日本国内閣総理大臣 投稿者:vlad 投稿日:6月27日(火)05時27分
 部屋に入る前に傘を振る。
 ありゃー、下に水溜りができちゃったよ。まあ、今日は降ってるからなあ。
 十分に水を切った傘を玄関の壁に立てかけて部屋に入って上着を脱いだ。こいつもまた
濡れてんなあ。ハンガーにかけて吊るしておこう。
 まあ、濡れちゃったけど、投票は国民の義務だからな、っていうか権利か? まあ、ど
っちなんだかここ最近曖昧になってるような感は否めないけど……。

 ドンドンドンドンドンドン!
 ピンポンピンポンピンポン!

 うるせえっ!
 なんだ! 誰だ! どっちか一つでも鬱陶しいのにドアとチャイムを同時進行で連打す
るのは!
 こんなことするのは……。
「誰だよ!」
「御機嫌はどうかね? 同志和樹」
「……やっぱり、お前か……って由宇と詠美までいるのか!?」
 どういう取り合わせだ? っていうか、考えられる範囲では「最悪」っていっていいな、
無茶苦茶食い合わせ悪そうな三人だ。
「久しぶりやんけ、元気にしとったか?」
「ああ、まあ……」
「思ってたよりきれーな部屋じゃない。あたしの素足を置けるようなとこじゃないけど」
「そりゃ、どうも……」
「時に同志よ! 今日は国が税金を払っていない我々学生にある権利をくれた日だ!」
「ああ、今日は選挙の投票日だな」
「これから一緒に清い一票を投票箱に投じ入れに行こうではないか!」
「ウチは不在者投票で済ましてあるわ」
「……なんでこんなパンダにあってあたしに無いのよー」
「……」
「よし、行こうではないか。選んでやろうではないか」
「……おれ、もう済ませてきた」
「……まだ十時だぞ?」
「いや、ちょっと早く目が覚めたんで……」
「……誰に入れたのだ? 同志よ、よもやお前が愚かな選択をするとは思ってはいないが
……」
「えーっと、確か○○って人に……」
「……なんということだ……」
 がっくりと崩れる大志、どうしたんだ?
「おっどりゃああああ!」
 すぱーん。
「うわ、何すんだよ、由宇!」
 すぱん、すぱん、すぱん、すぱん。
 高速で動くハリセンがおれを襲う。一体、なんだってんだ。
「お前みたいなアホにはこうや!」
 つんっ。
 思いっきりハリセンで顔突かれた。
「痛いじゃないかよ」
「ハリセンはのお……音は派手やけど……それほど相手に与える痛みはあらへん……関西
人が産み出したこの世で最も優れたツッコミ用の道具なんや……せやけど今ウチは……ハ
リセンで突いた!」
「それがなんだってんだよお」
「これは邪道や、ハリセン技でも本来使たらいかん邪道拳や! でも、ウチはそれを使う
た。なんでか……わかるな?」
「な、なんで?」
「この腐れ木端!」
 げしっ。
 うげっ、蹴りが入った。しかもツッコミ用の「ケツ蹴り」じゃない、思いっきし鳩尾に
入った。
「いててて……」
 よろめいた先に詠美がいた。おっ、おれを支えてくれるのか。
「ありがと、詠……うぎい〜〜〜っ!」
 何しやがんだ、こいつ。耳を引っ張るなって!
「もう……むかつく! むかつく!」
「あだだだだ! な、何がむかつくっていうんだよ、詠美!」
「ちょおちょおちょおむかつくーーーっ!」
「だ、だから何が!」
「なんであたしに無くて、なんでこんなお馬鹿に選挙権があるのよーっ!」
「んなこといったって、年齢の問題なんだから……」
「おかしいわよ! あたしの方が本が売れてるのにッ!」
「だから、それはそれでまた今度の議題にするとして、なんでおれがこんな暴行を受けな
きゃいけないんだよ!」
