」
「いきなり『えいえんはあるよ?』とかわけわかんないことも言ってきたりするんだぜ?」

(またも)ビシッ

俺の頭の中でおぼろげながらも一本の線が通る。
「なんじゃそりやあぁぁぁっ!」
俺は事態が(またも)ほぼ最悪になったことを実感した。

説明しよう。
住井の話では「改訂版住井君スーパー」は味を優先したために、その能力は従来の物の1/3。だから効果が薄く、そのせいで俺の意識は長森には移らなかったのだろう。
しかしである。今思い出したことだが俺の心の中には「永遠の世界」と「ちびみずか」という小さな女の子が存在し。そしてその「ちびみずか」の方の人格のみがあの薬の影響で長森の中に入ってしまったのだろう。おそらく。

「と、いうわけだ」
俺は落ち着くと、保健室で目の前の住井と見舞いに来てくれた七瀬、そしていつからかそこにいた茜に「ちびみずか」のことを語って聞かせた。
「あんたって見かけによらずナイーブなのね・・」
七瀬の第一声。
「似合わない・・・・」
住井の第一声。
「嫌です・・・」
まあ、予想はしてたが・・・
しっかしそんなにシリアスむきじゃないか?俺は。
「ギャグキャラだと思いますけど」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「壁に向かってのの字かいてると浩平らしく無いですよ」
別にいいもん・・・


「で、折原も立ち直ったところで、その「ちびみずか」がでてくるとなんかまずいわけ?なんかえらく落ち込んでたけど」
それから俺達はイスをベッドの回りに配置して話し込んでいた。
「こうなります」
茜がおもむろに右手を掲げると、その手の先のなにもなかったはずの空間にウィンドウが現れる。
「・・・また妙な事を・・・」
「特技と言って下さい」
また、住井と七瀬は何も言わずに、ひきつった顔でそのウィンドウを見つめている。
あまり非日常な世界には関わりたくないのだろう。俺にはそれが痛いほどわかった。
そして、そう俺が過去の記憶を悲しみと共に掘り起こしている間にも、ウィンドウの中の映像は流れるのだった。


「長森さん。はいプリント」
「えいえんはあるよ?」
長森にプリントを渡しに来た南が、少し不思議な顔をする。
「えいえんはあるよ?」
長森は繰り返す。
「い、いや、だから・・」
そのとき南の体に異変が起きた。
まず指が消えた。続いて腕からどんどんと体の方へ加速度的にそれは進み、腕が完全に消えてから、体全体が消えるまでにそれほどの時間はかからなかった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「何よこれぇ〜!」
七瀬が立ち上がって叫ぶ。
「騒ぐな、これぐらいのことで」
見ると、騒いでいるのは七瀬一人だけである。
「どうしてあななたちはそんな冷静で居られるのよ」
「いつものことですから」
「そういうこと」
「逃れられない現実なら、おとなしく最後を迎えようよ。騒ぐなんてナンセンスだよ。七瀬さん」
茜はいつもの表情で、対して俺達は悟りを開いたような表情だったに違いない。
「わからない、わからないわ・・・・」
「じきにわかるようになるさ」
「そう遠くは無いです」
「おとなしくまとうよ七瀬さん」
「いやよっ!とにかくあたしは逃げさせてもらいますからね」
そう言うと七瀬はさっさと保健室をでていった。

ピシャンッ

ドアが閉まる。
「最初の被害者だな・・あいつ・・・」
これは万有自然の法則、「ホラー系では最初に逃げた奴が死ぬ」。言い換えるなら「お約束」というやつである。
そして俺の言葉に茜と住井は大きく頷くのだった。



俺達がそうして話している1時間前。
つまり昼食の40分前に「ちびみずか」こと後で俺達に「みずか」とよばれる存在は屋上にいた。
「ふふふっ」
オレンジ色の液体を設置されている貯水タンクに流し込む。
次は食事の時間。さぞかし学食を利用する生徒もいることだろう。
「ふふっ♪」
彼女は一人屋上で笑っていた。

