日本人なら米を食え、貧乏人は麦を食え 投稿者:WASTE
 うくふに氏の
 >…じゃ、R−28って何です?(汗)
 に答えて……

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「おし、次唐揚げくれ」
「はい、浩之さん。……あーん」
「あーーん」
 梅雨が明けて、しかしまだ本格的な夏とはいえないある日の昼休み、浩之とマルチは学
校の屋上で弁当を食べていた。正確には食べているのは浩之だけで、マルチは弁当箱から
料理を摘んで浩之に食べさせているのだが。
「ん…… もぐもぐ 美味い…… ごっくん
 大分腕を上げたなマルチ」
「えへへー、ありがとうございますー」
 浩之に誉められたマルチが嬉しそうに微笑む。
「マルチはいつもがんばってるからな。よし、なでなでしてやろう」
「あっ」

 そんな、他人が近寄ったら乱入して二人をど突き倒すか、枕を抱えて押入れに篭ってし
まいたくなるような結界を張る二人に、平然と近づく人物がいた。
「へー、中々美味しそうじゃないの。どれどれ?」(パクッ)
「あっ、こら志保、てめー!」
 他称歩く東スポ女、呼吸する迷惑、エトセトラ、自称世紀の美少女、学校のアイドル、
長岡志保だった。
「その卵焼きは最後の楽しみに取っておいたやつだぞ!」
「セコイ事言いなさんなヒロ。しかし確かに料理上手くなったわね」
「マルチは学習型だからな。誰かと違ってちゃんと進歩するんだよ」
「なによ! あたしが進歩しないって言うの!」
「誰も志保だなんて言ってないだろ」
「ふ、二人ともやめてくださいーー」
 恒例の口喧嘩を始めようとする浩之と志保の間にマルチが割って入る。気勢を殺がれた
二人は思わず緊張を解く。そして顔を見合わせるとどちらともなく腰を下ろす。
「…で、おまえは俺達の優雅な午後の一時を邪魔するためにここに来たのか?」
 浩之は志保に尋ねる。
「お昼食べに来たに決まってるでしょ」
 パンと白牛乳を見せながら志保が答える。
「出遅れちゃって、ロクな物が買えなかったけど」
「これ以上おかずはやらんぞ」
「はいはい、分かってるわよ欠食児童の藤田浩之君」
 そう言うと志保はパンの袋を開け牛乳パックにストローを挿す。それを見た浩之とマル
チも自分達の食事を再開する。


「しかし、傍で見ているだけで御馳走様といったところね、あんた」
 嬉しそうに浩之に料理を食べさせるマルチを横目で見ながら、黙々とパンを口に運びそ
れを牛乳で喉に流し込んでいた志保が言う。
「はいっ、わたし浩之さんに料理を食べていただけるだけで幸せなんですー」
 何の照れもなく言うマルチに思わず志保の気力が萎えかける。
「……でもさー、せっかくの料理なんだからさ、二人で食べれたほうがもっといいんじゃ
ない? どう? ヒロ」
「え? ま、まあ、確かにな」
 話を振られた浩之が思わず答える。
「……すいません、浩之さん。……わたしロボットですから……」
「おいおい、んなこと気にすることはないって。俺はマルチが居てくれるだけで十分幸せ
なんだからさ。こら志保。余計な事言うんじゃねーよ」
 図らずもマルチを傷付けてしまった事に気付いた浩之が慌てて慰める。
「……はい……」
 しかし、浩之の言葉にもマルチの顔が晴れることはなかった。

 ・
 ・
 ・

「ふう」
 今日は浩之がエクスストリーム同好会に顔を出す日なので、マルチは一人で先に帰宅し
た。途中のスーパーで夕飯の買物を済ませたマルチが小さな溜め息を漏らす。
 昼間の志保の言葉が耳に残っている。
 二人一緒に食べられない。
 それはマルチと浩之が「ロボット」と「人間」である事を端的に表す事だった。
 浩之は『マルチはマルチだからな』と言ってくれているが、マルチがそれを気にしてい
ない訳ではなかったし、今のように考え込む事も無い訳ではなかった。

