チェンジ!2(後編) 投稿者: WILYOU
前回のあらすじ
・たいていすぐ下の方に、中がのこってるとおもいますんで、知りたい人がいら
したらそちらを見ていただければ、いいと思います。
前編については、ちょっと前の方にあると思います。

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8,すでに遠き「日常」

タッタッタッタッ
授業中の教室の並ぶ廊下を俺、住井と浩平は走っていた。さすがに冬なので教室の
ドアはしめてあり、中には足音は聞こえても、それがだれかはわからないはずだ。
今は三時間目が始まったばかりで、前の時間体育だったうちのクラスも当然もはや
グランドにはいない。
「くそっ!次の授業はどこだったっけな〜」
俺のミスだ。教室移動があることは覚えていたのだが、どこの特別教室に移ったの
かがわからない。
早いところ長森さんを見つけてキスしないと、こちらの身が危うかった。
(今回から呼んで話の流れを知りたい人はリーフ図書館か、前の方にあるのをみて
くれぃ!)
特別教室は「家庭科室、音楽室、化学実験室、美術室、書道室」の別棟にある5
つ。だが、書道教室はまずふだんから使われてないから、外してもいいだろう。と
なると残りは4つに絞られる。
科学室だ。間違いない、次の時間は科学だ。
俺は自分の直感(根拠なし)に従って、科学室へと足を運んだ。

「科学室」
別棟2階の廊下の突き当たりにある部屋の前に俺達は来ていた。
当然、いままで学校にきていなかった浩平は次の時間割などしるはずもなく黙って
俺の後を付いてきている。
俺は浩平がおいついてくるよりも早く中にはいる。
ざわざわとした独特の空気。
ビンゴ!的中だ。ここに俺達のクラスの連中はいた。
さてと、あとは長森さんだが・・・・・・・・・・
俺はなにかいってくる化学教師を裏券で黙らせて、やたらうるさい部屋の中を長森
さんの班の方へと向かう。
「長森さんは?」
「薬品・・庫・・だけど・・・」
やたら怯えた目でその班の人が教えてくれた。俺はそのまま部屋の奥の薬品庫へと
足を運ぶ。
すると、浩平も追いついてきたのであわててその部屋に入る。
つんっとする独特の臭いと、かび臭い臭いが鼻を突き、少し湿っぽい空気が肌に触
れる。
薬品があちらこちらの棚にごまんと並んでいる。ちなみに、右側の方が酸性の薬
品、左側が塩基(アルカリ)性となっているのだが・・・・・。
俺はさっき黒板にかかれていた中和滴定の実験を思い出し、おそらく酸を取りに
行ったと判断して右へ曲がった。
少し遅れて浩平も入ってくるが、奴は左の棚の方へ行った。
ふっ、勝った。
はっきり言って、このような理系分野では俺の方が上なのだ。なにせあんな薬を作
る位なのだから。
「えっと・・・」
あたりを見渡すと、案の定長森さんがいた。
まだこちらには気が付いてないようだ。俺はそっと一歩一歩を慎重に運んで、彼女
の後ろに立つと、いきなり抱きしめる。
「きゃっ!」
びっくりして首を後ろに回すが、俺だと気づくとすぐに安心した顔になる。
「なんだ浩平か。ホントにびっくりしたよ」
少し笑みを浮かべる。俺はそんな彼女のかわいい顔に自分(一応浩平のだが)の顔
を近づけてゆく。
そして長森さんもそれを拒まない。
いけるかっ!?
しかし、あと5センチの所で案の定邪魔が入った。