そして七瀬が去ってから10分後。
俺達とりあえず昼休みが終わる前に教室に戻っていた。
みると長森は居なく、南は確かに消えていた。
そして誰もその存在を覚えていない・・
悲しいことだ・・・
俺は別に悲しくないが。
まあ、それはともかく・・・
「えいえんはあるよ?」
突然後ろでそんな声が聞こえて、俺は慌てて体を引く。
瑞佳の姿をした「みずか」がいた。
「な、な、な、・・・・・」
何故だ!七瀬が最初にやられるはずでは無かったのか?いや七瀬の存在はまだ俺の頭の中から消えていない。つまりまだあいつはこっちの世界にいるはずである。
くっ、なかなか意外なところをついてくる奴だ。
「えいえんは・・」
長森が口を開く前に、俺は近くにいた男子生徒を引き寄せて盾にする。
「あるよ・・」

フッ

名も無きクラスメートは一瞬で消えた。
「だあぁぁぁぁぁぁっ!来たあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
突然そんな叫び声が上がったかと思うと、七瀬がドアの所に立っていた。
「お前、帰ったんじゃなかったのか?」
「忘れ物取りにきたのよっ!」
あほな奴である。
そしてクラスの連中の視線と共に長森の視線が七瀬にゆっくりと合わさる。
そして七瀬も蛇に睨まれた蛙のごとく、その視線を外すことができず、そのままいくらかの時がたつ。
そして・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
七瀬が突然下を向いたかと思うと、肩を震わせ始めた。
「・・・・・・・・・・・・くっ・・・・・・・くくっ」
なにか不気味だ。
「え・・・・・・え、え・・・・・・・・・・・・・」
「え?」
長森が教室に入ってきた時点で机の下に隠れていた住井が様子を見にでてきたのか、後ろでそんなことを言うのが聞こえた。
一方茜の方は、すでにクラスにはいない。
そして七瀬が突然顔を上げる。
「えいえんはあるわよっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

フッ、フッ、フッ、

とてつもない大声と共に次々と七瀬の側、つまりドア側にいた生徒が消えていった。
「だああぁぁぁぁぁぁっなんだっ!」
[ちびみずかが学校の給水タンクに薬を混入させたみたいです]
頭の中に茜の声が響く。
「え?どういうこと?」
住井にも聞こえたらい。
[つまり、学食を食べた人全員に薬が回って、ちびみずかが転移するみたいです]
「って、ことは長森は戻って・・・・・」
七瀬には悪いが、あいつさえ戻れば俺としては別に良かった。
しかし俺が向いた先には、何かをクラスメートに耳打ちして、次々とさりげなく消去している長森の姿があった。
「おぃっ!長森が戻ってないぞ!」
しばしの沈黙。
[感染するみたいですね]
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「インフルエンザかぃ!」
「とにかく事態はさらに最悪となったようだな、逃げるぞ住井!」
言うが早いか俺達はすぐさまその教室を飛び出した。
見ていてわかったことだが、「消えやすさ」はどうやらONEの出番が少ない順に消えやすいようだった。名前が出てくる南は二回呼ばれて消え、名もないクラスメートは速攻である。とはいえ、俺達も七瀬の様なくそでかい「えいえん」の趣もくそもあったものじゃない呼び方で連呼されれば無事とは言い難いだろう。
とにかく俺達は全力で逃げ出した。
後ろに七瀬の怒鳴り声らしきものを聞きながら。