 この様にぼんやりしていれば、何も無くとも転んだりぶつかったりが絶えないマルチが、
その「人物」と正面衝突したのはある意味当然だった。


 どんっ

「きゃっ」
 誰かとぶつかったらしいとマルチが認識したのは尻餅をついた3秒後だった。
 相手の方は道路に仰向けになっている……様だった。
「だ、大丈夫ですかー」
 なんとなく違和感を感じながらマルチが慌てて相手に声を掛ける。
 下駄履きに学生服という相手の男は、その声を聞くとひょこんと身を起こす。
「す、すいませ〜ん。わたし、ぼんやりしていて…………
 はわわわわーーーー!!」
 マルチが悲鳴を上げたのも無理はなかった。その男の首は180度回転し背中を向いて
いたのだから。
 学生服男の方は暫くボーーとしていた(無論その表情はマルチから見えない)が、マル
チの悲鳴に腕を組み首を傾げる。
「あうあうあうー。く、首が、首が〜〜〜」
 その叫びに、学生服男は漸く事態に気付いたという風にポンと手を打つ。そして両手で
己の頭を掴みギリギリと音をたてながら元に戻そうとする。
 が、あと少しで元に戻るという時、破滅的な音をたて男の首が胴体から転がり落ちる。
「はうーーーー!」
 あまりの事態にマルチの方はブレーカーを落とす寸前だった。
 しかし学生服男の方は平然と道路に落ちた自分の首を拾い上げる。そして暫く首と胴体
でにらめっこをしていたが、おもむろに首を本来の場所に戻した。
 その様子にマルチは初めて学生服男が自分の同類である事に気付く。
「あ、あの〜〜…… はやっ!」
 マルチが声を掛けようとした瞬間、突然けたたましくベルが鳴り始める。
「ご飯の時間だ」
 学生服男は服の中から鳴り続ける目覚し時計を取出し時間を確かめると、納得した様に
呟く。
 そしてどこからとも無く米袋と炊飯器を取出すと米を磨ぎだす。それが終わると学生服
男は正座をし、懐からコンセントを引張り出して炊飯器に繋ぎ飯を炊き始める。そのまま
顔を上に向け脱力したようになる。
 異様な光景にマルチは声を出せず男を見つめるだけだった。

 数十分後、炊飯器が炊上がりを告げると学生服男は漸く顔を起こし、いそいそと炊飯器
の蓋を開ける。飯は上手く炊けたようで学生服男は満足げに笑うと、やはりどこからとも
無くしゃもじと茶碗と箸を取出し飯をよそる。
 飯を掻き込む学生服男を見てマルチは驚いた。ロボットがご飯を食べられるのだろうか
?
「あ、あの〜。あなたロボットなのにご飯が食べられるんですかー?」
 おずおずとマルチが学生服男に尋ねる。
「違うよ。ロボットじゃないよ」
「え? でもー」
 ロボットでなければ何なのだろうか?
 マルチが更に尋ねようとすると学生服男が続ける。
「アンドロイドだよ」
「同じだっ! バカモノッ!!」
 景気良い音と共に学生服男の後頭部にハリセンが炸裂する。
 驚いたマルチが学生服男の後ろを見ると長髪に眼鏡の妙に偉そうな男が、やたらと偉そ
うにふんぞり返っていた。偉そうな男は良くない手付きをすると、やはり偉そうにのたま
う。
「だ〜いじょうぶ。ま〜かせて」
「な、なにがですかー」
「キミはご飯が食べたいのであろう?」
「え… あのあの… は、はい」
 事態に付いていけず混乱し始めているマルチは偉そうな男の言葉につい肯いてしまう。
「うーむうむ、よーし。では、あ〜る。轟天号を出すのだ」
 マイペースに飯を掻き込み続けていた学生服男に偉そうな男が命令する。
「えーー、三人乗りをするんですか?」
「うむ、そのとーり」
「三人乗りは疲れるじゃないですか」
「だ〜いじょうぶ。私は疲れない」
「やあ、それならいいですね」
 偉そうな男の理不尽な言葉に、学生服男は何故か納得した様だった。

