うららかな午後に 投稿者: WILYOU

この学校に椎名が登校するようになってから、はや3日目。
なんとか、クラスの連中とも慣れ、トイレも一人でいけるようになった。まだまだ教えなければいけないことは多々あるが、急いでも仕方ないので、とりあえずはのんびりいこうと思っている。
そう、思ってはいるんだ。
おれは思っている。
「だあっ、いいかげんにせぃやぁ椎名とお前!」
俺はここ美術室で、置物の石膏にペインティングしている椎名達にとうとう怒鳴った。
ギリシャ風にかたどられたその男の頭だけの石膏像は、髭とほっぺの赤丸と、第三の目と、赤い鼻毛(鼻血か?)と、ニキビと、ディウァイデットにでてくる女の子の体に浮き出た文様みたいなのを描かれて、すでにそうとうやばい代物。例えるなら、朝下駄箱の中に入っていたら3歩はたじろぐことうけあい代物になっていた。
「ほへ?」
椎名は何がなんだかわからないといった調子で振り向く。
「ほへ?じゃないだろう。ほへ?じゃ。いくら自習中といっても石膏に落書きしたらだめだろう。後でばれないように始末しなきゃいけないんだぞ」
「浩平、論点がほんのちょっとずれてるよ」
後ろで絵を描いている長森のつっこみがはいる。が、俺はそれを無視して続ける。
「とにかくだ。もし他の人がこれを見るのを楽しみに来て、こんな「ちょっと変形した南」みたいな物見たらいやだろう」
椎名は、ちらっと窓際で女子の絵を熱心に描いている南を見てから、こくん、と頷いた。
「よし、それでいい」
俺は椎名の頭をなでなでしてやると、椎名は少し嬉しそうにしながらかわいく笑う。
こいつはこれでいい。
俺は、準備運動をすませるといよいよ本題に取りかかった。

「おい、お前もやめろ」
俺は、喜々として未だに石膏にぬりぬりしている詩子に向かっていった。
「だって、私お前じゃないもん」
こっちを見ようともせずに、石膏の頭を茶髪に染めている。
やはり、一番公正すべきなのはこいつだろう。
「詩子、お前だ」
「どうでもいいけど、人のこと下の名前で呼び捨てにしないでくれる」
「作者がおまえの上の名前を忘れたんだ」
「いいかげんな作者ね」
「まあ、別にイベントCG1枚もないお前なんぞの名前を覚えてた所で、別に対したことはないけどな」
「そういうあなたこぞ、CG鑑賞ルームに名前ないじゃない」
ぐさっ!
「おまけに名前まで変更可能な主人公なんて、固定キャラの私よりも大したこと無い存在よね」
ぐさぐさっ!
「ファンクラブもないしね」
「詩子・・悪い、俺が悪かった・・・・」
俺は泣きながら素直にあやまるのだった。

「で、話を元に戻すけど。さっさといたづらをやめろ」
すると詩子は立ち上がって、俺達の方に来る。
「やめたよ」
「・・・・・・・・・なんか珍しく素直だな」
「なんか、珍しく素直だって言われてるよ、深山さ〜ん」
「いない人に呼びかけるな!」
しかしその時。
《なかなか言うじゃない、折原君》
校内アナウンスで、深山さんの声が入った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こ、この学校はいったい?!
「なんなんだいったい?!」
「勘のするどい人だよね」
またも後ろの長森がいってくる。
いや、そういう問題か?これが。

・・・・・ま、まあ、いいとしょう。
「・・で、だ。また話を元に戻すけど、何でお前がここにいる」
「描いてもらいに来たんだよ」
「何を?」
「あたし」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「なぁ長森、今日のテーマは「踊るパペットの世界」だっけ?」
俺は後ろを振り向いて訪ねた。
「違うよ!「英知」だよ」
「だ、そうだ」
俺は詩子達の方に向き直る。
「だから?」
「馬鹿のおまえにはモデルは無理だから帰れといってるんだ」
「なんか、馬鹿とか言われてるよ、楓〜」
「だから、違う作品のキャラを出すな!」
はぁ、俺は。重いため息を付いた。
「て゜、浩平君は何を描いてるの?」
詩子が俺の前に置いてあるキャンパスをのぞき込んでき、繭もそれにしたがう。
「わぁ」
「みゅ〜」
二人が簡単のため息を漏らす。
そこには俺の描いた「だよだよ星人」が描かれていた。
「この触覚の曲がり具合がいいよね〜。あ、ほら、このしっぽなんか繭ちゃん好きそうじゃない?」
「みゅ〜♪」
「ああ、一応長森をモデルにしてあるからな。あいつは頭もいいし、画風からモデルまで「英知」にぴったりだ」

