MOONinONE Second 投稿者: WIL YOU
・ドッペル七瀬

延々と続く追いかけっこの後。
「・・・・みぃつけた・・」
蛇の細長い舌で、身体の柔らかい部分をそっと舐められたような感じを受けて、
俺は立ち止まった。
おそるおそる振り返る。
「はぁぃ、ななせ・・さん・・・」
とりあえず挨拶を交わす。
声が震えているのが自分でも分かる。
「こんにちは、そしてさよなら」
にこやかな笑みをたたえたままで、ドッペル七瀬はこっちに片手をつきだして
きた。
突然頭蓋骨がミシミシッっと悲鳴を上げる。
俺の悲鳴は声にならなかった。
頭の血管が暴発しそうだ。すでに鼻からは血が出ている。
耳の鼓膜がきーんとする。
「死になさい。脳味噌ぶちまけて」
力がいっそう強くなる。
いつ頭がわれてもおかしくないような力を感じながら、おれは床に倒れ込んだ。
その時だった。
「なーんて、冗談よ」
一気に力が霧散する。
「いくらむかついてたからって、人殺しまでするわけ無いじゃない」
ぱたぱたと手を振る七瀬。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
なかなかきっつい冗談である。
「本気だったんじゃないのか・・・?」
思わずそう呟くと。

ミシッ

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「羊達は自分の立場をわきまえなきゃだめよ」
そう危ない意味の女王様みたいなことを言ってくる七瀬だったが、すでに俺には
反論する気力もなかった。


七瀬が成功体であるとわかってから学校中にかかっていた非常態勢はとかれ、い
つものように授業を受けることとなった。
しかし、俺にはいつもどうりではなかった。
前に座っている七瀬にちょっかいをかけられなくなったからである。
たとえばこうだ。

「おい、七瀬。いつものように空手で机を叩き割ってみてくれ」
「いいわよ」
バキバキバキィッ!
目の前の俺の机が崩れ落ちる。

これは嫌だ。
その他にもつっこみが激しくなるだろう。
俺は身をすくませながら、おとなしく授業を受けるのだった。


次の次の休み時間
俺は住井から聞き出した情報を七瀬に伝えた。
「なんでよぉぉぉぉぉぉっ!」
俺はいきなり首をカックンかっくんと前後に揺さぶられる。
「なんであたしが第二回人気投票で3票しか入ってないのよっ!」
くわしく状況の説明を入れる七瀬。
「まあ、まて、おち、つけ」
七瀬が首から手を離す。
「そんなこといったってな、ドッペルと化した奴を好きになるやついると思うか?普通」
「う゛っ」
「そんなの好きになる奴は変態ぐらいだろうな」
そして、その変態が3人もいるこのクラスはバリエーションに富んでいるのか、
それとも単にやばい趣味の奴がかたまっているのか。
「どっぺるなんてやめるわ」
「無理です」
二人の間から声が聞こえた。
声の聞こえた下の方を見ると、床から茜がゆっくりと浮上してきた。
「おわっ!里村さん?!」
驚く七瀬。
「どうしてなんだ?」
「はい。すでに少年の唾液に含まれている要素が全身に回ってしまってますから」
「そうか・・」
すると横から、つんつんっとつつかれる。
「なんだ?かおるちゃん(Pia2)か?」
べたなことをいいつつ、横を見ると七瀬だった。
「全然驚いてないわね・・・」
何に対して「驚く」なのか一瞬わからなかったが、すぐにその意味を悟る。
「はははっ、このぐらいで驚いてたら、茜とはやっていけないぞ」
「どういう生活してるのよ、あなたたちって・・」
「知りたいか?」
「いや、いいわ・・」
気分が悪そうにうつむく七瀬。どうしたのだろうか?
「とにかく、一度ドッペルと化してしまった以上、外に出さなくする以外に封じ
る方法はありません」
「なら一生怪物のままか」
「性格にはエイリアンです」
「どっちも嫌じゃあっ!」
突然泣きながらさけびだす七瀬。
なかなか文句の多い奴だ。
「とりあえずおとなしくしていることです。今物静かにしていれば、男子からの
信頼も回復するはずです」
「反対に万が一でもドッペル化したらしばらく地球外生命体だな」
「死ぬ気でいくわ」
・・・・・・・・・・・・
「目、血走ってるな・・・」
「ドッペルより怖いです」
俺達は小声でそんな事を言い合った。


授業終了時
「おい、折原。さっき七瀬さんとなに話してたんだ?」
う〜む、
どう答えるべきだろうか?
1,いつもどおり「いや、できちゃったっていう話をな・・」
2,それともごまかすために「いや、趣味のヨガのことでちょっと・・」
3,やっぱり意外性をついて「茶道、華道に関する話題をな」

う〜ん、なかなかナイスなのがない。
3などは乙女らしい話題と言うことで意外性をつけるだろうが・・・
そうだ、
「エルクゥ性急性髪の毛づら化現象についてのばれないカツラと育毛法につい
てな。ほら、髪の毛が途中でぶちぶちとちげれるか・・ら・・」

ドウッ

目に見えない不可視の力を受けて、俺は教室のドアをぶちやぶって廊下まで吹き
飛ばされた。
慌てた様子で七瀬が「大丈夫?」とかいいながらかけてくるのが見える。
そして、俺を抱き起こすときに耳打ちしてきた。
「いてもうたろか、こら」
同時にボディブローも入れてくる。
そして俺は閉口してしまうのだった。

