「もう一つの物語」〜長森瑞佳編〜 投稿者: 岩下 信
「もう一つの物語」〜長森瑞佳編〜第一回


#この物語は、瑞佳の例のイベントを元にして書かれています。

「…浩平?」
長森が震える手を握り締めつつ、小さな声で言った。
今、長森を襲っているのは俺ではない奴だ。
しかし、長森はそれが俺だと信じている。
俺の胸がひどく痛む…
そんな俺にお構いなく、奴は長森を襲いつつある。
当然だ。
これは、俺が言い出した事なんだから…
「…どうしたの?浩平…。」
訳が分からないという風にに長森が言う。
はぁはぁはぁはぁ………
長森を襲っている奴の荒い息が教室に響く。
そして、次の瞬間…
びりっ!
ブラウスを破りさく音が教室に響く。
「…………!」
続いて長森の息を呑む音。
『くっ……』
刹那、俺は長森の手を振り解き、教室の電気を点ける。
「えっ………。」
長森が自分に手を掛けている男の顔を見て、表情が固まる。
俺は長森を襲っている奴に向き直った。
「!何すんだよ!」
長森を襲っていた奴が文句を言う。
「うるせーー!」
俺は叫びながら奴に殴り掛かっていた。
手に広がる鈍い感覚。
そのまま、男を押し倒し、マウントポジションを取って殴り続ける。
「ぐっ…お前…がっ!…いい……ぐっ!……出した……事じゃ……ないか……。」
殴られながらも男は俺に言った。
今の言葉は長森にも聞こえただろう……
「黙れぇぇぇぇぇーーー!!。」
俺は叫ぶと引き続きこぶしを叩き込む。
「…浩平…やめなよ…。」
気がつけば長森が俺のそばに居る。
頭の中が混乱し、何をしているのかも分からない。
ばきっ!
鈍い音。
相手の口から血があふれ出した。
今の音は歯を俺が折ったらしい
相手は…すでに失神していた。
どうしようもない苛つきをぶつけた証拠だ。
「浩平〜止めてよ〜〜。」
長森が泣きながら、止めようと俺にしがみつく。
「……………。」
俺は無言で長森を振りほどく。
「きゃっ…。」
勢いよく振りほどいたので、長森が尻餅をついた。
そして、俺は無言で教室を飛び出した。

階段、玄関、校門を一気に駆け抜け、商店街へと走りこむ。
…ここまで来れば、もう長森の奴も追いつけないだろう…
……ごめんな、長森……
俺は商店街の中を走りぬけながら、心の中で詫びた。
どんっ!
誰かと肩がぶつかった。
「…待てよ。」
ぶつかった奴が俺に文句を言ってくる。
「…なんだよ…。」
足を止め、文句を言ってきた奴に俺は向き直る。
「…人にぶつかって挨拶も無しかよ…。」
髪を金髪にした数人の中の一人が俺に文句を言っている。
「…悪かったな…。」
俺はそう言ってまた駆け出した。
「待てよ、おい…。」
次の瞬間、俺の肩を掴む感覚。
「…急いでいるんだっ!」
俺は肩を掴んだ奴を思いっきり殴り倒す。
「!てめぇっ!」
数人が一気に俺に襲い掛かってきた。

…どうでも、よかった…
…なんでも、よかった…
…俺を罰してくれるのは…
…こんな俺を…
…………

数人に殴られながら、俺はそんな事を考えていた。
口の中に血の味が広がり、息をするたびにいやな匂いが鼻につく。
数人にかなう訳でもなく、俺はされるままに殴られつづけた。
…痛い…
しかし、長森が感じた痛みの方が痛かっただろうな…
路地裏で奴等に殴られながら、俺はぼんやりと考えていた。
「…けっ…調子こいんなよな…。」
そんな言葉を俺に投げかけて、奴等はどこかへ言ってしまった。

体が動かない。
「ふっ…馬鹿だな…。」
夜空を見上げて俺はつぶやいた。
今まで長森にして来た仕打ちの数々。
…反動形成…
そんな言葉が頭をよぎる。
襲われている長森を見て、ひどく胸が痛んだ事。
俺を信じてくれる長森を見て、胸がはり裂けそうだった事。
俺は…
俺は………
長森の事がこんなに好きだったんだ…。
ぽつり…
俺の顔に冷たいものが落ちてきた。
『雨か……』
それは次第に多くなり、俺を打ちのめすように降り出した。
『カッコ悪すぎるぜ……』
そう思いながら、俺は雨に打たれ続けていた……

続く…

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どうも、はじめましてです。
岩下と申す駄文書きです。以後お見知りおきを…(ぺこり)

どうしても、瑞佳のあのイベントが気になって書いてしまいました。
初投稿なのに、続きものになってしまい、申し訳ありません m(_ _)m

ご感想・ご意見などがありましたら、是非ともお聞かせください。
では、失礼します。

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