2,インフルエンザ「みずか」

「そうして俺達が屋上に潜んでいると、一人の先輩がドアを開けてやってきた。
「よぉ、先輩」
「こんにちは」
俺と住井は挨拶かける。
「あ、住井君、浩平君。こんにちは♪」
みさき先輩は俺達に向かってそうにこやかに返してきた。
「どうしたんだ?まだ授業中だろ?」
「うん、なにか寝てたらみんなどこかへいっちゃってたからさぼることにしたんだよ」
重い沈黙が俺達の間に流れた。
「どうしたの?何か今日は元気ないね」
「いや、ちょっとな・・・」
「ふぅん、また住井君の作った物で変なことやらかしたとか」
「その通り」
「やっぱりね」
「・・・・・・・変な物じゃないのに・・」
みると住井はコンクリの床にのの字を書いていた。
「どうしたの住井君?」
「ああきにしないでいいよ、いつもの発作だから。それより、下の様子はどうだった」
「う〜ん、どうっていわれても、普通だったよ、静かだったし」
「その静かさが気にならなかった?」
「そういえばいつもうるさいはずのクラスまで静かだったよ」
「どこ?」
「浩平君のクラス」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「消えたな・・・」
住井がいつのまにやら復活して、南の空の方を向いてそう呟いていた。
「また、無関係な人みたいな事を・・」
「あなたもです」
突然の声に後ろを向くと、茜がフェンスの向こう側から顔を半分出していた。
しかし、ここまでは前回と同じ、まして相手は茜である。ここまでの芸で終わるはずもなかった。
その顔は貯水タンク2つ分くらいの大きさがあったのだ。
巨人茜である。
「なに、どうしたの?」
先輩はおだやかなものである。
また一方、住井の方もひたすら現実逃避の体制のままである。
さて、俺はこの現実に対してどう対処すべきか・・・・・・・・
「さらば・・・・・」
「そこから落ちると痛いですよ」
見ると、茜の顔の形をした気球に乗った茜が、メガホンで俺に制止の声をかけてきた。
「まあ、ギャグキャラですから死なないんでしよううけど」
「冗談はやめような、茜。」
こいつがやると冗談に見えない。
「はい」
そう言うと茜は屋上にストンッと降り立ち、どこからか取り出したポシェットに気球をしまい込む。
「オッケーです」
「だからやめなさいって・・・」


そうして「そろそろ止めないと本格的にまずいです」という茜の忠告を受けて、俺、住井、先輩、茜は3階へとやってきた。それと何故消えた奴の記憶が俺達に残っているか?ということについては、メインキャラから記憶を奪うだけの力はあまりないため、一ヶ月ほどは覚えていられる双とのことだった。
「さすがに1年のクラスは無事なようだな」
「まだ、あまりたってませんし、消すのに時間もかかりますから」
その階では、まだ喧噪が聞こえていた。
「「みずか」の今の数は?」
「長森さん、七瀬さんの二人だけだとおもいます。基本的に女性にしか転移しませんし、目を2秒ぐらい合わせなければいけませんから、その時間合わせている間にたいてい消されちゃいます」
「話がみえないよ〜」
愚痴をこぼす先輩をよそに、俺達は話を進める。
「なら対策としては、1,校外に出さない、2,見つかったら耳をふさぐ 3,目はなるべく合わせない。でいくか」
「ああ、お前にしては上出来な答えだ住井」
「なにぃ、IQ20〜5000のこの俺になんて事を!」
「さみしいよ〜」
「なんだその変動しまくったIQは!」
「俺は自分の趣味が重なったときにだけ、脳の神経がびっちり繋がるんだ!」
「相手してよ〜」
「普段からつないどけっ!変態なことにつかうんじゃなぃ!だいたいこの間も「繭ロボ」とか作ってたし」
「なにっ、お前繭ちゃんを悪く言うかっ!」
と、その時。

ガラッ

「うるさいぞっ何をやっている授業中だぞ!!」
すぐ側の一年のクラスからでてきたはげの教師に一喝されて、俺達は小さくなった。
「まったく、今の三年は・・」
そして、またまたそのとき。

ブツッ

校内アナウンスの入る前の、空気をマイクに当てたような、とにかくそういう音が聞こえた。
「耳をふさいでください」
茜の言葉に、その意味をさっちして俺達が耳をふさいだ瞬間にその言葉は流れた。
『えーえんはあるのよっ!』

フッ

目の前の教師が、そしてあたりの喧噪も、ふさいでいた耳を解放したときには聞こえなくなっていた。
沈黙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これ以上ちびみずかのイメージが壊れないうちに俺は奴らをとらえることを決意したのだった。



