天使のたまご−第1話 召喚 投稿者: Yin
「・・・で、先輩。今日は何の儀式?・・・え?天使の召喚!?」
「・・こく」

  7月も半ば。
  きのう降っていた雨は上がったものの、強い日差しがその湿度とあいまって、
みんなに汗をかく事を強要している。不快指数はうなぎのぼりだ。
  だがそれも屋外での事。
  カーテンを締め切り、蝋燭の灯りだけに照らされた部屋は、エアコンもついていないのに
ひんやりとした冷気すら感じさせていた。
  ここはオカルト研究会の部室。
  今日俺は、芹香先輩に呼ばれてここに来ていた。
  風も無いのに揺れる灯りは、闇に沈んだ部屋の怪しげな調度品と床に書かれた魔法陣、
マントと帽子に身を包んだ先輩と俺、そして。

「え!?て、天使?・・えっ、えっ!?」

先輩の言葉に戸惑うあかりの姿を映し出していた。

「・・・でも先輩、今まで悪魔とか幽霊とか呼んでたのは知ってるけど、天使ってのは
・・・え、呼んだ事ないって?大丈夫なのか?」

  だいじょうぶです。

  ・・・まあ、先輩にそう自信たっぷりに言われちゃ、何も言い返せないな。
  ふと気になって横を見ると、まだ事情の飲み込めてないあかりが、

「えっ?えっ?えっ?」

と、まだおたおたしていた。
  ったく、しょーがねーなあ。
  俺は軽くあかりの頭を叩くと、そのままくしゃくしゃとなでてやった。

「きゃっ!?ひ、浩之ちゃん?」
「安心しろって。先輩にまかしとけば大丈夫だよ。それに今回は悪魔とか幽霊なんて
やばいのじゃなくて、天使だからな。心配ねぇよ」

  俺の脳裏を、春休みの降霊会の時の事がよぎった。
  ・・・
  だ、大丈夫だよな。それに俺が先輩を疑ってどうする!

「・・・・・・」
「え?始めます? おう、わかったぜ、先輩。で、俺達はどうすればいいんだ?」

  とりあえず気を取り直して聞き返してみた。
  いつもは俺しか呼ばないのに、今回はあかりもいっしょに、とご指名があった。
  多分、あかりも今回の儀式で何かする事があるって事だと思うんだけど・・・

「魔法陣の前で向かい合って下さいって?わかった。あかり?」
「う、うん・・・」

  まだ不安があるのか、おずおずと俺の前に立つあかり。
  ・・・まあ無理もねーか。俺みたいに慣れてるわけじゃないし。

「それで?・・・え!?血を交換して下さいって!?」
「・・こくん」

  うなずく先輩の手には、蝋燭の光を移して鈍く輝く2本の針が握られていた。

「ちょ、ちょっと待ってよ先輩。天使を呼ぶのになんで血が・・・?」

普通、生け贄を使ったり血を捧げたりってのは、悪魔を呼んだりするための黒魔術
の時にするんじゃないのか?天使を呼ぶなら白魔術じゃないのか?

「・・・・・・」
「え?天使の召喚には恋人同士の血の交換が必要だって?そうなの?」
「・・・こく」

  その言葉を聞いた途端、あかりの顔がぼっと赤くなった。
笑ってやろうかと思ったけど、きっと俺も似たり寄ったりな状態だろうからやめて
おいた。
  5月の頭に、あかりと俺は恋人同士になった。
それから結構人前でいちゃついたりして、そうした目で見られるのには慣れていた
つもりだった・・・けど。
  こうして改めて言われると、何か照れるな・・・

「えっと、それじゃどうすりゃいいんだ?・・・指の先に血がにじむ位に、か」

  先輩から針を受け取ると、あかりに差し出す。

「ほら」
「え、う、うん・・・でも、ちょっとこわいな・・・」
「何だったら俺が刺してやろうか?」
「え!?い、いい!自分でやるから!」

  俺の言葉に慌てて首を振ると、俺の手から針を受け取った。

「じゃ、刺すよ、先輩?」
「・・こく」
「せーのでやるぞ、あかり」
「う、うん」
「せーの」

  ぷつっ

「つっ!」
「いたっ!」

  二人そろって思わず声を漏らす。
  見ると、お互いの左手の人差し指の先で、血がぷっくりと赤い珠を作っていた。

「で、次は?・・・お互いの指を口にくわえて下さいって?・・・だってさ、あかり」

  すっと、あかりの前に、血が垂れないように気を付けながら指を差し出す。
  
「・・・」

  何も答えないあかりの眼が、心持ちとろんとした様な気がするのは気のせいか?
  そこで、ふと気付いた。
  ・・・こいつ、あの時の事を思い出してんじゃないのか?
  あかりと初めて結ばれた夜の映像が、頭の中をオーバーラップする。
  俺の指をくわえてうっとりとした表情を浮かべるあかり。
  ・・・やべ、勃ってきちまった。

「おら、さっさとする」

  わざとぶっきらぼうに言って、自由な右手で額をこつんと叩いてやる。

「えへへー」

  俺の考えてる事がわかったのか、頬を赤くしていつもの笑いを浮かべるあかり。
  それで少しリラックスしたのか、微笑みを浮かべたまま俺の口元に指を持ってきた。
  ・・・
  血の珠の浮いた指を見つめると、なんか・・・