ガチャンガチャンガチャン!!!!!!!!!!
なんと向こうから棚がドミノ倒しの要領で倒れてきたのだ!?
当然その棚には酸、もしくは塩基の薬品が満載されている。
これは大ピンチだ・・・・・・
はっきり言って、今俺の目の前にある酸の棚が倒れてきたら、まちがいなく骨まで
とろける。なにせ、ここには俺が作った超危険な薬品がいくつかあるのだ。
「な、なに?」 
長森さんはまだ状況を把握してはいないが、まもなく嫌でも把握することになるだ
ろう、棚はもうすぐすぐそこまで倒れているのだ。
そして何もできずにただ突っ立っているしかなかった俺達の上に、今!棚が倒れか
かろうとしていた。
俺はとっさに目を瞑った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
いつまでたってもその衝撃が来ないので、上を見ると棚が斜めに傾いた状態で止
まっていた。
「へ?」
「よくも・・・やってくれたわね・・・・・・・」
「ほへ?」
横を見ると長森さんがそこに立っていた。
黄色の光をまといながら・・・・・・・・・・・・・・・
そして、その光が強さを増し、俺が目をまた瞑ったその時、彼女からヴェールがは
ぎ取られた。

MOONのキャラ、「どっぺる郁美」
・・・・・・・・・・・・
「校内に偽物が3つ混じってます」
里村さんの言葉が今になって思い出される。
「死ねやあぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
郁美さんの叫びと共に生まれた水晶球が、倒れた棚をすべてぶち破って、浩平に肉
迫する。
「どほへええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!!!!!」
情けない叫び声を上げて浩平が撃沈したところへ、割れた瓶から出た大量の薬品の
波が奴を襲う。
そして俺はと言うと、
すでにドアの外に逃げ出し、つっかえぼうをしておいた。


9,合っていてくれ・・・・・(嫌すぎ・・)