「同志和樹よ……」
 なんだ。大志め、いつになく肩が落ちて異様に撫で肩だぞ。
「漫画家として実力はあるが……いまいち世故の足りないお前のこと……もしやと思って
いたが……」
「な、なんだよ、○○に入れたのがそんなにまずかったのか」
 そういっている間にも「むきぃーーーっ!」と喚きながら詠美が背中を叩いてくるので
非常にうっとうしい。
「まいふれんどよ……ああ、まいふれんどよ……」
「だから、なんだよ」
「○○は自○党だろう……」
「ああ、そういえばそうかな」
「おどりゃ、それもわからんと入れたんかい!」
 すぱーん。
「な、なんだよ、○民党はそんなにやばいのか?」
「やばいなんてもんやあらへん、コミパの参加者で自○に入れたんなんて絶対、あんただ
けやぞ」
「そ、そうなのか!?」
「むきぃーっ! むかつくむかつく! ちょおむかつく!」
 ぽかぽかぽかぽかぽかぽか。
「あんたなあ、あんなもん、表現の自由を侵害しようとするおばはん連中なみに同人者が
支持したらいかん政党やで」
「そ、そこまでなのか!」
 児童なんちゃら法とかいう法律を成立させようとしている一派がいて、それに投票すま
いとはおれも思っていたんだけど、自○はそれと同等にやばいって?
「同志よ……ついこの間まで内閣総理大臣だった男がいるだろう……」
「ああ、○さんな、国会で『おれは神だ』って発言して叩かれた……」
「あの男が先々代総理大臣の時代から推し進めていた計画があるのだよ」
「先代総理っていうと……あの入院してそのまま亡くなった……」
「うむ、それで自らが総理大臣になってからも着々とその計画は進んでいた。○民が政権
を取るということはあの男の政権が続くということ、そうなればその計画が遂に実行され
てしまうのだ」
「そ、その計画とは!?」
「むきぃーっ!」
 ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽか。
「おたく壊滅作戦だ!」
「な、なんだってー!」
「決行は今度の八月の夏こみだ。もっとも多く、最も濃度の高いところが集まる三日目に
計画は実行される。まず、橋を爆破して人工島を孤立させ、その後に米軍の助力を得て空
爆を行い、落下傘によって機械化歩兵一個連隊を降下させジェノサイド(皆殺し)する!」
「……」
「逃げ道は唯一海だけだが、橋の爆破と同時に海上自衛隊の艦艇が人工島を包囲するので
逃げても無駄だ。機関銃の餌食になるだけだ」
「……」
「八月の時点であの男が! 自○党が政権を握っていてはそれが実行されてしまうのだ。
今回の選挙は、いわば合法的にそれを阻止できるただ一度の機会だったのだ!」
「……」
「むっきぃぃぃぃぃ! バカバカバカバカバカ!」
 ぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽかぽか。
「……いや、そりゃ無理あるだろ」
「アホぅ!」
 すぱん、すぱん、と後頭部と顔面を立て続けにハリセンが叩く。
「これはホンマの話なんやで、牧やんらもなんとか阻止しようと動いとるけど……どうも
いかんわ。まともに話し合おうとしても向こうが取り合ってくれへん」
「はあ……」
「む、こうしてはいられん。自分はこれから投票に行ってくる」
「おう、気張りや」
 大志が出て行って、由宇と詠美が残った。こいつら……今日は居座る気だな……。
 一時間ほどして大志が戻ってきて……三人とも帰ろうともしやしない。あー、もうしょ
うがないなあ。詠美がぽかぽか叩いてくるのも段々馴れてきたよ。

