その3 最初に湧いた感情は驚愕だった。続いて疑問。・・・そして、最後は恐怖。 「・・・すまん。俺今日は帰る」 名前も分からないクラスメイト達に精一杯平静を装いそう告げ、鞄を引っ 掴むと俺は逃げるように教室から飛び出した。 学校から家までの道を全力で走りながら、俺は記憶が断片的に欠けていく のを実感していた。 この道の先に商店街があったか?・・・思い出せない。 学校へ抜ける近道がどこかになかったか?・・・思い出せない。 あの空き地は、誰かがいなかったか?・・・思い出せない。 (思い出せない、思い出せない、思い出せない) 家に着いた。2階にかけ上がり、自分の部屋に入るとそのまま布団に入る。 (・・・全部夢だ。1度寝て、起きてしまえば全てもとに戻るんだ) ガチガチと奥歯が噛み合わずに鳴っている。とても眠れるような状態では なかったが、昨日から寝ていないのと、先程の全力疾走の疲れも手伝い、 やがて俺は眠りに落ちていった・・・。 ++++++++++++++++++++ 世界が遠ざかって行く 黄昏が、賑やかなビル群が、草原が、雲が、どんどん僕から離れて行く 「・・・追いかけないの?」 追いかけたら追いつくのかい? 「それはわからない。けど、あなたが追いかけない以上あの世界が戻って くる可能性はないね」 「あなたにはね、選択肢があったの」 どういう選択肢? 「わたしとの約束、憶えてるよね」 キミはずっと一緒にいてくれるんだったよね 「そう。わたしはここにいる。ずっと一緒にいる。・・・けどね、あなた は約束の時違う事も考えていたの」 ・・・そうだ、僕は考えていた。もしも・・・ 「もしも、みんななくなってしまったら。まわりも、自分も、うれしいこ とも、かなしいことも、みんななくなってしまったら」 だんだん視界が暗くなっていく 「あなたはね、もうひとつの可能性を選んだの」 ・・・世界はみんな、なくなってしまうんだろうか・・・ 「全部の世界はなくならない。なくなるのはあなたの世界。あなたにとっ てのすべて」 視界に映るものすべてが滲むように闇に溶けこんでいく 僕のすべてがなくなってしまったら、僕もなくなってしまうということだ。 そうなれば、破滅に向かう事もない、悲しむ責任も喜ぶ義務もない。・・ ・・・・何もない 「・・・何も生まれない虚無。それも、ひとつの『永遠』なんだよ」 =================== 『ONE』非公式(以下略) その3です。まだまだ続きます(^^; 今回はなんか某EV○っぽくなっちゃって嫌だなぁ・・・(−−; でも、私の表現能力ではこれが精一杯。・・・はふぅ。 今後の展開ですが、なんか他の方のSSとオチが重なってしまって 路線変更することに(^^;。さて、どうしよう・・・ では、またその4にて。(どこまで続くんだろう・・・(^^;)