ONE それは異なる『永遠』 投稿者: 折笠 美冬
  その2

俺の中で始まった奇妙な違和感。しかし、まるで何事もなかったかのように
1日は終わろうとしている。

(結局、何でもなかったのか・・・?)

夕食を食べ終え、自分の部屋でTVを観ながら考える。
本当にに何でもなかったんだろうか。疲れた時などに出る不安感が生み出し
た幻想に過ぎなかったんだろうか・・・。

「・・・・・・寝るか」

考えても答えはまとまりそうにない。こういう時はさっさと寝てしまうのが
1番だ。布団に潜り込み、TVのスイッチを・・・


                               どくん


俺が異常に気がついたのはその瞬間だった。さっきまで観ていたTV番組。
特にチェックしているわけでもなかったがつい毎週観てしまっているもの
なのだが、今日の出演者はやけに新顔のタレントが多かった。

(そういう番組じゃなかったはずだが・・・)

しばらくブラウン管に映る映像に意識を集中する・・・・・・。
そして、その異常に気がついた。
番組は何も変わっていなかった。いつもどうりのバラエティ番組。しかし
俺はそこに出演しているゲストやレギュラーの名前から何からを完全に忘
れてしまっていた。毎週観ていればレギュラーの顔と名前くらいは一致す
るものだ。だが今の俺はその一切を思い出す事ができなかった。

TVを乱暴に叩き消し布団を頭から被る。見えない何かに追われているよ
うな気がして、俺は布団の中で震えていた。
・・・その夜はとうとう眠ることができなかった。


               ++++++++++++++++++++


・・・何があっても朝だけは来るものなのだろうか。

もともと寝ていないので寝坊もしようがなく、学校を休みたい気分ではあ
ったが体調は悪くないし長森にも悪いと思い、8時前に学校へ行く仕度を
ととのえ玄関で長森を待った。
8時5分前、ガチャリと音がして目の前の玄関のドアが開く。

「きゃっ!こ、浩平!?」

ドアから入ってきた人物(当然長森だ)は、玄関で待っていた俺を見るな
り悲鳴を上げた。

「玄関なんかで寝ちゃってたの!?ダメだよ、体に悪いよ」
「誰が玄関なんかで寝るか。早起きして長森を待ってたんだよ」
「ひょっとして、また私を驚かそうとしてたの?」
「おう。・・・それと、単なる気まぐれだ」
「はぁ・・・いいよ、もう。仕度ができてるんなら学校行こう」

何事もなく俺と長森は学校に着き、教室へ向かう(普段ならこれこそが異
常だ)。すでに教室は8割ほどのクラスメイトが来ていた。
俺が席につくと、先に来ていた南が自分の席を立って俺の方に近づいてき
た。

「よぉ。昨日約束したCD持って来てくれたか?」


                               どくん


「え?」
「え?って、何だよ、忘れたのか?」
「いや・・・というかお前誰だ?」
「は!?折原、また変な冗談か?あんまり真面目な顔して言うと面白く
ないぞ」
「いや、ホントに知らん。・・・なぁ、こいつクラスメイトだったか・・
・」

斜め前の席に座る親友に声をかけようとして俺は凍りついた。

・・・その後に続くはずの親友の名前、声をかけられたのに気づき振りか
えった顔。呼ばれた事を確認する声。全てが恐ろしいほど新鮮だった。

俺は、声をかけようとした男の全てを忘れ去ってしまっていた。


・・・・・・小さな違和感だったもの。
俺を中心に湧き上がってきたそれは、今確信となって俺の『世界』を狂わ
そうとしていた。



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『ONE』非公式アナザーストーリー(勝手に命名)その2です。
このままいくとかなり長くなりそうです。・・・マズい・・・。

とりあえず気をつけていることは『必要以上に重くしない事』です。
気軽に流し読みできるようなSS目指してます。

では、またその3にて。