 夜になって、選挙速報のテレビ特番が始まった。おれたちは由宇が作ってくれた夕食を
食いながらそれを見ていた。
「ふみゅー……」
 詠美はおれを叩き疲れてへばってる。
「○○氏が当選しました」
 その声が聞こえるや、洗い物をしていた由宇が飛んでくる。
「なんやて!」
○○……ってのは、おれが投票した人だ。やばいかな。
「この選挙区は最後まで激戦で、選挙史上稀に見る劇的な結果となりました。一票差!
なんと一票差で○○氏が当選です!」
「……」
 ……やばい、な……。
「ふみゅみゅみゅみゅ」
 なんか後ろから声が近づいてくるし。
「……」
 由宇が新しいハリセン作ってるし……。
「ふう」
 救いを求めるように見た大志はお茶を飲んでそっぽを向いてやがるし。
「このドアホがあっ!」
 すぱん、すぱん、すぱん、すぱん、すぱーん。
 ああ、もういいよ、好きなだけ叩いてくれ、由宇……。
「ふみゅ、みゅみゅっ! ふみゅーん!」
 いよいよ人語がしゃべれなくなったか、詠美……。
 かぷっ。
「噛むな!」
 でもね、あれだよ。なんか自○党の獲得議席数は微妙なとこだよね、これは野党の連合
のしようによっちゃあ○民は政権を失うよ、いや、ホントにね。
 とかなんとか必死にいって、なんとか三人には引き取ってもらった。

 数日後……。
 さて、夏こみの原稿にかかろうか、と画材を取り出しケント紙を置いたところで本格的
な作業にかかる前にテレビをつけた。
 なんとなく、適当に流しておこう。BGMみたいなもんだ。
 と、丁度、ニュース番組が始まっていた。
 あ、○さんだ。
「まあね、こうして続投できることになったからね、これからもますますいっそう励みま
すよ、なんつってもおれは神だしね、ダハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
 全く、この人は全然懲りてないな。
 続投かあ。そういえば右下の方に「○政権続行ーっ!」ってテロップが出てるな。
 ……やばいかな。
 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン!
 ……やばいな。
 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!
 ……絶対来るとは思ってたけどな……。
「同志よ! ちと相談事がある!」
「開けんか、コラァ! ぶち破るど!」
「ふみゅっ! みゅっ! ふーーーーーーっ!」
 あー、もう、開けたくねえけど。開けなかったらホントにドア破壊するだろうしなあ。
隣近所の手前もあるし。
「……よう、来るとは思ってたよ」
「まずいことになりそうだ。ニュースは見たか?」
「ああ、今見たよ」
「このアホがっ! アホがっ! ど腐れが! 同人作家たちに手ぇついて謝れ!」
 すぱん、すぱん、すぱん、すぱん、すぱん。
「ふみゅーーーーーーーーっ!」
 かぷかぷかぷかぷ。
「それで、いよいよこうなっては実力行使しかないという結論に至ったのだ。同志よ」
「そうや! 牧やんはまだ穏やかな問題解決を模索しとるみたいやが、もうこうなったら
やったるしかあらへんっちゅうねん」
「ほうか……」
 そうか、と、おれは言おうとしたけど胴に両足回してしがみついた詠美が口に指を入れ
てぐにぐにやってくれているのでまともな声が出ない。
「れ? ひつろくこーしってなんら?」(で? 実力行使ってなんだ?)
「首相に直談判で話をつける」
「れも、ほれたひになんかはってくえるは?」(でも、おれたちになんか会ってくれるか?)
「まあ、まともに行っても会うてくれへんやろな」
「でやぁ、ろうやっへ?」(じゃあ、どうやって?)
「和樹、電話借りんで」
 由宇がおれんちの電話の受話器を取って手際よくプッシュホンを押した。どこに電話す
るんだろ? 自○党の本部かな?
「おう、首相官邸かい?」
 こいつは……。
「首相に会わせぃ! おうこら。話があんねん、話がぁ。なんやと? あー、もうあかん
あかん、兄ちゃんみたいな電話番じゃ話にならんわ。もちっと上のもん出しぃや」
 ……そんなんで首相に繋がるわけないだろうが。
「なにぃ、逆探知? 上等じゃ、できるもんならやってみぃ!」
 こらこらこらこらこら!
「と、いいたいとこやがの、この電話はウチやのうて連れのもんやさかいな、それは勘弁
したってや」
 ふう……。
「ほう、どうしてもあかんか。ほうですかいの、そしたらの、首相に伝言だけ伝えておい
てもらいまひょか? それぐらいええやろが、んな硬いこというとるんに限ってふにゃチ
ンやねん、ええから! 伝えておいてくれたらええんじゃ!」
 無茶苦茶いってるな……人の電話で、本当に逆探知されたらどうすんだよ。
「なぁに、そんなメモ取るような長いもんやあらしまへんのや。ただ一言やねん」
 ……なにいう気だ。こいつは。
「総理ぃ、今から一時間後にシバきに行ったるからな、待っとけ!」
 叩き付けるように受話器を置いた。
 そして――。
「ほしたら、行こか」
「うむ」
「詠美も、いつまでも和樹で遊んでるんやない。行くで」
「ふみゅっ」
「どこ……行くの?」
「首相官邸や」