次に俺はすでに死んだと思われる浩平をほっぽって家庭科室に来ていた。
自分の体が心配なとこではあるが、あいつが中に入っている限り、まず無事だろ
う。
それよりも長森さんである。ちなみに、さっきの実験室にいたクラスメートは偽物
だったらしく、俺が倉庫からでたときにはすでに消えていた。
そしてここにもクラスメートはいた。
黒板を見ると、今日はぎんなんのたきこみごはんと澄まし汁、そして・・・・・・
杏仁豆腐とかいてある・・・
読めない・・俺は漢字か苦手なのだ。
「ほら、浩平!遅いよ。はやくデザート作ろ」
・・・・・・長森さんだ。
さすがに警戒してしまう。
「ほらぁ、包丁にぎって!」
包丁を握らされてしまう。
「えっと、わたしあっちの方みてこなきゃいけないからデザート作っておいてね」
そう言って、あっちの班の方へ行ってしまう・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
う〜ん、さっきのがトラウマになっていて何もできなかった・・・
まあ、浩平もさすがに動けないだろうし、ここはのんびり行くとしよう。先走っ
て、しにくくなるような状況にはなりたくはない。
とりあえずは、そのデザートというのを作ろう。
黒板を見る限り、どうみても前の二つはデザートには見えない。まあ、浩平なら
「新しい食べ方」とかいってデザートにするかもしれないが。
まあ、と、なってくるとだ。やはり、その杏仁豆腐というのがデザートになってく
るのだろう・・
杏仁豆腐、杏仁豆腐・・・・
杏はそのまま「あんず」仁は中国料理っぽいからただのいわれにゆえんする言葉、
仁義ある食べ物とかという意味だろう。そして、問題なのが豆腐だ。これはそのま
ま「腐った豆」でいいのだろうか?それとも・・・・・・・
よし、いいことにしよう。
とりあえず、杏だ。見ると机の上に杏らしき物があったので、俺はそれをボールの
中に入れる。
そしてこれからどうするのだろうか?
「浩平〜!絶対に机の上の砂糖入れるんだよ〜。この前みたいに塩とか、メリケン
粉いれたらだめだからね〜」
そういう長森さんに手を振って返すと、俺は机の上の砂糖と、ゼラチンとかかれた
粉をボールに放り込む。
さて、あとは腐った豆だが・・・・
見ると調理台の上には何もなく、今気が付いたが同じ班のメンバーは住井、長森、
浩平、南で、南がいないせいで聞く相手がいない。
う〜む、どうするか・・・・・・・そうだ!
俺はあることを思いついた。
豆、豆には豆乳というのがあったはずだ。そしてそれは牛乳と飲んだ所、味はそん
なには変わらなかった。ということはだ、腐った豆も腐った豆乳も腐った牛乳もそ
んなに大差はないだろう。
ちなみに腐った牛乳なら、前回の調理実習の際に、この机のあまりつかわれない引
き出しに「実験」としょうして1リットルパックを隠しておいたはずである。
「ほ〜ら、あった」
俺は、引き出しからお目当ての物を見つけて喜々として喜んだ。
そして、ちょっと一部固まりかけている白い液体をどぼとぼとボールに注ぐと、さ
いばしで軽くかき混ぜ、そのまましばらくほかっておくとゼリー状の物ができた。
ちなみに固まり具合が悪かったので、先ほど実験室からぱくっきた、難しくて漢字
が良く読めない薬品を入れてみたのだが、これが思った以上の効果を発揮してくれ
たらしく、ぷりぷりしていてまったくおいしそうである。
そして、それを細かく切って深めの皿に分け、シロップを入れて試食タイムが始
まった。
『いただきま〜す』
長森と南が喜々として料理に飛びつく。
「二人とも嬉しそうだな」
俺は吸い物をすすりながら話かけた。うん、だしがしっかりときいていてうまい。
とはいえ、だしの主成分であるグルタミン酸ナトリウムにいまの日本人は麻痺して
いる傾向があるため、化学調味料がたっぷりと入ったラーメンを入ってないのより
おいしいと思ってしまうのは、ちょっとした問題だとは思うが、まあその時がおい
しければいいんじゃないのかと最近は思うことにしている。
「嬉しいって?そりゃそうだって。なにせどんな料理でも悪魔的代物に変えてしま
う、マッド住井がいないんだからな。この間、あいつの作った「牛乳かけ鉄火丼」
には俺もまいったぜ」
「そんなこといっちゃだめだよ。住井君もアレで一生懸命なんだから」
そういう長森さんも顔が笑っている。
う〜む、前回の試食タイムの時にはみんな笑っていたので気が付かなかったが、あ
のひきつった笑みの裏にはそんな事が隠されていたのかと、今更ながら思ってしま
う。
そして、試食はぎんなんの炊き込みご飯へと写り、いよいよ「あんずじんくさった
豆」に移る。
みんな一斉にぷるぷるした白い物を『ぱくっ』。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・(青)・・
・・・・・・・・・・・・・・・(橙)・・・・
・・・・・・・・・・・・・(赤)・・・・・・
・・・・・・・・・・・(紫)・・・・・・・・
・・・・・・・・・(また青)・・・・・・・・
・・・・・・・・(白)・・・・・・・・・・・
さまざまな色に顔色を変えて、二人は机の上に突然倒れ込んだ。
「きやぁ!先生!またこの班の人たち倒れてます〜!」
隣の班の女子がそんなことを叫ぶ。
「く、口から泡吹いてるぜ・・・・・・」
「こ、こんどはいったい何を・・・」
「どれどれ」
興味津々な男子生徒数名と、奥から跳んできた先生がそのぷるぷるをばくっとい
く。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「げ、これぎんなんはいってる!」
「それ以前になんかみょ〜に酸っぱいぞ、これ」
「以前に口の中に入れると、なんか嫌〜な臭いが・・・」
まともに返答を返せたのは数名だった。それ以外のは南たちと同じく、床に倒れ込
んでいる。
う〜む、おかしい。どこを間違えたのだろうか?
いや、それより何故俺は平気なのだろうか?
・・・・・・・・・・・・・・・!
おそるべし浩平の胃袋だ。
と、その時だった。またしても長森さんの体が激しい光に包まれ、クラスメート達
が消えてゆく。
そして、光が去った後に残っていたその姿は。
ついこの間浩平に食堂で紹介してもらったみさき先輩だった。
「・・・・ひどいよ・・浩平君・・・」
「いや、先輩もなんで長森さんの格好してるんだ?」
「ここにくればいっぱい食べれるって、茜ちゃんに聞いたんだよ・・」
「・・・・・・・・まったく、あの人は・・・・・」
「それより本当に悪魔みたいな代物だったよ。妙に甘くて、酸っぱくて、脂の腐っ
た臭いがゼラチンで固められてて、口に入れて噛むと、うにゅって、ほんとうに気
持ち悪い食感がしたよ・・・」
そう言って、先輩はそこで力つきる。
俺はとりあえず南の持っていた携帯で、救急車を呼ぶとその部屋を出た。
ちなみに、南も本物だった。
・・・・・・・・・・・・・
なんまいだぶ、なんまいだぶ。