「どきどきしてきたね・・・」
「あ、ああ」

  うなずくと、なんとなく二人の間に沈黙が落ちる。
  少しの間、見つめ合い・・・
  そして、お互いの指にくちづけ・・・
  下の上に広がる鉄の味を感じながら・・・
  ゆっくりと、離した。

「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・え!?あ、な、何?先輩っ!?」

  先輩の小さな声が、余韻に浸るように見つめ合っていた俺達を現実に引き戻した。

「・・・・・・」

  呪文の詠唱を始めるので、傷を合わせるように手を合わせて魔法陣にかざして下さい。

「こ、こうですか・・・?」

  あかりが俺の手を握って、魔法陣の上にかざす。
  先輩はうなずくと、そのままにしていてください、と言ってから呪文を唱え始めた。

「・・・el・・ty・ria・・・ale・otton・・・」

  目を閉じ、指で空中をなぞりながら、熱心に言葉を紡ぎ続ける。
  俺とあかりも、手を重ねたまま押し黙る。
  蝋燭の揺れる部屋に、先輩の声だけが(微かにだけど)響く。

「・・vol・・g・nos・・・ya・dll・・・」

  ふぉ・・・・ん

  やがて、先輩の声に応えるように、魔法陣がかすかな光を放ち始めた。

  ・・・きゅっ

  重ねられたあかりの手に、少し力がこもる。
  俺も軽く握り返してやる。

「re・・hyd・・rum・・・ios・・・・na」

  先輩の声が少しずつ大きくなっていき、それに合わせるように魔法陣も輝きを増す。
そしていつしか、耳にはっきりととらえられる先輩の声と、目を開けていられない
ほどの輝きが部屋を満たし、

「・・sllab・ey・eym!」

  ごうっ!

「!!」

  急に魔法陣から吹きつけてきた突風に飛ばされ、あかりの手が離れる。
  視界にはいっぱいに光が満ちていた。

  あかり! 先輩!

  叫ぼうとしたその刹那。

  ごつ

  後頭部に鈍い痛みが走る。
  急激に遠のく意識のなかで、俺は光の中に誰かを見たような気がした。

・・・あかりとも、先輩とも違う、小柄な女の子。
・・・顔を彩る、暖かな微笑み。
・・・そして、光の中にあってなお白い、一対の翼。

「て・・・てん・し・・?」

  そして俺は、意識の闇に沈んでいった・・・

<続く>

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  Yin:どうもみなさん。最近、図書館のチャットにはまり気味な、「天使の担い手」、
          Yinです。

  アイラナステア:チャットにはめられた(笑)、白天使のアイラナステアです。

  Y:なんだアイラナ、お前だって結構乗り気だったじゃないか。

  ア:それはそうだけど、わかんない人だらけの会話は置いておいて、とりあえずマスター?

  Y:ああ、そうだ。えー、ここに書き込むのは2度目なんですが、前回の話をどの位の人に
      読んでいただけたのかわからない上に、例の事件で話自体が電脳虚数空間の彼方に消え
      去ってしまったので、はじめまして、のつもりで書かせてもらいます。
      とゆーわけで改めましてm(_ _)m  ぺこり
      何とか書き上げましたこの話。そんな力も余裕も無いくせに続き物です。
      ホントは違うプロットを立ててたんですが(Lメモにしようかとも思ってました)、
      まだ勉強不足な点なども多々あるため、このような話に落ち着きました。
      天使の正体は、わかる人にはわかってもらえる、アレです。

  ア:っていうか、私です。

  Y:ばらすなぁぁぁ!!

  ア:すぐばれるから変わらないよ、マスター。あ、すぐじゃない可能性があるんだっけ。

  Y:う・・・

  ア:テストにレポート。7/3には「め○・king」買うとか言ってたし。

  Y:あうあう・・・

  ア:遊びのつもりで出したら受かっちゃった「夏のアレ」の原稿も・・・

  Y:ええい!!書く、書いてやる!! 少なくとも学校でNET出来る間にこの話の続きを!!

  ア:言ったね?もう後戻りは出来ないよ?

  Y:・・・おまえ、自分のマスターをいじめて、そんなに楽しいか?

  ア:うん♪ だって、他の人にはこんな事言えないじゃない?

  Y:・・・俺、お前の育成の仕方、間違ったかな・・・?

  ア:その事は置いといて。
      それにしても何と言うか、文章バラバラだよね。統一感があんまりないと言うか・・・
      ギャグなんだかシリアスなんだか、中途半端だよね。

  Y:その辺は自覚してるんだけど・・・下手にあちこちいじると全体が崩壊しちゃって・・・
      まあ、ひとえに力不足のせいと言うか、努力が足りないと言うか・・・
      時間が無くて、バラバラに書いてるのも一つの原因かな・・・
      いや、自分に自信を持てないのもまた一因か・・・
      うう、なんだかより一層自分が駄目人間に思えてきた・・・

  ア:大丈夫。駄目人間はどこまで行っても駄目人間だもん。いまさら新しい要素が加わっても
      何も変わらないって。元気出して、マスター!

  Y:・・・けなされてんのか慰めてんのかよくわかんないが・・・
      まあいいほうに受け取って置こう。気ぃつかわせたな、アイラナ。

  ア:お礼なんていいよ。今後の話で私を可愛く書いてくれれば充分だから。

  Y:ま、努力しよう。それでは今回はこの辺で。
      お相手は、“感想はすいませんが別の機会に・・・”Yinと、

  ア:“次回は本編に出るので、よろしくお願いします”アイラナステアでした。

  Y&ア:See You Next Time!  Bye!