「あー、やばいって、魔に受けたんだかいっつもあれだけ厳重なんかはわかんないけど、
起動隊員がたくさんいるよ」
「ひい……ふう……みい……百……はおらんな、ナメられたもんやで」
 ずんずんと由宇が進んでいく。大志と詠美も後に続き……おれは非常に帰宅したかった
んだが詠美にひきずられて同行。
「おう、集まっとるな、諸君」
「……なんでしょう? 関係無い方は……」
「アポは取ってあるんやで、ちゃんとさっき電話したんや」
「えー、何時何分に、どのような内容で……」
「一時間前、シバきに行くゆうたやろが」
 機動隊員のみなさんが唖然とした顔で由宇を見ている。まあ、そうだろうな。
「通るで」
「あ、待ってください」
 由宇の肩に機動隊員が手を置き……。
「気安う触んな!」
 回転しながらふっ飛んだ。
「と、取り押さえろ!」
 あーーー、帰りてぇーーー!
「上等じゃ、くそポリぃ!」
 由宇がやくざキックで機動隊員の群れに突っ込んでいく。
「ふみゅっ!」
 かぷっ。
 詠美が噛んでる。
「毎日毎日、勤務御苦労」
 大志の奴はただ突っ立っているだけにしか見えないのに周りに人の山を築いている。
やっぱりこいつが一番わからん。
「各位っ!」
 そう叫んだのは、おそらく隊長クラスと思われる四十半ばの隊員だった。
「警棒の使用を許可する! 相手が"小柄な女性"であるとの認識を改めろ! 敏捷な小
型の野生動物であると思えッ!」
 やばい、非常に正しい判断だ。
「くそ、ちと厄介じゃのう、よし、下手に相手せんとアホ首相を目指すで!」
「賛成だ。あの人数に本気で来られては服が汚れる」
「ふみゅ、ふみゅみゅ、みゅっ!」
 って、お前ら、普通人のおれを置いて行くなぁっ!
 と、横から何かが突っ込んできた。
「ぐわっ!」
「む、なんだ今の声は? まいぶらざー、どうした?」
「和樹のアホが胴タックル喰らいよった。しゃあないのお、ウチが助けにいってくるわ」
「うむ、兄弟を頼んだ。こちらは官邸内の敵を黙らせておく」
「頼んだで」
 うがががががが、三人も四人も乗っかるなよ、息ができないじゃないか。
 ん? 重みが消えたぞ。
「何やっとんじゃ、和樹ぃ!」
「由宇、助けに来てくれたのか」
「おう、ウチとあんたの仲や無いの」
 今回の件はそもそもお前が……。
「結局全員シバかなあかんわ、ちと疲れるわい」
 その時、身長190はあろうかという隊員が由宇に掴みかかってきた。
 ごつん。
 物凄い音がして隊員が倒れていく。
「な、なにしたんだ? 両手つかまれてたのに」
「パチキや」
 パチキって……あの隊員、ヘルメット被ってたような……あ、割れてる。
「おらぁ、パチキじゃパチキじゃ、これ使こたら本気っちゅうことやで!」
 喚き散らしながら由宇が頭を小刻みに前後させながら機動隊員たちを悶絶させていく。
なんか凶暴なキツツキみたいだな。
「よし、怯んだで、行くで和樹」
「あ……お、おう」
「まったく、本庁やっちゅうのにあんな弱っちくって帝都の治安が守れんのかいな。神戸
のポリさんやったらカウンターでパチキ返してきよるで」
 ……とりあえず、今度誘われてた神戸に遊びに行く話は再検討することにしよう。
 官邸内に入ると詠美がちょこん、と座って待っていた。
「ふにゅ」
 おれたちの顔を見ると走り出す。着いてこいってことか……しかし、おれは今日詠美が
人の言葉を口にするの一度も見てないぞ。
「おう、来たか」
 詠美の後に着いていくと、ある部屋の前で大志がおれたちを待っていた。その足元には
手に拳銃を握った黒服が倒れている。
 血を吐いているのになぜか幸せそうな笑みを浮かべている。北斗有情拳でも使ったのか
こいつは。
「ここやな、よし、行ったらんかい!」

