膝枕 投稿者: vlad
 待ち合わせの時間に少し遅れてしまった。
 浩之は急ぎ足で学校の近くにある公園にとやってきた。
 前に二人でアイスクリームを食べたベンチで待ち合わせの約束がしてあった。
 約束の時間を20分ほどオーバーしているのでもう先に来て待っているだろう。
「急がねえとな」
 これは、アイスクリームの一つも御馳走しなければならないだろう。
 それで御機嫌を取ろうというこの男の神経、常人より図太い。
 浩之が公園の中に入っていくと、やはり既にベンチの上には彼の恋人が座っていた。
 浩之は一層急ぎ足になった。
 歩いていく浩之を小さな女の子が駆け足で追い越していった。
 年齢は三歳か四歳か、小学校にも上がっていないような小さな子だ。駆け足もよちよ
ちしていて頼りない。
「転ぶわよ」
 と、浩之の後ろの方から母親らしい声がした途端に転けた。
 浩之も咄嗟に体が動いたのだが、けっこう距離が離れていたためにどうにもならなか
った。
 
 びたっ。

 と、思いっきり前のめりに倒れた。
 大の字になって地面の上に貼り付いている。
 母親らしい女性が駆け足で浩之を追い越して行く。
「だからいったじゃないの」
 そういって、女の子を抱き起こしている。
「大丈夫? 痛くなかった?」
「全然痛くないよ」
 女の子は、快活に答えた。
「そう、強いのね」
「うん」
 その会話を聞きながら、浩之はベンチの方にと向かっていった。
「よっ、琴音ちゃん」
 ベンチに座っていた琴音が顔を上げて浩之を見た。
 薄ぼんやりと霧がかかったような目をしていた。
「わりっ、遅れちまった」
 謝る浩之を、やはり霧が漂うような目で見ながら、琴音は微笑んだ。
「眠いんだろ、琴音ちゃん」
「ふぁい……」
 いった側から、コックリ、と頭が下がって上がる。
「寝ちまえよ」
「でも……せっかく……藤田さんと……デートなのに……」
「いいってば、今日は特にどこ行くか決めてるわけじゃねえし、琴音ちゃんが寝てる間
にデートコースを考えとくよ」
「それじゃあ……」
「おう」
「藤田さん……」
「なんだ?」
「……その……膝枕……してくれませんか?」
「おう、こんな膝でよけりゃなんぼでも使ってくれ」
 浩之が琴音の隣に座ると、すぐにその膝の上に頭が乗った。
 浩之はその頭を軽く撫でてから呟いた。
「さて……今日はどこに行くかなぁ……」

                                     終

     どうもvladです。
     小ネタです。
     小ネタに相応しくえらい短い話になりました。
     琴音好きと称している割りに全然琴音SSを書かない私の二作目の
     琴音SSでもあります。

 感想とレスは次の機会に……。
 では、また……。

  と、こっちじゃまだ宣伝してなかったな。
 ↓一度おいで下さいませ。

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