10,えーかげんにしなさい!

「はあっ」
俺は4階へと続く階段を上りながら、重いため息を付いた。
あの後、俺はスカだった1階の家庭科室を出てから3階の美術室へと行ったのだ
が、そこで長森さんが「みゅ〜♪」と、思わずこぼしたところからすべてを悟って
その部屋を出た。まあ、それはそれでいいものがあったが・・(爆)
そして今、俺は最後の4/4の確率である音楽室へと向かっている所だった。
「疲れた・・・なんか異様に疲れた・・」
俺は体力の限界を感じながらも、音楽室の扉をくぐった。
『ぐるぐる今日も目が回る〜♪』
どこかできいた歌であるが、今はそんなことはどうでもいい。
俺はソプラノの真ん中に彼女を見つけると、近づいていった。
全員の視線か俺に集まる。が、そんなことを今は気にしている場合ではないのだ。
一刻も早く、俺は勝ちを手にしたかった。
俺の顔は鬼気迫っていたのかもしれない、なにしろ女子の列に近づくにつれて、周
りの人が道をあけていくのだから。
やがて、俺と長森さんとの間には何もなくなる。
そして、俺は距離をつめ、有無をいわさず、顔を近づけることでキスを求める。
「ちょっとこうへ・・・・」
長森さんがそう慌てた声を出したときだった。
「ちぇすとおぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっっっ!!!」
上から振り下ろされる「何か」を感じて俺はひらりとそれをかわす。
せっぱ詰まっているせいか、俺の神経は常時の100倍ちかくまで鋭く研ぎ澄ま
されていた。

ざくっ!

後ろを見ると、今まで俺のいたところに閣議場にかざってあったとおもわれる日
本刀が元まで刺さっていた。
ちなみに下は絨毯がしいてあるとはいえ、木の床である。
「ふっ、気合いが入ってるな。浩平」
俺は今攻撃を仕掛けてきた相手、ピアノの上で腕組みしている俺の姿をしている浩
平に向かって話しかけた。服はぼろぼろで、やっで体に引っかかっている感じだっ
た。
「まあな・・」
「どうやって、生き延びたんだよ」
「あのあと、酸と塩基が混ざってぴったし中和されたんだよ」
なるほどそういうことか。
「郁美さんは?」
「泣いて謝ったらゆるしてもらえた」
「・・・・プライドのないやつめ」
「なんとでもいえ、とにかく俺は」
そう言ってもこっちに顔を向けたまま、長森さんの方をピシッと指さす。
「長森の唇を頂く」
教室中からどよめきが起こる。当然のことだが歌は中断されていた。
「ふっ、なにを言う。行っておくが暗示をかけられてやっとで彼女への気持ちに気
づいたお前に対して、俺のこの彼女への思いが負けるはずはない!必ずや男住井、
初唇を奪って見せようぞ!」
最後は歌舞伎調で決める。
「ふっ、笑止。勝てるものならやってみるがいい。いくぞ!」
「おう!」
そして俺達は、互いに6メートルほど向こうの長森さんに対してダイビングキスを
敢行した。
高く舞い上がって、そこから頭を下に、相手の唇へと突っ込む(今考えた)高等テ
クニックである。
しかし・・・・・・・・・・
「やめんかっ!!」
七瀬さんのサマーソルトキックが、後2メートルほどまで近づいた俺達二人をなぎ
倒す。
床にたたきつけられ、うめき声を上げる俺達。
「くそっ!どうしてもじゃまをするか七瀬」
「って、住井君あんたたちが妖怪みたいな事するからでしょ!なんか最近浩平にに
てきたわよ!」
「ふっ、この俺に刃向かえるとでも思っているのか?」
おれは、自信ありげにそう言った。
「な、なによ・・いきなり・・・」
たじろぐ七瀬さん、だがおれは 非情にもそれを七瀬さんに向けて放った。
小さな黒いカゲが、七瀬さんの髪にとりつく。
「きゃ〜いたいいたい!」
みごとに成功した。1/3スケールの繭ロボ10体は、みごとに七瀬さんのおさげ
に食らいついていた。
「さーて、邪魔者もいなくなったことだし、いくかぁ!」
「ふははははははっ、長森!キスしろぉ〜!」
俺達は長森さんに踊りかった、が。