 その男は悠然とそこに座っていた。
「おれは神だ」
「そんなんどうでもええんじゃあぁぁぁ!」
 すぱーん。
 おそらく史上初の試み。

 内閣総理大臣にハリセンチョップ。

「おんどれがなんであろうとこっちはかまへんのや、どアホが!」
 すぱん、すぱん、すぱん、すぱん、すぱん。
「首相〜っ」
「な、なにかな?」
 首相、ちょっとビビる。気持ちはよくわかる。
「例のよ、夏こみに仕掛けようとしとる計画、それさえ止めてくれたらこっちはそれでえ
えんやで」
「……なんのことかな? わからないな、うん、わからないぞ」
「しらばっくれんな! この外道」
 すぱん、すぱん、すぱん、すぱん、すぱん、つんっ。
 あ、最後に「突き」が入った。
「わ、わかった。あの計画は中止する。約束する!」
「やっぱり嘘ついとったんやな、パチキじゃパチキじゃ、ちびっと鼻の軟骨潰してええ男
にしたるわ!」
 ごつん、ごつん、ごつん。
「由宇、もうその辺で、例の計画は中止するっていってるんだし!」
 おれは必死に由宇を止めた。っていうか、首相ちょっと涙目だよ! やりすぎだよ!
「おら、今度は別の角度からじゃい」
 ごつん、ごつん、ごつん。
「由宇、止めろって」
 ごつん。
「へぶ!」
 ……こっちに来やがった。
「由宇さん、止めてください」
 怖いから敬語を使ってみた。
「おら、おら、おら、おら」
 ごつん、ごつん、ごつん、ごつん。
「由宇さん、ここは! ここは一つ、ぐっと堪えてやってつかえや!」
 死ぬ死ぬ、死ぬって。
「堪えてつかぁさい! 堪えてつかぁさい!」
「ふう……まあええか、このアホに免じて許したる」
 首相、顔の形が変わってるぞ。
「最後に……」
 由宇はハリセンで軽く首相の頭をぽんぽんと叩きながらいった。
「警備がなってないのお、総理〜」
「はあ……」
「こんなこっちゃ、あれやで、すぐにタマ取られてまうで……まあ、ウチらはこみぱさえ
定期的に開かれとったらそれで満足な小市民やけんの……わかるな、のう?」
「はい」
 首相は震える手で由宇の手を取った。
「ご忠告、ありがとう」
 これが、後に警察高官の首をことごとく変えたといわれる首相官邸襲撃事件の真相であ
る。



「ふみゅ」
 かぷかぷ。
「これ……なんとかしてくれないか?」
「あかん、詠美はそうなったら三日は戻らん」
「……」
「ふみ」
 かぷかぷ。

                                     終

     どうも、vladっす。
     こないだこみっくパーティを買ってきました。
     はっきりいって敬遠してたんですけど、けっこうキャラ立ってて面白
     いですね。
     SSは、もう何本か書くかもしれません。
     それではまた……。
     なお、作中の時期ですが、和樹や大志が二十歳になった後……と、考
     えてください。

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