3,私闘死闘視東

「見つけた」
廊下の曲がり角で様子を見ていた住井がこっちにそう小声でいって来た。
あれから30分後、2階の廊下の曲がり角で、俺達は長森達がくるのを待ちかまえていた。
メンバーは俺、住井、茜。ちなみに先輩はすねてどこかへいってしまっている。
「とにかく作戦スタートだ、いくぞっ!」
俺と住井は廊下へと飛び出した。
すると目の前にいた、4人のヒトカゲが驚いたように足を止める。
ん?4人・・・・・
長森、七瀬。それはいい、
みさき先輩に澪・・・・・・・
「寝返っちゃったよ」
しかも「みずか」に犯されながらも自意識いくらか保ってるし・・・・
まったくさすが先輩としかいいようがない。
「勝ち目はないよ、浩平君♪」
「先輩から今度学食好きなだけおごるからぁ〜」
「駄目、それはもう七瀬三と契約済み」
七瀬・・・・・
見るとそいつは「ん?」といったいかにもしらじらしい笑みを浮かべている。
さてはこいつ自意識を多少は保ちつつ、乗っ取られたことにかこつけて日頃の恨みを晴らそうとしているんじゃあ?
「とにかく勝ち目はないよ、お二人さん」
だが、俺と住井は不適な笑みを浮かべた。
「ふっ、笑止」
「いいぞっ、里村さん!」
手に持ったトランシーバーで、住井が茜に呼びかけると、突如として大きな音が学校中を揺るがす。
「あ〜あ〜〜川の流れのように〜〜♪」
(歌詞がちょっと違うかもしれない)美空 ひ○りさんの名曲が校内のスピーカーから流れた。
「******************(ふっ、これであのことばは言えまい!)」
これぞ大音量で会話を消しちゃれ作戦!(ちなみに歌は住井のウォークマンより抜粋)
『えいえんはあるの』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ついそれを見つめてしまう。
「***********(うぉっ、アブねぇ!)」
聞こえない声でそ叫びながらも俺は視線を横にずらした。

しかし

フッ

住井は跡形もなく消え去った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まぬけです」
この大音量の中でも、茜の声はまったく影響無くすっきりと通った。


「*******(後がないね、浩平君)」
「*******(もう私たちを止める手段は残されていないわ、さあ澪、放送室いって止めておいで)」
『らじゃ〜なの』
とてとてと走っていく澪を追いかけようとすると、七瀬と先輩が道をとおせんぼする。
「*******(くそっこれまでか・・)」
「********(さあて、かみ切ろうか♪それともぶちぶちしてあげようか♪)」
聞こえなくても意味が通じるあたりが凄いと思ってしまう。
「********!」
「********!」
上は七瀬の気合いの声、そして下が俺が上げた悲鳴みたいなものである。
とにかく俺は七瀬の圧倒的なパワーの前に、廊下の端まで追いつめられた、後ろは鍵のかかった部屋である。
「*****(終わった・・)」
俺が観念して目を瞑ると、あれだけやかましくかかっていた音楽がぴたりとやんだ。
「ふうっ、これで打ちやすくなったわ」
何故か書いてる奴の代返をしている七瀬だか、今はそんなことはどうでもよかった、
「せめて・・・長森にしてくれないか?」
俺は静かにそう言った。
消えるなら、「みずか」である長森の手によって行きたい。そう思ってのことだった。
「・・・・・・いいわ・・」
七瀬が体をどかすと、入れ違いに長森が入る。
「長森・・・・」
だが彼女は表情を動かすことなく、その柔らかそうな唇を少し開けた。
と、その時。

〜♪〜♪〜〜♪♪♪

突然校内に「輝く季節」がかかった。
そして長森と七瀬が顔をしかめていた。
みると先輩も同じようにしている。
「いったい・・・・」
そして俺がそう言うのと同時に、彼女たちの体から小さな女の子の姿が、すっと浮かび上がり空へと消えていくのが見えた。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・」
彼女らは無言でおれを見つめた後、空へと消えていく。最後にくすっ、とほほえみながら。
「・・・ん・・・え?」
長森が慌てたようにキョトキョトとあたりを見渡す。
「え?なんでこんな所に?」
七瀬、先輩も起きあがって、辺りを見渡す。
「浩平、なにがあったの?」
目の前に俺に気がついたとき長森が発した言葉はその一言だった。