ドンッ!

その行く先を男子数人に阻まれる。
「くそっ!なんなんだきさまらっ!」
「お、おぃ、浩平。こいつら純粋な長森ファンだ」
「何、くそっ、こんなときにっ!」
彼らの真ん中のリーダー格の奴がいった。
「とうとうそこまで落ちたか、住井、浩平!さあ長森さん、早く逃げて下さい」
「え?」
「とにかく早く!こいつらいつものあいつらじゃないんです!」
「あ、うん・・」
何度もこちらを心配そうに振り返りながら、長森さんは音楽室を出て行った。

「さて、こちらもお前達の目を覚ますためにも本気で・・・・・・・って、おい。何笑ってるんだ?」
そう、俺は笑いが止まらなかった。
「うわっははははははははははっっ!」
とうとうこらえきれなくなって豪快にも笑い出す。いや、本当にここまで愉快なこ
とは久しぶりだっただろう。見ると浩平も肩を大きく震わせている。
「おい、いったい何がおかしいんだよ!」
だが俺達は答えない、ただ笑い続けるだけだ。
「ええぃ、みんなとりあえずこいつらをおさえるぞ!」
さの言葉を口切りにファンの連中全員で襲いかかってきた。
まったくこいつらは・・・・・・・・・
笑いの原因、それは奴らが長森さんをこの部屋から出してしまったことだった。
はっきりいっていまの俺達はいってる。
自覚できないを通り越して自覚できるぐらい、いってる。
そんな俺達が長森さんという唯一の傷つけてはいけない人がいなくて、いったい誰
に傷つけることをためらうというのか?
まったくこいつらは・・・・・・・・・・
俺はさきほど科学実験室から持ち出した硝酸を自分のシャツ(綿100パーセン
ト)を脱いでそれにどぼとぼとかけ、その横で浩平がライターに火を付ける。
ちなみに硝酸とセルロースを混ぜ合わせると火薬ができる。そしてセルロースとは
植物のおもな構成単位であり、綿とは植物である。
俺はそのシャツを相手の足下にほかりつけて、後ろに下がって伏せると、浩平もそ
れにならい、ふせる直前でライターをシャツの上に投げつける。
小さなライターが、連中の足下に落ちた。その時。

どっかぁ〜ん!

音楽室の半分を黒こげにして、それは爆発した。
当然そいつらにも息はない。
「よし、住井、いくぞ!」
「おうっ!」
何故かすっかり意気投合している俺達は、そのまま走って音楽室を出た。
ファン連中の屍を乗り越えて。

