MOONinONE fast 投稿者:WIL YOU(うぃる よう)

プロローグ。つーか、事件の始まり
「できた・・・・できたぞおうぅぅぅっ!」
またしても住井は深夜の実験室で叫んでいた。
「まあ、あんまり意味のある代物じゃないけどさっそく起動してみよう」



朝、俺はいつものように長森と学校までランニングしていた。
短くも長くもないこの距離をいつものように一定のペースで走り抜け、ゴールである
校門に入る。
しかし、今日はいつもとなにかが違った。
校門前で言い様のない不思議な感覚を覚え、俺は校門の前で立ち止まってしまった。
「なにやってるの?遅刻するよっ!」
長森の声を受けて、俺は戸惑いながらもその校門をくく゜った。
待ち受ける非日常も知らずに。


「次元結節歪曲わっふる一号マシーン?」
俺と長森は同時にそう聞き返していた。
「そうだ。昨日完成したやつだ。これは結構凄いぞ」
前に「スーパーラヴラヴ繭ロボ2体」と「身体を人と交換する薬品」を作って、学校を混乱に陥れたことも忘れた様子で、住井は得意そうに自慢していた。
「どうでもいいけど、一号の後にマシーン付けるのって変だよ」
長森がつっこむが、住井は聞いた様子もなく説明を続ける。
「タクティクスの作品「同棲」「MOON」そして我らが世界のONE。これらの世界に限って、世界を一つにできるという代物だ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「前々から思ってたんだが、その力をもっと他のことにつかえんのか、お前は・・」
どこぞの教師みたいな事を呟いてしまうが、実際俺はその心境だった。
「俺は自分の欲望の向いている方向以外に努力する気はナイッ!」
きっぱりそう断言する。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日本の将来のためにもこいつは削除しておくべきかもしれない・・・・・
俺は68,2パーセント本気でそう思った。
「お前これ以上なんかしたらFBIに消されるんじゃないのか・・」
「なんだそれは?」
「いや、こっちの話だ」
怪訝そうな表情を浮かべる住井。自覚がないのがまた恐ろしい。
そして、その怪しげなマシーンに対して、いろいろと聞きたいところではあったが、
その時、始業のチャイムが鳴ったので俺達は話を打ちきって席に着いた。

その時間はテストだった。

1時間目終了後、俺は教科担任の先生に頼まれた荷物を特別教室に運んでいた。
「まったく、あんたのせいで私まで雑用押しつけられたじゃない」
授業中、七瀬とじゃれあっていた事への罰ということも言えないかもしれない。
「お前が大声だすからだろ」
「いつのまにか髪の毛に赤色のメッシュ入れられてたら、誰だって叫ぶわよ・・」
「いっとくが俺は・・・・・・・・・・」
いつものように美容師兼植木屋志望と、言いかけたときだった。
通りかかった空き教室の中から、変な声が聞こえたのだ
「やめて・・・お願い・・・やめてよぉっ」
女の子の泣き声だ。
「ふへへへへへっ、いい格好だな。おい」
「観念するんだな」
いやらしそうな男の声。
「なに・・・これ・・・」
七瀬が小声で俺に聞いてくる。
「知るか、どら・・」
俺はしたの小窓から中をうかがい見ると、中には二人の男子生徒が一人の女子生徒がいた。
「精錬室?」
後ろで七瀬がそう呟く。ここの部屋の名前だろうか、精錬室・・聞いたことのない名前だ。
「なかなか、うぶだな」
「やっぱり初物は違った味わいがあるぜ」
男子生徒がそんな事をいっている。
「しかし残念だな。たっぷり味わうことも無しにいきなり儀式かよ」
「全く、いいよなお前は無条件で女とやれるんだからよ。すましたかおしちゃってよぉ、実は結構うれしがってたりするんじゃね〜のか?」
男子生徒はもう一人いたらしい。奥の方に向かって二人の内の片方が話しかける。
奥の方から何故か「少年」という名前がしっくりくる生徒が現れ、無言のまま女子生徒にちがずいていく。
「なんなんだよ、はりあいのないやつめ」
男子生徒が呟く。
少年は女子生徒の方に手をかけた。
「嫌、やめて・・・・・お願い・・・・・・・・・・・・いゃあ〜〜〜っ!」
甲高い声。
そしてその声にたじろぐこともなく少年は女の人の大事なところへと・・・
そして少年と女子生徒は事におよんだのだ。
「あ〜あ、とうとうやっちまったな・・・」
俺がそう呟く。
「どうして止めないのよっ!」
いきなり後ろで話を聞・い・て・い・た七瀬が突然ドアを開けて中に入っていってしまった。
「ちょっとあんたたち、なにやってるのよっ!」
中から怒鳴り声が聞こえる。
「おい、馬鹿!」
俺はあわててあとをおって中に入る。
そこには
二人の男子生徒と、肩をいがらせて立っている七瀬、
そして・・・・・・・
キスしたまま硬直している少年と女子生徒がいた。
当然、全員制服を一糸の乱れもなくぴっちりと来ている。
「・・・・・・って、あれ?」
七瀬は呆然としていた。
「なに考えてたんだよ、お前」
俺のつっこみに、七瀬は耳まで赤くなりながらうつむいてしまった。
「なんなんだ、お前らっ!」
男子生徒がそう叫ぶ。
そっちが言うセリフではないと思うのだが・・・
「いや、なんなんだといわれても・・・・そっちこそなにやってんだよ」
「見てのとうり精神訓練だ」
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どうやら、相手と俺には異なった世界が見えているらしい。
俺はSFかぶれの連中にかまうのがあほらしくなって、ドアへと向かった。
こういう連中とかかわると、ろくなことにならないことを俺は過去の経験から学んでいる。
「まて、勝手にずけずけ入りこんどいて、ただで帰れるとおもっているのか」
後ろからそんな声が掛かる。
お約束な展開に俺は片手を上げて、
「んじゃそいつおいていくから、好きにしてくれ」
そういうとその部屋を出た。
「ちょっとおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
後ろからそんな声が聞こえたが俺はあえて無視して先に進んむ。
まあ、七瀬ならだいじょうぶだろう。
そして、俺は仕事を終えて教室へと戻った。
七瀬は戻ってこなかったが・・・