「さあ君も乗るのだ」
 サドルに跨る学生服男の背中に乗る偉そうな男が、学生服男とぶつかってからこっち座
り込んでいたマルチに声を掛ける。
「あうあうあうあうあうあう……」
 座り込んだままマルチはずりずりと後退する。
「乗らないと関節技を掛けるぞ」
「ひっ!」




「…………あうーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


「マルチちゃん!?」
 あかりがそれに気付いたのはドップラーシフトを起こした悲鳴を残して、超高速で自転車が通り過ぎた後だった。

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「はーー、そんな事があったんだ」
 茶碗を片手に浩之が言う。
 マルチが家に戻って来たのは、あかりから知らせを受けた浩之が大騒ぎを続けていた翌
日の夕方だった。浩之の方は長瀬主任に連絡を取ったり、警察に届ける場合は誘拐にする
べきか悩んだりで疲れ果てていたのだが、戻ってきたマルチの方はけろりとしていた。つ
いでに言えば自転車に乗せられた後の事はよく覚えてないらしい。
「ま、なんにせよ無事で良かった……」
「ご心配かけてすいません浩之さん」
 自分の茶碗にご飯をてんこ盛りにしながらマルチが謝る。
 既に3杯目だ。
「……ご飯美味いかマルチ?」
「はいっ。浩之さんと一緒にご飯が食べられてとっても美味しいですー」
 尋ねる浩之に、屈託無く答えるマルチ。
(明日にでも長瀬のおっさんの所に連れていった方がいいかな……)
 嬉しそうにご飯を掻き込むマルチを見ながら溜息交じりに浩之は思った。

 ・
 ・
 ・

 その頃……

 練馬区某万能工学研究所では、某博士が一本のネジの存在に頭を悩ませていた。


                                   おしまい


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 と、いう訳でR−28(号)とは……

「やあ、あ〜る・田○一郎君だよ」
「捨ててこい」(-_-メ)
「え〜〜、何でですかー」(T_T)




 次回予告!

 平和な学園に差す戦乱の影・・・・・・

「へえー、もう生徒会選の季節か……」
「今思ったんだけどさ、マルチを生徒会長にしたら面白いんじゃない?」
「はははは、まあ、確かに面白いかもな」
「面白いですー、その話乗りましたー」


 それは、振られ女の嫉妬なのか・・・・・・

「なんですって〜〜! あのロボット三等兵娘、私から藤田さんを奪っただけでなく、学
校の支配権まで握ろうというの!!」
「こ、琴音ちゃん、落ち着いて」


 吠える馬面・・・・・・

「私は学会に復讐してやるんだーーー!」
「するんですーーー!」


 虚偽と詐術・・・・・・

「矢島先輩…… 協力していただけたら、私が生徒会長になった暁には会長権限で神岸先
輩をバスケ部のマネージャーに……」
「するする! いくらでもする!!」


 泥沼化する戦い・・・・・・

「おーい、ゲーセン寄っていこうぜー」
「はいですー、エアホッケーするですー」


 禁断の最終兵器・・・・・・

「はい、葵ちゃん」
「え? ヘアカラーと耳カバー?
 琴音ちゃんこれでいったい何を……」


 そして事態は混沌に・・・・・・

「――マルチさん。あなたは墜落しました」
「そ、そうだったんですかー」


 究極超人マルチ 第256話「美人女医は見た! 幻の秘湯に潜む巨大海蛇!」

 coming soon!!

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「……ナニ、コレ?」
「ん、のーみそがわやになってる」
「書くノ?」
「んー、まあ、一番良いSSは書かれてないSS、と言うし」
「……良いSS書きは死んだSS書きだけ、と言いマース」
「弓矢を人に向けるんじゃない……。
 そうだ、紫炎氏に任せる(押付ける)というのはどうだろう」
「Kill you!!」