アーメン。アーメン。


11,これまでの生はこの一瞬のためだけに・・

しかし、そんな息がぴったしな俺達でもやはり敵同士ではある。
廊下を彼女をさがして走っている時点ですでに仲間意識というのは消え失せていた。
そして、長森さんの発見。
「いた!」
「どこだっ!」
「下!」
見ると、別棟のすぐしたの中庭に何故か長森さんがいた。
「よおおぉぉぉしっ!勝負だ住井!」
「望むところだ!いくぜっ!」
そういって俺は下へ降りようと階段の方へと走ろうとするが、浩平はそのまま窓際
に突っ立って外を見たまま動かない。
「おい、どうしたんだ?」
その俺の問いに浩平は、なんともいえない笑みを返した。
「ま、まさか。そこからやるつもりか?!」
だが、彼はやろうとしていた。窓をガラッと開けると、その窓枠に一歩で飛び乗
り、座ったまま下を見ている。
そして、俺がかけより、後少しで服がつかめると言ったとき、あいつはそこからフ
ライング垂直降下キスをかまそうとしていた。
もはや、人間。犯罪者かどうかの瀬戸際に来ると必死な物である。俺は思わずさっ
きの爆弾の残りを投げつけ、ついでライターも火を付けて、さらに強い力で投げ下
ろした。

どおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!

特別棟の真ん中当たりで赤い花が咲いた。
・
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・
・
「本当にいいの?」
「だってキスすればこんなことやめてくれるんでしょ?」
長森さんが見渡す先には、夕焼けの中に見えるあちこちが焦げた特別棟。科学準備
室だと思われる校舎のかけた部分。そして、いまだに煙を上げ続ける音楽室の窓が
あった。
ここは中庭、そんな様子が一目で見渡せる位置である。
「はぁ、やりすぎだよ。浩平」
「それだけ長森さ、・・長森のキスに勝ちがあるってことだろ」
「こんな証明の仕方されても嬉しくないよ!」
まあ、もっともな意見だ。
「とにかくいいんだよな・・」
「え・・・う・・うん・・・・・・」
「行くよ」
「え!、う、うん。」
彼女が目を閉じる。彼女の熱い吐息が俺の頬にかかる。
俺は顔を近づけてゆく、そっと、ゆっくりと、彼女の髪の臭いがする。
シャンプーとリンスだけの清純な臭い。そんな長森さんの臭いを感じながら、

俺は彼女の唇に軽く俺の唇を交差させた。







12,後日談
昼食タイム中。
瑞佳「で、どうなったの?」
茜「結局キスしたときに鼻血出してしまって、2秒としてられなかったので二人と
も失格。罰は敢闘賞として半分にしたのを二人で分けて受けてもらいました」
七瀬「だから、二人とも家庭裁判所行きなのね」
瑞佳「住井君、浩平のとばっちりうけてかわいそう・・」
七瀬「何言ってるのよ。もとはといえばあいつが元凶なんだから当然じゃない」
みさき「まずかったよ〜」
瑞佳「そういえば浩平なにやったの?」
茜「ひったくり4件、放火2件、万引き確認済みなだけで21回、強盗1件、未遂
が6件、傷害事件をいろいろとあわせると6件、下着泥棒8件、恐喝14件、無免
許運転、車の盗難3件、あとでかいのはハイウェイを車で走ったり、放置されてい
るバスに火をつけたり、コンビニの雑誌コーナーに自動発火装置おいといたり、e
tc・・・」
みさき「本当に人の体だと思って・・・て状況だね」
茜「はい」
七瀬「鬼だわ・・・」
瑞佳「浩平〜」



浩平「はぁ、こら少年院生活かなぁ〜」
住井「まあ、仲良くなっていこうぜ。同僚!」
浩平「・・・・・・・・・・・・・・・(泣)」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
浩平「あれ?おまえなにやってんの?」
住井「いや、郁美さんの不可視の力を応用してなにか武器でも作ってみようか
と・・」
浩平「つくるなぁ〜!」

格子のはまった窓から見る、冬の澄み切った青空は本当に綺麗だった。

                           終わり☆
_________________________________
はぁ、前中後となってしまったため、早めに書き上げたんですが
なかなか量が多くなってしまったので、小さい文字にしておきました。
毎回いってるみたいですが、細かいミスについてはほんとうにすいません。

>感想
今、0時頃のページみて書いてるので、これ書いてる間に投稿された方が
いらしたらすいませんです。

>一曲
世界が終わるまでは〜♪

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Suzuran/5256/index.html