「おい、どうなってんだよ」
俺は住井に尋ねた。
「なにがだ?」
なんのことか知っていながらもとぼける住井。
「なんか学校が変なのはお前の仕業だろうが」
そう、今日は学校全体がいつもと違っていた。
変なのができたのは精錬の教室だけにとどまらず、体育の時間に「ミンメス」というのをやらされたり、やたら親切に情報をくれね巡回員がいたり、七瀬が戻ってこなかったりといった事だ。
・・・まあ、七瀬のことは別に対したことでは無いのだが。
「ふふふふふふふっ、そのとうりだよ明智君」
「今の時期に『はいからさんが通る』のネタもちだしても誰も分からないと思うぞ」
しかし、俺のつっこみを無視してまたも住井は説明を続ける。
「先に説明したマシーンで、MOONの世界とこの学校を一つにしたんだよ」
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「今回はとんでもないことになる」そんな電波が俺の頭の中をよぎった。
繭ロボ、そして変な薬の時よりもさらに巨大な不安を俺は感じていた。
すでにこの教室にも、なにか変わったことが起きているのでは無いだろうか?
そう思って辺りを見渡してみる。
「まあ、そう緊張するな。合わさったといってもそんなに大した事が起こるわけでもない」
住井がへらへらと笑いながら声を掛けてくる。
つーか、世界がドッキングしてることですでに「大したこと」だと思うけどな・・
「合わさったと言ってもMOONのあの過酷な世界がそのまま現れる訳じゃない。ONEの世界に溶け込んで、ソフトな感じになってるはずだ」
なるほど
俺はさっきの陵辱の教室、の事を思い出して納得した。
こっちではキス、が向こうで言う陵辱の意味を持つのだろう。
「なるほどな・・・」
いくらか不安があったが、考えていたところでどうできるものでもない。
俺は前を向くと授業に集中した。



ヴィーッ、ヴィーッ、ヴィーッ
突然のサイレンで目が覚めた。
どうやら真剣に授業を受けてたつもりが、寝入っててしまったらしい。
「なんだ?」
まだぼやけている目をこすりながら周りをみわたす。
すると、
生徒全員が黒く光る大きな銃火器を手に持って、ガチャガチャやっていた。
「いいかっ!ロスト体が特別棟三階ではっけんされた!6つの班に分かれて行動。みつけしだいすぐ射殺だ!いいなっ!」
『了解!』
いつもと違う髭のきびきびした声と、クラスメート全員のピシッっとした声。
すでにここは非日常と化していた。
「ななななな、なんだっ!」
住井の話ではいくぶんかソフトになるはずではなかったのか?
これではMOONそのままだ。
「どうして陵辱シーンが緩和されてて、こういうシーンがそのままなんだ?!」
「作者の趣味です」
茜が後ろからそう答えてきた。
「うぉっ!」
毎回のことだが、どうしてこいつは突然現れるのが好きなのだろう?
そう言う合間にも、クラスメート達が銃を手にどかどかと教室をでていく。
「マジで、やってるわけ?」
「マジです」
「人とか死んだりしない?」
「死にます」
「それってSSとしてまずくない?」
「痛みは感じますけど、基本的に笑い系ですから誰も死なないです」
「そうか・・・・・・」
その時、突然放送が入った。
「ロスト体、2−A七瀬! 本棟に進入!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あの後、キスされたみたいですね」
何故茜が七瀬を見捨てたことを知っているのかは分からなかったが、
とりあえず事態は最悪となった。
「がんばって下さい」
茜はにこやかに笑うと、空気に溶け込むようにして消えた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


そして、俺は七瀬と不毛な追いかけっこをすることになるのだ・・・
俺が力尽きるまで・・・
「浩平、天井向いて泣いてないで行くよ!」
教室の入り口に立っている長森がそんなことを言っていたが、俺の耳には届いてはなかった。