生徒達は七瀬のしたことに気づいた様子もなく、七瀬の「浩平君の新しいお遊び」
の一言で納得してしまっていた。
そして、そのまま授業が始まる。
・・・・・・・・・・・・
「あ」
俺は消しゴムを落としてしまい、七瀬の肩をたたいた。
「何?」
小声での会話だ。
「消しゴム取ってくれ」
「何処?」
「あそこ」
「って、なんで里村さんの席の辺りのをあたしがとらなきゃなんないのよ!」
確かに消しゴムは窓側の俺の席から遠く離れた廊下側の茜の足下にまで転がって
いた。
「どうやったらあそこまで転がってくのよ・・・」
「いや、消しゴムちぎって投げてたら本体までも一緒に投げてしまったらしい」
ため息をつく七瀬
「いやよ、たち歩くなんて格好悪いもの」
「力があるだろ」
「・・・・・・・・・」
「なっ」
「ばれたらどうするのよ」
「大丈夫だって」
「・・・・・・・・・・わかったわ。でも、そのかわり。今後一切私にちょっか
いかけてこないでよ」
「わかった」
俺が了解すると、さっそく七瀬は消しゴムを動かしにかかった。
しばらく消しゴムを見つめていると、やがてそれが宙に浮く。
「おおっ、やるな七瀬」
「話しかけないで、今集中しているんだから」
そう言うと、消しゴムが一回がくっと落ちてから、また浮かび上がる。
集中が解けたせいだろう。
その時、俺の頭の中に黒い考えが浮かび上がった。
ちょっかいをかけてみたい。
力を使っている状態で集中が大幅にずれるとどうなるのか試してみたくなった
のだ。
1,脇腹をちょんっとつつく。
2,怖いので止めておく。
俺は2を選んだ。
さすがに俺のために力をつかってくれている七瀬をからかうのは悪いだろう。
俺はそう思って、消しゴムの方を見つめた。

コンッ
 
肘に今、なにかが当たった。
みると、今作っていたはさみとコンパスとカッターをゴムで一つにした護身用文房
具(販売価格525円予定、消費税込み)が下に向かって落下していくところだ
った。
俺はそれを目でおっていくと、あろうことかそいつは七瀬の上履きの上に落ちた
のだ。
まあ、正確に言えば、上履きの靴下が見える足首あたりに突き刺さったというと
ころか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なんか、やばいかもしれないということもなきにしも・・・・・・・・・・・
「いったあぁぁぁぁっ!」
七瀬はそう叫んでいた。
すると解放していた力が一気に強まり、激しい爆発を起こした。
閃光に目を覆い、少しして目を開けると生徒の半分が消えていた。
「七瀬なんてことを・・・・」
呟いてから、しまったと思う。
ばりばりに俺のせいだったこの状況でこんなことを呟けば、当然七瀬からなにか
喰らうことは明白だった。
しかし、頭を手で覆っているのになにもリアクションがない
不思議に思ってふとみると・・
七瀬はドッペル化していたのだった・・・・・

「マジぎれってこういう時につかう言葉だったのね・・」
涙を流しながら、俺の方をきっと睨む。
そして、手をこっちに突きだしてくる。
「いいのこすことは」
「・・・・・・・・・・せめてクリスマスイベントだけは体験したかった・・」
「キムチラーメンならあの世で食べるのね」

ドゴキューーーーーーーーーーーン!!!!!!!!

校舎を突き抜けて俺は空へと、えいえんの世界へと旅立ちかけた。


少年「ふうっ、今回はあまりおもしろくなかったね」
郁美「七瀬さんはるかみたい・・」
晴香「なにかいった?!」
郁美「いえ、なにもっ」
少年「それより次はどうしょうか?」
ゆい「この人なんてどうです?」
晴香「みさきさんのドッペルか・・ちょっといいかもね」
郁美「長森さんは?」
少年「いいかもねぇ」
葉子「じゃあ、今度はこの二人のどちらかにターゲットをしぼりましょう」
全員「了解!」
生徒会室から去ってゆく・・・・・・・・

高槻「俺って、今回出番無いのね・・・・・・・・・」
茜「はい」
高槻「教師役なのに・・・・・・・・・・」
茜「私もたいした出番ないです」
高槻「・・・・・・・・・・・のっとろうか?」
茜「いいですね」
口の端を歪めながら闇に溶け込んでゆく二人
怖いってば(^^;

繭「みゅ〜(繭ロボに出番奪われた)」
澪『一回もだしてもらってないの』
詩子「私も〜」
かいてるひとに名前を忘れかけられた深山さん「上の人達を倒してのっとりまし
ょう」
詩子「それじゃあ、食堂で会議でも・・・・」
繭「みゅ〜」
深山「はなしあいにならない気が・・」
全員退室

月「私も出たい・・・・」
茜「涙流す月って嫌です」

                           終わり 
_____________________________________以上です。
感想は書ける分だけ、掲示板の方にカキコしました。
後感想下さったかた。ほんとうにありがとうございます。
それでは。 
アデュ〜☆

http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Suzuran/5256/index.html