ガタンッ

後ろで何かが落ちた音がした。
「長森さんなんか床に頭ぶつけてるけど?」
「半分冗談だぞ、長森」
後ろを見ずにそういってやる。

「で、本当は何かいたの、これ?」
「だから「だよだよ星人」だって」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「だよ、だよ、せ・い・じ・んだ」
「・・・・・・・・・・・・・帰るわ」
そう言うと詩子はすたすたとドアに向かって歩き出す。
はぁ〜。
繭までもため息を付いて帰り出した。
「こら待てお前ら。なんだその疲れたような表情は!」
「本当に疲れたんだもん」
「みゅ〜」
振り向く二人。
「・・・・・・・・ま、まあ俺に絵の才能がないことは認めるけどな・・」
「才能以前の話だな、これは・・・・」
後ろから、そんな住井の声がして振り向くと、奴は顔の右半分を思いっきり歪ませていた。
つまりひきつっているのである。
そ、そこまで悪いか、俺の絵は・・・
「嫌です・・・」
あ、茜まで・・・・・・・・

ぱらぱらぱらぱら・・・・・
天井に突如空いた穴から降ってきた紙を俺ははっしとつかむ。
『下手なの』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・澪・・

《浩平君って、絵下手だね》
スピーカーの手前の空中にウィンドウが開いて、そこにみさき先輩が写り、そう言った後、ウィンドウはぷちっと閉じた。
冷たい、冷たい表情だった・・・・・・・・・・

「馬鹿?」
ほとんどでてこない広瀬にまで・・・。

あれ?七瀬は?
部屋中を見渡す。
いた。
壁におでこをうちつけて、肩を震わせている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっっっっ!!」

がばっ!
俺が目を開けると、目の前に真っ白な壁があった。
・・・・・・・・・・・・・・・いや違うキャンパスだ。
あたりを見渡すと、うちのクラスの連中がいそいそと絵を描いている。
「あ〜、浩平やっと起きた」
横をみると長森がいる。
・・・・・・・・・・・・・・
夢か・・・・・・・・・・
俺はちょっとほっとした。
なかなかダークな夢だった。
登場人物の一言一言が、俺の体を切り刻んでいく、そんな夢だった。
やはり現実でも夢の中でも詩子がでてくるとろくなことがないらしい。
握っていた手を開くと、汗がふいてきた風に当たって冷たくなり、気持ちがいい。
「はぁ〜夢かぁ」
俺は座っていたいすの背もたれに座って、大きくのびをする。
夢で良かった。ちょうどいまそんな気持ちだ。
しかし、その瞬間だった。
「こんにちは浩平君!描いて〜☆」
「みゅ〜♪」
急にキャンパスが横にずらされたかと思うと、そこには詩子と椎名のにこやかな顔があった。


この後、俺が夢よりも悲惨な目にあったことは言うまでもない。
                            終わり☆
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感想
>の前に一言
感想下さったみなさんありがとうございます☆

>いけだものさん
>祭りの後
浩平がふくろにされるのがいいです。最後もほのぼのしてましたし。
それまでの関係を壊したくない二人ですか。う〜ん、いいですね。

>まてつやさん
>怪盗ミラクルルミ4!
シリアスですか。なかなか、七瀬の過去とか、怪盗になったおいたちなどがよかったです。ウルトラC子もナイスです。

>GOMIMUSIさん
本当にこんなのをかけるなんてすごいです。いい話です。
「種」という芝居、それらをセッティングする周りの人たち、んでその二人。
いろいろと考えさせられました。
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>で、あとがきみたいなもん(つーより、いいわけ入るかも)
最近飛ばし過ぎてたので、ちょっとペースダウンしてみました。
思いつきで書いた奴ですので、あんま内容が無いとか、そのあたりのことはきにしないでくださいね(汗汗)
あと、ここまで読んで下さって本当にありがとうございました。
では!

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Suzuran/5256/index.html