4事後・・・
「ふぅん、そんなことがあったんだ」
事件も終わり、帰ってきた人たちを迎えてから、いつものように俺達は家に帰ると、俺の家に集まっていろいろと語り合った。
というより、住井と長森と茜と七瀬で勝利の美酒を味わっていたと言ってもいい。
「いや〜よかったよかった。まれにみる平和な解決だったな」
「ああ、お前にあの薬を飲まされたときはどうしょうかと思ったけどな」
俺と住井はコサックを踊りながら、肩を抱き合って語り合う。
「器用ね〜」
「まあ、それがとりえだから」
「ちょっと嫌です・・」
平和な日常、それらがかけがえのないものであることを俺はこのとき一番実感したと思っていた。
しかし、、、
「あ、テレビにうちの近所うつってる」
七瀬の言葉に全員の視線がテレビに向く、確かに見覚えのあるスーパーがうつっていた。
『さてさっそく聞いてみましょう、奥さん、今日の晩御飯は?』
見たこともないリポーターが人混みの中の一人に声をかける。
って、繭のお母さんだ・・・見るとしたのほうに繭も写っている。
『いぇ、そんな言うほどの物じゃありませんわ』
『いやいや〜みるとけっこう買ってらっしゃるじゃないですか、今夜は鍋でも?』
『ええ、まあ。この子が元気無いものですから、おいしいものを食べさせてあげようと思って・・』
『この子ですか?お名前は』
繭の顔がアップで写る。
「わぁ〜繭ほんとかわいいねぇ」
「おとなしくしてればね・・・」
「かわいいです・・・」
女連中がそう語り合っている中、俺達は男の勘が何かを知らせているのを感じた。
「なあ住井、いや〜な予感がするんだが・・・」
「奇遇だな、俺もだ」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
『きぐうだょなぁ・・・・』
二人同時に黙り込み、同時に呟く。
『へぇかわいいお嬢さんですね、鍋楽しみ?』
『(うん♪)』
『あはははっ、よかったね』
そして、
『みゅ〜(えいえんはあるよ?)』
どアップで打っていた繭の口からそんな言葉が漏れ、日本は壊滅的な被害を受けた。

              おわり☆
___________________________________
う〜んソフトだ☆ 今回のは流血シーンなしでおわれたことを誇りにおもっちゃったりします。長森もでてるし♪(台詞あんまないけど・・(^^;)
かなり長くなってすいません(^^;

感想行きます。2ページ分いきます。
感想
>火消しの風さん
>「涙を越えて NO.5」
け、血痕・・(^^;七瀬は日頃どんな生活をしているのやら。
金棒というのもいいですね。
>「黒い心の炎 NO.1,2,3」
話しかけてくるこに対してまったく話さない少年。相手が長森だけにいろいろと考えてしまいます。
それにしてもキムチソーダ(笑)本当に胸がいっぱいになりますね
>黒い心の炎 NO.10
なんか暖かい展開になりそうです(^^)
手加減するあたりがいいです。

>偽善者Zさん
>「永遠の園から」
生ホットケーキ・・・(^^;
嫌過ぎです・・・
>「永遠の園から2」
同意見です!トマトにうるさい産地丹生川村を隣に持つ高山ではトマトは夏の必需品! やっぱり新鮮なやつにはなにもかけずにかぶりつくべきだしょう♪
ドレッシングというのは生野菜を食べやすくするためのもの、トマトにはそれ系のものはいらないと思います。(超個人的意見です(^^;)

>しーどりーふさん
>感想だぽん!
わ〜い詩子だ♪

>まてつやさん
>「とても不自然な自然」
  ↑ホントにその通りです。呼んでてそう思いました。
あと、雰囲気がいいです(^^)長森の考えてることがいっそうよくわかる気がします。

>メタルスライムさん
今度はメタルですか(笑)
それはともかく、あの二人のノリはいいですね。町中で堂々と(笑)
郁美と長森の意外な一面を見た気がします。

>藤井勇気さん
由比〜(笑)
なんてことをしてるんだ。おまけに長森も買収されてるし(^^)
無料体験コーナーでみるってのもなかなか☆
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http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Suzuran/5256/index.html