来栖川電工はISO14000を取得しているか? 投稿者:WASTE

 はじめまして、WASTEと申します。
 ROMばかりでカキコはした事はないんですが、takataka氏の「よろしくロボドック」
を読んで突発的にSSが出来たので送らせて頂きます。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 200X年。来栖川電工はこれまでのメイドロボと一線を画するHM−12,13を発
売した。この事は業界に大きな衝撃を与え、ライバル各社は競って同様の機種を市場に投
入した。結果、価格は急激に下がり、メイドロボは爆発的に社会に普及した。
 しかし、それは同時に幾つかの社会問題を生み出した……

 ・
 ・
 ・

「ご主人様、庭のお掃除が終わりました」
「お、ご苦労さん」(なでなで)
「――ご主人様、お茶をどうぞ」
「さんきゅ」(なでなで)
「ご主人様、ベッドの用意が……(ポッ)」
「おっけー」(ふにふに、さわさわ)
 ・・・・・・

 我が藤田家にはメイドロボが12人もいる。HM−12,13がメインだが他社製品も
少数いる。
 勘違いしてもらっては困るが、俺が買ったのはマルチだけだ。
 いくら安くなったとはいえ学生の身にはメイドロボは高い買い物だし、第一一人暮らし
の俺の身の回りの世話はマルチ一人で十分だ。
 では、何故こんなにメイドロボがいるのかと言えば、拾ってくるのだ、マルチが。
 メイドロボが一家に一台と言う程普及すると心無いユーザーが少なからず出てくる。
 そういう連中は飽きたりなんかすると簡単にメイドロボを捨ててしまうのだ。正規の回
収施設に持っていく奴はまだしもで、タチの悪い奴は不法投棄してしまう。
 最近はそういうメイドロボが「野良メイドロボ」として社会問題になっている。
 で、マルチはそういう「野良メイドロボ」を見ると、
『ううぅ、可哀相です〜。そうだ、一緒にお家に来るといいですー』
 となってしまう訳だ。
 まあ気持ちは分からないでもない。もともとマルチは優しいし、HM−12型のみなら
ずそれ以降に造られたメイドロボのお姉さんの様なものだからな。
 とは言え、最初は家に何人もメイドロボを置いとく訳にはいかないので長瀬のおっさん
に引き取ってもらおうとしたのだが……
『すまん、藤田君! こっちもなんやかやあって引き取る余裕が無いんだ。メンテと電気
代はこっちで持つから君の家にしばらく置いておいてもらえんかね。これ、この通り!』
 ……といった訳で現在の状況に至っている。
 我が家のこの状況は近頃有名らしく、わざわざ家の前にメイドロボを捨てていく奴まで
出てくる始末だ。
 なんだかムツゴ○ウにでもなった気分だ。…北海道に土地買ってメイドロボ王国でも作
ろうかな……



「浩之さ〜ん、ただいま帰りましたー」
 そうこうしている内に買物に行っていたマルチが帰ってきたらしい。俺は立ち上がって
玄関に迎えに出てやる。
「おう、ご苦労さん。転んだりしなかったか?」
「…………」
 ? いつもなら
『えへへー、ただいまですー』
 とか言って俺に抱き着いてくるマルチが、体をもじもじさせ上目遣いで俺を見る。
 これは……
「また、拾ってきたのか?」
「え、あの、……あうあう ……はい…」
 またか。
 俺はがっくりと肩を落とした。
「あのなマルチ。もうウチには置けないと言っただろう?」
 そう。我が家は一般的な庶民の一戸建てなのだ。来栖川の御屋敷とはわけが違う。両親
が家に寄りつかないのを考慮に入れても、我が家には最早物理的に余裕が無くなりつつあ
る。メイドロボ達を物置に入れたり外に抛っぽり出す訳にはいかないし…… マルチもそ
の事は分かっているはずなんだが……
「う… でも…… あうぅ……」
 マルチは今にも泣きそうな目で俺を見る。
 ううっ、この目に弱いんだよな〜
「ったく、しょうがねーなあ」
 俺はマルチを抱き寄せ頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
「あっ」
「……今度だけだぞ?」
 「今度だけ」を何回言った事か…… ま、しょうがねーか。
「あ、はい!」
 さっきまでの泣きそうな顔が一転満面の笑顔になる。やれやれ、泣いたからすが…って
やつだな。
「ほれ、家に入れてやれよ」
「はいっ。
 浩之さんが許してくれましたー。どうぞー、お家に入ってくださいー」
 マルチが玄関から顔を出して叫ぶ。
 ……今度はどんな奴を連れてきたんだ?
 RX−78か? AV−98か? R−28か?




「えへへ〜〜、浩之ちゃん(はぁと)」




 ……あかりだった。



                                おしまい

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「ま、犬ということで」
「……あまりオチてないデス」
「……今はこれが精一杯」